クマさんコワイ
この間,また奥多摩で登山者が熊に襲われましたね。川苔山ということでしたが,僕も何度か登っている山なので,人ごとではありません。奥多摩は最近特にクマが多いイメージです。自宅から一番近い山域なのですが,行くのが怖くなっちゃう。
実は今までに,山で一度だけクマに遭遇したことがあります。あれは4年前,今回の現場からそう遠くない,奥秩父・笠取山でのことでした。当時のことを考えると,いろいろと思うところもあるのですが,自分の忘備録も兼ねて書いておこうと思います。
巣から落ちた子ツバメに出会う
クマさんに出会った奥秩父山行は7月の終わり,暑い盛りのことでした。中央線塩山駅(山梨県甲州市)からバスに乗って,登山口の「新地平」に行く予定だったのですが,電車に遅れが生じて,朝のバスに乗れなくなってしまいました。することもなく駅前でぼーっとしていたら,おや?巣から落ちた子ツバメがいます。くちばしの下の部分が赤くないところを見ると,イワツバメのようです。
コロコロしていて可愛すぎる (^◡^) 無垢な目でこちらをじっとみたりします。試しに夕食の材料として持っていたかつお節をあげてみましたが,食べません。しばらくすると親鳥が周りを飛んでいるようだったので,その場を離れました。元気でな。がんばれ子ツバメ!
雁峠へ登って行く途中で出会っちゃいました
そんなわけでお昼過ぎのバスで新地平に入り,登山道を登って雁峠(がんとうげ)に向かいました。登山道は沢に沿っていて,特に問題になるような危険な箇所はありません。淡々と登って行ったのですが…。
途中で靴紐が緩んだので立ち止まって,紐を締め直していたら…沢の向こう側の笹の茂みが何やらガサガサと動いています。ん?とそっちを見ていたら,出てきたのはクマさん!沢を挟んで目が合ってしまいました。
ひぃ〜!なすすべもなく固まっていましたが,幸いにして向こうから平和的に去って行ってくれたので事なきを得ました。そのクマさん,後から思い出すと,黒くてとても毛艶が良くてきれいでした。割と若い個体だったのでしょうか。
ところでこの時はクマ鈴を持って行くのを忘れていたのです。もし鈴を鳴らしながら歩いていたら,クマと会わずに済んだのでしょうか?それはわかりませんが。
それでですね,クマさんが去っていったあとアワワワ!となりまして,クマ鈴をなんで忘れたんだ,ウワァ〜!ってなりまして。
そのあと自分がどんな行動をとったかというと…。口で「チリンチリーン!チリンチリーン!」と言いながら歩いたのです。歩いていて横の藪がガサガサと音を立てたりすると(←風かな?),慌ててでっかい声で「チリンチリーン!! チリンチリーン!!!」と繰り返したりして。今思うと本当にアホだったなあと笑ってしまうのですが,その時は大真面目だったんです (^ ^;)
そんなこんなで,この日はなんとか無事に雁峠に登りつき,さらに歩いて笠取小屋のテントサイトまでたどり着いたのでした。
テントの中で考えた
テントに入って,落ち着いて考えました。あの時,靴紐が緩んで結び直すようなことがなければ,クマさんに気付くこともなく普通に歩き続けていたと思います。そしてそんな風に,「いる」のに気づかずに歩いているときは結構あるんだと思います。出会ってしまうきっかけは様々ですが,私たちが思っている以上にクマは山中にたくさんいるのかもしれません。
奥秩父は山域全体が深い森林に覆われているのが特徴です。この森の中にクマをはじめとする野生動物がたくさん住んでいて,木々に実ったどんぐりなどを食べながら暮らしているということですね。そんなことを思うと,なんだかうれしくなってしまうのでした。また会いたいか?と聞かれれば,首を光速で横に振りますが。
クマさんに怯えながら星を撮ったりしました
この夜ははじめガスがかかっていたのですが,22時をすぎると星空が広がりました。そこでテントを出て,見晴らしが効く稜線まで上がります。クマさんに出会ったあとなので夜出歩くのはちょっとコワかったけど (^ ^;)
でも怯えながら頑張った甲斐あって,この夜は素晴らしい星空でした。北天の星ぐるぐるを撮って,カメラの電池が切れたところで撤収です。
奥秩父主脈を歩いて雁坂峠へ
翌朝,テントをたたんで,奥秩父主脈を西に進みました。朝の稜線から見える富士山がきれいです。
森に差し込む朝の光も清々しい。カメラの電池が切れているので,スマホでの撮影ですが。
燕山,古礼山と山頂を踏んでいきます。そして水晶山の苔の森を抜けたら,雁坂峠(かりさかとうげ)に出ます。
雁坂峠は日本三大峠のうちの一つだそうです(あとの2つは南アルプスの三伏峠と北アルプスの針ノ木峠)。ここに重いザックを置いて,雁坂嶺を往復してから広瀬湖へ下山。
このコースを辿ることは最初から予定していたのですが,雁峠から新地平へ戻るコースで下山しろと言われたら首を横に振ったでしょうね。クマさんに出会ったところをもう一度通って下山するのはやっぱりコワイ。
日本の森は,動物たちでいっぱい!
この時の奥秩父山行ではクマさんに出会ったわけですが,この他にもいろいろな山域で野生動物に出会いました。サル,シカ,リス,あとは写真がありませんがカモシカ。
動物たちが暮らす豊かな森が,日本の山にはまだたくさん残っています。うれしいことです。
おわりに
というわけで,「山でクマに出会ったらどうする?」というタイトルに対して,特に斬新な答えを提示できるわけではありません(スミマセン)。やはり相手を刺激しないように静かにその場を立ち去るのがいいということになるでしょうか。
クマ鈴に効果があるかどうかについては,いろいろな意見を見聞きします。ですが見通しのきかない樹林帯で,出会い頭の邂逅を避ける意味では「あり」かなと思っています。
ところで僕が山登りを始めたのは高校生だった頃,登山部でのことです。当時は北海道の山(大雪山など)を歩いていました。ヒグマに会わなかったのは幸運だったのかもしれません。