
前記事「【北アルプス】剱岳と立山に登ってきました #2 室堂から剱沢小屋への道と剱沢カールの星空」の続きです。
今日は山行2日目。剱沢キャンプ場をベースに,剱岳に登ってきます。
実は一日目夜から,ちょっと頭が痛かったんですよね。トレーニング山行があまりできていなかったせいで高山病の症状が出ていたのでしょうか,それとも軽い熱中症にかかっていたのかな。
「この状態で剱岳に行くのはヤバいかも…」と逡巡していたんですが,晩ごはんを食べて一晩寝たら回復しました。よかったよかった。

それはさておき,日本でも指折りの「登頂が難しい山」とされる剱岳。首尾よく登れたかな?
- 夜明けの剱沢カールを出発します
- 一服剱へ登っていきます
- 前剱へ急坂をたどります
- 剱岳の門番,「前剱の門」
- 最初の核心部,平蔵の頭〜平蔵のコル
- ラスボス「カニのたてばい」を越えて
- 剱岳頂上へ,最後の岩場をゆく
- 剱岳に登頂しました!
- 下山にかかります––カニの横ばいが最大の難所
- 集中力をキープしながら下ります
- 安全圏に到達です!
- テント場で過ごす,のんびりタイム
- 2日目記録
- おまけ:大キレットと剱岳,どっちが難しい?
夜明けの剱沢カールを出発します
午前2時20分起床。夏の星空を撮影してから出発の準備にかかります(星空写真はこちら)。いつものようにもぞもぞとシュラフをたたみ,コーヒーを沸かしてワッフルとチーズの簡単な朝食。
鎖場を通過するのは明るくなってからの方がいいので,4時になるのを待ってスタートしました。

夜明け前の剱沢キャンプ場。シルエットになった剱岳の向こうが,オレンジ色に染まってきています。「荘厳」という言葉がぴったりな朝です。
剱岳には,すでにヘッドランプの灯りがいくつか見えています。うーん,剱岳のナイトハイクはちょっとやる気がしないなあ…。

剱沢小屋を通過し,その後すぐに剱沢雪溪を横断。ここはトレースがしっかりついているので,アイゼンなしで問題なく進むことができます。
八ツ峰の稜線の向こう,朝焼けに浮かんでいるのは唐松岳ですね。

こうしてみると,唐松岳の稜線も思いのほかギザギザしてますね。不帰キレットのあたりかな?最初「あの山は何だろう?」って思いましたよ。
ブルーアワーからゴールデンアワーへ。刻一刻と空が明るくなっていきます。別山の上ではそろそろご来光かな?

雪溪を渡ってなおも進むと,今度は鹿島槍ヶ岳と五竜岳が見えてきました。今日はあちらの天気も良さそうですね。

40分ほど歩いたところで,剣山荘の灯りが見えてきました。下山後には,ここに寄ってお昼ご飯を食べる予定 (^◡^)。

ここまでは,軽いウォーミングアップといった感じです。
一服剱へ登っていきます
剣山荘を過ぎると,一服剱への登りが始まります。最初の小手調べとなる小ピーク。
うんうん,小手調べ…と思ったら,鎖場が出てきました。この別山尾根コースには,全部で13ヶ所の鎖場があります。そのうち2つが,一服剱にあるんです。

でも1番鎖場,2番鎖場ともに難しくはありません。寝ぼけ眼でつまづいたりしないように,足元をよく見ていけば大丈夫です。

谷間にも朝の光がさし込んできました。急登ですが高度がグングン上がっていくので気持ちがいいです。

背後には,朝焼けに染まる別山〜剱御前。一服剱から,世界よ おはようございます!

別山の尾根の向こうに針ノ木岳と蓮華岳。あっちの山々からは剱岳がよく見えるから,こっちから後立山連峰もよく見えるのはなるほど納得ですね (^◡^)。

朝日さす山道。これから登っていく前剱を背景に,チングルマの花穂が揺れています。
ゴツゴツの山ですが,ところどころ花にも出会えますよ。

5時20分に一服剱に到着。順調です。
ここに立つと,目の前に立ちはだかるのは前剱。恐ろしく切り立っています。「いったいどこを登るんだろう?」…すごい威圧感です。

もうこれが剱岳本峰って言われても,全然信じちゃうよね。
前剱へ急坂をたどります
それでは一息ついたら,前剱への登りにかかります。見た目のとおり,すごい急斜面。しかも前半は,不安定なガレ場の連続です。
石を落とさないように,注意を払いながら足を運ぶ必要があります。

時おり振り返るとこんな景色。なるほど一服剱と剣御前は稜線で繋がっているんですね。剱岳も含めて,今いる稜線が,剱沢カールの源頭部を取り囲んでいるというわけか。

ガレ場を登って前剱の中腹まで来ました。一服剱が見下ろす位置にきましたね。ここから先,道はいっそう傾斜を増し,鎖場の連続になります。

ここは3番鎖場「前剱大岩」。巨大な岩の裏側のルンゼ状のところに鎖がかかっています。大きな段差も出てくるので,足場を確認しながら登っていきます。

続いて4番鎖場。前剱直下をトラバース気味に登っていきます。足場が外側に傾いていますが,慎重に行けば特に問題はありません。

ガレ場,鎖場と急な登りをこなしてきました。そして6時35分,前剱 (2813 m) に到着です!
標高が上がってきたので,別山の向こうに立山が見えてきました。富士の折立,大汝山,雄山の3つの頂上があるのもよくわかりますね。

そして行手を見ると,ついに姿を現しました,剱岳本峰です!四方に岩壁を張り巡らせ,むちゃくちゃいかめしい出立ちです。

剱岳の門番,「前剱の門」
前剱を越えると,しばしの平穏。しばらく二足歩行で進ことができます。けれどもその平穏は長くは続かず,凶悪な様相の岩峰が唐突に現れます。
まるで登山者に通せんぼをしているようなこの岩峰は,「前剱の門」と呼ばれています。剱岳の門番というわけですね。

まず鉄のブリッジを平均台のように渡って岩峰に取り付くわけですが,このブリッジは明らかに傾いているんですよね(汗)。そのあとに続く岩峰のトラバースは,高度感がすごそう。
でもここは下を見ずに,目の前の岩に集中すれば大丈夫です…下を見たら怖いヨ。この辺から,鎖場では3点支持を意識して進むようにします。

前剱の門を過ぎると,再びしばしの平穏です。二足歩行ができるってうれしいですね…普段なら当たり前のことだけど。
道は雪溪の脇をかすめていきます。吹き上げてくる風がひんやり気持ちイイ。

主峰から右に落ちている↑のは,クライミングの対象となっている源次郎尾根。源次郎II峰の懸垂下降ポイントも見えていますね。

稜線を歩いていくと,左に大岩が2つそそり立っているところを通過しました。その割れ目から毛勝三山が顔をのぞかせています。
最初の核心部,平蔵の頭〜平蔵のコル
二足歩行区間を進むと,道が三たび険しくなります。ここからが核心部になりますよー。

まず始まるのは,7番「平蔵の頭」の鎖場です。はじめに,岩に打ち込まれたボルトを足場に直上します。

続いてこんなトラバースを交えながら登っていき,いったん岩峰の頭に出ます。

岩峰の頭に出たら,今度は鎖に沿って岩壁を下降します。この岩壁はスラブ状(ツルッとした一枚岩)で足場が小さく,つま先で立ちこむ所もあります。ちょっと緊張するところですね。

平蔵の頭を越えました。難関を一つクリアといったところでしょうか。振り返ると,なかなかの迫力ですなあ。

続いてルートは平蔵谷の源頭部を通過していきます。平蔵谷は剱沢から稜線まで突き上げる谷で,稜線まで雪溪が続いています。

平蔵谷雪溪を辿ってここまで登って来ることもできますが,これはエキスパートだけに許されたバリエーションルートです。だってこの斜度だもん。転けたら下まで止まらないよね。

足元まで迫る雪溪。
剱岳を「岩と雪の殿堂」と最初に言ったのは誰なんでしょう。こんな光景を見ると,「岩と雪」とはよく言ったもんだと思いますね。

さて,8番鎖場を越えて「平蔵のコル」まで来ました。あとは頂上を目指してアタックするのみです。
ラスボス「カニのたてばい」を越えて
平蔵のコルを過ぎると,登り最大の難所にかかります。9番鎖場「カニのたてばい」。ここは垂直な岩を直登するところです。

先に登っているパーティーがいたので,ちょっと待ち時間が発生。こういうところで急かす必要はないので,休憩をかねてのんびり待ちます。

さて,順番が来ました。それでは僕も取り付きますよ。
ここは高度感がありますが,クサリに沿って強引に登っていきます。難所として有名なところですが,目の前の岩に集中して3点支持で行けば大丈夫です。

↑ これはアクションカムの動画から切り出した画像ですが,カニのたてばいの岩場がほぼ垂直なのがわかるでしょうか。下の方に写っているのが僕の右手 (^◡^)。
剱岳頂上へ,最後の岩場をゆく
カニのたてばいを過ぎてももう少し鎖場は続き,頂上に向けてグングン高度を上げていきます。

あの頂上部を,鎧のように取り囲む岩場を登っているわけですからね。この傾斜も納得がいくというものです。

こんな厳しい岩場にも花が咲いています。
イワギキョウ(チシマギキョウかも)やイワツメクサ。周りはゴツゴツなのにね。いじらしいなあ。

さて頂上が近づいてきました。来し方を振り返ってみましょう。
前剱から続く,切り立った稜線。そしてその上,遠くに望む立山。たおやかさと鋭く切れ落ちた岩場のコントラスト。これはここに登ってこないと見られない風景です。

平蔵の頭あたりを少しアップで。

さらにアップにしてみましょう。平蔵の頭の岩場に,登山者が蟻のように取り付いているのがわかるでしょうか。

すごいところを歩いてきたね!…「歩いた」のか?
剱岳に登頂しました!
さあ最後のビクトリーロード…と言いたいところですが,頂上直下までゴツゴツの岩が続きます。それでも剱沢を出てから約4時間,剱岳の頂上に到着しました!

標高は2999 m。あと 1 mがんばれ!って感じですけどね。でも自分の目の位置は3000 mを越えているからヨシ!ということで。
後続パーティーも登ってきます。おつかれさま!

東側には,八ツ峰と呼ばれる岩稜がすごい迫力です。天を突く岩峰が連なる様は,まるで針山地獄。剱岳…すごい山だなあ。

北には毛勝三山。剱岳の北に位置する山塊です。北アルプスの北の端ということになるのかな。

剱岳北面を望める絶好の展望地になると思うんですが,ここには一般登山道は通っていないのです。縦走できたら楽しそうなんですけどね。
その向こうは富山湾ということになるんだと思いますが,薄雲がかかっていて,海を望むことはできませんでした。ちょっと残念だけど,下山後に富山湾の幸を食べるからいいのだ (^ ^)。

八ツ峰の向こう,北東側には白馬連峰を望みます。後立山は唐松岳〜鹿島槍ヶ岳の間が未踏です。いつか行かないとね。

最後に有名な「点の記」の三角点にタッチしてから下山にかかります!
下山にかかります––カニの横ばいが最大の難所
さて下山です。剱岳に限らず,滑落事故は下山時に起こることが多いですからね,気を引き締めていきますよ。
頂上をあとにすると,いきなりこんな急傾斜。転げ落ちそうな岩の斜面を,一歩一歩下っていきます。

下りはじめてすぐに出会うのが,下りルートの難所「カニの横ばい」。
まずクサリに沿って真っ直ぐに下り,途中からトラバースに転じます。

このトラバースの一歩目がちょっと怖い。
足を置くところにはペンキマークがついているので,ここに右足を置きます。ところがこのあたりは全体にスラブ状で,鎖につかまりながらも一瞬体が宙に浮いたようになります。ここがこの日一番怖かったところかな。
でも一歩目を決めれば,あとは足場がしっかりしたトラーバースなので大丈夫です。

ところでここまで,アクションカムを頭に乗せて,動画を撮りながら歩いてきました。それなのに,最大の難所カニの横ばいの途中でバッテリーが切れるハプニング。
予備バッテリーはありますが,この難所の途中でザックを下ろすことはできないので,横ばいの動画は途中で途切れています。…何たる無能(汗)。

カニの横ばいを過ぎると,続いて垂直な梯子が現れます。高度感があるので,ここも一歩一歩慎重に。
集中力をキープしながら下ります
平蔵のコルまで下ってきました。最大の難所を越えたとはいえ,行手にはまだこんな岩峰が続いています。
集中力を欠くと危ないので,ポイントポイントで「全集中・水の呼吸」をします。…笑いごとではなく,息を大きく吐いて,気合を入れ直すのです。

さらに平蔵の頭の登り返しです。ここは登りと下りでルートが分かれています。
この岩峰の上部は岩が逆層になっているので,足場を慎重に選びながら進みます。

平蔵の頭を超えました。核心部は過ぎたかな。岩場にも慣れてきました(←今ごろ?と突っ込まないでね 汗)。

とはいえ実は剱岳の事故の多くは,ここから先,前剱にかけた場所で起きているのです。下山時で疲労が溜まっているからとも,核心部をすぎて集中力を欠くからとも言われていますが…。

そんなわけで,「集中,集中」と自分に言い聞かせながら岩場を越えていきます。
さああとは前剱,一服剱を残すのみ。岩角に立つ登山者が絵になりますね。

「前剱の門」の鎖場。登りとは違うルートに鎖が張られています。鎖場を過ぎると,下りでは前剱のピークを巻きながら進みます。

前剱を越えました。剱岳本峰がはるかに遠く,高くなりました。このアングルもすごいなあ。
稜線からの剱岳はそろそろ見納めかな?

続く前剱の下りでは,鎖場の下の急なガレ場が要注意ですね。
ガレ場を無事に下って一服剱との鞍部まで来ると,その向こうに別山ふところの剱沢カールが近づいてきました。今日のゴールが見えてきましたね。

鞍部から登り返して一服剱に到着。ここで文字通り一服です。
他のパーティーの方々といろんな話をしながら,25分も休憩しました。
カニのたてばいで一緒になった70代の富山在住の方は,剱岳が4回目。以前 源次郎尾根を登ったこともあるそうです。「すごーい!」と思わず口にしたところ,「あの頃は若かった。まだ60代だったからなあ」って…! 恐るべし (;꒪⌓꒪)。

でも剱岳は,そうやって数々の岳人を育ててきた山なんですねえ。実際に歩いてみてそういう場所だということがよくわかりました。
たくさんのバリエーションルートがあって,しかもそのグレードがいろいろ揃ってるんですよねえ。

眼下には剱沢雪溪が見えています。「まだ7月なのに雪溪が途切れているのは早いなあ」と,その富山の方。今年の冬は雪が多かったそうなんですが…この夏が異常に暑いということなんでしょうねえ,やっぱり。

別山の尾根の向こうには,遠く赤沢岳が見えます。あの山を貫くトンネルを通って黒部ダムに出て,さらに室堂を歩いてからここに来たんだよなあ。北アルプスの中をいっぱい移動できてうれしいです。
安全圏に到達です!
一服剱の鎖場を過ぎれば,あとは緩やかな道を下っていくのみです。道端にはクルマユリやハクサンフウロ。やっと安全圏にきましたかね。

剣山荘も近くに見えるようになりました。お腹も空いてきましたね。
…というわけで,スタコラ下っていきますよ。

剣山荘に着いたのはお昼をちょっと回った頃。ここまで緊張していたので空腹を感じなかったんですけどね。
剱沢小屋では宿泊者以外に食事を提供していないので(←要注意です!),ここでお昼にしましょう。

牛丼を注文して(1,100円だったかな?),外のベンチで食べました。
日差しは暑いけど眺めが最高。別山と剱沢カールを眺めながらいただくお昼ごはんは最高です。「剱岳リゾートへようこそ!」って感じですかね (^◡^)。
生ビールもあったけどテント場までまだ歩くので,もうしばらくのガマンです。

お腹を満たして生き返ったあと,剱沢キャンプ場へゆるゆると歩いていきます。
雪溪を渡ると,そのそばにチングルマが咲いていました。ひんやりした空気が漂っているから,まだ開花中のようですね。
テント場で過ごす,のんびりタイム
さてさて,無事に帰ってきましたよ,マイテント!未明にここを立ってから,約10時間が経過していますね。
荷物を下ろし,水場で顔を洗ってサッパリ。そしてテントから顔を出して,いま登ってきた剱岳を眺めます。…おっとその前に,剱沢小屋で買ってきた缶ビールを雪溪に埋めて冷やし,プシュッ!といきます。
緊張が解けた体に,冷たいビールが何よりのご馳走でした。

いやあ,なんというのんびりタイム。これも無事に下りてきたからこそですが。
ビールを飲んだあとは,テントに横になって,しばらくお昼寝もしました。zzz…

1時間半くらい寝たでしょうか。お昼寝から目覚めると,剱岳は西陽を浴びており,谷筋にはガスが沸いています。
厳しい山ですが,いま登ってきたと思うとなんだか懐かしいような,不思議な気持ちです。
…今日も長く,充実した一日となりました。
続きはこちら
剱岳の動画はこちら。45分の長いビデオになりましたが,気が向いたらご覧ください (^◡^)。
2日目記録
2025年7月29日
剱沢キャンプ場 (4:00) – 剱山荘 (4:40) – 一服剱 (5:20–5:30) – 前剱 (6:35–6:45) – 平蔵のコル (7:35) – カニのたてばい (7:45 ちょっと順番待ち) – 剱岳 (8:25–9:00) – カニの横ばい (9:25) – 前剱直下 (10:30–10:40) – 一服剱 (11:40–12:05) – 剣山荘 (12:25–13:10) – 剱沢キャンプ場 (14:00)
休憩を除いた総行動時間 7時間45分
おまけ:大キレットと剱岳,どっちが難しい?
ところで,よく比較される大キレットと剱岳,どちらが難しい(または怖い)でしょうか?
これは僕個人の感触からいうと,大キレットの方がやや難しく感じましたね。
剱岳はところどころ2足歩行できて,一息つけるところがありますからね。大キレットは,緊張状態がもっと長く続くように思いました(北穂〜涸沢岳も続けて歩くと特にそうですね)。
また純粋に怖い (難しい) と感じたのは,剱岳ではカニの横ばいの一歩目ですが,大キレットでは何ヶ所かあるかなあ…という感触。
でもこれは歩くときの条件にもよると思います。岩が乾いているか濡れているかなどね。
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