
前記事「【南アルプス】塩見岳〜北岳縦走 day1:鳥倉登山口から塩見小屋へ美しき樹林帯をゆく」の続きです。
山行2日目は,まず塩見岳を越えて仙塩尾根に入ります。そして長大な仙塩尾根を歩いて熊ノ平小屋に至り,ここから怒涛の登りで間ノ岳に上がります。間ノ岳からは,北岳へと続く「天空の稜線」を辿って北岳山荘まで歩きます。長い長い行程になりますな。

実際に歩いても歩いてもまだまだ先がある,とてもしんどい1日になりました。
けれども道中の森はいかにも南アルプスという深さだし,稜線から見える景色は雄大で素晴らしいものでした。
- 塩見岳はガスの中
- ライチョウさんとご対面
- 風衝地を過ぎて北荒川岳へ
- 樹林帯を抜けて新蛇抜山へ
- 縦走路は続く––熊ノ平小屋へ
- 熊ノ平小屋から怒涛の登りが始まります
- 間ノ岳へ,最後の登りをがんばります
- 天空の縦走路をゆく––北岳山荘へ
- 北岳山荘に…やっとのことで到着
- 北岳山荘で迎える,美しき夕焼けタイム
- 北岳山荘の星空
- 2日目記録
塩見岳はガスの中
山行2日目。今日は縦走の核心部となる仙塩尾根を歩きます。
塩見小屋の小屋番さんによると,今日の天気は昨日と同じような感じで「晴れ時々曇り」になりそうとのことです。期待できそうです。
そう思いながら寝床を抜け出して外に出たんですが…ありゃりゃ,ガスガスですね。でもまあ出発しましょう。テント泊装備の入ったザックを背負い,ヘッドランプをつけて,まず塩見岳に向かいます!
まだ暗い中,塩見岳への急峻な道を辿ります。鎖がかけられた岩場は,特に慎重に。
…ところが途中でペンキマークを見失ってしまい,正しいルートを探して行き来するハプニング。これで15分くらい時間ロスしちゃったな。昨日偵察したはずなのに…。

そんなこともあって,ちょっと標準CTをオーバーして塩見岳西峰 (3047 m) に到着。ガスの中で何にも見えないけどね。
ガスが取れていくときは何となくわかるものだけど,この時はけっこう風があって上昇気流が吹いていたので,しばらくは晴れないと判断。すぐに東峰に向かいます。

東峰 (3051 m) でも何にも見えないですね。ここから荒川三山を眺めるのを楽しみにしてたんだけどな。
早々に頂上を後にして,ザレた斜面を下ります。すると出会ったのが,このペンキマーク。「←クマ」。

これ,熊ノ平小屋の方向を示してるんでしょうけどね。あちこちで熊が出没している昨今,なんだか物騒なサインに見えますな (^ ^;)。
岩がゴロゴロした斜面を下っていくと,北股岳分岐。ここで蝙蝠尾根方面と仙塩尾根方面が分かれます。

予定通り仙塩尾根方面に進路をとりますが,従来の尾根筋は崩壊が進んでいるらしく,迂回路が作られていました。
この迂回路ね,ハイマツの根っこを渡るように歩く必要があって歩きにくい…。なんだかリズムが狂っちゃったな。

その後道は尾根筋に戻りますが,「←クマ」のペンキマークが何度か出てきます。うーむ。
このあと樹林帯を歩くところもあるので,クマさんとの鉢合わせが怖いんだよね。ちょっとシャレにならんな(汗)。
ライチョウさんとご対面
塩見小屋を立ってから2時間くらい歩いたでしょうか。まだガスは濃いままです。この辺は晴れていれば眺めがよさそうなんだけどなあ。
でもアルプスにはこんな時の楽しみもあります。そう,ガスの日はライチョウさんが出てくることが多いんですよね。
…ほらね。

ファミリーでお散歩中なんでしょうかね。数羽のライチョウがみんなで歩き回っています。かわいいですなあ。

ハイマツの間に入ったと思えばまた出てきたり,岩角に登ってしばらくあたりを見回してみたり。ライチョウって全然逃げないので,標準ズームのテレ端で十分撮れるんですよね。

ひとときの癒しをもらいました。それでは先に進みます。バイバーイ!
風衝地を過ぎて北荒川岳へ
仙塩尾根を北へ向かうと,唐突に不思議な空間が広がります。一面の芝生のような草原に,強風で立ち枯れた木々が点在する光景。
風の通り道になっているのでしょうか?

視界が開けているので開放感があると同時に,この場所の気候の厳しさもわかるところです。

ここは何だかこの縦走路のシンボリックな場所に思えて,三脚を立てて自撮りしました。

それにしても不思議な一角だったなあ。
ここを抜けると灌木帯,さらに砂礫地となり,尾根上の1つ目のピーク 北荒川岳への登りに入ります。

7時35分,北荒川岳 (2698 m) に到着。塩見岳から2時間かかりましたね。ここでパンとチーズを食べてブランチとします。
まわりは相変わらずガスガスですが,風は少し弱くなってきたかな?

ここは塩見岳を間近に望むポイントなので,展望を楽しみにしていたんですけどね。何にも見えないなあ。残念!

それでも崩壊地側を恐る恐る覗き込むと,塩見岳の谷が深く切れ込んでいるのが見え,そのスケールの大きさを垣間見ることができるのでした。
樹林帯を抜けて新蛇抜山へ
北荒川岳を下ると尾根は標高を下げ,縦走路は樹林帯に入っていきます。
森の中に続く道が霧に烟る様子はしみじみと美しい。こんな天気も悪くないなあと思いながら歩きます。

ただ道がカーブする時など,見通しが効かないところではクマさんと鉢合わせするのが怖い…(汗)。そんなところでは,クマ鈴の音に加えて大声で歌ったりしながら歩きます。
「ある〜日 森の中 クマさんに出会〜った♪」…アカーン!
小さなアップダウンを繰り返したあと,道は緩やかに登っていきます。いつの間にか,森の中に日が差すようになり,青空も見えてきましたよ。
ここで出会ったのが「←新蛇抜山」のサイン。縦走路は山頂を通っていないんですが,頂上に続く踏み跡があります。登っておきましょうかね。

分岐から踏み跡を辿ること5分ほどで,新蛇抜山の山頂に到着です。簡素な山頂標があったのでタッチしておきました。

ここ新蛇抜山は標高2667 m,日本百高山のリストの100番目に入っています。「日本で100番目に高い山」ということですね。
そんなこともあって,「一応頂上を踏んでおくか」くらいのつもりで登ってきたんですけどね。意外にもすごい展望が広がっていました!

目の前に農鳥岳,その向こうに間ノ岳。間近に聳えていてすごい迫力です。長い尾根を歩いてきて,いつの間にか白根三山の領域に近づいていたんですねえ。
そしていつの間にかガスが取れていたかー…と思ったけど,振り返れば塩見岳はまだガスの中。朝からあの辺だけ雲が流れているということなのかな?

間ノ岳と,なおも延々と続く仙塩尾根。いい眺めなんですが,見えてしまったんです。尾根をずっと辿って行った先に,熊ノ平小屋がはるかに遠いのが(汗)。
しかも熊ノ平小屋は通過点でしかなくて,そこからさらに間ノ岳を越えていくんだよなあ…。
農鳥岳もアップで。見上げるような高さにゴツゴツした岩稜を連ねる姿は見事です。

農鳥岳は好きな山です。山容がカッコよくて,どこから見てもそれとわかるからね。
農鳥小屋の伝説が強烈すぎて,そっちばかり語られることが多いですが (^ ^;)。
縦走路は続く––熊ノ平小屋へ
縦走路に戻ると,道は再び樹林帯に続きますが,程なくして稜線に出ます。ここでちょっとした岩稜帯になり,また展望が開けました。
間ノ岳と農鳥岳がますます近くなりましたね。特に大きく展開する農鳥岳の稜線が大迫力です。

好展望は続きます。稜線は緩やかにアップダウンしますが,下っていく森の上に間ノ岳。
日本で3番目に高い山が,その高さを誇っているような光景です。…いや,このあと君に登っていくから,あんまり見せつけないで欲しいんだけど(笑)。

右側を見ると,農鳥岳の岩稜から,白根南嶺が南へ伸びている様子がよく見えます。写真右の方のピークは広河内岳ですね。

ここはとても山深いところ。歩いている人も稀です。平日(金曜日)だったとはいえ,仙塩尾根ですれ違ったのはソロの女性一人だけでした。
仙塩尾根の標高もまた,南アルプスの森林限界と近いところにあります。だからアップダウンに伴って,森に入ったりハイマツ帯に出たりします。
森に入れば,苔のしっとりとした佇まい。これもまた南アルプスならではの光景です。

そしてハイマツ帯に出れば雄大な眺め。なかなか楽しい。体力的にはキツイけどね。

しばらく樹林帯を歩いていくと,今度は足元に「←安倍荒倉岳」のサインが現れました。
この山の頂上にも,縦走路から踏み跡が続いています。往復しておきましょう。

分岐からほんの1分程度で安倍荒倉岳 (2693 m) に到着。こちらは木々に覆われて展望はありませんでした。三角点がひっそりと佇むのみ。

安倍荒倉岳から樹林帯を下っていきます。途中で尾根筋をはずれて東に下ると,熊ノ平小屋に到着です。
いやあ,ここまで長かった!めっちゃ疲れたよ。とは言ってもまだ先があるんですけどね。

熊ノ平小屋には,沢の源頭部の豊かな水場があります。ここで顔をザブザブ洗ってサッパリしました(小屋の写真撮るの忘れた)。
熊ノ平小屋から怒涛の登りが始まります
さてもっと休んでいたいところですが,いつまでも座っていては先に進めません(当たり前だ)。意を決して再び歩き始めましょう。

目の前に大きな斜面がまるっと見えています。ここから間ノ岳に向かって,標高差 600 m の登りが始まります(汗)。
急斜面をジグザグに登ると,あたりが開けた台地状の場所に飛び出しました。地形図で「三国平」と記されたところのようです。

ここは気持ちのいいところだったな。まだ登りがたっぷり残っているのが見えて,おおおー!ってなるけどね。
農鳥岳へ向かう道を右に分け,さらに進むと 目の前に急峻な岩峰が立ち塞がります。これが三峰岳。いつしか道は岩稜になります。行程の後半に来てからのこの岩場。厳しいですなあ。

気合いを入れ直さないとね。右(東)側は切れ落ちており,落ちたらただでは済まないなというところもあります。しかも鎖はありません。
人の行き来が多いところだったら絶対クサリがかかってるよね,というところでしたが。

ここはしんどかったなあ。体力的にも,集中力の面でもね。
とはいえ,岩場を慎重に通過して何とか三峰岳にたどり着きましたよ。ゼィゼィ。

ここは標高2999 m,静岡・長野・山梨三県が接するところです。
山頂標のところで向きを変えながら両脚を開いて,これらの県を跨いだ気になったりしましたが,ちゃんと跨げていたかはわからない(←アホ)。
間ノ岳へ,最後の登りをがんばります
県境とともに,縦走路もここで三方に別れます。左へ進むと,長野県と山梨県の県境に沿って,仙塩尾根が仙丈ヶ岳まで伸びています。また右へ行くと,静岡県と山梨県の県境に沿って間ノ岳へ至ります。
ここは仙塩尾根に別れを告げて,間ノ岳に向かいましょう。

それでね,三峰岳までがすっごくしんどかったんですけどね。この先間ノ岳まで,まだまだしんどい登りが続くんです。標高差にして,まだ 200 m 登る必要があるからね。
でもこの先は2足歩行で行ける歩きやすい道だから,まだマシだったかなあ。
標高が 3000 m を超える中,息を切らしながら登って,午後2時25分に間ノ岳 (3190 m) に登頂。日本で3番目に高い頂です。

仙塩尾根でアップダウンを繰り返したあと,ここまで登って来ました。歩きごたえが…十分すぎるほどにありました。
間ノ岳に立って,これまで見えていなかった富士山とご対面です。

農鳥岳は背後になりました。またさっきまではこの山を見上げていたんですが,間ノ岳まで登ってきて,見下ろす形になりましたね(間ノ岳 3190 m,農鳥岳 3026 m)。

天空の縦走路をゆく––北岳山荘へ
さてさて,やっとこさ辿り着いた間ノ岳ですが,まだ終わりではありません。今日の泊まり地・北岳山荘まで,コースタイムにして1時間以上の稜線歩きが残っています。
日本で2番目に高い北岳と3番目に高い間ノ岳を結んでいる この稜線は,「天空の縦走路」と呼んでもいいでしょうか。

間ノ岳をあとに踏み出すと,北岳方面の視界が開けました!
北岳って見る方向によってずいぶん姿を変えますよね。ここから見る北岳はとんがっていてカッコいいです。
またここは2年前にも歩いたんですけどね。その時には北岳に雲がかかっていたので,この景色を見ることができて感無量です。
北岳山荘までは基本下りですが,小さなアップダウンがあります。岩場の登り返しなんかが出てくると,「こんなところあったっけ?」と思うこともしばしば。…山登りって,しんどいことはすぐに忘れちゃうんですよね。

振り返れば間ノ岳。いかにも南アルプスらしい,巨大な山体を持つ山です。
右手にはずっと,フジッサーン! /^o^\
小さい頃「歩いてもお月様はついてくる」って言われたけど…うん,この縦走路,富士山もずっとついてくるね。

おや?三峰岳から間ノ岳へ続く稜線の上に見えているのは…。
あれは…しおみん?
やっと顔を出してくれたかー。もう,照れ屋さんだなあ。君の頭に立って,白峰三山や南ア南部の山々を眺めてみたかったよ。

間ノ岳を越えて,すっかり白峰三山の領域に入ったんですね。鳳凰三山もこんなに間近に見えるようになりました。

まもなく中白根山。北岳も大きくなってきましたよ。

中白根からは下るだけなので,一気に行こうと思ったんですけどね。けっこう足に来ていて,たまらず10分ほど休憩しちゃいました。
北岳山荘に…やっとのことで到着
中白根から最後の下りです。ようやく今夜の泊まり地,北岳山荘が見えてきました。いやあ,ホッとしました。

ただやっぱり南アルプスは何もかもがデカいんですね。小屋が見えて「もう少し」と思ってからが長いんですよ。中白根からは下りだしタイムを巻けるかな?と思ってたけど,しっかり標準CT通りかかりました。
そんなこんなで北岳山荘に到着したのは16時20分。ギリギリセーフですかね。

塩見小屋を立ってから,正味11時間超の行動時間。さすがに疲れました…。
静かに過ごしたかったので,山荘の南側(間ノ岳側)の小屋からやや離れたところにテントを張ります。昨晩は小屋泊まりだったので,この一夜のために担いできたテントです。
北岳山荘で迎える,美しき夕焼けタイム
テントを設営したら,その入り口に座って,小屋で買った缶チューハイを飲んだりしてたんですけどね。
太陽が西に傾いて,北岳が夕焼けに染まってきたようです。

「こうしちゃいられない!」 (^◡^)。カメラを持って,尾根の上に急ぎます。
すると南アルプスはまさに夕暮れ時。山々がドラマティックな光に包まれようとしていました。
仙丈ヶ岳の向こうに,夕陽が沈もうとしています。谷あいには雲が流れます。南アルプスのスケールの大きさには,いつもアースを感じます!

北岳夕照。雲も取れてスッキリと見えてきましたね。日本で2番目に高い頂。明日はここを超えて下山する予定です。

東側を見れば,富士山アーベントロート。「赤富士」が見えています。
地平線近くがオレンジに染まる「ビーナスベルト」に浮かんでいるような光景がいいですなあ。

山荘泊まりの人たちが,みんな無言で夕陽を眺めています。いい雰囲気です。
僕にとっても,疲れた体に染み入ってくるような時間でしたよ。

これが北岳山荘のテント場。展望の良い,素晴らしいロケーションです。

夕暮れの空に,三日月が今夜の我が家を照らしています。背景は中白根山。
テントに潜り込むとホッとします。ちょっと秘密基地っぽい感じが好きで,テント泊縦走を続けているところはありますね。

ところで何度か書いてきたけど,最近は山で食欲が出ないのが悩みです。夕食には日清のカレーメシが定着していたんですが,これも食傷気味で,喉を通らなくなってきたんですよね…。
今夜はカップヌードル・トムヤムクン味+タンパク源としてレトルトのミートボールにしてみました。美味しかったけど,まだ要検討だなあ。
行動食もなかなか喉を通らないんだけど,今回食べやすかったのは「スポーツようかん」でした。こちらもいろいろ検討中。
北岳山荘の星空
晩ごはんを食べたら,地図を見ながら今日の行程を振り返ります。長い1日だったなあってね。
そのあとテントから顔を出してみたら,晴れて星が見えています!今日は疲れてもう眠いけど,ちょっとだけ星撮りもしよう。新月期だしね。
もう8月の終わり。剱沢カールで星空を撮った時から1ヶ月。夏の天の川が垂直に立ち上がる季節になったんですね。

左の黄色いテントが僕のお家です。降るような星の下で眠れるのは,何ともうれしいことです。
縦構図でも一枚。

超広角 11 mm(フルサイズ換算 16.5 mm)は広くていいですね。いて座の天の川中心部から,天頂近くのはくちょう座あたりまで入ります。
北の空,北岳方向の空には,薄雲が流れています。それでもカシオペア〜ペルセウス座あたりの天の川がよく見えます。アンドロメダ銀河もちゃんと写りました。
低空が明るいのは甲府盆地の街明かりでしょうかね。

最後に天の川を少しだけズームアップ。16 mm(FF換算 24 mm)で撮ります。
いて座の南斗六星やバンビの横顔,天の川の暗黒帯もよく写りました。さそりはもう山の向こうに沈んでいっていますね。

それではテントに戻って眠るとしますか。標高 3000 m のテント場だけど,シュラフカバー(エスケープヴィヴィ)も持ってきているので,暖かく眠れるでしょう。
おやすみなさい zzz…。
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2日目記録
塩見小屋 (3:50) – 塩見岳西峰 (5:15–5:20) – 塩見岳東峰 (5:25–5:30) – 北股岳分岐 (6:05) – 北荒川岳 (7:35–7:50) – 新蛇抜山 (9:10–9:20) – 安倍荒倉岳 (10:30) – 熊ノ平小屋 (11:10–11:35) – 農鳥岳分岐 (12:15) – 三峰岳 (13:20–13:25) – 間ノ岳 (14:25–14:35) – 中白根 (15:40–15:50) – 北岳山荘 (16:20)
休憩を除いた総行動時間 11時間10分
こちらも見てね
ライチョウが飛翔する姿は,まだ見たことがないなあ



