はじめに:ガリレオ衛星を観測しよう
冬になると,関東地方は毎日のようによく晴れた日が続きます。
この期間を利用して,何か観察できることはないかなあ…。
こんな「冬休みの自由研究」的な発想に基づいて,木星のガリレオ衛星の動きをカメラを使って観測してみました。
その結果,2022年12月27日から2023年1月12日まで 17日間にわたって,連続して木星の写真を撮ることができました。
その結果をまとめてみようと思います。
ガリレオ衛星について
「ガリレオ衛星」とは,木星の衛星のうち特に明るく,17世紀にガリレオ・ガリレイによって発見された4個の衛星を指します。その名前は,内側からイオ,エウロパ,ガニメデ,カリスト。
これらは小型の天体望遠鏡で簡単に見ることができますし,望遠レンズをつけたカメラを木星に向ければ,簡単に写すことができます。
直径は,イオが 3,700 km,エウロパが 3,100 km。これらは月の大きさ(約 3,500 km)に近いですね。またガニメデ,カリストの直径は,それぞれ 5,300 km, 4,800 km 程度で,太陽系の衛星の中で最大級となっています。
ところで木星の衛星は,現在のところ84個確認されています。それらのうち50個以上は直径が 10 km に満たない小さなもので,木星に捕獲された太陽系小天体と考えられているとのことです。
観測方法
このところ,木星は夕方18時くらいに,南西の空に見えています(とても明るいので,すぐにそれとわかります)。
「観測」といっても,カメラに望遠レンズをつけて写真を撮るだけです。撮影条件は以下の通り。
- カメラ:Sony α6400+超望遠ズームレンズ SEL70350G(望遠端 350 mm で撮影)
- 撮影モード:マニュアル(Mモード)
- 露光時間 1/100〜1/125 秒
- 絞り F6.3 開放
- iso 感度 12800
- フォーカスモード:コンテニュアスAF, フレキシブルスポットL
- 手持ちで撮影
ガリレオ衛星は明るいので(眼視等級 5〜6等級くらいです),短い露光時間でも十分に写ります。またなんとかAFが効いたので,ピント合わせは楽でした。
こうやって,毎晩18時前後に写真を1枚ずつ撮りました。
木星とガリレオ衛星はこんな風に写ります
実際の写真ですが,こんなふうに写ります(木星付近をトリミングしています)。
2022年12月27日には木星の東(左)側にガニメデとカリスト,右側にイオとエウロパが見えていました。
一部の衛星が木星本体と重なって,見えない日もあれば(2023年1月2日),
4つの衛星が,木星の片側に整列して見える日(2023年1月11日)もありました。
ガリレオ衛星が鮮明に写る条件だと,木星本体は白く飛んでしまいますね。
ガリレオ衛星の動きをまとめてみよう
それではガリレオ衛星の動きをまとめてみましょう。
12月27日から1月12日までの写真を並べたものがこれ ↓。i = イオ,e = エウロパ,g = ガニメデ,c = カリスト です。1月4日のカリストがなぜか写っていませんが。雲の切れ端でもあったのかな?
さて,衛星は「円に近い楕円軌道」を動いています。したがって,木星の位置を揃えて写真を並べれば,その動きをサインカーブで近似することができます*1。
この図を作るときに,衛星の位置を,エクセルを使ってサインカーブでフィッティングしようとしたんですけどね。これ,エクセルではできないんですね。そこでサインカーブはエクセルに描かせて写真にコピペし,フィッティングは手作業でやりました。うまく合っていないところがあるのはそのせいです(汗)。
なおガリレオ衛星のうち,イオ,エウロパ,ガニメデは軌道共鳴の状態にあることがわかっていて,イオが木星の周りを一周する間に,エウロパは 1/2 周,ガニメデは 1/4 周動きます。実際17日間の観測で,この関係も確認できました。
まとめ
17日間にわたって木星の衛星の動きを撮影することができました。ガリレオ衛星の動きを見ることができて楽しかったです。
ガリレオ衛星のうち最も外側を回る,カリストの公転周期は約16日なので,これが木星を一周する間観測できたのもよかったです。
1月13日から3日間続けて曇りだったので,観測はこれにていったん終了。
木星のガリレオ衛星の観測,夏休みや冬休みの自由研究としてもおすすめですよ。
それにしても冬の関東,どんだけ晴れの日が続くんだ…。
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