sunsun fineな日々

子育てしながら,山を歩いたり星を見たり料理したり写真を撮ったり

ポータブル赤道儀の自作
登山記録・山域別
福島の花と風景
カメラ機材レビュー・写真の理論

【北アルプス】息子14歳と登る白馬岳 (3):白馬の星空

前回の記事「【北アルプス】息子14歳と登る白馬岳 (2):大雪渓を登って白馬の稜線へ」の続きです。

www.sunsunfine.com

白馬頂上宿舎のテント場で,僕と息子は20:30頃シュラフに潜り込みました。この日は登山口の猿倉まで夜行バスで来て,その足で雪渓を登ってきたせいか,2人ともすぐに寝てしまったようです。

けれども普段から寝相の悪い息子は大人しく寝るわけではなく,夜中に僕の上に何度か転がってきました。シュラフに入っていてもそれかい!おかげで目が覚めて,時計を見たら午前1時過ぎ。けっこう寝ましたね。テントの換気窓から外を眺めたら…おお,晴れてる!星がきれいじゃないか。

一気に目が覚めて,そわそわしながら赤道儀の準備を始めます。カメラ,赤道儀,リモートレリーズ。カメラには広角レンズを付けます。三脚はテントの外に置いてあります。爆睡している息子を横目にテントの外に出てみると,満天の星空です。南西から北東の空にかけて,天の川がぐるーっとアーチを描いています。これはすごい!

西に傾く夏の天の川

さっそく赤道儀の極軸合わせをします。そして南天の天の川にレンズを向けました。実はこのためにテント場の一番南側にテントを張ったのです。

夜半を過ぎて,天の川は西に傾いています。いて座のスタークラウドはすでに山の影ですが,夏の大三角を貫くはくちょう座付近の天の川が山の稜線から立ち上がっています。赤道儀で追尾しながら露出90秒で撮影し,6枚スタックしました。

f:id:sunsun_fine:20190814145340j:plain

白馬岳頂上宿舎テントサイトにて 西に傾く夏の天の川

3000 m級の稜線の上で見る空は,さすがに澄んでいます。天の川をくっきりと写すことができました。

昇ってくる秋〜冬の天の川

続いて北東の方角にカメラを向けました。早くもぎょしゃ座やおうし座が昇ってきています。アンドロメダ銀河やプレアデス星団(すばる)も輝いています。こちらは理由あって2枚しかスタックしていないのですが,空が良かったので天の川の淡い領域も結構写りました。カリフォルニア星雲も写っています。

f:id:sunsun_fine:20190814145526j:plain

昇ってくるぎょしゃ座,おうし座と秋〜冬の天の川。画面上にアンドロメダ銀河

この写真を撮った頃には早立ちのグループがヘッドランプをつけて歩き始めていました。早い時間帯のうちに不帰キレットを越えるためでしょうか。それともどこかでご来光を見るためでしょうか。

白馬にかかる天の川のアーチ

最後にテント場全体を入れて,白馬岳にかかる天の川のアーチを固定撮影で撮ってパノラマ合成しました。

f:id:sunsun_fine:20190814145122j:plain

テントサイトと白馬岳にかかる天の川のアーチ。右側の黄色いテントが僕たちのおうち

夜が明けたら,ちょうどこのアーチをくぐる方向に歩いて行って,白馬岳の頂上を目指すのです。

息子にもこの星空を見せたいのです

さて,写真を撮っていると3時を回りました。予定より早いですが,この星空を息子にも見せたいので「星がすごいよ」と起こしてみます。すると息子はテントから顔を出し,「わぁー!」と言いながらしばらく空を眺めていました。半分寝ぼけながらでしたが,星のまたたきをちゃんと見ることができたでしょうか。

それにしても素晴らしい星空でした。赤道儀を担ぎ上げたかいもありました。ペルセウス座流星群に属すると思われる流れ星もいくつか飛んでいました。

空が白んできました。カメラを撤収して,僕もテントに戻ります。そしてもう一度シュラフに入って20分くらい温まりました。そしてまたいびきをかいていた息子も起こして,朝のコーヒーを淹れました。

朝ごはんを食べたら,今日は白馬岳の頂上にアタックです!

続きはこちら ↓

www.sunsunfine.com

そうだ,赤道儀作ろう!(その1):予算500円で作る手動ポータブル赤道儀

以前,「固定撮影で星空を撮ろう」という記事を書きました。空がきれいなところなら,固定撮影でも十分にきれいな星景写真が撮れると思います。でも撮っているうちに,「もっと暗い星まで写したい」「天の川をもっと淡いところまでくっきり写したい」と思うことがあるかもしれません。

また固定撮影ではカメラのiso感度をかなり上げて撮影するので,カメラによってはノイズが気になることもあります。ノイズを減らすためにiso感度をあまり上げずに,星をたくさん写したいこともあるでしょう。

これらのことを実現するためには,より長い露光時間を取る必要があります。固定撮影では20〜25秒くらいが露光時間の限界ですが(これ以上シャッターを開けていると,星が線になって写ります),これより長い露光時間を取った上で星を点として写すためには,カメラを星の日周運動と同じ速さ(1日一回転)で回してやる必要があります。この目的で用いる道具が赤道儀です。

赤道儀を作っちゃおう!

赤道儀は様々なものが市販されていますが,それなりに高価です。そこで,ここはひとつ自作してしまいましょう。予算は500円!ただし手動のポータブル赤道儀(略してポタ赤),しかも木製です。

ゆっくりゆっくり動いて一日で一回転する星に正確にカメラの動きを合わせる…と考えると,難しそうに思えますが,実際にはかなり簡単な装置でこれを実現することができます。

どうやって星を追尾するか–––タンジェントスクリュー

赤道儀を作るためには,まず「一日一回転」をどうやって実現するかを考えなくてはなりません。これには「ウォームギア方式」と「タンジェントスクリュー方式」の2通りがあるのですが,ここではよりシンプルな後者のやり方で行きます。タンジェントスクリュー方式…名前は何やら難しそうですが,その構造は実にシンプルです。

ここではその原理を解説する前に,まず全体図を示すことにします。図のように二枚の木の板A, Bがボルトでとめられており,板Aはこのボルトを軸として回転することができます。また板Bにはナットが埋め込んであり,このナットを通っている小ねじをねじ込んでいくことで,板Aを押して回転させてやります。

f:id:sunsun_fine:20190715213922j:plain

赤道儀の全体図。板Aは板Bに極軸ボルトで止まっていて,駆動ネジで押されて回転する

ここで大切なのは回転軸のボルト(以下,この回転軸を“極軸”と呼びます)と板Bに埋め込まれた小ねじ(以下,この小ねじを“駆動ネジ”と呼びます)との距離,および駆動ネジのピッチ(ネジ山の間隔=ネジが一回転する間に進む距離)です。極軸と駆動ネジの距離をa,駆動ネジのピッチをbとした場合,駆動ネジを一回転させると,その間に板Aが回転する角度θは,tanθ = b/a で与えられます。

f:id:sunsun_fine:20190715221841j:plain

極軸と駆動ネジの距離をa,駆動ネジのピッチをbとした場合,駆動ネジを一回転させると,その間に板Aが回転する角度θは,tanθ = b/a で与えられる

さて,星は一日に一回転,つまり360°回転するので,1分間に回る角度は360 ÷ 24 ÷ 60 = 0.25° です。ですからb/aの値が tan 0.25° = 0.00436 となるようにaおよびbの長さを決めてやれば,駆動ネジを1分間に1回転させることで,板Aが星と同じ速さで回転することになります。このとき板Aにカメラを取り付けておけば,カメラが星と同じ速さで回転するのです。

ところでねじのピッチはjis規格で決まっています。例えば直径6 mmのネジのピッチは1.0 mm,5 mmφのネジのピッチは0.8 mmです。ですから駆動ねじとして直径6 mmのネジを使った場合は,aの長さを 1.0/0.00436 = 229 mm にすれば,駆動ネジを1分間に1回転させることで星の追尾ができることになります。直径5 mmのネジを使うなら,aの長さを 0.8/0.00436 = 183 mm にすればよいということですね。

赤道儀を具体的に設計します

ということで基本的な考え方は決まりました。次は具体的な設計です。

ここでは駆動ネジとして5 mmφ (ピッチ0.8 mm) のネジを使いました。この場合極軸と駆動ネジの距離が183 mmとなりますから,赤道儀全体の長さも25 cm 程度に収まります。これだけコンパクトなら,山に担ぎ上げて星を撮るのも楽ですね。

f:id:sunsun_fine:20190716020359j:plain

赤道儀設計図。極軸-駆動ネジ間の距離は正確に

大雑把な設計図を上に示します。赤道儀は,部材A, B1, およびB2の三枚の板からできています。サイドを斜めにカットしてあるところや上部を丸くしてあるのは趣味の問題なので,手間をかけずに作るなら長方形の板2枚を組み合わせるような形状でも問題ありません。

必要な材料と道具

材料

木部には 1 x 4(ワンバイフォー:厚さ19 mm, 幅90 mmの規格です)のSPF材を使います。長さは60 cmあれば十分です。多分これが一番安い木材ですが,手元にベニヤ板などがあれば,それを使ってもいいでしょう。

金属部品で必要なものは

  • 極軸となる6 mmφボルト(長さ50 mm)とナット各1,ワッシャーx2
  • 駆動ネジとなる5 mmφボルト(長さ50 mm)とナット各1,袋ナットx1,ワッシャーx2
  • 駆動ネジを受ける鬼目ナット(内径5 mm)x1
  • 木ネジ数本
  • 1/4インチボルト(長さ25 mmくらい)x1
  • アルミ板(3 mm厚)50 mm x 50 mm 程度1枚
  • L字型金具 x1
  • 太さが2〜3 cmで長さが12 cmくらいの塩ビチューブ x1。

これらは全てホームセンターに行けば手に入ると思います。木材が100円くらい,金物類が400円くらいで揃うでしょう(僕は,手元にあった木材を使ったので,350円くらいで作れました)。

工具

ノコギリ,電動ドリルドライバーが必要です。僕はかんなも使いましたが無くてもできます。他にサンドペーパーがあると仕上がりがきれいになります。それから鬼目ナットを木材にねじ込む際に,六角レンチを使います。

それでは作りましょう–––部材の加工

まず設計図にしたがって,部材A,B1およびB2を切り出し,穴を開けます。ここで,板Aに駆動ネジの頭が当たる面および板B1にB2を取り付ける面(設計図に赤で示したところ)はできるだけ正確な平面になるように気をつけます。僕はここを切るときにはソーガイド(ノコギリ用の定規みたいなもの)を使いました。また極軸と駆動ネジが通る穴の位置は,正確にする必要があります。

部材B2に開けた穴(設計図で8 mmΦになっているところ)に,駆動ネジを通すための鬼目ナットをねじ込んで固定します。この穴のサイズは,鬼目ナットの袋に書いてあります。

f:id:sunsun_fine:20190715162416j:plain

これが鬼目ナット。内側にはボルトを通すための雌ネジが切ってあり,外側には木材にねじ込むための雄ネジが切られている

僕が使った鬼目ナット(5 mmφボルト用)の場合,これをねじ込むための穴の直径は7.7ー8 mmと指定されていたので,それに合わせて板B2に 8 mmφの穴を開けました。そして木工用ボンドと木ネジで,B2を板B1に取り付けます。

f:id:sunsun_fine:20190715161834j:plain

部材B2に鬼目ナットをねじ込み,木ねじでB1に固定します

駆動ネジには,これを回すためのハンドルを取り付けます。このハンドルにはインスタントコーヒーのふたを使いました。またこのハンドルには,60°ごとにビニールテープで印を付けておきました。これで10秒に一目盛の速さでハンドルを回せば1分間に一回転です。

f:id:sunsun_fine:20190715162958j:plain

駆動ネジにはハンドルとしてコーヒーのフタを取り付けました

L字金具には木の切れ端を瞬間接着剤で貼り付けました。ここに極軸望遠鏡がわりの塩ビチューブがつくことになります。

f:id:sunsun_fine:20190715165131j:plain

L字金具に板の切れ端を接着しておきます

もう一つ,アルミ板には真ん中に穴を開け、1/4インチのタップを切っておきます(あとで述べるように,カメラ用三脚に取り付けるためです)。僕はこの時1/4インチサイズのタップが手に入らなかったので,6 mmの穴を開けて,そこに1/4インチボルトを力ずくでねじ込んで雌ネジを切りました。

組み立て

組み立ては特に難しいことはありません。写真を見ていただければわかると思います。L字金具,部材AおよびBを極軸となるボルトで束ねて,板Bの鬼目ナットに駆動ネジを通します。

f:id:sunsun_fine:20190716172730j:plain

全体図。組み立ては簡単です

駆動ネジの頭には,部材Aへの当たりが滑らかになるように,袋ナットを付けておきました。またAの駆動ネジが当たるところにはテレホンカードの切れ端を瞬間接着剤で貼り付けました。

f:id:sunsun_fine:20190715164236j:plain

駆動ネジと部材Aのあたりがスムーズになるようにします

また部材A,Bの先端には小さな木ネジをねじ込んで,これに軽く輪ゴムをかけておきます。

f:id:sunsun_fine:20190715155353j:plain

部材A, Bの先端に輪ゴムをかけます

最後に1/4インチの雌ネジを切ったアルミ板を,板Bの裏側に木ネジで固定します(カメラ三脚に取り付けるため。カメラ雲台には1/4インチのネジがついているのです)。

f:id:sunsun_fine:20190715160216j:plain

1/4インチの雌ネジを切ったアルミ板を取り付けます

これで完成です。材料の切り出しから組み立てまで,だいたい3時間もあれば出来ると思います。

もし塗装するなら,趣味に応じて好きな色のペンキなりニスなりを塗ってもよいでしょう。僕はメジロの絵を描いて(下手くそというツッコミはなしで),オイル塗装しました。…というわけで,この赤道儀は「メジロ号」と命名されました (^^)

使い方

現地に着いたらまず赤道儀をカメラ三脚に取り付け,赤道儀にはカメラ雲台を取り付けます。そしてL字金具に,塩ビ管を輪ゴムなどで取り付けます。これでこの塩ビ管は極軸と平行になります。これを極軸望遠鏡として使うのです。

f:id:sunsun_fine:20190715221139j:plain

極軸望遠鏡代わりの塩ビ管で北極星を導入して極軸を地軸と平行にし,ハンドルを1分間に1回転の割合で回すと星の動きが追尾できる

次に北極星を探しましょう。極軸望遠鏡の視野の中心に北極星が入るように,赤道儀の向きを調整します。これで極軸と地球の回転軸が平行になります。以上で赤道儀のセッティングは完了です。

カメラを乗せて撮りたい方向に向けます。撮影モードはB(バルブ)。カメラのシャッターを開いたら,追尾開始です。時計とにらめっこしながら,1分間に一回転(10秒間に一目盛)の速さでハンドルを回してやります。カメラに振動を伝えないように,そーっと滑らかに回すのがポイントです。時間が来たらシャッターを閉じて,追尾終了。

作例

こんな簡単な赤道儀ですが,それなりにちゃんと写ってくれます。作例をいくつかあげます(撮影の時の設定も一緒に載せておきます)。

 奥秩父の稜線で見た夏の大三角と天の川

f:id:sunsun_fine:20190704104320j:plain

18 mm, F3.5, iso 1600, 露光時間6分
 ケフェウス座付近

f:id:sunsun_fine:20190704104427j:plain

18 mm, F3.5, iso 1600, 露光時間5分 奥秩父にて
 わし座 @奥秩父の稜線にて

f:id:sunsun_fine:20190715160536j:plain

24 mm, iso 1600, F4, 露光時間270秒,ソフトフィルター使用
 プレアデス星団(すばる)とラブジョイ彗星

f:id:sunsun_fine:20190704104643j:plain

103 mm, F5, iso 3200, 露光時間2分30秒

ね?ちゃんと写るでしょう?

撮影中は修行僧のように,じーっとハンドルを回し続ける必要があるのが難点ですが (^-^;)

 

おわりに

以上,手動赤道儀メジロ号の製作記録でした。これが僕の赤道儀1号機なのですが,実はこれよりもずーっと前(遠い目),中学生の時にも木製の手動赤道儀を作ったことがあるので,正確にいうと2台目になります。さらにこの後,自動追尾型の赤道儀2号機「ふくろう号」を作って,今は主にそちらを使っています。

でも手動追尾型赤道儀は製作もそれほど難しくないですし,安上がりです。そして気軽に持ち運ぶことができて,簡素な作りの割には,結構よく写ってくれます。星の写真を撮るためのちょっとした工作としては,悪くないんじゃないかと思います。夏休みの工作としてオススメですよ。

ふくろう号の製作記も,そのうちに書きたいと思います。

 

関連記事

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

 

七夕の夜に

今夜は七夕です。でもあいにく梅雨時で,どんよりした天気が続いています。

この週末は新月期ということもあって,梅雨の晴れ間があったら山に行きたいと思っていましたが,やっぱり晴れないようです。織姫と彦星は一年に一度の逢瀬を楽しむことができているでしょうか。

僕の生まれ育った北海道では,ひと月遅い8月7日が七夕の日でした。仙台の七夕祭りも8月上旬ですね。小さい頃「北海道は寒いから七夕を遅くするんだ」と聞いたのですが,本当のところはどうだったのでしょうか。梅雨がない北海道でこそ7月7日を七夕にして,みんなで空を見上げるのがいいような気がするのですが (^ ^;)

一昨年の記録を見ると,6月の新月期に梅雨の晴れ間があり,僕は奥秩父の山に登っています。笠取小屋でテント泊をして,夜中に天の川の写真を撮りました。南天の低空には雲があって,天の川中心のいて座方向の眺めは今ひとつだったけど,天頂に近い織姫・彦星の方はきれいでした。

f:id:sunsun_fine:20190707030828j:plain

一昨年の梅雨の晴れ間,奥秩父の稜線で見た織姫・彦星付近の天の川

そのあとの自分のツイッターを見ると,この年は7月7日も快晴だったようです。その日は都内の自宅にいたので天の川は見られなかったようですが。

七夕は天の川で隔てられた織姫と彦星が,一年に一度カササギの作った橋を渡って会うことができる日でしたっけ。都内では天の川が見えないので,織姫と彦星もフリーパスで会えるんでしょうか。

f:id:sunsun_fine:20190707110504j:plain

織姫はこと座のベガ,彦星はわし座のアルタイルです

さて,織姫はこと座のα星ベガ。そして彦星は,わし座のα星アルタイルです。ベガとアルタイルに加えて,はくちょう座のデネブの3つの星で形成されるのが夏の大三角です。

f:id:sunsun_fine:20190707144803j:plain

夏の大三角(入笠山にて)

夏の夜空は南天のさそり座・いて座(天の川銀河の中心)から夏の大三角にかけて,特に濃い天の川を見ることができて豪華です。

f:id:sunsun_fine:20190707122654j:plain

いて座〜わし座にかけての天の川。低空に雲がかかっていますが@奥秩父

だから春から夏にかけては,きれいな星空を見たくて新月期になるとそわそわしてしまいます(春先でも夜半過ぎになると,夏の天の川が昇ってくるのです)。6月から7月にかけては夏の天の川が見やすい時期だと思うのですが,この時期が梅雨に当たるのは残念ですね…まあこればかりは仕方がありませんが。

f:id:sunsun_fine:20190501165927j:plain

春先でも夜半過ぎになると「夏の天の川」が昇ってきます

そうそう,「ベガとアルタイル」といえば「仮面ライダー電王」です。僕の息子が幼稚園の頃,一緒に夢中になって見ていました。これは本当によくできた作品だったと思います。仮面ライダー電王に出てくる悲劇のライダー,ゼロノスには「アルタイルフォーム」と「ベガフォーム」がありました。そしてゼロノスを支える相棒はデネブ。物語のモチーフとしてペルセウス座流星群も出てきましたね。主人公・良太郎(初主演の佐藤健くんが演じていました)のお姉さんが経営する喫茶店には,レトロな感じの天体望遠鏡が’飾られていたりしました。なつかしいです。

予報では今夜も晴れないようです。でも雲の上で,織姫と彦星が一年に一度のデートを楽しむことができていますように。

ささの葉さらさら〜♪

 

天体望遠鏡とスマホで月を撮影する!

以前「星空の写真を撮ろうよ」という記事の中で,「月の照っている夜は空が明るいので星空の写真は撮りにくい。月のない夜が狙い目!」ということを書きました。それでは月の夜は楽しみがないのでしょうか?

…そんなことはありません。月の夜は,月を撮ればよいのです (^ ^)

月の写真は,カメラに望遠レンズをつければ比較的簡単に撮れます。でも天体望遠鏡があると,もっと迫力ある写真が撮れます。それもスマホのカメラできれいに撮ることができるのです。

f:id:sunsun_fine:20190613233005j:plain

月は天体望遠鏡とスマホの組み合わせできれいに撮れます

ここでは主に,望遠鏡とスマホを使った月の撮影方法について書いてみたいと思います。また望遠鏡を使わない月の写真についても少し触れます。

用意するもの

  • 天体望遠鏡(屈折式でも反射式でもOK)
  • スマホ

以上です。天体望遠鏡はそんなに大型のものでなくても十分きれいに撮れます。

f:id:sunsun_fine:20190613235107j:plain

11 cm反射望遠鏡とiPhoneの組み合わせで撮っています

そして月は明るいので,星空の撮影と違って,都市部でも十分に楽しめます。実際,僕は自宅(東京都内)のベランダで月の写真を撮っています。

撮り方

  1. 望遠鏡を月に向けて,望遠鏡のピントを合わせます
  2. スマホのカメラを起動し,接眼部(望遠鏡を覗くところ)に押し当てます
  3. スマホの画面に月が表示されるので,その月をタップします。するとカメラのピントと露出を,スマホが自動的に合わせてくれます
  4. スマホのシャッターボタンを押します

これだけです。とても簡単。

f:id:sunsun_fine:20190614160728j:plain

こんな感じで撮ります

僕は望遠鏡を押入れから出してベランダに設置し,写真を撮って片付けるまで,15分くらいで済ませてしまうこともあります。晩酌してたら月がきれいだったので,ちょっと望遠鏡を出して撮ってくるなんてことも。

撮った写真はパソコンに転送し,適当にトリミングします。フォトショップなどの画像処理ソフトがあれば,アンシャープマスクを軽くかけると見栄えが良くなります。

「半月」が狙い目

月面のクレーターが最もきれいに見えるのは,太陽の光が横から当たる半月の時。欠けぎわの陰影がはっきりと映し出され,とてもきれいです。

これは上弦の月。欠けぎわに現れる「X」の形の輝きは「月面X」と呼ばれることもあります。

f:id:sunsun_fine:20190614002033j:plain

上弦の月。欠けぎわのクレーターの陰影が際立ちます

下弦の月を撮ると,上弦と同じ欠けぎわの反対側を写すことができます。

f:id:sunsun_fine:20190613234810j:plain

下弦の月。上弦の月の反対側が写ります

三日月や満月にも,それぞれの味わいがあります。いろんな月齢の月を撮ってみると面白いと思います。

満月の時には欠けぎわのクレーターは写りませんが,光条(ティコ,コペルニクスなどのクレーターから走る光の筋)がきれいです。

f:id:sunsun_fine:20190613234458j:plain

満月の時は光条がきれいです

また望遠鏡の倍率を上げて同様に撮ると,欠けぎわのクレーターをアップで撮影することができます。月面の上を飛んでいるような気分になれますね。

f:id:sunsun_fine:20190614013243j:plain

望遠鏡の倍率を上げて,欠けぎわをアップで撮ってみました

月が関わる天文ショーも撮れます

星食(明るい星が月の向こう側に隠れる現象)や月食などの天文ショーも,同じやり方で撮影できます。皆既月食の赤い月面もちゃんと写ります。

f:id:sunsun_fine:20190614001016j:plain

皆既月食の赤い月

また月食は望遠鏡を使わずに,ある程度の望遠レンズを使って撮影しても面白い写真が撮れます。これ↓は月食の時に月が地球の影に入っていく様子を撮影して,比較明合成したものです。

f:id:sunsun_fine:20190613202459j:plain

月が地球の影に入っていくよ 皆既月食 2018年1月31日

皆既月食の時には空が暗くなるので,月の近くの星が見えてくるのも面白いですね。この写真は,2014年10月8日の皆既月食の時に見えた天王星です。

f:id:sunsun_fine:20190613202925j:plain

皆既月食中の月と天王星 (Uranus)

僕が天王星を見た(撮った)のは,この時が初めてでした。

木星や土星だって撮れちゃう

全く同じやり方で,天体望遠鏡とスマホを使って木星や土星を撮ることもできます。専門的にやっている人の写真には遠く及びませんが,木星の縞々や土星の輪など,それなりにちゃんと写ります。

f:id:sunsun_fine:20190613231754j:plain

望遠鏡+スマホで撮った木星と土星

普通のカメラで月を撮るには

天体望遠鏡を使わずに月を撮る時は,望遠レンズを使うことが多いでしょう。オートフォーカスが効くかどうかは,月齢(月がどれだけ明るいか)とカメラによると思います。AFが効かない場合はマニュアルフォーカスによるピント合わせが必要になるので,少しだけ手間がかかります。

それから露出はカメラ任せにすると,背景の夜空が暗いので,月が白く飛んでしまうことが多いです。露出と絞りを手動設定にして,写り具合を確かめながら何枚か撮ってみるとよいと思います。

f:id:sunsun_fine:20190613203433j:plain

満月でボウリング!

ちなみにこの写真はiso 200, 絞りF8, 露出1/320で撮っています(満月とボウリング場の看板で遊んでみました)。

月の女神,アルテミス

月はギリシア神話でアルテミス。狩猟・貞潔の女神でもあります。

夕空や明け方の空に見える月は,時々ハッとするような光景を見せてくれます。

金星と接近して見えたり

f:id:sunsun_fine:20190613203906j:plain

明け方の三日月と金星の接近 トルコの国旗から,星が散歩し始めたみたいです

地球照(細い三日月の時に,月の太陽に照らされていない面が,地球からの照り返しによって見える現象)を見せたり。

f:id:sunsun_fine:20190613202304j:plain

地球照の月と金星

上の2枚は望遠鏡を使って撮ったものではありませんが,撮影方法に関わらず,月は面白い撮影対象だと思います。

 

おわりに

星を撮っていると新月期が待ち遠しいものですが,月が照っている時でも楽しみはあります。望遠鏡が必要とはいえ,手のひらに収まるスマホで月がきれいに写せるなんて,なんだか不思議です。

f:id:sunsun_fine:20190613203314j:plain

薄雲がかかった月を撮るのも面白いです

あ,そうそう,スマホを使わずに,望遠鏡と一眼カメラの組み合わせで月を撮ってはダメなのかって?もちろんそれでもOKです…というか,その方がきれいに撮れると思います。でもベランダで撮影してるのに,カメラを持ち出すとお手軽さが少し減ってしまいます。そして何より,望遠鏡にカメラを押し当てる際に,接眼部がゴチンと当たってカメラのレンズに傷をつけてしまいそうなのがコワイです。それで僕はスマホを使って撮っているのです。今のところ,これで十分に満足しています。

今回書いた,スマホを使った月の撮り方は,天体写真としては「コリメート法」と呼ばれるやり方になります。月の撮影法は他に「直焦点法」や「拡大撮影法」などもありますが,そちらは専用の器具が必要で,僕もやったことがありません。

f:id:sunsun_fine:20190614161346j:plain

月はいろんな表情を見せてくれます

みなさんも月を撮ろうよ。

 

関連記事

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

 

星空の写真を撮ろうよ–––固定撮影編

街灯のない山間部に行って夜空を見上げると,満天の星空に感動してしまうことってありますよね。あの星空を写真に収めたいと考えたことはないでしょうか。

星空の撮影は,パシャッ!と撮っておしまいとはいかない面があるのですが,ポイントを押さえれば誰にでもできます。

固定撮影と追尾撮影

星空の撮影方法には,大きく分けて「固定撮影」と,赤道儀を用いた「追尾撮影」とがあります。

固定撮影とは,カメラを三脚に固定して星空を撮影する方法です。星の光は弱いので,カメラのシャッターを長時間(後で書きますが,20秒とかそれくらい)あけておく必要があるのですが,カメラを手で持ったままきっちり固定し続けることは無理なので,三脚を用いるのです。

ところで星は日周運動により動いています。この動きは思いのほか速く,シャッターをあまり長く開け続けていると,星は点ではなく線となって写ります。固定撮影の場合,星を点として写すことができる露光時間は,レンズの焦点距離にもよりますが,20〜25秒程度が限界です。

f:id:sunsun_fine:20190601165836j:plain

落葉松林にオリオン @奥多摩・雲取山にて カメラを三脚に固定して撮影

星空の撮影において,より暗い星まで写したり,淡い天の川をきれいに写したりするためには,さらに長い時間シャッターを開けておきたくなります。より長い露光時間を確保しつつ,なおかつ星を点として写すためには,カメラを日周運動と同じ速さ(一日一回転)で回してやる必要があります。これが追尾撮影で,この撮影法に用いるのが赤道儀です。

固定撮影をしよう:必要なもの

今回はより簡単な,固定撮影のやり方を書いてみたいと思います。星の日周運動を写したぐるぐる写真も固定撮影の応用でできます。

必要なもの

  • カメラ(一眼レフやミラーレスなどマニュアル撮影ができるもの)
  • 三脚(しっかりしたものの方が良いですが,お手持ちのものがあればそれを使ってみましょう)
  • 懐中電灯(暗闇での撮影になりますので,手元を照らすために必要です)
  • 夏なら虫除け,冬なら防寒具(星空撮影には時間がかかりますので,ぜひ)

以上です。他にルーペ(百円ショップで売ってる安いものでOK)もあると,なお良いです。

レンズは普段使っているもので撮ってみましょう。一眼カメラに「キット」として初めからついているのは,APS-Cのカメラなら焦点距離が18 mm–55 mmくらい,F値が3.5–5.6くらいのものが多いでしょうか。

f:id:sunsun_fine:20190601174200j:plain

18–55mm, F3.5–5.6 のキットレンズで撮った雲海と天の川 @奥秩父の稜線で

もしあなたが,もっと明るくて(F値が小さくて),より広角の(焦点距離の短い)レンズを持っていたら,素晴らしい!そのレンズを使いましょう。

カメラの設定・その1

カメラの設定ですが,まず以下のようにします。

カメラの設定・その1
  • 撮影モード マニュアル撮影
  • フォーカス合わせ マニュアルフォーカス
  • ドライブモード セルフタイマー
  • 手ぶれ補正 OFF
  • ファイル記録方式 rawまたはraw + jpegがお勧め
  • ズーム お好みですが,はじめは最も広角にするのがお勧め

露光時間や絞りは自分で決めてやる必要があるのでマニュアルモードで撮影します。また星の光は弱くてオートフォーカスが効きませんので,MFでピント合わせを行います。それからシャッターを押したときにカメラがぶれないようにセルフタイマーを使います(リモートレリーズを持っている人は,それを使えばセルフタイマーにする必要はありません)。手ぶれ補正はOFFで。

f:id:sunsun_fine:20190601211509j:plain

星の写真を撮るときは,撮影モード「マニュアル」で

また後に書くように,星空写真はレタッチが必要になる場合が多く,レタッチ耐性を確保するためにrawで撮っておくのがお勧めです。気楽にjpegで撮って出しがダメというわけではありませんが。

カメラの設定・その2

問題はどれくらい光を取り込んでやるかです。これは撮影場所がどれくらい暗いかによって変わってくるのですが,もし撮影場所が市街地から十分に離れていて,満天の星が見える!という状況なら,はじめは以下の設定で撮ってみることをお勧めします。

カメラの設定・その2
  • iso感度 4000〜6400
  • 絞り 開放(F値を一番小さい数値にする)
  • 露光時間 20秒

あとで書くように,この設定で撮った結果を見て,設定を調整することもあります。

なおこれらの設定を暗闇で全部行うのは大変ですので,明るいところで済ませておくのが吉です。

ピント合わせ。がんばりましょう!

現地に着いたら三脚を立て,カメラを取り付けます。そして最初に行うのがピント合わせです。個人的にはここが最大の難関だと思います。

距離目盛が書いてあるレンズの場合(マニュアルフォーカスのレンズだと書いてある場合が多いですね),これを∞(無限大)に合わせれば大体OKです。問題はオートフォーカスのレンズで,距離目盛がない場合です。

この場合は,まず一番明るい星にカメラを向け,画面の真ん中に入れます(一眼レフカメラの場合はライブビューにします)。そしてフォーカスリングを回してみましょう。最近のカメラだとMFモードでフォーカスリングを回すと,背面液晶に画面中央が拡大されて表示されるものが多いと思います。この状態でフォーカスリングを回し,星の像が最も小さくなるようにします(僕はこの際,背面液晶をルーペで見ながらピント合わせを行なっています)。

もし遠くに街明かりが見えたら,それにピントを合わせてもいいと思います。街灯はたいてい星よりも明るいので,その方が楽かもしれません。

f:id:sunsun_fine:20190601165004j:plain

国師ヶ岳から昇ってくる冬の星座たち @大弛峠にて

撮ってみましょう

ピント合わせが終わったら,カメラを撮りたい方向に向けましょう。星座がわかる人は,星座が途中で切れないような構図にすると違和感のない写真になると思います。冬だったらオリオン座を中心にするとか,春だったら北斗七星を画面に収めるとか。冬の大三角や夏の大三角を中心に撮ったりするのもいいですね。

夏の夜なら天の川がはっきりと見えているかもしれません。南天から天頂にかけて,薄い雲の帯のように見えるのがそれです。まさにMilky Wayです。そちらにカメラを向ければ,天の川は目で見た感じよりもハッキリと写って,素敵な写真になります(20秒程度の露光の間に光がセンサーに蓄積されるので,目で見るよりも,天の川の淡いところまで写るのです)。

f:id:sunsun_fine:20190601164407j:plain

固定撮影でも空の状態が良いと,天の川がこんなに写ります。はくちょう座付近の天の川 F2, iso 6400, 25秒 @八幡平市

さそり座など低空の星座を撮る場合,地上景も一緒に写ります。その場合はカメラの水平をとっておきましょう。地上景が傾いていると,なんだか気持ち悪い写真になりますので。

…と書きましたが,暗い夜空をファインダーや背面液晶で見ても,星座や天の川の位置はハッキリわからないことが多いと思います。ですので,おおよその方向にカメラを向けて撮影し,撮れた写真をモニタで確認して構図を微調整して…の繰り返しになることがほとんどです。この段階で結構時間がかかります。頑張りましょう。

構図が決まったら,気合を込めて一枚。

撮った写真をチェックしてみよう

「気合を込めた一枚」が撮れたら,その写真を背面液晶モニタで見てみましょう。その結果を見て,必要なら設定を変えてまた撮ります。

空が明るく(白っぽく)飛んでいたら→iso感度を下げます。もともと6400で撮っていたなら4000とか3200とかに。それでもダメなら1600とか800とか。

空がまだ結構暗く写っていたら→露出時間を25秒にしたカットも撮っておきましょう。

空の暗さは場所によって様々ですので,最適な設定をトライ&エラーで見つけられたらいいですね。何度か撮っているうちに,自分なりの設定が見つかってくると思います。

なお,暗いところで液晶モニタを見ると明るく感じるので,「空が明るく写り過ぎた!」と思っても,そのカットは消さないでおくことをお勧めします。あとであらためてパソコンの画面で見たらけっこう良かった,なんてこともあります。

Tip: ソフトフィルターを使おう

デジタルカメラで星の写真を撮ると,星がシャープに写りすぎて,星座がわかりにくくなることがあります。そこでソフトフォーカスフィルター(例えばケンコーのプロソフトンA)を使うと,明るい星がにじんで大きく写り,星座の形がはっきりします。ソフトフィルターの使用は,結構好みが分かれるんですけどね。

f:id:sunsun_fine:20190601163750j:plain

ソフトフィルターを使ってオリオン座を目立たせました @大弛峠

レタッチが必要になることもあります

星空写真は撮ったらそれで終わりになることは少なく,レタッチして仕上げることもあります。例えばこの写真。天の川が写っていますが,ちょっと眠たい感じです。周辺減光も目立っていますね。

f:id:sunsun_fine:20190601155518j:plain

レタッチ前。周辺減光が目立ちます

このままでも悪くはないのですが,これをレタッチするともっと見栄えが良くなります。↓こんな感じ。

f:id:sunsun_fine:20190601155226j:plain

レタッチ後。乗鞍岳に立ち上がる天の川 @穂高・岳沢から

星空写真のレタッチは奥が深いので,また別の記事で書こうと思います。

なおカメラ設定のところで,星空写真はrawで撮るのがお勧めと書きました。jpegだとレタッチ耐性が低いので,カメラメーカーから提供されているraw現像ソフトを使って(もちろんAdobe Lightroomなどを使うのも最高です),16 bit tiffファイルに書き出してからレタッチすると,作業がやりやすいのです。

まず撮ってみようよ!

というわけで,星空写真は,昼間の撮影に比べてちょっとメンドくさい手順を踏む必要があるのも確かです。そして最初は思い通りの絵が撮れないかもしれません。でもあまり細かいことは気にせず,まず撮ってみましょう。

自分が撮った写真に星が写ってるのを初めて見るとね,けっこう感動するんですよ。これは本当です。

f:id:sunsun_fine:20190605220431j:plain

天の川のアーチ。固定撮影で数枚撮ってパノラマ合成したもの 外房・大波月海岸で

一番大切なのは「どこで撮るか」

ところで星空写真で一番大切なのは,撮影技術よりも「どこで撮るか」だったりします。どれくらい街明かりの影響を受けない暗い場所で撮影できるかがポイントなんですね。

僕は東京都内の自宅ベランダで星空を撮ったことも何度かあるのですが,iso 3200,絞りF4で露光時間4秒くらいが限界でした。それ以上露光時間を取ると,街明かりの影響で,すぐに画面が真っ白になってしまいます。もちろんこれでは,星は少ししか写りません。

あ,そうそう,ひとつ大切なことを書き忘れていました。空に月が照っている夜は空が明るく,星の写真は撮りにくいです。新月の前後,月のない夜が狙い目です。

おわりに:余談ですが

余談ですが,星空を見る際に街明かりの影響を「光害」という人も多いようです。確かに街灯りがない方が星空はきれいに見えます。けれども僕は個人的に,この言葉は使わないようにしています。街の灯りは普段私たちの安全な暮らしを守ってくれているものだし,夜遅くまでオフィスに明かりがついているのは,その時間まで仕事をしている人がいる(それは直接的・間接的に僕の生活を支えてくれているでしょう)ということだからです。

でも前に一度,相模湖畔で星の写真を撮っていたら,懐中電灯を持ったおじさんが歩いてきて,露光中のカメラにライトを向けながら「おおー,赤いカメラなんて珍しいねえ!」と話しかけられたことがありまして(当時使っていたNEX3は赤いボディだったのです)。あれは「光害」と呼んでもいいかな(^^;)

 

関連記事

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

 

桜咲くさきたま古墳公園で,古墳を前景に星ぐるぐるを撮ってみた

前記事「外房・大波月海岸に行って,天の川を撮ってきた!」の続きです。

www.sunsunfine.com

大波月海岸で天の川を撮影した翌日は,御宿を出て埼玉・行田のさきたま古墳公園に向かいました。東京では桜も盛りを過ぎて来ましたが,行田あたりではちょうど見頃なはずです。お花見したいですよね。そしてできることなら,桜を前景に星ぐるぐるを撮りたいなと思います。

ところがスマホでニュースをチェックすると「黄砂が来て視界が悪くなる」との情報が。むむむ,星を撮影するには厳しい条件かも…。まあ,行くだけ行ってみましょう。星を撮るのが難しかったら桜を見て帰ればいいし。

さきたま古墳公園について

埼玉県北部の行田市には,5世紀〜7世紀頃のものと思われる古墳が多数あります。これら古墳群は古くから注目を集め,昭和13年に国の史跡に指定されました。その後周囲は公園として整備され,園内にはさきたま史跡の博物館やはにわの館なども作られています。

公園にある古墳は円墳(丸墓山古墳),前方後円墳(稲荷山古墳,二子山古墳)など,100 mを超える大きさのものを含め9基(数え方によっては10基)。このように大型の古墳が集まっているところは,関東では他に例を見ません。この地にどんな歴史があるのか,興味は尽きないですね。

さきたま古墳公園

古墳を桜が彩るさきたま古墳公園

公園は広い芝生になっていて,また古墳の間にはハスの池や睡蓮の池などもあります。春には桜が美しく咲き誇る,とても素敵な場所です。家族や友人と散策するのも楽しく,また歴史に想いを馳せながら思索に耽るのも良いでしょう。

ちなみにこの公園の住所は行田市字埼玉(さきたま)。この地名が埼玉県の元になっているようです。もっとPRされ,広く知られてもいいんじゃないかな…と思うのは僕だけでしょうか。

さきたま古墳公園へのアクセスは,JR吹上駅,行田駅,または秩父鉄道行田市駅からバスが出ていますが,車で行くのが楽かもしれません。

さきたま古墳公園の桜がきれい!

さきたま古墳公園に着くと,予想通り桜が満開です。時は夕暮れ時,公園の桜が西日に照らされて輝いています。これはきれい!

古墳の丘に咲く桜

古墳の丘にも桜が咲いています

しばらく公園を散策して花を楽しみました。公園は広く,古墳の丘は桜に包まれています。

円墳の斜面に植わっている桜も,見事な花を咲かせています。

古墳斜面の桜

夕日を浴びる古墳斜面の桜

また,丸墓山古墳の上に登ってみると桜の樹の下から行田の町並みを望むことができて,伸びやかな気持ちになります。ここはとてもいいところ (^◡^)

日が暮れました。桜を見ていた人たちも帰り始め,公園は静かになります。一方で園内のライトがところどころ桜を照らし出しているので,とても良い雰囲気です。

さて,丸墓山古墳を前景に星の日周運動を撮影しようと思います。薄明が残っているうちに,古墳の丘の近くに三脚を立ててカメラを乗せ,インターバルタイマーをセットしました。赤道儀を使わないのでセッティングは楽です。

星ぐるぐるを撮影します

やがて薄明が終わってあたりが暗くなって来ました。…でもやっぱり黄砂のせいなのか,空に透明度が感じられません。星も全然見えてこない。天文薄明が終わる時間帯になっても,空の高いところに二等星がやっと見えている程度(北斗七星がかろうじて見える程度)です。うーん,やっぱり今日は厳しいかな。

撮影条件を決めるために何度か試し撮りをしてみましたが,黄砂に街明かりが反射するせいか,すぐにかぶってしまい,露光時間が全然稼げません。結局iso800, F5.6, ss13秒という非常に微妙な条件設定になってしまいました。

それでもせっかく来たことだし,一応撮影はしてみることにします。一枚13秒でシャッターを切り続けます。撮影中も空を見上げるのですが,うーんよく晴れているけど星はあまり見えないですね。行田の市街地に近いとはいえ,普段なら3等星〜4等星くらいまでは楽に見えても良さそうなのに…。

そんなこんなで約1時間撮影したところで撤収です。三脚を片付けていると,隣でやはりインターバル撮影していたお姉さんに「もうおかえりですか?」と話しかけられました。「星が全然見えていないので…。黄砂が来てるらしいですよ」と答えると,「ああそれで。黄砂めー」とのことです (^^;)

そのあとライトで照らされた桜を2,3枚撮りました。星があまり見えなかったとはいえ,桜が満開の古墳公園はやっぱり素敵でした。そのあとてくてく北鴻巣駅まで歩いて電車に乗りました。

ライトで照らされた桜

ライトで照らされた桜

うちに帰って比較明合成をしたけれど…

うちに帰ってから比較明合成をしたのですが,露出13秒で1時間ということでトータル約300枚。これは処理が大変です。げっそりしながら出来上がったのがこれ。一応ぐるぐるしてますが,やっぱり写っている星が少なくて,なんだか寂しい写真になってしまいました。

f:id:sunsun_fine:20190505010010j:plain

さきたま古墳公園の桜と星ぐるぐる。写っている星が少なくて寂しい写真になってしまいました。黄砂めー。

おわりに

今回は条件もあまり良くなかったのですが,そもそも春の宵の時間帯は,北斗七星などの明るい星が空の高いところにあるので,こういう構図だと画面に入りません。ここでぐるぐるを撮影するなら,夜半過ぎの時間帯に撮るか,前景の取り入れ方を工夫する必要があるかもしれませんね(縦構図で撮るとか)。

でも桜と星空の組み合わせは最高です!なかなかうまく組み合わせられるところはないですが,ここは工夫すればいろんな構図で星空を撮ることができそうです。

桜で彩られた古墳がとても素敵だったので,また行ってみたいと思います。この公園はやっぱり桜の季節がいいですが,睡蓮やハスが咲く頃もいいですね。

 

関連記事

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

 

外房・大波月海岸に行って,天の川を撮ってきた!

4月初めの新月期に,千葉・外房へ星の撮影に行ってきました。ねらいは「昇ってくる夏の天の川」です。

僕は,星を撮るときには山に登ることが多いのですが,今回は珍しく海へ。だって寒いんだもん。

外房へは,特急わかしおに乗って行けば快適ですが,家族を置いての一人旅だし,時間もたっぷりあるので,今回は鈍行を乗り継いで御宿まで行きます(自家用車は持っていないのです)。

大波月海岸てこんなところ

御宿の民宿にチェックインして,先ずはロケハン。目指すのは大波月海岸,住所は「御宿町岩和田」です。

大波月海岸は,僕が泊まった民宿から10分足らずの距離にあり,しばらく車道を歩いたあと海側の細い道に入って行きます。なんだか山道みたいな景色。途中まで海は見えません。

f:id:sunsun_fine:20190501171242j:plain

細い山道 (?) を辿って海岸に向かいます。途中まで海は見えません

でもしばらく歩くと,海辺の岩の斜面に到達します。ここを降りるとパーッと海辺の景色が広がります。気持ちのいい風景です!

海岸は岩のステージみたいになっていて,三脚が安定しそうです。星撮りの長時間露光にはありがたいですね。

f:id:sunsun_fine:20190501224715j:plain

大波月海岸。波しぶきが飛んできます

コンパスで天の川が昇ってくる方向も確認しておきます。「ローソク岩」と呼ばれるとんがった岩が東側にあり,天の川をバックに映えそうです。反面,北側には岩の斜面(というか崖)がすぐ近くまで迫っていて,北極星が見えるかどうかが気になります(赤道儀をセッティングする時に,北極星が見えないとちょっと面倒なのです)。三脚を立てるであろう場所に立つと,波しぶきが飛んできましたが,夜中は干潮になるので,問題ないでしょう。

ロケハンの後,御宿の街を歩いて月の砂漠公園にも行ってみました。ちょうど夕暮れ時で,「月の砂漠」の歌が流れてきたりします。

f:id:sunsun_fine:20190501224523j:plain

モロッコの砂漠じゃありません。千葉です。月の砂漠公園

夜の大波月海岸で天の川を撮りました

宿に戻ってからカメラと赤道儀の準備をして,夕食をとった後2時間半ほど仮眠をとりました(もちろんその前にはビールを飲むことも忘れません)。そして23時くらいに宿を抜け出して,大波月海岸に向かいます。細い道をヘッドランプで照らしながら歩き,海岸に着くと誰もいませんでした。でもここは,千葉でも有数の天の川撮影スポットなので,後から誰か来るだろうなと思いつつ,暗闇の中で赤道儀のセッティングにかかります。北極星は崖の縁ギリギリのところに見えたので,極軸望遠鏡を使って何とかセッティングを完了。

天の川はまだ昇ってきていませんが,地上景と星空を合わせて「新星景」方式のコンポジットをするため,まず赤道儀は動かさずに地上景を撮影します。露光時間2分で8枚。遠くに灯台があって,海岸の岩をうっすら照らしくれるのでいい感じで地上景が写ります。

そしてしばらく待っていると南東の空の低い位置に天の川が見えてきました。さっそく赤道儀のスイッチをon,追尾撮影に入りまます!いろいろ試してみた結果,iso3200, 絞りF2.8で露光時間は65秒とします。外房の空はかなり暗いですが,さすがに山の上よりは露光時間を稼げないようです。

赤道儀で追尾しながら8枚撮影しましたが,人工衛星の軌跡が入ったカットを除き,6枚を使ってスタックした結果がこれ。天の川の明るい部分が海に映っています。

f:id:sunsun_fine:20190501165927j:plain

海に映る天の川@大波月海岸 α6400,SAMYANG 12mm F2→2.8,65秒 x 6枚スタック

そのあと赤道儀を撤収して,場所を少し移動して固定撮影で数枚。パノラマ合成して天の川のアーチを写しました。

f:id:sunsun_fine:20190501170308j:plain

天の川のアーチ@外房・大波月海岸にて

日周運動ぐるぐるも撮ってみました

眠くなってきたので,日の出を写すのは諦めて宿に向かいます。まっすぐ帰ろうと思っていたのですが,途中で北天をバックに桜が咲いているところがあったので日周運動ぐるぐるを一枚撮ることにしました。撮影中に桜にライトを向けて照らしたりしましたが,なかなか思うようには行きませんね。途中で近くを車が通ったりしますし (^ ^;) 約30分回したところで薄明に入ったので撮影終了。もう少し長く回したかったけど。

f:id:sunsun_fine:20190501172130j:plain

桜と北天ぐるぐる

おわりに

僕は春先の横たわった天の川が好きで,きれいな地上景と合わせて撮りたいと思っていましたが,大波月海岸の景色と合わせて撮影することができたので満足です。そして海辺での星空撮影は,山の上で撮るのに比べて,あったかいしいろいろと楽だな,とも思いました。

翌日は町の歴史資料館を覗いたりしました。御宿町とメキシコのつながりなどが分かって面白かったです。

撮影中ずっと聞こえていた「ザザーッ,ザザーッ!」という波の音が今でも頭から離れません。

 

関連記事

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com