sunsun fineな日々

子育てしながら,山を歩いたり星を見たり料理したり写真を撮ったり

和歌や俳句は4拍子––日本民謡も4拍子のものが多く,3拍子の民謡ってほぼないよね?という話 [内容更新]

大間のウニ


昨日X(旧 Twitter)を見ていたら,こんなタイトルのまとめ記事が取り上げられていました。

短歌なのかそうじゃないのかギリギリを攻めてくる作品を募集する「これは短歌なのか大会」に集まった作品がどれも声に出して読みたくなる「芸術点高い」

togetter.com

芸術点の高いやつがたくさん取り上げられていて とても面白いんですが,一番好きだったのはこれ。

うに香る 北海道産 じゃが芋の
もちもちニョッキと えびのグラタン

イタリアンのファミレス「オリーブの丘」のメニューらしいんですけどね (^ ^)。「うに香る」が季節感と北海道の豊かな自然を感じさせて,味わい深いですね。

イタリア食堂 オリーブの丘【公式サイト】

こんなのもありました

他にもね,面白い「短歌もどき」がいろいろあったよ。こちらは「日高屋」さんのメニュー(日高屋おいしいよね)。

中華そば 汁なしラーメン 味噌ラーメン
キムチチャーハン 五目春巻き

あーもう!日高屋に行きたくなっちゃうじゃないか!(うちの近くに一軒ありまして)

うちで作ったラーメン…これがホントの家系(笑)

うちで作ったラーメン…これがホントの家系(笑)

こんな風に「日本では,日常に 5, 7, 5…があふれてる」という話題,とても面白く読めました。みなさんも元記事をぜひご覧ください (^◡^)。

和歌や俳句は4拍子

さて,本題はここからです。和歌や俳句は日本では古くから詠まれてきたわけですが,それはどうしてでしょう?

というか,5–7–5…だとどうしてリズムを感じるのでしょう?

「うに香る」の楽譜起こし (笑)

というわけで,先の「うに香る〜」の歌(…歌じゃないけど)を楽譜に起こしてみましょう(←ヒマか)。

うに香る 北海道産 じゃが芋の もちもちニョッキと えびのグラタン

わかりますか?これ,4拍子になってるんですよ。「5–7–5… 」はリズムに乗っているのです。

額田女王や紫式部も楽譜起こし

「もちもちニョッキ」だけじゃなくて,ちゃんとした(←オリーブの丘さん,スミマセン)和歌も楽譜に起こしてみましょうか。

あかねさす 紫野行き 標野行き
野守は見ずや 君が袖ふる

(万葉集 額田女王)

額田女王も4拍子

額田女王も4拍子

万葉の時代から,日本人は「4拍子の歌」を詠んでは,リズムに乗っていたわけですな。

一昨年の大河ドラマで僕もハマった「光る君へ」。紫式部の歌も楽譜に起こします。

めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに
雲がくれにし 夜半の月かな

(百人一首57番 紫式部)

めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな

この歌は,一句目(めぐりあひて)が6文字で型を破っているんですが,それでも4拍子にハマっていることがわかるかと思います。あえて付け加えるなら,「めぐりあいて」のラストが八分音符 × 2 + 四分休符 × 1 になっているので,「逆付点」ぽくなってリズムに変化を与えていますかね。面白い。

この歌は「光る君へ」の総集編では,旅立った道長を偲んだ歌として,物語の「締め」として描かれていましたね。懐かしいなあ。

「変拍子」になる歌も

ところで音楽には「変拍子」の曲があります。変拍子というのは,拍子が途中で変わる曲のことです。

以前,僕の敬愛する上々颱風が「平成たぬき合戦 ぽんぽこ」の音楽を担当しました(「八草楽団」名義で参加していましたね)。その中で,宮沢賢治が作った「星めぐりの歌」を鉄琴で演奏していました。

「星めぐり」は基本4拍子ですが,彼らはこれを変拍子で演奏したんですよね。

上々颱風が「平成たぬき合戦 ぽんぽこ」で演奏した「星めぐりの歌」

上々颱風が「平成たぬき合戦 ぽんぽこ」で鉄琴で演奏した「星めぐりの歌」

2小節目と6小節目に,3拍子が挟まっているでしょ?これによって賢治の曲が素朴な響きで奏でられるんです。星空を見上げながら,歩いたり立ち止まったりして歌ってるようにも聴こえます。

あえてリズムを崩すことで,全体を深く印象付けられることがあるってことですね。

…ということで,再び額田女王に登場してもらいましょう。

熟田津に 船乗りせむと 月待てば
潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな

(万葉集 額田女王)

熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな

この歌はね,最後の「今は漕ぎ出でな」が8文字になるので,通常の短歌「5–7–5–7–7」の時よりも1小節多くなっています。

または小節の取り方によっては,これを変拍子の歌と捉えることもできます

にきたづに(変拍子)

4拍子で始まって,最後は2拍子→3拍子と変化する。このリズムの変化で,「さあ,潮は満ちたり!」という臨場感が伝わってきます。

万葉の時代の歌人,額田女王,天才!

ちなみに額田女王は「あかねさす」の歌でわかるように,恋多き女性でもありました。天智天皇の妻でありながら,その弟である大海人皇子(天武天皇)と交換をした歌が,万葉集に残されているのです。

安田靫彦「飛鳥の春の額田王」(滋賀県立美術館 webサイトより)

安田靫彦「飛鳥の春の額田王」(滋賀県立美術館 webサイトより)

個人的に,いつか大河ドラマで「額田女王」をやってほしいと思ってるんですけどね。壬申の乱なんかも描かれて見どころ満載,そして「光る君へ」と同様に,額田女王が筆を取り,歌を書くところで盛り上がる。

…いいと思うんだけどなあ,どうでしょう?時代考証が難しそうだけどね。

 

俳句も4拍子

ちょっと話がそれました。これまで短歌を取り上げてきましたが,俳句も5–7–5 ですからね,短いけど4拍子ですよ。

静けさや 岩に染み入る 蝉の声

(おくのほそ道 松尾芭蕉)

静けさや 岩に染み入る 蝉の声

破調の句も,リズムは基本4拍子になっていると思います。芭蕉のこの句↓ は,以下のようにリズムを当てればいいかな。

旅に病んで 夢は枯野を かけめぐる

(松尾芭蕉)

旅に病んで 夢は枯野を かけめぐる

「破調」だけど,やっぱり4拍子のリズムに乗ってるんですね。

日本民謡はほとんど4拍子だよね

そんなわけで,「破調」とか「変拍子」になる歌や句もあるとはいえ,和歌・俳句は基本的に4拍子なんです。

日本人は万葉の昔から,このリズムに馴染み,美しいものとして捉え,このリズムに乗って歌を詠んできたということですな。

日本民謡はほとんど4拍子だよね?

ここであることに気づくんです…日本民謡って,ほとんどが4拍子だよね

例えば僕の出身地,北海道のソーラン節

ソーラン節

妻の出身地,岩手の南部牛追い唄

南部牛追い唄

南部牛追い唄

北陸に飛んで,富山のこきりこ節」

こきりこ節

こきりこ節

他にもいろいろ取り上げたいけど,一気に南の島に行って,沖縄の「てぃんさぐぬ花」

てぃんさぐぬ花

てぃんさぐぬ花

ね?全部4拍子なんですよ(ソーラン節は2拍子として記述した方がいいかもしれません)。

和歌・俳句のリズムと日本民謡は繋がっている?

これは,古くから和歌・俳句で歌ってきたリズムが日本人の中に根付いていて,民謡もこのリズムに乗って歌われている…というのは言い過ぎでしょうか。

あるいは日本では,民謡は労働とか歩きながらの作業に密接に関わってきたから,必然的に偶数拍子の曲に落ち着くということもあるかもしれません。「ソーラン節」が3拍子だったら,網を引く時に力が抜けちゃいそうですからね。

ヤーレンソーラン♪…小樽運河

ヤーレンソーラン♪…小樽運河

もちろん新しい時代に作られた和歌や俳句もたくさんあるわけだけど(俵万智さんとか夏井いつき先生とかね),そういうリズムが今もどこかに息づいているってことなのかなあ。

盛岡市と岩手山

岩手では南部牛追い歌が歌われてきました

一方,3拍子の民謡ってほとんど思いつかないんですが,どうでしょうかね?…誰か3拍子の日本民謡を知ってる人がいたら教えてください*1

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*1 「夕焼け小焼けの赤とんぼ」は3拍子ですが,あれは民謡ではないですね…

一方,西洋には3拍子の民謡がたくさんあります

スウェーデン民謡には3拍子の曲がけっこうあります

これに対して,西洋には3拍子の民謡がたくさんあります。

例えば僕が今ハマってるスウェーデン民謡では,非常にポピュラーな "Uti vår hage" が3拍子です。

スウェーデン民謡 "Uti vår hage"

スウェーデン民謡 "Uti vår hage"


スウェーデン民謡だと,これもポピュラーです。やっぱり3拍子,"Jänta å Jä"

Jänta å jä

Jänta å jä

この曲に合わせてフォークダンスを踊りながら,メイポールの周りを回るのがスウェーデンの伝統的な夏至祭です。

このように,西洋では民謡がダンスと密接に結びついていて,それで3拍子の曲が多いのかな?と思ったりします(もちろん4拍子の曲もあるけどね)。

グリーン・スリーブスも

スウェーデンを離れても有名な曲はあります。例えばイングランド民謡の「グリーン・スリーブス」はよく知られていますね。

グリーン・スリーブス

Greensleeves

この曲の楽譜は  \dfrac{6}{8} 拍子で書かれていますが,テンポをゆっくり目にとると「 \dfrac{3}{8}拍子 \,\times\,\ 2 のリズム」とみることもできますかね (\dfrac{3}{4}拍子として書かれた楽譜もたまに見かけます)。

いずれにしても,5–7–5… を基調とした日本民謡とはかなり異なっています。

このあたりには,民謡の成り立ちやそこに住む人たちの生活と音楽の関わりが潜んでいるようで,とても興味深いです。

 

追記 (2026 2/12) 御詠歌と越中おわら節

この記事の内容についていくつかコメントをもらいました。

「御詠歌」ってどうなの?

御詠歌というのは,仏教的な内容を詠んだ 5–7–5–7–7 の和歌にメロディーをつけたものです。聴いてみると,歌詞は 5–7–5–7–7…なんですが,特に4拍子には聴こえないですね。


拍子にはとらわれず,自由に音を伸ばしながら歌いまわすところは,西洋のグレゴリオ聖歌に通じるものがあるように感じました。

「越中おわら節」には3拍子の曲がある…?

富山の女王様,ゆかちんさん (id:toyamayama) から,「おわら風の盆」で歌われる「越中おわら節」には3拍子の曲があると教えていただきました。


この演奏↑をYouTubeで何度も聴いているんですが,強勢がどこにあるかが掴みにくいですね。でもタイトルに「三拍子」と付いているんですが,んー…やっぱり基本4拍子に聞こえるんだけどなあ。有名な合いの手のところだけ楽譜に起こしてみると…

越中おわら節 合いの手

越中おわら節 合いの手

それとも「三拍子」というのは,僕が考えているのとはちょっと違う意味なのかな?あるいは現地で踊りと合わせて聴くと,違うリズムが見えてくるのかなあ?(もう少し聴き込んでみます)。

おわら風の盆(出展 wikipedia)

おわら風の盆(出展 wikipedia)

哀愁を帯びた胡弓の響きに乗せた,独特な節回し。いずれにしても西洋のダンサブルな3拍子とはかなり違いますね*2,*3

でもこの曲が3拍子で記述できるなら,やっぱり3拍子の曲ってダンス(ここでは「風の盆」)と結びついているってことなんでしょうかね?

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*2 おわら節の歌詞に「唄の町だよ 八尾の町は 唄で糸とる 桑もつむ」という一節があります。ここにも,かつて養蚕が盛んだったことが歌われているんですね。養蚕に関する記事は,こちらこちらをご覧ください

*3 盆踊りというと,もう一つ有名な秋田の「西馬音内盆踊り」の旋律も4拍子だと思います

まとめ

日本では万葉の時代から長く 5–7–5–7–7… のリズムで和歌が詠まれてきました。それらの歌は4拍子のリズムに乗っており,それが日本では基本のリズムとして定着してきたように見えます。

それと関係があるのか,日本民謡はほとんどが4拍子で記述することができます。

海外の民謡には,3拍子のものも数多く見つかりますが,これはダンスと結びつけて捉えることができるかもしれません。

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「うに香る〜」の和歌もどきから思わぬ方向に空想が膨らみました。この辺り,これからもう少し考えてみようと思います。

 

うに美味そう〜