
南アルプスの中央に聳える塩見岳から,白峰三山の北岳まで縦走してきました。
7月下旬に剱岳,立山に登ったんですけどね。その時思ったのは,やっぱり自分は縦走が好きなんだなあということです。この時,別山〜立山(雄山)の間は縦走形式になったんですが,もう少しロングなやつをやりたいと思いまして。
そして去年の南アルプス南部(聖岳-赤石岳-悪沢岳)の縦走が素晴らしかったこともありましてね。南アルプスでまだ登っていない塩見岳に登り,北岳まで歩いてみようかと思い立った次第。
実際に行ってみた結果,念願かなってガッツリ歩きごたえのある山行となりました。…というのは強がりで,めっちゃしんどい縦走になりました (^ ^;)。

まず1日目,鳥倉登山口から入って,塩見小屋までの道中です。
- 毎日あるぺん号でアプローチします
- 地球の息吹が感じられる,構造線またぎの道程
- 南アルプスの美しい森をゆく
- 三伏峠へ向かいます
- 三伏峠から塩見小屋へ
- 塩見小屋に着きました
- 塩見岳を往復します
- 小屋でのんびり過ごす時間も楽し
- 1日目記録
毎日あるぺん号でアプローチします
毎回アプローチが問題になる南アルプス。今回も塩見岳登山口の鳥倉までどうやって行こうかと思案を巡らせます。
北岳まで縦走するので下山は広河原。バスで行くのが現実的ですね。それで毎日あるぺん号でのアプローチとします。

23:00に竹橋を出たバスは,定刻の3:25分に伊那大島駅に着きました。ここで大型タクシーに乗り換えて(登山バスプランに組み込まれています),鳥倉林道ゲートに向かいます。
あるぺん号のバスは戸台口(甲斐駒ヶ岳,仙丈ヶ岳の登山口)や駒ヶ根(木曽駒ヶ岳の登山口)等を経由して,芝沢ゲート(光岳登山口)に行きます。伊那大島駅でバスを降りて,鳥倉に向かったのは,僕を含めて数人だったかな。

鳥倉林道ゲートに着いたのは4時50分くらい。車で来ればここに停めることになりますが,駐車場は9割がた埋まっていました。
行動食をお腹に詰め,身支度をしたら歩き始めます。はじめは林道歩きですが,時々視界が開けるので気持ちいいです。標高がすでに1650 mくらいあるので,猛暑の下界とは違って涼しいし。

ここはサクサク歩いて,5時40分に鳥倉登山口に着きました。
ここで登山届を提出して,いよいよ山に入っていきますよ。

地球の息吹が感じられる,構造線またぎの道程
さて,このあたりは生成した時代の異なるいくつかの地層が,断層(構造線)によって区切られているところです。
バスを乗り換えた伊那大島駅あたりは,大陸の深いところでできた領家変成帯にありました。タクシーは中央構造線を跨いで,海底プレートが沈み込んでできた三波川変成帯に入り,続いて戸台構造線を越えて秩父帯(ジュラ期にできた地層)に入ってきました。

さらに,ここから塩見岳へ向かう登山道を歩いていくと,仏像構造線を越えて四万十帯(白亜紀の地層)に入ります。

登山口にはこのことを説明する看板が設置されており,面白くてつい見入ってしまいました。
看板では秩父帯,四万十帯などの地層が「付加体」と表記されています。これは,これら太平洋側の地層ほど新しく,中央構造線東側の地層にくっついてくることで日本列島が出来上がってきたということなんですね。

またこれらの構造線は,長く伸びて九州にまで到達しています。つまり日本列島は,幾つかの地層(付加体)がギュッと圧縮されてできあがってた島だということです。そしてこの登山ルートは,短時間のうちにその境目をいくつも越えていく,稀有な場所だということですな。
このあたりの詳しいことは,大鹿村の中央構造線博物館に行くと,より詳しく学ぶことができるようです。うーん,行ってみたいぞ!
南アルプスの美しい森をゆく
それでは山に入っていきますよ。登り始めはやや急な道ですが,よく整備されていて歩きやすいです。
まわりは針葉樹林体。1/10,2/10…と道標が刻まれていますが,これは三伏峠までの区間を区切ったものなので,早とちりしてはいけません。

登っていくと,塩見岳名物,丸太で組んだ桟橋がところどころに現れます。味がありますねえ。ただ雨の日は滑りそうなので要注意かな(特に下りのとき)。

木製の桟橋はその後も何度か出てきますが,こんなふうに崩れてしまっているところも。ワ,ワイルドだなあ(汗)。

さらに上の方に登っていくと,金属製の階段に付け替えられているところが多くなりました。ところどころに資材が積み上げられていたので,順次金属製に置き換わっていくのかな?

このルートの名物がなくなっていくけど,こっちの方が歩きやすかったのは確かです。安全性と耐久性は金属製の方が高いからね,この方がいいかもね。

そんな道を登っていくと,尾根状の地形に出ます。なおも続く鬱蒼とした樹林帯。これも南アルプスの魅力かな。
三伏峠へ向かいます
順調に高度を上げてきました。塩川林道から登ってくるコース(現在は廃道)との合流点を過ぎると,時々見晴らしが効くところが出てきましたよ。
おっ,木々の間から塩見岳の頭が見えました (^◡^)。

ここまで来れば,三伏峠はもうすぐです。
三伏峠小屋
あと200歩です

そして8時15分,三伏峠(さんぷくとうげ)に着きました。歩き始めてから3時間ちょっと,まあまあいいペースですかね。
ここ三伏峠は,奥秩父の雁坂峠,北アルプスの針ノ木峠とともに,「日本三大峠」の一つとされているところです。また標高は約2600 mあり,「日本で一番高い峠」でもあります。

現在は信州側からの道しかありませんが,昔は静岡県側,井川源流域へと下る道があって,人々の行き来があったようです。…マジか,昔の人すごいな。

ここには三伏峠小屋が立っており,テント泊をすることもできます。僕も小屋前のベンチでしばし休憩です。
三伏峠から塩見小屋へ
三伏峠から,再び塩見小屋へ向かって歩きます。すると程なくしてY字路に差しかかります。
左は塩見岳へ向かう道。そして右は…小河内岳を越えて,荒川三山へ向かう道です。「こっちに行くと悪沢岳を経由して椹島かー」…何だかドキドキするぅ〜!

荒川三山方面の道も興味津々で,ついそっちに行きたくなりますが,今回は左へ (^ ^;)。
ちなみに,これが小河内岳〜荒川三山方面の眺め。小河内岳あたりの稜線も,いかにも気持ちよさそうです。

Y字路を過ぎると,すぐに三伏山です。
ここで視界が開け,目指す塩見岳がスッキリと見えました。深田久弥が「漆黒の鉄兜」と呼んだ,特徴的なシルエットです。今日は頂上直下にある塩見小屋まで歩きますが,ムムム…まだ遠いな。

南には赤石岳(左)と聖岳(中央)。去年歩いた山々が手の届きそうなところに見えています。写真右側の凸凹したピークは中盛丸山,大沢岳あたりですね。

三伏峠〜塩見小屋の間は標高2600〜2700 mの間を小刻みにアップダウンしながら進みます。
この辺はちょうど南アルプスの森林限界ギリギリなので,道は森に包まれたり視界が開けたりします。

緑がまぶしい。森はまだ真夏の様相。
三伏峠から1時間ちょっとで「本谷山」というピークに着きます。ここで見る森も緑が濃いなあ。

アップダウンを繰り返しながら,塩見小屋に近づいてきました。このあたりから緩やかな登りが続くようになります。
だんだん樹林がまばらになってきて,木の間越しの塩見岳。なかなかカッコいいですなあ。

南側には,やはり木の間越しに,悪沢岳。去年登って大好きになった山です。こんなに間近に見えてうれしいぞ。

こんな眺望を楽しみながら歩いていくと,こんな看板が。

小屋は,じきかやぁ
いんね あと40分だに
「〜だに」これって伊那地方の言葉かな? 方言ていいよね。大好き (^◡^)。
塩見小屋に着きました
「あと40分だに」の看板にも励まされて,最後の坂を登ります。すると一気にハイマツ帯に入って,遠くまで見とおせるようになります。
目に飛び込んできたのは間ノ岳と農鳥岳。
この2座は赤石岳や悪沢岳からも見えていましたが,やはりここからだと近く,大きく見えますね。見事な眺めです!
でも明日越えていく間ノ岳がすごく遠いですね (汗)。

農鳥岳をアップにしてみましょう。
手前に仙塩尾根がずーっと続いているのもよくわかります。明日はここを歩くわけですが…ゾクゾクするね。

こちら「南アルプスの女王」こと仙丈ヶ岳。この山も仙塩尾根経由でつながっていますが,非常に遠いです。その右側の甲斐駒ヶ岳は雲に覆われてますね。

こんな景色を見ながら,塩見小屋まであとひと息。まわりに広がる緑の海を見ながらラストスパートです。

塩見小屋に到着したのはお昼過ぎ。鳥倉林道ゲートを出発してから,6時間ちょっとの道のりでした。
ここにはテント場がないので,今日は小屋泊です。

塩見小屋から見上げた塩見岳。この角度から見るとずいぶんとんがってますね。
ちなみに左のピークが本峰で,右の岩峰は「天狗岩」と呼ばれています。頂上へのルートは,天狗岩の上部を回り込んで本峰の岩場に取り付きます。

さて,12:00から12:30の間は,小屋のスタッフさんの休憩時間。受付はできません。そして見上げれば,塩見岳がその姿をきれいに見せて手招きしてるみたい。
塩見岳は明日の朝越えていく予定ですが…うん,まだ時間も早いし,一度往復してきちゃおうかな(翌日は長丁場なので,足を残しておこうかと少し迷ったんですけどね)。
塩見岳を往復します
塩見小屋には「ザックデポ棚」があるので,荷物を置いて軽装で頂上に向かいます。はじめはこんなハイマツの中の道。一気に高山帯の雰囲気になりました。

天狗岩には2,3箇所の鎖場があります。そこを通過して塩見岳本峰に向かいます。
なかなか立派な山容。頂上部は岩のかたまりですね。

本峰の上の方も鎖場が断続しますが,気をつけていけば大丈夫です。南アルプスの山としては例外的に険しいですが,先日の剱岳ほど厳しいところはありません。
天狗岩を振り返ります。けっこう高度感がありますね。

頂上が近づいてきます。岩場の向こうに悪沢岳。やっぱり三伏峠から荒川三山に続く縦走路にも惹かれるなあ。ここを歩くと,足跡が聖岳から北岳まで繋がるんだよね。

そんなことを考えながら歩いていたら,頂上部が雲に包まれ始めました。ありゃりゃ。
雨が降り出す前に行ってこなきゃ…というわけで,やや急ぎ気味に塩見岳西峰 (3047 m) に到着。塩見小屋からちょうど1時間でした。

続いて5分で東峰 (3051 m) にも登頂。これで 南アルプスの 3000 m 峰全てに登ったことになりました!
ガスが厚いので,雨に打たれないように,直ちに下山にかかります。
鎖場を下っていくと,烏帽子岩付近に,顕著な赤色チャートの露岩帯がありました(登りの時は素通りしちゃったナ)。やはりここも南アルプス,赤石山脈の一角です。

小屋まで足早に戻ってきました。雨に打たれなくてよかったよかった…って,あれ?振り返ると,頂上がまた晴れてるな (^ ^;)。
どうやら頂上がガスに包まれていたのは,僕がいたときだけだったようです。
まあこんなもんだよね。

小屋でのんびり過ごす時間も楽し
小屋泊の受付をしたら,小屋前のベンチに腰掛けて,同宿の人たちとお話をして過ごしました。日本百高山完登を目指しているイケメンお兄さんは,今日蝙蝠岳に登って,残すは水晶岳と赤牛岳のみだとか*1。すごい。
「高校生のときは,重たい灯油バーナー(ホエーブス)を使ってたよね」という話で盛り上がった女性は,話の内容から同年代かな?ということになり,こっそり年齢を教えあったりしました (^ ^;)*2。

そんな時間を楽しんでいると,いつしか塩見岳には再びガスがかかり,晩ごはんの時間になりました。

これが塩見小屋の晩ごはん。最近は山の上で食欲が出ないのが悩みだけど,美味しくいただきました!デザートにゼリーがついてるのもうれしかったな。
そうそう,塩見小屋のトイレは,携帯トイレブースになっています。携帯トイレをブースに持ち込んで,使い終わったらキッチリしばって回収ボックスに入れます(ボックスの中身は,定期的にヘリで下ろしているそうです)。宿泊者は携帯トイレがもらえます。トイレだけ利用する人は,1枚300円だったかな?
翌日は行程が長いので早めに休みます。あたたか布団で,よく眠れました zzz…。
- - - -
*1 自分自身はどうだろう?と数えてみたら,日本百高山のうち52座に登っていました。
*2 こうやって山で仲良く過ごした人たちとは「じゃあまたどこかの山でお会いしましょう」と言って別れ,特に連絡先を交換したことはないんですが,みなさんどうしてるんでしょ?
続きはこちら
1日目記録
2025年8月28日
鳥倉林道ゲート(5:05) – 鳥倉登山口 (5:40–5:45) – 三伏峠 (8:15–8:40) – 本谷山 (10:00–10:10) – 塩見小屋 (12:10–12:15) – 塩見岳西峰 (13:15) – 塩見岳東峰 (13:20) – 塩見小屋 (14:10)
休憩を除いた総行動時間 8時間20分
「塩見岳を見ながら歩く」ショートムービー
こちらも見てね



