2020年夏。今年はいつもと違う夏を迎えています。
ここ数年は,8月の上旬,ちょうど今頃の時期は北アルプスに行っています。けれども今年は,それは叶わぬ夢です。
北アルプス,南アルプスの山小屋およびテント場は,登山者受け入れに大幅な制限を設けています。また僕の住む東京都では新型コロナウイルス感染者が減らず,知事から「都県境を越える不要不急の移動は控えましょう」というアナウンスが出ています。
こればかりは仕方がありません。出来るだけ体力を落とさないように過ごしながら,暑い街から山に思いを思いを馳せましょう。
そんなわけで,これまでに書いた登山関連の記事を振り返りながら,山の日…山を想う日としたいと思います。
北アルプス
北アルプスは,やっぱり特別な山域です。急峻な岩稜,深い谷,豊富な残雪,可憐な高山植物。いつ訪ねても特別な時間を与えてくれます。まだ登りたい山がたくさんあります。
前穂高岳〜奥穂高岳
以前から「山登りを志したからには,やっぱり穂高には行っておかないと」という思いをずっと持っていました。この山行は,そんなちょっと思いつめた気持ちで決行しました。
テント泊装備を担いでの重太郎新道,吊尾根,ザイテングラート。岩また岩の稜線。
要注意箇所を通過し終わって,涸沢に着いた時のなんとも言えない開放感。前穂高岳から見た,穂高連山の圧倒的な存在感。思い出すと今でもぞくぞくします。
まだ北穂高岳の稜線は歩いていないので,またいつか行きたいと思っています。
爺ガ岳・鹿島槍ヶ岳
ある日山岳雑誌で冬の鹿島槍を見て,その荘厳さに痺れてしまいました。それ以来憧れの山だった鹿島槍ヶ岳に,3年前に登ることができました。
好天の下,爺ガ岳から鹿島槍ヶ岳への稜線はまさにパラダイスでした。高山植物もきれいで,鹿島槍を満喫することができました。
また冷池山荘のテント場で見た,劔岳へ沈んで行く夕陽の光景は忘れることができません。
白馬岳
昨年の夏は息子当時14歳といっしょに白馬岳に登りました。大雪渓を詰めて稜線に上がり,白馬岳〜小蓮華山と縦走して白馬大池へ。3日間を息子といっしょに歩くことができ,僕にとって生涯忘れ得ぬ登山になりました。
また1日目の夜,稜線から見上げた星空の見事さも忘れることができません。
「今年もまた山に行きたいね」と息子と話していたので,それができないのは残念です。
南アルプス
巨大な山塊が揃い踏みしている南アルプス。こちらにも登りたい山がたくさんあります。でも赤石岳,荒川岳を中心とする南部の山にテント泊装備と赤道儀を担ぎあげるには強靭な体力が必要です。トレーニングしなきゃ!
入笠山
正確にいうと「南アルプス前衛」ともいうべき位置にある入笠山。アプローチは容易で,車で中腹まで上がれるし,ゴンドラを使って標高1700 m付近まで登ることもできます。でも僕はドMなので,下から歩いて登りました。道中,遅い春を迎えた桃の花が咲いていたり,道祖神に出会ったり…歩くからこそ見ることのできる景色もあります。
星空の写真を撮りたくて,夜中にテント場から頂上まで2往復したのですが,甲斐駒ケ岳方面にはずっと雲がかかっていて,思い描いていた「南アルプス+天の川」という写真は撮ることができませんでした。でも楽しかったです。
甲斐駒ケ岳
中央道を走ったり,中央本線の電車に乗って車窓を眺めていると,甲府を過ぎたあたりから見事な山が目に飛び込んできます。甲斐駒ケ岳です。南アルプスの北端にあるこの山は古くから山岳信仰の対象となってきた山でもあります。
そんな甲斐駒もずっと気になっていた山の一つです。昨年の9月,念願かなってこの山に登ることができました。
花崗岩でできた甲斐駒ケ岳は白く輝き,イケメンすぎでした。また北沢峠の豊かな水と苔むした森に触れ,南アルプスの一角を歩いているということを肌で感じた山行でもありました。
関東(奥多摩,奥秩父,丹沢)
東京に住む僕にとって,ホームグラウンドともいうべき山域です。日帰りで歩いてくることもあれば,テントで山ごはんをじっくり作って,自分と向き合う時間にしたりすることもあります。奥多摩の七ツ石山や大岳山には狼信仰の痕跡があって,それらを訪ねるのも楽しみの一つです。
雲取山,七ツ石山,鷹ノ巣山
雲取山は東京都の最高峰 (2017 m)。頂上に至るには,コースにもよりますが1500 m前後の標高差を登る必要があり,一般的には一泊二日の行程になります。
雲取山からJR奥多摩駅まで,「石尾根」と呼ばれる長大な尾根が続いています。この尾根は途中に七ツ石山,鷹ノ巣山等のピークをかけていて,歩きごたえたっぷりの縦走をすることができます。その明るい雰囲気と伸びやかな眺望,そして南側に常に見えている富士山。いつ行っても楽しいところです。
七ツ石山の頂上近くには,七ツ石神社があります。この神社は長年風雨にさらされて,朽ちかけていましたが,昨年山梨県丹波山村によって再建されました。またこの神社の狛犬は狼像(お犬様)。古くからの狼信仰を今に伝えているんですね。七ツ石神社でお犬様にお参りするのも,この山域を歩く楽しみの一つです。
奥多摩三山(三頭山,御前山,大岳山)
奥多摩湖(小河内ダム)の南側に連なる三座の山(三頭山,御前山,大岳山)は奥多摩三山と呼ばれています。標高は,最も高い三頭山で1500 mクラスとそれほど高い山ではありませんが,森は深く美しいです。
また三頭山に登る際に渡る麦山浮橋,春の御前山を彩るカタクリ,大岳山の小さな神社を守る狼像など,味わい深い山旅ができるところでもあります。
奥多摩湖や時折見える富士山の眺めも素敵です。
奥秩父雁峠〜雁坂峠
奥秩父というのは山梨県と埼玉県の県境をなす山脈です(西の方は長野県にもかかっています)。その名の通り,埼玉側から見ると秩父の奥なのですが,登る時には山梨県側から入ることが多いです(秩父側から入ると,森の中を延々と歩いてアプローチすることになります)。
奥秩父の特徴は,山域全体が深い森に覆われていることです。森の中にずーっと続く縦走路を歩いていると,無心になって,自分が森と一体化していくような感覚になります。だからこの山域に限っては,雨もまたよしなんです。
奥秩父にはずいぶん出かけましたが,今のところ記事にしているのは雁峠から古礼山,水晶山を経て雁坂峠へ抜けた時の記事 ↓ だけです。この時,熊に出会っちゃったんですよね (^ ^;)
西丹沢・檜洞丸
丹沢にはあまり行ったことがなかったのですが,春先の檜洞丸にミツマタの花が咲くということを聞いて,行ってきました。森の中に黄金色に咲き誇るミツマタは幻想的で,とてもよかったです。
行ってみると思ったよりも近かったので(アプローチにかかる時間は奥多摩とあまり変わらないくらいでした),また行ってみたいと思います。…ただ,夏の間は山ビルが出るようなので,晩秋〜春先が狙い目かな。
上越・東北
実は上越,東北の山にはたくさん登っています。冬の豪雪に刻まれた地形と豊かな雪解け水。アルプスに負けない魅力に満ちた山域です。
谷川連峰
「国境の長いトンネル」の上にある山,谷川岳。そして「世界で一番遭難死の多い魔の山」谷川岳。でも,その稜線の上には爽やかな風景が広がっています。最近では,谷川岳主脈を縦走しました。クラシックルートの西黒尾根を登って,平標山までのロングコース。かなり歩きごたえのある縦走路でした。
次は馬蹄形稜線の方にも行ってみたいですね。
八幡平
東北の山にはたくさん登りましたが,記事にしているのはこの八幡平のトレッキングだけです。いま福島で仕事をする機会が定期的にあるので,うまく日程を組んで,またどこかに行けたらいいなと思っています。東北の山はたおやかでとても素敵なんですよ。
花見山
あ,東北でもう一つ記事にしている山がありました。登山の対象とは言い難いですが,「山」と名前がついているところ。福島の桃源郷,花見山です。福島市内にあって,標高は約 180 m。ここには春になると桜,花桃,梅,レンギョウ,サンシュユなどが一斉に咲き乱れ,まさに桃源郷になります。また来年の春に行きたいですね。
おわりに
山を想う…という話でした。本当はがっつり山を歩いて,その記録を書きたいところですが,今は我慢です。
僕は高校生の頃,山岳部に入って山登りを始めました。週末は札幌近郊の山で沢登り,夏になると大雪山や十勝岳連峰を縦走していました。その名残で,テント泊縦走が自分の基本スタイルになりました。
宮城県民だった頃は東北の山にずいぶん登りました。鳥海山と飯豊連峰は日本アルプスに負けないくらい大好きな山域になりました。スキー靴にアイゼンが付くように加工して,3月の岩手山に登り,頂上からスキー滑降なんてこともやりました。
それから月日は流れましたが,折に触れて,山を無心で歩きながらリフレッシュしたり,じっくり自分と向き合ったり…山を歩くのは大切な時間になりました。
北海道や東北の山を歩いていた頃はフィルムカメラを使うことが多かったので,少しずつスキャンしてデータ化しています。北海道の写真は実家にあるのでまだ手付かずですが (^ ^;)
今年の夏は針ノ木岳に行きたいと思っていましたが,また来年かな。秋になって,奇跡的に事態が好転したら,蝶ヶ岳か鳳凰三山あたりに行きたいと思っています。
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