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自作ポータブル赤道儀の極軸の空回りをなくそう––ウォームホイールにネジを切って極軸を固定

自作ポタ赤「ふくろう号」


自作赤道儀ネタです。ほぼ需要はないと思うけど(笑)。

ポータブル赤道儀を自作してから数年が経ちました。一応完成したあとも,不具合をなくすための改良を細々と続けてきました。

今回は極軸と駆動用のウォームホイールを,空回りしないようにネジ止めした話です。


赤道儀の自作記事はこちら↓

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極軸が空回りするようになってしまった…

完成後,改良を加えてきた自作ポタ赤「ふくろう号」。問題なく動いていたんですが,使っているうちに新たな問題が発生してしまいました。

駆動用のウォームホーイールと極軸の間が空回りするようになってしまいまして。

極軸が空回り

極軸が空回りするようになりまして…

ふくろう号の極軸は8 mmφの真鍮丸棒,ウォームホイールの穴も8 mmφです。結構キツキツで,ハンマーで叩き込まないと極軸が入らないくらいだったんですよ。

それで,今まではそのままジャムフィットで特に両者の間を固定するような工作はしていなかったんですけどね。

重ためのレンズをつけたカメラを載せたりしているうちに,ここが空回りするようになってきたんです。

…なんとかしないとダメだな。

ウォームホイールにタップを切って,極軸をねじ止めします

こんな方針で工作します

空回りを防ぐために,ウォームホイールにネジを切って,極軸をボルトで止めることにします。こんな感じ↓

極軸を固定

ウォームホイールにネジを切って極軸を固定します

赤道儀を開けて,極軸を取り出します

ウォームホイールに工作するために,久しぶりに赤道儀を開けます。

まず「雲台ステージ」を外して…

雲台ステージを外しました

雲台ステージを外しました

次に9本のビスをゆるめて上蓋を外すと,内部があらわになります。

赤道儀内部があらわに

上蓋を外しました

本体軸受から極軸を外しました。駆動用のウォームホイールが付いています。他にシャフトカラーなども。

これが極軸

これが極軸

極軸にタップを立ててネジ穴を切ります

これが極軸です。ウォームホイールにタップを立てるための下穴を開けて…と思ってたんですが,最初に赤道儀を作った時にすでに開けていました。

これが極軸

これが極軸。下穴はすでに開けてました

最初からここをネジで止める予定だったけど,ジャムフィットで割としっかりとまったので「これでいいや」とここで工作を止めてたんですね。すっかり忘れててたよー(笑)。

というわけで,あとはタップを立てるだけです。

タップを立てます

タップでネジを切ります

…とは言っても,ウォームホイールの中でタップが折れると大変!機械油をさして,慎重にネジ切りを進めます。

極軸を小ネジで固定して,本体に装着

幸いタップを折ることなく,無事にネジ切りが終わりました。再び極軸を叩き込んだあと,小ネジをねじ込んで,六角レンチで締め上げます。

小ネジを締め上げて極軸を固定します

小ネジを締め上げて極軸を固定します

これで極軸の空回りはなくなるはず。

ネジを閉め終わった極軸がコレ。赤道儀の心臓部とも言える部品ですね。

極軸

これが極軸です

さらに極軸の「高さ」を決めるためのシャフトカラーもつけて…

シャフトカラーもつけた

シャフトカラーもつけた

工作の終わった極軸を,本体の軸受に装着します。

ついでにギアの噛み合わせ部分に,グリースを塗っておきましょうかね。

極軸を本体に装着

極軸を本体に装着

上蓋を閉じたら赤道儀の復活です!

ここまできたら,あとは赤道儀を元通りに組み立てていきます。

上蓋に固定された軸受に極軸を通しながら赤道儀を閉じます。上蓋固定用のビスを締めて…

上蓋を閉じます

上蓋を閉じていきます

ここはビスの効き具合を確認しながら締めたいので,電動ドライバは使わずに手締めします。上蓋は極軸の軸受を兼ねているのでね。

最後に雲台ステージを取り付けて,赤道儀の復活です!

赤道儀が復活

赤道儀が復活しました!

動作チェック,ちゃんと動くことを確認しました

今回の作業は極時の空回りを止めただけなので特に問題は出ないはずですが,一応動作をチェックしておきましょうかね。

コントローラを接続して,1時間ほど回してみます。

コントローラを繋いで試運転

コントローラを繋いで試運転

1時間でちゃんと15° 回ることを確認しました。うん,問題ないですね!

次の新月期を待ちます

本当は11月の新月期に,星撮りに出かけたいと思っていたんですけどね。僕の休みと新月期と天気がうまく合いませんでした。

次の新月期は12月の中旬。天気が良くて都合がついたら,空の暗いところに出かけたいと思います。

うまくいけばふたご座流星群の極大に当たるかもしれませんね。楽しみです。

 

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2023年10月29日 月と木星が接近しました

月と木星の接近 (イメージ):木星のイラストはwikipediaから

月と木星の接近 (イメージ):木星のイラストはwikipediaから

2023年10月29日。晩ごはんの買い物を済ませてうちに向かう途中,空を見上げると満月と木星が接近しています。

どちらも明るくて見事です。

うちに着いたら,さっそくカメラの望遠レンズをつけて撮影してみました。

月と木星の接近

月と惑星は,非常にざっくりいうと黄道(天球上の太陽の通り道)付近を動いています。地球から見ると,かなり近い通り道の上を運動しているということです*1

ほぼ同じルートの上で抜きつ抜かれつするから,いろんな惑星と月は,見かけ上接近することがしばしばあります。

今日は満月と木星が接近です。どちらも明るくて見事です。

月と木星の接近

月と木星の接近

2023年10月29日 18:24。α6400で 焦点距離は 273 mm, 絞り F6.3。

露出を月に合わせたカット(iso 400, ss 1/1250)と木星に合わせたカット(iso 3200, ss 1/400)を位置合わせして,明るいカットの月を黒く塗りつぶしてから比較明合成

露出を木星に合わせただけだと,月の表面の模様が飛んじゃうからね,

焦点距離273 mm(フルサイズ換算 409 mm)の画角に,月と木星がしっかり入っています。

これは豪華な眺めです。今までいろんな惑星と月が接近したのを見てきましたが,煌々と輝く満月と明るい惑星の接近は初めて見たかも。

皆既月食(これも満月です)と天王星の接近(蝕)の様子はこちら↓

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内惑星である金星が満月と接近することはないので,満月と接近できる一番明るい惑星は木星ということになりますね。

そういう意味では,これは最もきらびやかなペアと言えるかもしれません。

*1 天球上で月がたどる道は「白道」と呼ばれています。

せっかくだから,月と木星のアップも撮っておこう

せっかくなので,月と木星をそれぞれアップで撮っておきましょう。木星はもっと長い焦点距離で撮って,ガリレオ衛星の位置も押さえておきたいしね。

満月のアップ

はじめに,満月のアップがこちら。

満月をアップで

満月をアップで

2023年10月29日 23:24。α6400,  焦点距離 350 mm, 絞り F6.3, ss 1/2000, iso 200, トリミング

月を撮るだけなら「半月」くらいの時の方が,クレーターの陰影がしっかり出て面白みがあるんですが。

でもまあ,こういうイベントの時ですし。それに秋の空に浮かぶ満月は,その光がよく冴えてきれいです。

満月で面白いのは,ティコやコペルニクス(クレーターの名前ね)から伸びる光条でしょうかね。光条がどうしてできるのか,不思議で仕方がありません。

木星のアップ

続いて木星もアップで撮ります。

ちなみに,月のアップと木星のアップは「月と木星を同一画面に写したカット」より数時間後の,23時過ぎに撮っています。

こうしたのは,こちらの方が ガリレオ衛星がしっかり分離して見える位置に来るからです。

木星とガリレオ衛星

木星とガリレオ衛星

2023年10月29日 23:25。α6400, 焦点距離 350 mm, 絞り F6.3, ss 1/125, iso 8000, トリミング

今日は,4つのガリレオ衛星が,全て木星の右側にいるようですね。

ガリレオ衛星に名前ラベルを入れたものがこちら。

木星とガリレオ衛星(名前ラベル入り)

木星とガリレオ衛星(名前ラベル入り)

撮影データは名前ラベルなしのものと同じです。

内側から2番目を回るエウロパが木星の一番近くに見えています。また木星から最も遠いカリストがその次に木星本体に近づいて見えていますね。

なかなか珍しい配置の時を撮れたかも…なんて思っていますが。

 

おわりに

ちょっとした天体ショーを,お気楽ベランダ観測した記録でした。先週24日には土星が月と接近したようなので,そちらも撮っておけばよかったな。

夜空を見上げると,時々楽しいことがありますね。

 

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木星のガリレオ衛星の動きを観測しました【2022年12月27日〜2023年1月12日】

はじめに:ガリレオ衛星を観測しよう

冬になると,関東地方は毎日のようによく晴れた日が続きます。

この期間を利用して,何か観察できることはないかなあ…。

「自由研究っぽい観察」をやってみたい…

こんな「冬休みの自由研究」的な発想に基づいて,木星のガリレオ衛星の動きをカメラを使って観測してみました。

その結果,2022年12月27日から2023年1月12日まで 17日間にわたって,連続して木星の写真を撮ることができました。

その結果をまとめてみようと思います。

ガリレオ衛星について

「ガリレオ衛星」とは,木星の衛星のうち特に明るく,17世紀にガリレオ・ガリレイによって発見された4個の衛星を指します。その名前は,内側からイオエウロパガニメデカリスト

ガリレオ衛星

イオ,エウロパ,ガニメデ,カリスト(wikipedia から)

これらは小型の天体望遠鏡で簡単に見ることができますし,望遠レンズをつけたカメラを木星に向ければ,簡単に写すことができます。

直径は,イオが 3,700 km,エウロパが 3,100 km。これらは月の大きさ(約 3,500 km)に近いですね。またガニメデ,カリストの直径は,それぞれ 5,300 km, 4,800 km 程度で,太陽系の衛星の中で最大級となっています。

木星

最大の惑星・木星は衛星の数もたくさん!

ところで木星の衛星は,現在のところ84個確認されています。それらのうち50個以上は直径が 10 km に満たない小さなもので,木星に捕獲された太陽系小天体と考えられているとのことです。

観測方法

このところ,木星は夕方18時くらいに,南西の空に見えています(とても明るいので,すぐにそれとわかります)。

「観測」といっても,カメラに望遠レンズをつけて写真を撮るだけです。撮影条件は以下の通り。

ガリレオ衛星の撮影条件
  • カメラ:Sony α6400+超望遠ズームレンズ SEL70350G(望遠端 350 mm で撮影)
  • 撮影モード:マニュアル(Mモード)
  • 露光時間 1/100〜1/125 秒
  • 絞り F6.3 開放
  • iso 感度 12800
  • フォーカスモード:コンテニュアスAF, フレキシブルスポットL
  • 手持ちで撮影

ガリレオ衛星は明るいので(眼視等級 5〜6等級くらいです),短い露光時間でも十分に写ります。またなんとかAFが効いたので,ピント合わせは楽でした。

こうやって,毎晩18時前後に写真を1枚ずつ撮りました。

木星とガリレオ衛星はこんな風に写ります

実際の写真ですが,こんなふうに写ります(木星付近をトリミングしています)。

ガリレオ衛星

12月27日 18時ころ

2022年12月27日には木星の東(左)側にガニメデとカリスト,右側にイオとエウロパが見えていました。

一部の衛星が木星本体と重なって,見えない日もあれば(2023年1月2日),

2023年1月2日。エウロパは木星本体と重なっています

4つの衛星が,木星の片側に整列して見える日(2023年1月11日)もありました。

2023年1月11日。4つの衛星が木星に左側に見えています

ガリレオ衛星が鮮明に写る条件だと,木星本体は白く飛んでしまいますね。

ガリレオ衛星の動きをまとめてみよう

それではガリレオ衛星の動きをまとめてみましょう。

12月27日から1月12日までの写真を並べたものがこれ ↓。i = イオ,e = エウロパ,g = ガニメデ,c = カリスト です。1月4日のカリストがなぜか写っていませんが。雲の切れ端でもあったのかな?

木星の衛星

ガリレオ衛星の動き

さて,衛星は「円に近い楕円軌道」を動いています。したがって,木星の位置を揃えて写真を並べれば,その動きをサインカーブで近似することができます*1

ガリレオ衛星の軌道を示したもの

この図を作るときに,衛星の位置を,エクセルを使ってサインカーブでフィッティングしようとしたんですけどね。これ,エクセルではできないんですね。そこでサインカーブはエクセルに描かせて写真にコピペし,フィッティングは手作業でやりました。うまく合っていないところがあるのはそのせいです(汗)。

なおガリレオ衛星のうち,イオ,エウロパ,ガニメデは軌道共鳴の状態にあることがわかっていて,イオが木星の周りを一周する間に,エウロパは 1/2 周,ガニメデは 1/4 周動きます。実際17日間の観測で,この関係も確認できました。

 

まとめ

17日間にわたって木星の衛星の動きを撮影することができました。ガリレオ衛星の動きを見ることができて楽しかったです。

ガリレオ衛星のうち最も外側を回る,カリストの公転周期は約16日なので,これが木星を一周する間観測できたのもよかったです。

1月13日から3日間続けて曇りだったので,観測はこれにていったん終了。

木星のガリレオ衛星の観測,夏休みや冬休みの自由研究としてもおすすめですよ。

それにしても冬の関東,どんだけ晴れの日が続くんだ…。

 

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ふたご座流星群の写真を東京都内の自宅からお気軽撮影しました

12月中旬になると,毎年天気が気になります。3大流星群の一つ,ふたご座流星群が極大を迎えるからです。

毎年安定して,1時間に数十個の流れ星を降らせる流星群。極大日が近づくとソワソワします。

今年は極大日(12月14日)に月明りがあって,あまり良い条件ではありません。それに仕事の都合で,空の暗いところに出かける時間もありません。

うん,仕方がないですね。自宅のベランダでお気軽撮影をしよう (^◡^)

もちろん赤道儀も動かさず,カメラを放っておく固定撮影です。

カメラをベランダにセットして放置します

12月14日水曜日。仕事から帰ったらさっそくベランダに三脚を立てて,カメラをセットします。上の階のベランダで視界が一部遮られるので,超広角レンズは使えません。標準ズームの広角端,16 mm(フルサイズ換算24 mm)で撮影しましょうか。

ベランダで撮影

ベランダからお気楽撮影します

まずテスト撮影して撮影条件を決めます。東京都内なので空が明るく,すぐに白飛びしてしまいます。だからあまり長い露光時間は取れません。絞りもあまり開けられないですね。

結局,ss 10秒,絞り F5.6,iso 800 で,インターバルタイマーを使って連続撮影することに決定。

この設定だと一瞬で流れては消えてゆく流星の光を十分に捉えられませんが,チョー明るい流れ星が流れれば,なんとか写し取ることができるでしょう。

 

ベランダ固定撮影なので,カメラを設置したら後は楽ちんです。自分は暖かい部屋でビールでも飲んでいればOK(笑)。

ポトフとビール

暖かいものを食べながら,撮影はカメラまかせ(笑)

第1弾,72分間で1個の流れ星が写りました

第一弾,20:23 から 21:35 まで,72分間の連続撮影です。

撮影終了後,得られた写真をPCに取り込んで比較明合成しました。

比較明合成

12/14 20:23–21:35, ss 10秒で72分間連続撮影したものを比較明合成

写っているのは南東方面の空,冬の星座が昇ってくるところです。オリオン座がどこにあるかわかるかな?画面上の明るい星は火星です。

さてさて。この写真に1個だけ流れ星が写っているのがわかるでしょうか。印をつけてみましょうか。

流れ星,わかるかな?

流れ星,わかるかな?

これでも分かりにくいですね。

流れ星が写ったカットを,比較明合成せずに,星を強調処理したものがこれ(トリミングもしてあります)。

流れ星が写ったカット

流れ星が写ったカット・その1

うさぎ座からはと座にかけて流れていますね(シャッターの切り替わりのところで流れたのか,「流れ始め」の部分が切れているようにも見えますが)。輻射点の方向から,ふたご群の流星ということで良さそうです。

第2弾,17分間で2個の流れ星をゲット

第2弾は 21:39 から 21:56 まで,17分間の撮影。短い時間でしたが,今度は2個の流れ星を捉えることができました。

比較明合成したものがこれです。

17分間の比較明合成

12/14 21:39–21:56 10秒露出で17分間,比較明合成

さて,やっぱり流れ星がどこか分かりにくいですね。これも印をつけてみましょう。

2個の流れ星

流れ星が2つ写っていますが…

やっぱり分かりにくいでしょうか。

これも流れ星が写ったカットだけ取り出して,星を強調してみます。1つ目はこれ。

流れ星

ふたご群の流れ星

ちょうど双子の足元に流れた流星ですね。

もう一つはこちら。

ふたご群の流れ星

ふたご座流星群の流れ星 3個目

画面右端,流れているのは くじら座あたりでしょうか。これも輻射点の方向から見て,ふたご群の流星だと思われます。

空に雲がかかってきたので,この辺りで撮影は終了。

 

2022年ふたご座流星群のまとめ

そんなわけで,自分はリビングでぬくぬくしながらのお気楽撮影でしたが,3個の流れ星をゲットできました。全然写らなくても仕方がない,ダメもとで撮ってみたけど,3個写ったのでオッケーです。

来年はふたご群の極大日が新月期に重なっており,条件が良さそうです。都合があれば空の暗いところでちゃんと観測したいけど,寒いんだよなあ…。

赤道儀を回して輻射点がわかるようにすると,ちゃんと「観測した」って感じがするんですけどね(↓これは2018年のふたご群。赤道儀を回して撮ったものです)。

2018年のふたご座流星群

2018年のふたご座流星群。赤道儀を使って撮影@上野原市

来年どうするかは来年考えることにしよう。天気もどうなるかわからないしね。

 

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2022年11月8日,皆既月食と天王星食を観測・撮影しました!

11月8日月食

2022年11月8日 皆既月食

11月8日の夕刻,皆既月食がありました。これはぜひ見ておきたいですね。

当日はいい天気。

夕方近く,ビーフシチューを急いで作って,家族に「これ食べてねー!」と言って近所の河原に出掛けて行きました。

月食を観測する

月が欠けていく様子を撮影しよう

今回はα6400の2台体制で撮影します(一台はレンタルです)。片方には 55–210 mmの望遠ズーム (SEL55210),もう一方には 70–350 mmの超望遠ズーム (SEL70350G) をつけました。

2台体制

カメラ2台で撮影します

カメラのセッティングが終わった段階で,月は既に欠けはじめています。

欠けはじめ

欠けはじめたお月様

これが,これから地球の影に入っていくわけですね。

まずはその様子を連続撮影してみます。月が地球の影によって欠けていきます。完全に影に入ると,散乱されなかった赤い光だけが月に届き,仄暗く赤い月が見られるようになります。

月蝕の進行

月が地球の影に入っていくよ

撮影条件:α6400,SEL55210,71 mm (FF換算 106 mm),シャッター速度 1/640 – 1/8 秒,絞り F5.6 – 8,iso感度 400 –6400。3分おきに撮影して比較明合成

最初は赤道儀で追尾しながら,「月が地球の影を横切っていく様子」を撮るつもりだったんですが,いろいろ問題がありまして,固定撮影で。

また月が完全に影から出るまで撮り続けたかったんですが,カメラの電池が切れてしまいまして…。

月の様子をアップで観察しよう

もう1台のカメラには超望遠レンズをつけています。こちらで撮影して,月蝕の様子を取り急ぎまとめたものがこちら。

取り急ぎまとめました

皆既月食を取り急ぎまとめたもの

19時59分,皆既月食の最大深度を迎えました。満月のはずなのに月は暗くなり,周りの星がよく見えて(写って)います。これは不思議な光景。月が宇宙に浮かんでいるということが,よく感じられるように思います。

月蝕の最大深度

月蝕の最大深度(星を強調する処理をしています)

もう少し写真をセレクトして月蝕の進行の様子を並べました。ポスター風にタイトルもつけてみました(笑)。

皆既月食

2022年11月8日 皆既月食

撮影条件:α6400,SEL70350G,350 mm (FF換算 525 mm),シャッター速度 1/800 – 1/10 秒,絞り F6.3 – 8,iso感度 400 –6400。3分おきに撮影した数十枚の写真からセレクト

月蝕の記録としてはまずまずかな。

ターコイズフリンジ

月が地球の影に入ると,光が当たっているところの縁に青い帯が見えることがあります。これは「ターコイズフリンジ」と呼ばれ,地球のオゾン層によって青以外の光が吸収され,残った光が月に届くために現れる現象のようです。

これを撮影するために露出ブラケット撮影を試みたのですが,なぜかうまくいかず。そこで露光時間を変えて撮った2枚を重ねてHDRっぽくしてみました。

ターコイズフリンジ

ターコイズフリンジが見えるかな?

どうですかね。光の縁のところが少しだけ青っぽく写っているでしょうか。彩度を強調すればもう少し見やすくなるかもしれませんが,まあこれくらいで。

 

皆既月食中の天王星食

天王星食も同時に観測されました

今回の月食は,皆既食の間に天王星が月の向こう側に隠れる,「天王星食」が起こるという珍しいものでした。なんでも皆既月食中の惑星食は442年ぶりだとか(前回は土星食だったようですね)。

そのことに何の意味があるのか?ということですが,皆既月食中は月が暗く,なおかつ赤くなるので,惑星の潜入が観測&撮影しやすいのです。

月蝕の様子を3分おきに撮影しているので,天王星の潜入前のコマを選び出します。

月の位置を合わせて*1 比較明合成したものがこちら

天王星の潜入

天王星が月に潜入していく様子(比較明合成)

天王星自体,普段はあまりその位置を意識しないのですが,こうやって撮影してみると,意外に明るいですね(眼視等級 5.6等だそうです)。

*1 月の位置は平行移動のみで合わせていて回転はさせていないので,天王星の軌跡は完璧に正確ではありません

天王星の潜入をアップで見てみよう

次の写真は天王星の潜入の様子を並べて示したもの。ちょうど皆既食の終わりにかけて潜入が起こったので,天王星のアプローチと共に,月がだんだん明るくなっていっているのもわかるかと思います。

天王星の潜入

天王星の潜入

なお国立天文台によると,天王星の潜入は20時44分。上の写真にもありますが,潜入直前,20時43分時点の写真が↓です。

潜入直前

天王星潜入直前(20:43)

天王星潜入をアップにしたものも作ってみました。どれも変わり映えないですけどね (^ ^;)

潜入アップ

天王星の潜入をアップで

一方,天王星の出現ですが,こちらはうまく撮れませんでした。皆既食が終わって,部分食の間に出現したので,月がすでに明るく,月に露出を合わせると天王星がちゃんと写らなかったんです。「これかな…?」って感じの点はあるんですけどね。

 

おわりに

皆既月食と天王星食,2つの現象を観測することができました。

赤道儀を使った月蝕の撮影など,試みてみたいことは他にもありますが,次の機会に…と思ったら次の月食は3年後。けっこう先ですね (^ ^;)。

 

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【南アルプス】鳳凰三山(薬師岳,観音岳,地蔵岳)に登ってきました –– 1日目:夜叉神峠から南御室小屋まで

白峰三山モルゲンロート


10月最後の週末,南アルプス・鳳凰三山に登ってきました。

天気が良さそうだし,広河原方面に入るバスの運行は,今年はこの日までだし(マイカーは規制のため入れません)。これは行っとかないとね!

鳳凰三山について

鳳凰三山は南アルプス北部にあります。甲府の町から仰ぎ見ることができ,昔から山岳信仰の対象となってきました。実際に三山の名前は薬師岳,観音岳,地蔵岳と,宗教色の強いものになっています。

甲斐駒ヶ岳と共に,南アルプスでは珍しく花崗岩でできた山です。風化した花崗岩の稜線は白砂とハイマツで彩られ,日本庭園のような趣があります。

オベリスク

鳳凰三山のシンボル,地蔵岳のオベリスク

また野呂川の渓谷を挟んで聳える,白峰三山(北岳,間ノ岳,農鳥岳)の見事な眺めを楽しむこともできる「展望の山」でもあります。

北アルプスでいうと,槍・穂高連峰の眺めが見事な常念岳,蝶ヶ岳に立ち位置が似てるかもね。

1日目記録

10月29日 夜叉神峠登山口 (10:40) – 夜叉神峠 (11:35–11:50) – 杖立峠 (13:00–13:10) – 苺平 (14:25–14:30) – 南御室小屋着 (14:55)

夜叉神峠から入って広河原に下山します

鳳凰三山を縦走する場合,南下と北上の2通りのルート取りが考えられます。それぞれ以下の登山口からの入山となります。

鳳凰三山の縦走ルート
  • 地蔵岳から薬師岳へ南下:青木鉱泉または御座石温泉から入山
  • 薬師岳から地蔵岳へ北上:夜叉神峠から入山

今回は北上ルートで行きます。1日目は夜叉神峠から入って南御室小屋でテント泊。2日目に薬師岳から地蔵岳へ縦走したのちに,白鳳峠を経由して広河原へ下山の予定です。

ベースブレッド

今回は「ベースブレッド」を持って行ってみました

装備ですが,そろそろ寒くなってきたので防寒着を増やします。それでも荷物は12.2 kg に抑えることができました。1泊2日で食料が少なくて済んだからでもありますが。

荷物の軽量化もだんだん板についてきたかな?

夜叉神峠へ歩き始めます

甲府 9:05 発の広河原行きのバスに乗って夜叉神峠登山口で下車します。バスを降りたら目の前が登山口。

はじめは夜叉神峠まで緩やかな道を登ってゆきます。紅葉は盛りを過ぎたのかな?森はところどころ色づいているといった趣です。これはこれで晩秋の落ち着きが感じられて好き。

黄葉の森

登山道に入ります

1時間弱歩いたところで,道は尾根の上に出ます。ここが夜叉神峠。北岳〜間ノ岳の稜線を望むことができる,気持ちのいいところです。

夜叉神峠から北岳,間ノ岳

夜叉神峠から北岳,間ノ岳

峠には夜叉神峠の由緒を書いた看板と小さな祠がありました。

夜叉神峠の祠と由緒看板

夜叉神峠の祠と由緒看板

甲斐国の荒れ川御勅使川(「水出川」が語源)の源には,非常に荒いふるまいが多く,病気,洪水・暴風雨などを起こす力を持った夜叉神という神様が住んでいました。里の人たちは,こうした災害を「夜叉神のたたり」と呼んで恐れていました。

(略)

里人たちは「夜叉神のたたり」を治めようと,御勅使川を見下ろせるこの峠に石の祠をたてて夜叉神を祀りお祈りしました。すると,荒ぶる神の心もいつしかとけて,その後しばらく災害に侵されることはなかったといわれています。

今の夜叉神は五穀豊穣・縁結びの神となっています。

南アルプスの豊かな水は,かつては水害を引き起こす荒神でもあったということなんですね。そしてここはその荒神を鎮める祈りの場所であったと。興味深いです。

南御室小屋へ向かいます

夜叉神峠を過ぎると道は細くなります。そんな中を登っていくと,たまに色鮮やかな一角も。そこだけスポットライトに照らされているみたい。

紅葉の森

色づいた森

夜叉神峠からさらに1時間ほど登ると「杖立峠」につきます。鉄パイプで組んだケルン(?)が置かれています。

やっぱりここは杖(トレッキングポール)を立てかけて写真を撮るべきなんだろうな(笑)。

杖立峠にて

杖立峠にて

ここでまた少し休憩をとったあと,さらに登ります。樹林帯の中に続く道を黙々と歩くこと1時間15分,そろそろ飽きてきたなあという頃に,また鉄パイプのケルンが現れました。ここが苺平。ここから尾根に沿って25分ほど下ると南御室小屋です。

この山小屋には豊かな水場があります。本当の南アルプス天然水。

南御室小屋の水場

南アルプス天然水の水はこちら

今日は登山口から4時間ちょっとの行程。淡々と歩いて到着という印象の1日目でした。初日の行動が量がこれくらいだと楽だなあ。

テントを立てたらアルファ米が主食の晩ご飯を食べて,ドライソーセージとチーズで一杯やります (^◡^)。そして7時前にはシュラフに入りました。寒いからね。

 

南御室小屋の星空

ここ南御室小屋は標高2500 m。南アルプスは森林限界が高いので,ここはまだ樹林帯の中ですが,小屋の周りとテント場は開けていて,空がよく見えます。

23時30分。トイレに行きたくなって目が覚めました。テントから顔を出してみると,予想通りガスが下がって満天の星空です。

昇る冬の星座たち

昇る冬の星座たち

東の空には昇ってくる冬の星座たち。オリオンと双子の間に流れるのは冬の天の川。ふたご座の足元には火星が輝いています。ちょうど火星のあたりからふたご座へ流れ星ひとつ。

北西側にはカシオペア座を中心とする秋の天の川。針葉樹の森のすぐ上に北極星が光っています。

秋の天の川

秋の天の川

最後にもう一枚,ぎょしゃ座,おうし座も入れて,冬の星座たち。まだシリウスが昇ってきていないけど,冬のダイアモンドの上半分くらいを…と思ったら,リゲルが木立に隠れて写っていませんね(汗)。

冬の星座と火星

冬の星座と火星

冬の星座は明るい星が多くて華やかですが,その中にあって火星がひときわ明るいですね。

テントに戻ってひと眠り

さて,体が冷えてきたので,テントに戻ってもう一眠りします。明日は早立ちして,薬師岳でご来光を迎えたいと思います。

おやすみなさい。zzz...

 

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【北アルプス】南岳〜槍ヶ岳の稜線を縦走してきました #4 南岳と横尾の星空

前記事「【北アルプス】南岳〜槍ヶ岳の稜線を縦走してきました #3 横尾から上高地までのんびり歩く」の続きです。

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今回の北アルプスでは終始いい天気に恵まれました。もちろんきれいな星空を見ることもできました。

この記事では一日目に泊まった南岳のテント場と,2日目に泊まった横尾のテント場からみた星空の写真を。

赤道儀は持っていかなかったので固定撮影ですが。

南岳の夜

夏の名残の天の川

よく晴れた夜。夕方穂高にかかっていたガスも上がりました。

晩ごはんを食べたあとテントを出て,テント場から歩いて2,3分の「常念平」で星撮りをします。

南の空を見ると,天の川が南岳小屋の立つ岩峰「獅子ヶ鼻」に立ち上がっています。いて座の銀河中心部がぎりぎり地平線に沈む頃。

固定撮影の一枚どりです。

獅子ヶ鼻と夏の天の川

南岳・獅子ヶ鼻と夏の天の川

この写真のタイトルは「夏の名残り」とでもしておきましょうか (^◡^)。

獅子ヶ鼻の急斜面を下り,北穂高岳へと続く稜線が大キレット。北アルプス屈指の(というより日本屈指の)難コースですが,いつか行ってみたいなあと思います。

南岳と秋の天の川

振り返ると南岳の頂上に向かう道。カシオペアあたりの「秋の天の川」が行くてに立ち上がっています。少し離れたところにアンドロメダ銀河。

南岳と秋の天の川

南岳と秋の天の川

明日はこの斜面を登って南岳に登り,そこから槍ヶ岳に向かいます。

南岳までは5分程度なので,頂上まで登って撮ればよかったかな。そうすれば槍を前景にした星空が撮れたし。

でも,もう眠かったんだ(笑)。南岳新道がしんどかったしね。まあ機会があれば,また今度。

出発前にも少しだけ星を撮ろう

明け方には冬の星座が昇ってくる季節です。

目覚めたらいい天気。うん,また星空を撮影してから歩き始めることにしよう。

テントを出て,再び常念平に三脚を立てます。北穂高岳の上にオリオン。固定撮影ですが,空が澄んでいるので淡い冬の天の川もよく写りました。

北穂にオリオン

北穂高岳にオリオン

宵の口には夏の天の川を撮っていたのに,一夜明けると冬の天の川を眺めてる。ちょっと不思議な気分です。

北穂のてっぺんに光っているのは,北穂高岳小屋の灯。あちらでもそろそろみんな起き出して,出発の準備を始めているんですね。

大キレットを越えてこちらに来るのか,それとも奥壁バンドを越えて奥穂高岳へ向かうのか。どちらも難コースです。

南岳小屋のテント場と星空

さて,テント場に戻ると,みなさん起き出して,出発の準備をし始めた頃。

この時間帯の,明かりが灯ったテント場の雰囲気が好きです。眠い〜というむにゃむにゃした空気と,さあ出発するぞ!っていうキリッとした雰囲気が交錯するようなこの空気感が。

南岳小屋にて

南岳小屋テント場にて

向こうに見えるスカイラインは双六〜三俣蓮華方面の山々かな。カシオペア座付近の天の川がテント場を照らしています。

低空が明るいのは高山市あたりの街明かりでしょうかね。

さて,僕もテントに戻って出発の準備です。

山行2日目の記録はこちら↓

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横尾の星空

入山2日目,南岳から槍ヶ岳までの稜線を歩き,そのあと横尾まで一気に下りてきました。10時間くらいの行動で結構疲れましたが,せっかくのいい天気なので,少しだけ星を撮ろうかな。

横尾大橋と天の川

はじめに横尾大橋のところに行ってみます。橋を支える柱が,横尾山荘の明かりに照らされています。

橋の上にかかるのは,はくちょう座あたりの天の川。ススキの穂が揺れていて,秋の気配が漂っていますね。

横尾大橋と天の川

横尾大橋と天の川

横尾大橋を渡ると,涸沢を経由して穂高へと道が続いています。このテント場には,明日穂高へ向かう人もいるんだろうなあ。

明日もよく晴れそうですね。

前穂高岳と夏の天の川

ここ横尾は,上高地から歩いて約3時間。槍ヶ岳,穂高連峰,蝶ヶ岳などへ向かう,北アルプス登山の前進基地というべき場所です。

実際,ここからは前穂高岳の東壁を間近に見上げることができます。その前穂高岳を入れて,天の川を一枚。稜線の上に「夏の大三角」が輝いています。

前穂高岳と天の川

前穂高岳と天の川

明日は天の川が立ち上がっている南の方へ,梓川に沿って歩きます。

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山の上の要注意箇所はもう通過し終わったので,リラックスした気分で眠りにつくことができます。

それではシュラフに入って,朝までゆっくり休みましょうかね。

 

おわりに

今回の山行は本当に天気に恵まれて,朝も昼も,そして夜も楽しむことができました。完璧 (^◡^)。

またこんな天気の下で山を歩けるように,日頃の行いを良くしておこうと思います。

 

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【北アルプス】双六岳,鷲羽岳,槍ヶ岳に登ってきました –– その2・双六小屋の星空

前記事「【北アルプス】双六岳,鷲羽岳,槍ヶ岳に登ってきました –– その1・新穂高から双六小屋へ」の続きです。

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双六小屋のテントサイトで眠りについたのですが,23:30頃に目が覚めました。19時にシュラフに入ったから,4時間半くらい眠ったでしょうか。

テントの換気口から外を覗いてみると…おっ,星が出ています。予報通り晴れてきたみたい。

ちょっと外に出て,星空撮影をしましょうかね (^◡^)。

テント場と星空

テントを出てすぐのところに三脚を立てました。シュラフに入った時には曇っていた空も,すっかり晴れています。まず自分のテントを入れて一枚。

テント場と天の川

双六小屋のテント場と星空

星空:12 mm F2,露出20秒 x 2枚スタック (うち1枚はソフトフィルター使用),iso4000
地上景:F2,露出20秒 x 4枚スタック

この時間,夏の天の川は西に傾き始めました。いて座のスタークラウドは,すでに山陰に沈んでいます。

明かりの灯った黄色いテントが僕のおうち。長秒露光なので明るく写っていますが,実際にはごくわずかな明かりです。

双六岳と夏の大三角,天の川

少し時間が経って,双六岳の上に夏の天の川が傾いてきました。風のない穏やかな夜です。

双六岳と天の川

双六岳と天の川

星空:α6400,12 mm F2,露出20秒 x 6枚スタック (うち3枚はソフトフィルター使用),iso4000
地上景:F2,露出30秒 x 4枚スタック

双六岳にベガ,アルタイル,デネブの「夏の大三角」が浮かんでいます。東の空に下弦を過ぎた月が昇り始めて,山肌を照らしてくれました。

今日は夜明け前に,この双六岳に登って御来光を迎える予定です。

双六岳は北アルプスでは珍しく,なだらかな頂上部を持つ山。そんな山の上に浮かぶ織姫と彦星は,リラックスしているようにも見えます。

今回は軽量化のために赤道儀を持ってきていません。そこで固定撮影したものを位置合わせしてから数枚スタック(加算平均コンポジット)し,地上景と合わせて新星景方式で1枚にまとめています(地上部と星空の位置関係は正確です)。

赤道儀で追尾していないので,スタックした時に星が完全に重なりませんが,まあ許容範囲でしょうか。…というか,超広角レンズで撮る分にはこれでいいような気がしてきました(笑)。

秋の星座たち

ここ双六小屋は,双六岳と樅沢岳の鞍部にあります。南の空を見ると,2つの山に挟まれるように,秋の星座がまたたいています。双六池の向こう側,遠くに見えている山は,焼岳かな?

双六小屋テントサイトから秋の星座

双六小屋テントサイトから秋の星座たち

星空:12 mm F2,露出20秒 x 2枚スタック (うち1枚はソフトフィルター使用),iso4000
地上景:F2,露出30秒 x 4枚スタック

秋の星空は寂しい印象がありますが,やぎ座には土星がいて,花を添えています(中央やや上)。

左側の明るい星は,秋の空唯一の一等星,みなみのうお座のフォーマルハウト。その下,山ぎわぎりぎりのところに並んだ2つの2等星はつる座です。この星座は低空が見渡せる山の上でないと,なかなか見ることができませんね。

はくちょう座からカシオペア座にかけての天の川

最後に地上景を入れずに,はくちょう座からカシオペア座にかけての天の川を撮っておきます。

この辺りの天の川は夏から秋への季節の移り変わりを感じさせて,好きなんです。

はくちょう座〜カシオペア座の天の川

はくちょう座〜カシオペア座の天の川

α6400,12 mm F2, 露出20秒,iso 4000, 9枚スタック(うち3枚はソフトフィルター使用)

この手の写真を撮るなら,やっぱり赤道儀で追尾撮影した方が迫力が出ますかね(天の川の淡い部分の写りがいまいちです)。

とはいえ,20秒の短時間露出でも,赤い散光星雲がけっこう写ってますね。今度,望遠レンズを使って北アメリカ星雲をちゃんと撮ってみたいと思います。

画面中央,ケフェウス座のガーネットスターがひときわ赤く輝いています。

 

さて,テントに戻ってもう一眠り

星空撮影を終えたのが午前1時ころ。テントに戻ってもう一眠りすることにします。暖かいシュラフは気持ちいい…zzz。

明日は天気が良さそう。快適な稜線歩きが期待できそうですね。

 

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カリフォルニア星雲 (NGC1499) とプレアデス星団 (すばる, M45) を撮影しました

星の写真を撮っていると,だんだん「赤いやつ」が撮りたくなってきます。散光星雲です。全天には,美しい散光星雲がいろいろあります。一番有名なのはM42,オリオン大星雲でしょうかね。

今回は,以前からトライしてみようと思っていた,ペルセウス座のカリフォルニア星雲の撮影を行なってきました。

カルフォルニア星雲とプレアデス星団を撮りました

カリフォルニア星雲について

カリフォルニア星雲はペルセウス座の足元(西の方),ε星の近くにあって,おうし座のM45プレアデス星団とも近い場所にあります。その形がカリフォルニア州に似ているからこの名があるんだとか。

本来初冬に見やすい天体ですが,この冬の間に撮っておきたくて撮影に行きました。場所はアンドロメダ銀河を撮った時にも行った,南伊豆です。

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強風の中での撮影

カリフォルニア星雲の赤とプレアデス星団の青。その対比を表現したくて,この2つを一緒に入れた構図をとります。

赤道儀のスイッチオン!構図を決めるのにやや手間取って(カリフォルニア星雲は肉眼で見えないからね),22時頃から追尾撮影に入ります。でもこの日はむちゃくちゃ風が強い!カメラが揺れそうです。どれくらい強い風だったかというと,撮影中にレンズポーチを1個飛ばされてしまったくらい。

それでもなんとか撮影を終えて,画像処理しました。

プレアデス星団とカリフォルニア星雲

プレアデス星団(すばる)とカリフォルニア星雲

撮影条件:2022年2月4日 22時〜22時45分くらい α6400+TAMRON 28–75 mm F2.8, 75 mm (フルサイズ換算 112.5 mm 相当), F2.8開放,85秒 x 14 枚スタック(総露光時間約20分),iso 2500

赤道儀で45分くらい追尾撮影したのですが,確認すると風のせいでブレブレの写真を量産していました。

そんなわけで半分以上のカットを捨てざるを得ず,結局使うことができたのは14枚,有効な露光時間は約20分となってしまいました(泣)。

実は使った14枚も,等倍に拡大して見ると星像がちょっとアヤシイ…けどまあヨシとします。

カリフォルニア星雲とプレアデス星団の色の対比がきれいです。星雲の形は…カリフォルニア州というより島根県に似ているような気がしないでもない。

この領域には複雑な分子雲がたくさんあるのですが,それを映し出すには至らず。分子雲をちゃんと写すには,2〜3時間露光しないとダメかもね。

散光星雲は水素原子の発光

水素原子の発光

宇宙空間には水素原子がたくさんあります。水素はビッグバンのあと,宇宙で最初にできた元素ですからね。宇宙にある元素のうち,水素は原子数で93.4%を占めていると言われています(重さでいうと76.9%)。

宇宙空間の水素は長い年月をかけて,その重さによって(万有引力によって)集まっていきます。水素原子の密度が特に高いところではやがて核融合が起こり始め,星が誕生します。

誕生した星の熱や紫外線は周りの水素を照らし,励起状態に押し上げます。最も内側のK殻にある水素の電子が,より外側の(高エネルギーの)電子軌道に叩き上げられるのです。

水素原子の電子遷移

水素原子の電子遷移

高エネルギーの軌道に飛び上がった電子は,直ちに内殻の(低エネルギーの)軌道に落ち込んで行きます。この際,軌道間の差に相当するエネルギーが光として放出されます。軌道間のエネルギー差を \Delta E とすると,放出される光の波長  \lambda \Delta E=h \dfrac {c} {\lambda} で決まります。ここで  h はプランク定数,  c は光速度です。

ここで電子が高エネルギーの軌道から最も内側 (n = 1) の軌道に落ちるときに放出される光はライマン系列と呼ばれ,紫外部の光になります。また n = 2(内側から2番目)の軌道に落ちるときに出てくる光はバルマー系列と名付けられており,可視光となります。

水素原子の発光

水素原子の発光

バルマー系列の光のうち特に強い光は Hα線と呼ばれ,656 nmの波長を持つ赤い光です。散光星雲の赤い光は,バルマー系列のHα線が見えているんですね。

水素放電管

水素放電管

これは水素放電管によるバルマー系列発光の様子です。Hα線による赤い光が見えています。

もうすぐ冬は終わりです

このあとおうし座全体を標準レンズで写して,プレアデス〜カリフォルニア星雲を含む ”星座写真”を撮ろうと思っていたのですが,ここで赤道儀が謎の不調。

固定撮影で一枚撮っておきましょうか。冬の星座が西に沈んでいくところ。

沈む冬の星座

沈む冬の星座

オリオンもおおいぬも低くなりました。冬の天体を撮るのはまた来年です。

夏の天の川が昇ってきます

明け方,もう一度海岸に出てみます。2月初め,明け方には夏の天の川が昇ってきます。これも撮っておきましょう。南東の低空には雲がかかっていますが。

昇る夏の天の川

昇る夏の天の川

これはあまりうまく撮れませんでしたが(天の川が,ちょうど山と雲で隠れてしまいました),証拠写真ということで。画面中央近くに輝いているのは金星です。

この時期は冬の天の川と夏の天の川の両方を見ることができる,おいしい季節ですね。

 

おわりに

夜空は春の星座へとバトンタッチ。「冬のディープスカイチャレンジ」はまた来年ですね。

夜が明けて次の日,下田のご当地グルメ,キンメコロッケを食べて帰路につきました。

キンメコロッケ

キンメコロッケ

 

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冬の星座の見つけ方ガイド:オリオン座からスタートして冬のダイアモンドまで

冬は空気が澄んで星がきれいです。晴れた夜には空を見上げてみましょう。冬の星空は明るい星がたくさんあって,華やかですよ。

オリオンからスタートします

冬の星座の代表は,何といってもオリオン座。冬の星座探しは,オリオン座からスタートです!

オリオン座

オリオン座からスタート!

オリオン座は,1等星2個と2等星5個を含む見事な星座です。星の並びもとても端正です。真ん中に並んだ三つ星とそれを取り囲む4つの星。左上の赤い一等星はベテルギウス,右下の青白い一等星はリゲル。昔の日本では,それぞれ平家星・源氏星と呼ばれていたんでしたっけ。

オリオン座,ふたご座

オリオン座,ふたご座と冬の天の川

ベテルギウスは超巨星で,超新星爆発が間近いんじゃないかとも言われていますね。この星は600光年先にあって,私たちが見ているのは600年前の姿だから,実はもうすでに爆発している可能性もあるんですね。

空が暗いところなら,三つ星の下にもちょっと暗めの星が3つ縦に並んでいるのが見えるかもしれません。これは小三つ星と呼ばれますが,このうち真ん中は実は1個の星ではなく,オリオン大星雲M42です。天体望遠鏡で見ると,淡く広がったガス星雲を見ることができ,感動的です。オリオン大星雲は水素原子が集まって輝いている「散光星雲」で,新しい星が誕生しているところと考えられています。面白いですね!

おおいぬ座,こいぬ座と冬の大三角

おおいぬ座

オリオンの三つ星を左下に伸ばすと,青白く輝く,とても明るい星が見つかります。これはおおいぬ座の一等星,シリウス

冬の星座の見つけ方

図1 冬の星座の見つけ方。以下,この図を見てね

シリウスは全天で最も明るい恒星で,その光度は–1.5等!冬の澄んだ空にギラギラとまたたいていて,その輝きを見ると「冬が来たなあー!」って感じます。

おおいぬ座とうさぎ座

おおいぬ座とうさぎ座

おおいぬ座には,シリウスの他に4個の2等星があります。これらを線で結ぶと,どう猛な犬の輪郭が浮かび上がってきます。

こいぬ座

次にオリオン座のベテルギウスとシリウスを結び,その線を一辺とした正三角形を描いてみます。するとその頂点の位置にも明るい星が見つかります。こいぬ座の一等星,プロキオンです。

ベテルギウス,シリウス,プロキオンで形成される三角形は「冬の大三角」。どうしてこんなにきれいな正三角形が空にあるんだろう?って不思議です。

冬の大三角

オリオン座と冬の大三角

冬の大三角の中には,冬の天の川が流れています。夏に比べると淡いけど,空気の澄んだところに行くと見ることができます。

うさぎ座

おおいぬ座の右,オリオンの下にうさぎ座があります。小さい星座でそれほど明るい星はないのですが,星の並びがまさにかわいいウサギで,見つけやすい星座です。ここにいるウサギは,おおいぬに追いかけられているのかな?

カノープス

おおいぬ座の下の方に,3つの二等星,δ,ε,ηが三角形を作っています。δ星の頂点を三等分して,地平線の方に伸ばしていってみましょう(図1を見てね)。すると南側の地平線がひらけているところなら,地平線ギリギリのところに明るい星が見えるかもしれません。

これはりゅうこつ座カノープス。全天で,シリウスに次いで2番目に明るい星なのですが,日本では低空にあるため,それほど明るく見えません。また東北地方よりも北では,この星は地平線よりも下に位置するため,全く見ることができません。

オリオン座,おおいぬ座とカノープス

オリオン座,おおいぬ座とカノープス

なかなか見えないことから,この星を見ると寿命が延びると古くから言われていて,「南極老人星」なんていう呼び名もあるようです。

南側がひらけているところに行ったら,ぜひカノープスを見つけてみましょう。10年くらい寿命が延びるかもしれませんよ。

 

おうし座とぎょしゃ座

おうし座

さっきは三つ星を左下に伸ばしてシリウスを見つけましたが,今度は逆に右上に伸ばしてみましょう。するとオレンジ色の明るい星が見つかります。これがおうし座の1等星,アルデバラン

シリウスとアルデバラン

三つ星を左に伸ばすとシリウス,右に伸ばすとアルデバラン

アルデバランの周りには,いくつかの星がVの形を作っています。これはヒアデス星団と呼ばれ,雄牛の顔にあたります。ヒアデスから左上の方に二本の長いツノが伸びているのもわかると思います。

おうし座

おうし座

また三つ星を右上に伸ばした線を,アルデバランからさらに伸ばすと,小さな星がごちゃっと固まっているところが見つかります。これはM45 プレアデス星団(すばる)です。空の暗いところでは,目のいい人なら数個の星を分離して見つけることができると思います。

ぎょしゃ座

次におうし座からさらに上の方を見上げてみます(天頂近くになるので仰け反りましょう)。するとおうしの右上の角,エルナト (Elnath) を含めて特徴的な五角形の星の並びが見えます。これがぎょしゃ座。五角形の右上にはひときわ明るい星が輝いています。これは一等星カペラ

すばるとぎょしゃ座

すばるとぎょしゃ座,ペルセウス座

ぎょしゃ座は冬の天の川の中にあり,いくつかの星雲,星団を含んでいます。

ペルセウス座

ぎょしゃ座の右側にはペルセウス座があります。「ペルセウス座流星群」でよく耳にする星座ですが,どちらかというと秋の星座でしょうか。でもこの星座にはカリフォルニア星雲 (NGC1499) や二重星団h-χなど有名な天体が含まれています。

ふたご座

こいぬ座のプロキオンから目を上に向けると,同じくらいの明るさの星が二つ並んでいるのが目に入ります(また図1を見てね)。これはふたご座カストルポルックス。双子の兄弟です(ポルックスは一等星,カストルは1.58等でギリギリ二等星扱いですが,見た目には同じくらいの明るさに見えます)。

ふたご座

ふたご座

カストルとポルックスから左右対称に伸びた星の並びはまさに双子の兄弟。うまく並んでいるものです。この兄弟はその足を天の川に浸しており,カストルの足元には散開星団M35があります。

それからふたご座を語る上で忘れてはいけないのが「ふたご座流星群」ですね。毎年12月中旬に極大を迎え,条件が良ければ1時間に50個以上の流れ星を見ることができます。観測は寒いけどね。

冬のダイアモンドとふたご座流星群

ふたご座流星群

冬のダイアモンド

さて,ここまででオリオン座,おおいぬ座,こいぬ座,おうし座,ぎょしゃ座,ふたご座が出揃いました。これらの星座に含まれる明るい星(一等星)を線で結んでみます(ベテルギウスは除きます)。

天頂近くのカペラから右回りにアルデバランリゲルシリウスプロキオンポルックス,そしてカペラに戻る…と,夜空に大きな六角形を描くことができます。これが「冬のダイアモンド」または「冬の大六角形」です。

冬のダイアモンド

冬のダイアモンド(冬の大六角形)

オリオン座のベテルギウスは,この六角形の真ん中付近にあります。こんなアステリズムが作れるのも,冬の空が賑やかだからこそですね。

 

おわりに

冬の夜は寒いけど,冷え込むほどに空気が澄んで,星がきれいに見えるようになります。白い息を吐きながら,星空を見上げてみましょう。ステキな時間になりますよ。

またそれぞれの星座にまつわる神話があります。それを読むのも楽しいですね。

 

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バーナードループとエンゼルフィッシュ星雲を写したい––南伊豆でオリオン座を真面目に撮ってみた話

前記事「カシオペアとアンドロメダ銀河––南伊豆で Deep Sky の撮影にトライ!」の続きです。

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オリオンをちゃんと撮ってみよう

冬の星空の主役は,なんといってもオリオン座ですよね。星景写真を撮るときでも,冬はどうしたってオリオンを主役にした構図になってしまいます。

でも考えてみると,オリオン座をちゃんと(長い露光時間で)撮ったことって今までなかったなあ。

オリオン座

オリオン座(数年前に短い露光時間で撮ったもの)

オリオン座は1等星2個(ベテルギウスリゲル),2等星5個(ベラトリクス,アルニタク,アルニラム,ミンタカ,サイフ)を含む見事な星座ですが,それだけでなく数多くの散光星雲も含んでいます。

オリオン大星雲M42だけではありません。馬頭星雲燃える木星雲,ウルトラマンの故郷M78星雲,*1  さらにバーナードループエンゼルフィッシュ星雲。見応え(撮りごたえ)のある星雲がたくさんあるのです。

これらの星雲を写し出すには赤道儀で追尾しながら長時間露光する必要があります。*2

南伊豆でそんな撮影にトライしてきたという話です。

*1 正確にはM78星雲は散光星雲ではなく,反射星雲です

*2 赤い散光星雲を写すには天体撮影用に改造したカメラを使うといいのですが,持っていないのでがんばってノーマルカメラで撮ります

昇るオリオンと冬の大三角

12月上旬の午後11時頃。東の空からオリオン座が昇ってきています。まずこれを撮っておきましょうか。

あとで新星景方式の画像処理をしたいので,地上景を撮るために赤道儀を止めて数コマ(露出長め),次に低空を撮るために追尾フレームと同じ露光時間で数コマ,続いて赤道儀を動かしながらソフトフィルターを付けて数コマ,さらにフィルターを外して十数コマ…の予定だったんですが,ソフトフィルターを付けて撮り始めたところで空に雲が広がり始めました。フィルターなしのカットは撮れず。

昇るオリオン座と冬の大三角

昇るオリオン座と冬の大三角

うわわわ。ソフトフィルターを付けたコマだけだと星がボッテリしすぎてちょっと見苦しい。

うーん残念だけど仕方がないですね。天気にはかなわん。

このあと長時間露光でオリオン座をちゃんと撮りたいんですけどね…。

3時過ぎから長時間露光でオリオン座を撮影

スマホでSCW気象予報を観ると,3時をすぎると再び晴れてくる様子。それで仮眠を撮ったあと,また海岸に出てみました。うん,小さな雲が流れてはいるけど,晴れ間が広がっています。

すでに冬の星座は南中を過ぎてオリオンも西に傾いていますが,がんばって撮ってみました。

オリオン座

オリオン

12月5日 3:40–4:20くらい:α6400, Sony 35 mm F1.8 → F2.5, 85秒,  22枚スタック(うち6枚はソフトフィルター使用,他の16枚はスターリーナイトフィルター使用),総露光時間 約31分

突っ込みどころがありまくりですが,バーナードループエンゼルフィッシュ星雲を何とかあぶりだすことができました。

バーナードループはその名の通り,三つ星を取り囲むループ状の星雲。エンゼルフィッシュ星雲はオリオンの頭のところにある,淡くて大きな星雲です。これ,よく見るとちゃんと眼もあって,右を向いたエンゼルフィッシュの形が見えてきます…よね?

またアルニタク(三つ星の一番左)の近くに赤く見えているのが馬頭星雲と燃える木星雲です。

これらの星雲が写ると,オリオン座はいっそうにぎやかですね。

撮影時にはすでにオリオン座の高度が結構低くなっていたので,街明かりによる被りがかなりあり,カブリ補正に難儀しました。それを考慮に入れても画像処理はまだまだ修行が必要です。

またソフトフィルターを使ったコマの数が多すぎるかも。星雲を強調したら輝星の滲みも大きく出過ぎたようです。

このあたりを含めて改善点はたくさんあります。またチャンスがあればトライしてみようと思います。総露光時間ももっと長くとりたいところですね。

 

おわりに

アンドロメダ銀河に続いて,以前から撮りたかった「ちゃんとしたオリオン」。アラはまだ多いけど,今の僕の腕ではこれくらいです。まあ,改善点を含めてこれも「中くらい満足」かな。地上景を絡めた星景写真で,バーナードループを出す…なんてのも撮ってみたいですね。

今回 実はもう一つ,カリフォルニア星雲も撮影したんですが,これは大失敗(どんな失敗をしたかは秘密)。また機会を作ってチャレンジしたいと思います。この冬の間にチャンスはあるかな?…星空は逃げないけど,撮影するには新月期と休日と快晴が重なる必要があるので,意外にチャンスは少ないのです。

また星を撮りに行ったらよく晴れるように,日頃の行いを良くしておこうと思います (^ ^;)

 

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カシオペアとアンドロメダ銀河––南伊豆で Deep Sky の撮影にトライ!

南伊豆の風景

南伊豆にて

伊豆で星を撮ってきました

先週末の新月の夜,南伊豆で星空を撮ってきました。海岸風景の美しいところですが,今回は星空と地上景を絡めた「星景写真」を撮る時よりも,もう少し長めの焦点距離で撮ってみます。赤道儀にがんばってもらって「Deep Sky」に迫りたいのです。

撮影場所と撮影機材

撮影場所は南伊豆・弓ヶ浜海岸

今回は南伊豆町の弓ヶ浜海岸で撮影しました。南伊豆だと石廊崎まで行って星空撮影をする人が多いようですが(条件もそちらの方が良いと思いますが),そこまで行く気合が足りなかった (^ ^;)

 とはいえ,ここでも空はかなり暗く,じゅうぶんに満足できました。

SIGMAの85 mm F1.4 をレンタルで使ってみました

撮影はいつものように 自作のポータブル赤道儀「ふくろう号」を使って,α6400で行いました。

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加えて,マップレンタルで中望遠レンズ,SIGMA 85 mm F1.4をレンタルして持って行きました。結構重いレンズなので,赤道儀に乗せてバランスをとるのに少し苦労しましたが,なんとか追尾撮影をすることができました。

カシオペアとアンドロメダ銀河

12月に入って冬の空になりつつありますが,早めの時間なら秋の星座がまだ空高く見えています。はじめに,カシオペア座とアンドロメダ銀河を同一の構図で撮ってみます。

カシオペア座とアンドロメダ銀河

カシオペア座とアンドロメダ銀河

α6400 + sony 35 mm F1.8 → F2.5, 75秒 x 11枚スタック (そのうち5枚はソフトフィルター使用), iso2500

天の川に浮かぶカシオペアと少し離れたところにアンドロメダ銀河。画面上の端にペルセウス座二重星団h-χも写っています。このあたりの領域は透明感が感じられて好きです。アンドロメダのひとしずく。

アンドロメダ銀河をアップで撮ってみよう

さて,次が本番です。中望遠レンズを使って,M31 アンドロメダ銀河にググッと寄ってみましょう。250万光年先の Deeper Sky へ

M31 アンドロメダ銀河

M31 アンドロメダ銀河

2021年12月4日 22時05分くらい α6400 + SIGMA 85 mm (127.5 mm相当), F1.4 → F2.0, 35秒 x 7枚スタック, iso3200, トリミング

銀河の淡いところまできれいに写したかったので,30枚撮影してスタック(加算平均コンポジット)しようと連続撮影していた…のですが,撮影が終わったあと確認してみると,途中で電池が切れて赤道儀が止まってました。ガックシ。それで7枚しかスタックできなかったというね。

そんなわけで背景が少しノイジーだけど,銀河の渦巻き構造をとりあえず写すことができました。淡く広がった銀河周辺部や,伴銀河のM32M110の存在もよくわかります。ひとまずヨシ!

次回はもっと長い焦点距離のレンズを使って写してみたいですが,また来年の秋にトライですね(自作のポタ赤によるノータッチガイドなので,追尾精度がどこまで出せるかが問題かな)。

ここで雲がかかってきました

赤道儀の電池を入れ替えました。続けて次に撮影したい対象もあったのですが…ここで空に雲がかかって来てしまいました。

むむむ…。あわててスマホでSCW気象予報を見ると,夜半を過ぎて3時くらいになるとまた晴れてくる模様。一旦赤道儀を撤収して仮眠をとります。

3時過ぎだと,まだ冬の星座は撮れるかな?レナード彗星は明け方に見えてくるからそっちは大丈夫そう。

レナード彗星を撮った話はこちら↓

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ここまでのまとめ

以前からいつかトライしようと思っていた,中望遠レンズを用いたアンドロメダ銀河の撮影。赤道儀の電池が撮影途中で切れるというハプニングもあったけど,「中くらい満足」です。

次はオリオンを撮った話。続きます。

(関係ないけど,この記事で200本目です)

 

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レナード彗星 (C/2021 A1) を撮影しました:ちょっとマニアックな話もあるよ

2021年12月5日の明け方,接近しているレナード彗星 (C/2021 A1) を撮影してきました。撮影場所は伊豆の下田です。

この日は(彗星よりも先に)他の天体も撮影したのですが,記録として速報性が必要なのはこっちでしょうから先にアップします。

レナード彗星について

レナード彗星は今年のはじめ,アメリカのGregory J. Leonardによって発見された,非周期彗星です(その名前 C/2021 A1 の "C" は非周期彗星を表しています)。この彗星は双曲線軌道を動いており,二度と太陽の近くに戻ってこないことが明らかになっています。

news.yahoo.co.jp

レナード彗星は12月12日に地球に最も接近し,視等級が4等に達すると予想されています。彗星の明るさの予想は難しく,予想よりも明るくなることもあれば期待外れに終わることもありますが,レナード彗星は今のところ順調に光度を増し,現在は5等級前後の明るさになっているようです。

伊豆・下田で撮影してきました

前置きが長くなりましたが,12月5日の未明に,伊豆・下田の海岸でレナード彗星を撮影してきました。

うしかい座とレナード彗星

彗星は現在うしかい座にあり,明け方に昇ってきます。天文薄明が始まった空に,うしかい座とレナード彗星。

レナード彗星

うしかい座とレナード彗星

撮影データ:2021年12月5日 5時21分頃,α6400 + 35 mm F1.8→ F2,iso 2500, 露出20-35秒 x 8枚スタック(うち5枚はスターリーナイトフィルター使用,3枚はソフトフィルター使用)。

星座線を入れて彗星にラベルを付けたものがこれ↓

うしかい座とレナード彗星

うしかい座とレナード彗星(星座線入り)

青緑色の彗星が,小さいながら尾をたなびかせているのがわかりますかね?

彗星をアップで

続いて85 mm F1.4(フルサイズ換算127.5 mm)を使って,アップで撮った写真を(実際には先の35 mmの写真よりもこちらを先に撮影しています)。

レナード彗星

レナード彗星と球状星団M3

撮影データ:2021年12月5日 5時10分頃,α6400 + SIGMA 85 mm F1.4→ F2,iso 2500, 露出44秒 x 7枚スタック,少しトリミング。

画面中央上に明るく写っているのは,球状星団M3です(縮小する前の写真では,これが細かい星の集まりであることも何とかわかります)。彗星はエメラルドグリーンのコマが印象的です。またこぢんまりした彗星ながら,イオンの尾がかなり長く伸びていることがわかります。写真で見た感じ,6°〜7°くらいありそう(下は白黒反転してコントラストを上げた画像)。

白黒反転

イオンテイルは5°以上伸びています

彗星はこれから近日点通過を迎えるので,その前後からさらに立派なダストの尾をなびかせるといいのですが…(期待しちゃいます)。

彗星の青緑色(ちょっとマニアックな話)

ところで一般に,彗星のコマ(最も明るいところ)は青緑色(エメラルドグリーン)に輝いていることが多いです。レナード彗星も例外ではありません。

これは彗星核に存在する C分子(炭素原子2個が結合してできた化学種)が太陽の光や熱で励起され,これが基底状態に戻るときの発光によるものだと考えられています。C2という分子は不安定ですが,宇宙空間では存在できるのです。この分子は 500 nm前後(緑色の光)に輝線を示すため,このような色に見えるというわけです。

C2分子の分子軌道

C2分子の分子軌道と二重に縮重したHOMO

マニアックな話をすると,C2分子における炭素原子間の結合次数は2で,二重に縮重した \pi結合の軌道がHOMO (最高被占軌道) となっています(ルイス構造式で描くと :C=C: となります)。またこの分子は反磁性です。

あのエメラルドグリーンの核の中には,こんなエキセントリックな化学種がいっぱい詰まっているわけですね(他にもNH2とかCNといった分子が存在すると考えられています)。面白い。

 

おわりに

天文ショーは日食,月食などいろいろありますが,彗星の出現はその中でもロマンティックなものだと思います。立派な尾を引く大彗星,また来ないかな。

とはいえ,昨年のネオワイズ彗星を見ることができなかったので,今回レナード彗星を撮影できて,少しはリベンジできた気分です。

レナード彗星はこのあと近日点通過と地球への接近を控えています。観測条件はやや厳しくなっていきますが,明るさや尾の規模など,どのように変化していくか楽しみですね。

 

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自作ポータブル赤道儀で使える,汎用L型ブラケットを見つけました!【縦構図の星景写真を安定したバランスで撮るために】

また自作赤道儀ネタです。…需要あるのかな?

以前,L型ブラケットを使ってカメラを赤道儀に乗せようとしたのですが…

縦構図で星空写真を撮る際に赤道儀のバランスを安定させるために,汎用L型ブラケットを購入したけどうまくいかなったという話を,以前書きました。

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僕の使っているα6400は,リモートレリーズ(インターバルタイマー)の端子がカメラの左側についているので,L型ブラケットの短辺を左側につけて雲台に縦位置で固定すると,レリーズがつけられなくなってしまうんですよね…。これでは星空撮影はできません。

L型ブラケットを使うとリモートレリーズがつけられない

L型ブラケットを使うと,インターバルタイマーがつけられない!

それでL型ブラケットを逆向きに(短辺が右側に来るように)つけて,レリーズの端子が上になるようにしようとしたのですが("汎用" ブラケットを用いたのはそれが理由)・・・

ブラケットを逆向きにつけられない!

固定ネジの可動域が足りなくて,ブラケットを逆向きにつけられない!

カメラ固定ネジの可動域が足りずに,ブラケットを逆向きにつけることができなぁーい!

ちなみにこの時装着を試みていたブラケットはこちら。

INPON(中国のメーカーかな?)の製品です。軽量なのは良かったんですけどね…残念!

固定ネジの可動域が大きいブラケットを見つけました

ところがその後 Amazon を覗いていたら,固定ネジの可動域の大きそうなブラケットを見つけました。これです。AORO というのがメーカ名なのかな?

おお?これを使ったら赤道儀にカメラを縦位置で載せることができるかも…ということでポチってみました!

例によってプチプチシートで包まれただけの簡易な梱包で送られてきましたが,それは問題ありません。使い方に迷うようなところは何もないし。

開けてみます。やっぱりカメラ取り付けネジの可動域が大きいですね。以前のINPONのブラケットと並べてみるとこれくらい違います。手前が INPON,奥がAORO。

ブラケット2つ比較

ブラケット2つ比較。カメラ固定ネジの可動域が違います

それではさっそくカメラに「逆向きに」付けてみましょう。

ブラケットを逆向きに装着

ブラケットを「逆向き」に装着

うん,バッチリ装着できましたね!

赤道儀に乗せてみます

それでは実際に赤道儀に乗せてみましょう。こんな感じ。

赤道儀に乗せてみました

実際に赤道儀に乗せてみました

こうやって載せると接続ポートが上を向くので,インターバルタイマーがちゃんと接続できますね。

ブラケットをこの向きでつけると,重心が高くなってしまうのが少しだけ気になります。レンズがカメラの中心よりも左側についているため,こうなっちゃいますね。あとブラケット自体の重さも加わるし(このブラケットは160 gで,INPONの91 gよりもちょっと重いのが難点)。

少し重心が高くなる

少し重心が高くなるけど無問題!

極軸にかかる負荷が大きくなりますが,先日赤道儀を改造して剛性が上がったので,今のところ大丈夫な感じかな。

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実はすでに試してみました

というか,実はこのL型ブラケットを使った撮影,すでに一回試してみたんですけどね。

テント場とオリオン

テント場とオリオン@八ヶ岳行者小屋

先日八ヶ岳行者小屋で撮った,テント場とオリオン。この縦構図の写真は,今回導入したLブラケットと自作赤道儀の組み合わせで撮ったものです*1

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この写真は比較的短い露光時間で撮っていますが,赤道儀のバランスを安定させることができるようになったので,次は長時間露光でディープスカイを撮ってみようと思っています。

*1 撮影条件:星空 露出45秒 x 6枚スタック(うち2枚はソフトフィルター使用),地上部 赤道儀を止めて露出を何段階かに変えながら6枚スタック。これらを新星景方式でまとめました(地上部と星空の位置関係は正確です)。

まとめ

そんなわけで,AOROのL型ブラケットを使うことで,赤道儀の上で縦構図を安定させ,なおかつインターバルタイマーを使うことが可能になりました。

自作ポータブル赤道儀のシステムもだんだん完成に近づいて行っています (^◡^)

次の星空撮影が楽しみです。

 

ポータブル赤道儀自作とその運用に関するまとめページはこちら↓

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