これまでも書いてきた通り,福島県には見事な一本桜が各地にあって,それらを巡る旅はとても楽しいものです。
毎年春にはいろんな桜を回って,楽しませてもらっています。
そんな桜旅は4月で一段落つくわけですが…それでは,夏の桜はどうなってるんだろう?
そう思って,三春町にある三ヶ所の桜(平堂壇の桜,七草木の天神桜,滝桜)を見に行きました。
そこで出会ったものは,生命感に溢れる,青葉茂れる桜の木でした。
夏の桜を見にいってみよう!
容易に想像がつくように,桜の木を訪ねる人は,花が散ったあとはグッと少なくなります。実際に三春の里は,より一層のどかな雰囲気に包まれています。
ここ三春は,「桜の都」と呼びたい美しい町。春以外の季節にもきてみたいとずっと思ってたんですよね。
今年の春に三春を訪ねた話はこちら
平堂壇の桜
はじめに訪ねたのは,三春町北部,北成田地区にある「平堂壇の桜」。へいどう壇古墳の墳丘を守るように立つ,「古墳の守り人」です。
この季節でも,丘陵地帯にポツンと立っている姿はそのまま,美しい風景です。
でも田んぼに水が張られ,そこに桜の姿が映っているところは,春とは違いますね。
近くに行って見上げると,夏空をバックに風格があるのは春と同じ。
平堂壇の桜,その春の姿はこちら↓。孤高の姿はこの時のままだけど,夏は周りの風景と共に生命力にあふれています。
桜だけじゃなくてその周囲にも草が茂っているからか,ずいぶん印象が違いますね。
夏雲モクモクと桜の木。
この古墳に祀られているのは誰なんでしょう?蝦夷(えみし)がいた頃の有力者?それとも坂上田村麻呂がここを治めたあとの人?そんな古の時代に思いを馳せてしまいます。
近くにある「お人形様」との関わりにも想像が及びます。
桜の木は葉っぱの茂った腕を力強く広げ,木陰を作っています。古墳に眠るものに,安らぎを与えているのかな。
ここ平堂壇の桜の周りには,8月になるとひまわりが咲くみたい。その時にも来てみたいですね。
七草木地区の桜
七草木の桜
平堂壇の桜を後にして,七草木地区へ向かいます。一帯を走っていても水田がみずみずしく,春とは別の場所に来たみたい。
その水田に囲まれた丘に,七草木の桜が見えました。
この桜は墓守桜なんですが,こうして見ると,夏には涼しい木陰を作って,お墓に眠る人たちを守っていることがよくわかります。
お墓と桜のそんな関係は,この季節に来てみることでよくわかりました。なるほどなあー。
七草木の天神桜
その近くにあるのが七草木の天神桜。エドヒガンの大木です。
空に向かって雄々しく腕を伸ばす様子は春と変わらずですが,よりいっそう生命感にあふれ,力強さが感じられます。
桜の奥に回り込むと,樹姿がちょっと変わって枝が大きく広がった形になります。根元に祀られている天神様は,茂った枝に包まれていますね。
この角度から桜を見ると,ちょうど南東向き。春にはこの位置から,桜と昇ってくる天の川を撮ったっけ。
天神様は,花に囲まれてるのも素敵だけど,うっそうとした緑の中にいる時も神秘的です。お社の中に,本当に神様がひそんでいるみたいじゃないですか。
再び少し引いたところから見ると,桜の木の生命感に神性を感じ,もしかして今天神様は桜の木そのものに宿ってる?なんて思えるのでした。
七草木ののれん桜
ところで天神桜のすぐ背後に,美しい樹姿のしだれ桜があります。
Googleマップを見ると,天神桜のすぐ隣の場所に「七草木ののれん桜」と書かれているのですが,これがそうでしょうか?
たしかに,優雅に枝垂れた姿は「のれん」のように見えないこともないですね。
そしてあらためて見ると,かなり立派な木ですよね。となりに天神桜の巨木があるから,そんな風に見ていなかったけど。
ちなみに春に撮った「のれん桜」はこれ↑。桜めぐりの記事には載せてなかったな。
三春滝桜
それでは最後に,千年女王・滝桜を見に行きましょう。
春にはあんなに賑わっていた滝桜駐車場も,閑散としています。いろんな出店が出ていた,桜に向かう歩道も寂しいですね。
でも滝桜のところへ来ると…。
どっしりとした桜の姿。さすがの存在感です!
春,たわわに花をつけていた枝には,今度は濃い緑の葉がぎっしりと茂っています。春は花の重みで枝垂れていた枝は,今度は葉っぱの重みで滝のように流れています。
この葉が光合成を行い,また来年花を咲かせるためのエネルギーを蓄えるのでしょう。その営みが千年繰り返されてきたことへの畏怖に,心が打たれます。
この尊さに神性を感じるのは当然のことですね。根元のお社にはお酒が供えられており,三春の人たちによって大切に手入れされているのがわかります。
ところで滝桜に限らず,花が咲いている時の姿を見慣れているせいか,「緑の桜」を見ると,一瞬ネガポジ反転画像のように感じてしまいますね。
滝桜駐車場からは,三春ダム(さくら湖)をきれいに見渡すことができました。折しも夕暮れ時で,心に染みるようでした。花の季節には賑わっているので,この景色を眺める余裕がなかったよー。
おわりに
冬に葉を落としていた木々が,夏になって青葉を纏う。この営みは身の回りの木で見慣れているはずなんですが,春と夏の桜の木を見比べてみて,あらためてその違いに驚きました。
花が散ったあと,その枝に再び葉が茂って次の年に備える…それは桜の「再生」なのでしょうか。古墳やお墓に植えられている桜は,「死と再生」を象徴しているのでしょうか。
毎年繰り返されるその営みに,あらためて感じ入るものがありました。
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