「日本一高い山は富士山。では2番目に高い山はどこでしょう?」この問いは,なぜか最近よく耳にするようになりました。
日本で2番目に高い山は…そう,南アルプスの北岳です。標高は 3193 m。
南アルプス北部の稜線には,3000 m 越えの山が3座連なっています。北岳に加えて,間ノ岳 (3190 m),そして農鳥岳 (3026 m)。
これらの山々を総称して,「白峰三山」(しらね三山)と呼びます。
白峰三山は,奥多摩や奥秩父の山からもよく目立って見えます。特に晩秋から春先にかけては,その名の通り山肌が白く輝いてとても魅力的です。
そんな白峰三山,以前から縦走したいと思っていました。
さらに昨年,この連峰を鳳凰三山から間近に眺めて,いっそうその思いが募っていたんですよね。
鳳凰三山縦走の記録はこちら↓
- 白峰三山縦走の計画を立てよう
- 広河原から入山します
- 白根御池小屋でひと休み
- 草すべりを登る
- 好展望の尾根に乗りました!
- 高度3000 mの尾根へ
- 北岳肩の小屋に到着
- 北岳に来ただけ
- 肩の小屋テント場の夜
- 1日目記録
白峰三山縦走の計画を立てよう
白峰三山縦走,今回は2泊3日で行ってきます。広河原から入山して,奈良田に下りるオーソドックスなルートです。
出発は金曜日なので,甲府駅を出発するバスが9時発の便しかありません*1。この場合,広河原に着くのが11時になります。
登山を開始するにはちょっと遅めの時間ですが,がんばれば肩の小屋まで上がれるでしょう。
2日目は北岳,間ノ岳を縦走して,あの農鳥小屋でテント泊します。ただ今年は農鳥親父(敬愛と畏怖を込めて,こう呼ばせていただきます)が不在で,農鳥小屋は「避難小屋」として開けられている模様*2。
山場は3日目です。農鳥岳を越えて奈良田へ下山するコースは定番ですが,標高差 2200 mを一気に下らなければなりません。これはキツそうですねえ…。がんばらなければ。
*1 芦安駐車場まで車で行けば,平日でも4時半発のバスがあります。
*2 農鳥小屋と親父さんは,登山者の間ではよく知られた魔境とその主。どんなところか気になる人は,このサイトをどうぞ ↓
広河原から入山します
迎えた9月29日金曜日。甲府駅を9時5分に出るバスに乗って,南アルプス北部の登山基地,広河原に向かいます。到着したのは11時。
登山センターで登山届を出し,身支度をしたら,さっそく北岳肩の小屋を目指して登っていきます。
肩の小屋までの標準コースタイムは5時間40分。ちょっとタイムを巻き気味に行く必要がありますね。
いい天気。歩き始めると,遥か遠くに北岳の頂上が見えました。
ほどなくして,野呂川にかかる長い吊り橋が現れます。この吊り橋を渡って入山です。
登り始めは樹林帯です。最初は緩やかだった登りも,だんだん斜度を上げていきます。はじめは針葉樹林でしたが,登っていくとやがてブナの林になりました。
朝だからまだ元気。快調です。
木々はまだあまり色づいていないですね。暑かった今年は,やっぱり紅葉も遅れ気味なんでしょうか。
登山道には,ところどころ「赤色チャート」が転がっています。
遠い昔,海底で珪質プランクトンである放散虫が堆積してできた「チャート」。その中でも鉄分を多く含むこの岩は,南アルプスに多くあります。
このことは,南アルプスが海底が隆起してできた山脈であることを示しています。
また南アルプスの正式名「赤石山脈」の名は,赤色チャートが多くあることから名づけられたんでしたっけ(特に赤石岳付近ね)。
白根御池小屋でひと休み
広河原を歩き始めてから2時間,最初のチェックポイント,白根御池小屋に到着しました。なかなかいいペース。
これが白根御池でしょうかね。想像していたより小さい池かも。白馬の八方池みたいなのを想像してたんですが,ちょっと地味ですね (^ ^;)。でも山肌と青空を映してきれいです。
ここにテントを張るのも気持ちよさそうですね。時間が押すようならここに泊まることも頭にありましたが,その必要はなさそうです。
お昼ごはん休憩をしてから,先に進むとしましょう。
草すべりを登る
さて,再び歩き始めますか。
白根御池小屋からは「草すべり」と呼ばれる急登に入ります。傾斜は急ですが歩きやすく,ぐいぐい標高を稼げます。
「草すべり」というくらいだから,草原状の急斜面を登っていくことを想像していたんですが,実際は「まばらな樹林帯」という感じでした。木々がまばらなので,空が広く感じられます。
そんな草すべりの登りですが,今日はやけに調子が良くてどんどん行けます。
GPSが表示する標高がぐんぐん上がっていくのが気持ちいい!
小さな沢に桟橋がかかっている道。木々の間から鳳凰三山がチラチラ見えてきました。
鳳凰三山の山肌には木がないところがあって,「わー」って書いてあるように見えるんですが ↑(そんなわけないけど)。
好展望の尾根に乗りました!
どんどん登ります。本当に調子が良く,標高が3000 m近くなっても息が切れません。1ヶ月前の穂高縦走で高度順化ができたのか!?
登り続けると傾斜が緩み,ついに樹林限界。尾根状の地形のところに出ました。ここで小太郎山へ伸びる尾根を右に分けます。
尾根に出ると,一気に展望がひらけます。
東には,野呂川渓谷を挟んで鳳凰三山。花崗岩の白い山肌が輝くようにきれいです。地蔵岳のオベリスクは遠くからでもよく目立ちますなあ。
北には甲斐駒ヶ岳。見事なまでのピラミダルな山容。
甲斐駒ヶ岳は日本アルプスきってのイケメン山だと思います。形が端正なだけではなく,花崗岩の山肌が白く輝くのもいい!
かの深田久弥も「仮に十名山を選ぶとしたら,甲斐駒ヶ岳は外さない」とまで言っていますし。
西側を見れば,草紅葉の谷。そしてその向こうに,「南アルプスの女王」こと仙丈ヶ岳。どっしりとした山体に,顕著なカールを持つ山です。
この山には,花の季節に行ってみたいと,ずっと思ってるんですけどね。
2019年の台風19号で広河原から北沢峠への南アルプス林道が崩壊し,仙丈ヶ岳へのアプローチは以前より大変になってしまいました*3。
*3 現在北沢峠に行くには,長野県側から回り込む必要があります。
高度3000 mの尾根へ
尾根に出るとおおむね緩やかな登りになりますが,たまにこんな岩場↓も出てきます。
とは言ってもそんなにハードではなく,なんなく越えていくことができます。
標高がかなり上がってきました。北岳バットレスが目の前に見えてきます。高山の雰囲気がしてきましたね!
振り返ればこんな道。草紅葉の尾根に,ひとすじの登山道が続きます。風もおだやか,気持ち良い秋の山です。
ひと月前の穂高は岩ゴツゴツだったから,今度はこういう伸びやかな尾根を歩きたかったんですよね。
北岳肩の小屋に到着
気持ちのいい尾根上の道をたどり,15時40分に北岳肩の小屋に到着しました。登山口から4時間弱。今日はやけに調子が良かったなあ。
ここはちょうど標高3000 m。天と地の間,素晴らしいロケーションです。
この場所から見る甲斐駒ヶ岳。草紅葉の尾根と深い谷の向こうに聳え立っています。カッコ良すぎでしょう!
ところで僕は,日本アルプスの山を,ヒマラヤの高峰に重ねてイメージすることがあります。
甲斐駒ヶ岳はダウラギリかな。他には奥穂高岳がエベレスト,前穂高岳はローツェ,針ノ木岳は ガッシャーブルムIV峰 ですかね(妄想が過ぎるかな?)。
さて,肩の小屋のテント場はそこそこの盛況ぶり。いつものごとく,テント場の端の方,静かに過ごせる場所を探してテントを張ります。
天気さえ良ければ,テントから顔を出すだけで絶景が見られるでしょう。
北岳に来ただけ
さてさて。
肩の小屋の前には,かの有名なダジャレ「北岳に来ただけ」が書かれています!
日本第2位の高峰であるにもかかわらず,その地味な名前のせいで損をしていると言われる北岳。でもいいじゃないですか。こんな最高の親父ギャグがあって。
ちなみに登山3大親父ギャグは何でしょう?「北岳に来ただけ」,「飯豊はいいで!」は確定としてもう一つは?
僕は元札幌市民として,「藻岩山はもういいわ」を挙げたい!
…え?そんなことどうでもいいって?いや,これはチョー重要な問題なのです。親父ギャグを口にせずにはいられないおっさんとしてはね(笑)。
肩の小屋テント場の夜
日が落ちました。テントの前に三脚を立てて,星空を撮ってみます。
時間的にまだ薄明が残っているし,満月に近い月明かりの影響もあって空が明るく,露光時間を十分にかけることができません。
それでも,夏の名残の天の川がなんとか写りました。
こちら↓月とマイテント。雲海が月光に照らされています。
雲がひときわ盛り上がっているところがありますが,これは富士山の頂上を包んでいる雲です。
ところでこの写真,テントがけっこうカッコよく写ってると思うんですが,どうでしょう。ステラリッジドームの広告に使ってくれたりしませんか?モンベルさん (^◡^)。
小屋の前から,テント場を「引き」で撮ってみましょう。肩の小屋のテント場は,素晴らしい環境にあることがわかるかと思います。
文字通り「雲上の別天地」。それにしても月明かりが明るいですね。
テントの中は整頓に努めて,なるべく快適に過ごしたいですね。ソロだからまあゆとりはあるんですが。
小屋で買った甲州ワインを飲みながら晩ごはんとします。南アルプスの山小屋は,地元のワインを売っているのがいいですね。
小さめのプラカップ入りだから,飲んだあともそんなにゴミが出ないし。
この夜は冷え込みました。標高が高いからね。リミット –4°C のシュラフですが,寒くて夜中に何度か目が覚めました。
続きます。
1日目記録
2023年9月29日
広河原 (11:25) – 白根御池小屋 (13:20–13:35) – 小太郎尾根分岐 (15:05–15:10) – 肩の小屋 (15:40)
休憩を除いた総行動時間 3時間55分
こちらも見てね