夏山に行きたい…でも東京からは出ないぞ!
暑い日々が続いています。夏山に行きたいです。
でも今年はいつもの夏とは違います。都知事からは「東県境を越えた移動はなるべく控えて」という要請が出ています。都民の一人として,ここは自重して,都内の山を楽しむことにします。
都内の山といえば奥多摩ですね!東京都最高峰は雲取山ですが,雲取山の登山口鴨沢はギリギリ山梨県,三峰口も埼玉県なんですよね…。都内の峰谷から鷹ノ巣山に登り,尾根伝いに雲取山へ至るルートもありますが,それでも尾根道は都県境ですし,宿泊が七ツ石小屋(山梨県丹波山村)または雲取山荘(埼玉県秩父市)になってしまいます。
我ながらこだわりすぎなのか!?とも思いますが (苦笑),今回は都内から一歩も出ないぞ!と決め,鷹ノ巣山に登って降りてくることにしました。
- 夏山に行きたい…でも東京からは出ないぞ!
- 問題は宿泊場所と水,そして体力
- 榧ノ木尾根を登って倉戸山へ
- 榧ノ木尾根から石尾根へ
- 鷹ノ巣山頂上に到着
- 鷹ノ巣山避難小屋にて
- 朝活の時間だー!
- 恐怖!アブの大群
- 浅間尾根を下山します
- 天空の集落・奥
- 峰谷から雨降り,そして雲風呂
- おわりに
問題は宿泊場所と水,そして体力
鷹ノ巣山は十分に日帰りが可能ですが,今回は夜に星空の撮影もしたいので,山の上で一泊してくることにします。宿泊場所は鷹ノ巣山避難小屋です。…でも避難小屋に行ってみたら利用者が多くて「密」だったら困ります。それで念のためにテントも担ぎあげることにします。
もう一つの問題は水です。鷹ノ巣山避難小屋の近くに水場がありますが,稜線に近いところにあるので,真夏だと枯れている可能性があります。それで水が得られなかった時に備えて,4 Lの水を担ぎあげることにしました(実際行ってみたら水は豊富に出ていました)。
これで荷物がずいぶん重くなりました。でも仕方がないですね。星撮りのために赤道儀等も持つので,トータルで20 kgくらいになりました。
3つ目の問題は,僕自身の体力です。今年度に入ってから在宅勤務が続き,体力が落ちていると思います。7月初めに三頭山に行きましたが,あの時は日帰りでした。今回はテント泊装備。負荷が全然違います。おまけに盛夏の暑さ。体力が持つでしょうか。
榧ノ木尾根を登って倉戸山へ
さて,鷹ノ巣山にはいくつかの登山道が通じています。今回辿るのは「榧ノ木尾根(かやのきおね)」。これは奥多摩湖畔の「倉戸口」から突き上げる尾根で,途中で倉戸山,榧ノ木山を経由して,水根山で石尾根縦走路に合流します。
この尾根は,登山家の山野井泰史さんが熊に襲われてたことがある場所なので,クマ鈴を用意し,定期的に手で大きく鳴らしながら歩きます。クマさんこわい。またここは何度か下りにとったことはあるのですが,上りに使うのは今回が初めてです。
8月19日朝。バスを倉戸口で下車して,山道に入っていきます。いきなり暑いです。樹林帯に入ると日差しが遮られて少しマシかと思ったら,今度は風がなくなるのでやっぱり暑い (^ ^;) 湿度も高い感じです。ハンドタオルで吹き出す汗を拭き拭き登っていきます。
森では木々が元気です。きれいなんですけど,暑さと落ちた体力のせいでペースが上がりません。僕はもともと歩くのがそんなに速い方ではありませんが,普段以上にゆっくりになってしまいました。
加えて,1時間ほど歩いたところで,あることに気づいてしまいました。「凍らせておいたソルティライチを冷凍庫に忘れてきた!」。頂上に着いたら冷たいやつを飲もうと思ってたのにぃ〜!テンション下がるなあー (^ ^;)
それでも気を取り直して歩き続けること2時間弱,標準コースタイムをオーバーして,マルバダケブキの花が咲く倉戸山(1169 m)に到着しました。木立に囲まれた,ひっそりとした頂上です。
倉戸山頂上にはアブがけっこういて,油断すると刺されそうでした…そしてこれがのちの恐怖の序章になるとは,この時はまだわかっていませんでした。
山頂標には,休憩の時にソーシャルディスタンスを保ちましょうというカードがかけられています。
…うん,やっぱりこういうご時世ですからね。
そんで,ふむふむ,なになに?
大人のイノシシの大きさは110 cmから160 cm。イノシシ親子が間に入れる程の間隔をあけて自然公園を満喫しましょう!
オーケー,イノシシの親子が間に入れるくらいの間隔ね…って,わかりにくいわ!(笑)
榧ノ木尾根から石尾根へ
倉戸山を過ぎると,榧ノ木尾根の稜線に沿った道を辿るようになります。標高は1200 mを超えてきましたが,やはり暑いです (^ ^;)
奥多摩は鹿の食害によって高山植物が少ないことで知られていますが,途中ホトトギスが咲いていました。独特な花で面白いですね。
あいかわらずゆっくりなペースで歩くこと1時間半くらい,榧ノ木山(1485 m)に到着。約300 mの標高をかせぐのに,1時間半もかかってしまいました(汗)。
榧ノ木山のピークは登山道から少し外れたところにあるので,それらしきところを探してみると,ブナの林の中にひっそりと,手作りの小さな山頂標がありました。
榧ノ木山から尾根を辿ってさらに1時間,ちょっと腰が痛くなってきましたが(体幹の筋力が落ちてるんでしょうね),石尾根縦走路に合流しました。ここから先は何度も歩いた勝手知ったる道です。
鷹ノ巣山頂上に到着
石尾根に合流すると,穏やかな尾根歩きになります。盛夏にここを歩くのは自分としては珍しいですが,ススキの穂も出てきており,少しだけ秋の気配が漂っていました。
石尾根はいつも気持ちのいいところです。ここだって東京です。東京から出なくたって,自然を満喫できるのです。
やがて鷹ノ巣山の頂上も見えてきました。ここから先は歩き慣れた道のせいかペースも上がり,最後は意外にあっさり鷹ノ巣山(1737 m)に到着しました!
ここは奥多摩随一の開放感を持つ頂上ですが,今日は富士山は霞んで見えません。そして景色を眺めていると,何やらアブが集まってきます。お?お?倉戸山よりも多いような…でもこれもまだ恐怖の前触れだったのです。
今日の行程はあと少しです。アブを振り払いながら少し休んだら,避難小屋へのんびりと下ってゆきました。
鷹ノ巣山避難小屋にて
16時半。予定より遅くなりましたが,避難小屋に着きました。混んでるかなー?と扉をあけてみたら,先客が一人だけ。うん,これなら大丈夫。今夜は小屋で過ごすことにします。小屋の一角にマットを広げ,しばしくつろいだら水場に行ってみよう。
避難小屋から沢筋に降りていくと,5分で水場に到着です。出てるかなーと行ってみたら,冷たいのがじゃんじゃん出ていました。水枯れを懸念して4 Lの水を担ぎ上げましたが,その必要はなかったようです。これでテントと水,かなり無駄な荷物を背負ってきたことになりますね…でも安全のためですから,仕方ないかな。
ここの水場は稜線からほど近いところにあるのですが,どうしてこんなに冷たいんでしょう。不思議だなあなんて思いながら,顔を洗い,体を拭いてさっぱりしました。
水場から小屋に戻ったらご飯にします。今夜はご飯とハンバーグ。ハンバーグはレトルトですけどね (^ ^) でも美味しいですよ。
ご飯を食べ終わったら暗くなってきました。さっそく外に出てみます。さっきまで雲りがちだったけど,どうかな?おっ,星が出てる!急いでカメラと赤道儀の準備をして,星空撮影のために鷹ノ巣山頂上へ向かいました(星撮りの様子は,別記事にまとめました)。
朝活の時間だー!
星撮りを終えて小屋に戻ると,同宿の人はもう起きだして出発の準備をしていました。早いですね。僕はシュラフカバーに入って,2時間ほど仮眠です。zzz…。
4時15分。眠い目をこすって起きだします。この日の日の出は午前5時くらい。それに間に合うように,もう一度頂上へ登りましょう。今度は赤道儀を置いて,ザックに三脚とカメラだけ入れて登っていきます。
夜の間は南の低空に雲がかかっていたので,富士山は見えないかもしれないなーと思いながら登っていったのですが,頂上に着くと,霞んではいるものの富士山が見えています。朝もやの中,ブルーアワーの富士山。
やがて朝日が昇ってきて…フジッサーン! /^o^\
空気の透明感は今ひとつですが(山あいを薄く靄がおおっているのもわかります),赤く染まった富士山を見ることができました。やったね!
恐怖!アブの大群
さて,朝日が差す鷹ノ巣山頂はきれいだったのですが…。夜が明けた山にはアブの大群がいて,ワーッ!と群がってきます。昨日の何倍もの勢力で!虫除けバリアもどんどん突破して刺してくるので,なす術なしでした。たまらず退散しましたが,両腕両脚をボコボコに刺されてしまいました(泣)
今回は酷暑を恐れて,迷った末にハーフパンツを履いてきたんですが(「岩場もないし」と油断しました),これは完全に裏目に出ました。長いのを履いてくるべきでした…(-_-;)
逃げるように下って,山小屋に戻ります。途中で七ツ石山方面に朝の光が差し込むのが見えました。また今度そっちにも行くからなー。
浅間尾根を下山します
小屋に戻ったら,まずコーヒーを飲んで,落ち着きます。続いて朝ごはんを食べました。そして小屋よりも少し上にあるブナの大木に挨拶したら下山にかかります。
下りは浅間尾根(せんげんおね)コースをとります。水場を通り越して,そのまま樹林帯の道へ。夏の森は相変わらず元気です。
でも,標高を100 m下げるごとに気温が高くなっていくのが感じられます。今日も暑いぞー。
樹林帯の登山道を歩いていると,足元には何かの動物の頭骨が転がっていました(鹿かな?)。木々がその生命を謳歌しているように見える森ですが,その一方で厳しい生存競争もあるのでしょう。アブが僕を襲ってくるのも,彼らが生存していくための戦い…なのか?
避難小屋から下ること1時間,椎茸のホダ木がたくさん並べられているところに来ました。近くの集落の方が栽培しているのでしょうか。椎茸の栽培場のところから下にモノレールが伸びています。乗りたーい! (^ ^)
モノレールを横目に見つつ,さらに歩いて下ること45分,浅間神社が現れます。神社の鳥居を2つくぐると,登山口はもうすぐです。
天空の集落・奥
登山口を抜けると,「奥」という集落が現れます。標高約900 mのところにあるこの村は,東京都で最も高いところにある集落です。眼下には奥多摩の深い谷が広がります。
「ここも東京」。ここを訪れるたびにそんな感慨を持ってしまうところです。
奥集落からバス停のある峰谷まで,さらに400 m近く下る必要があります。曲がりくねった車道が通じているのですが,歩く場合は山の中のショートカット道を。なおも登山道といった趣きなので,熊鈴はまだ手放せません。
峰谷から雨降り,そして雲風呂
下って下って,11時30分,バス停のある峰谷に着きました。いやあ,暑い。自販機で三ツ矢サイダーを買って飲みました。火照った体に染み渡るようです (^ ^)
ここからバスに乗れば奥多摩駅まで行くことができますが,もう少し歩いてみようと思います。このバス路線には「雨降り」「雲風呂」という味わい深い名前のバス停があり,どんなところか確かめておきたいのです。
暑いけど舗装道路を歩いていきます。25分ほど歩くと「雨降り」。まるで物語のような名前の集落です。
そしてさらに10分ほどで「雲風呂」。ここは奥多摩湖から山道を上って来た場所にある集落です(小河内ダムができる前は,谷あいからかなり登る必要があったと思います)。その名前が「雲風呂」だなんて,味わい深いですね。雲のうえの景色を眺めながら,風呂に入ってみたいものです。
車道をさらに下ると奥多摩湖畔に出るのですが,ここでそろそろバスが来る時間です。峰谷からやってきたバスに乗り込んで,奥多摩駅へ向かいました。バスに乗るときにはマスクをつけます。
おわりに
久しぶりの山中泊。楽しかったけど…楽しかったけどアブにやられました!腕と脚で80箇所くらい刺されてました。うちに帰ったら妻に「リフレッシュしに行ったのに,ボロボロになって帰ってきたじゃない」と叱られました (^ ^;)
うちに着いたのが割と早い時間だったので,シャワーを浴びたあと病院に行って,アブ刺されの薬をもらってきたりしました。
これから夏の間に鷹ノ巣山に行く人に伝えておきたいことは
- 水場は8/20の時点では豊富に出ていました。ただしその後はわからないので自己責任で判断してください
- 山頂付近はアブがすごいです!長袖・長ズボンを着用することをお勧めします。もちろん虫除けは必携です
- 2020年8月現在,稲村岩尾根コースは通行止めになっています(登山道崩落のため)→詳細はこちら
さてさて。なかなか遠くの山に行けない今日この頃ですが,でもやっぱり「次はどこに行こうかな」と考えてしまうのです(笑)
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