前記事「【南アルプス】白峰三山(北岳,間ノ岳,農鳥岳)を縦走してきました––1日目:広河原から肩の小屋へ」の続きです。
縦走2日目は,日本で第2位,第3位のの標高を持つ北岳,間ノ岳を越えて,農鳥小屋を目指します。
寒い朝を迎えました
縦走2日目を迎える,北岳肩の小屋のテント場です。かなり冷え込んだようで,夜中に何度か目が覚めました。
2時30分に起床。いつものごとく,ノロノロとした動きでシュラフをたたみます。
テントから顔を出してみると,正面に北岳とオリオン。一枚撮っておきましょうかね。
写りはイマイチかなあ。満月に近い月明かりがあって,空が明るいから仕方がないね。でもこれで,三脚と超広角レンズを持ってきたのが無駄にならなかったからヨシ!
テントに戻って,これまたいつも通りコーヒーとワッフルの簡単な朝食をとり,パッキングを済ませます。
さあ出発しよう!よく晴れているからきっと最高の朝になるぞ…と思ってテントから顔を出したら
ガスってる…。
むむむ,ちょっとの間にガスに包まれたようです。
登っていく間にガスが取れたりしないかなあ。一縷の望みを胸に,北岳へ向かいましょう。
北岳に登ります
夜明け前の暗い登山道を,ヘッドランプを頼りに登り始めます。ガスもかかっているので視界が良くありませんが,踏み跡やペンキマークを忠実に辿っていけば問題ありません。
45分歩いて,北岳(3193 m)に登頂です!晴れていれば日本第二の高峰からご来光を拝めるのですが,うーん虚無の世界ですね。
北岳山頂でご来光を待つ人々。みんな考えることはいっしょですね。僕もガスが取れるのをしばらく待ってみましたが,その気配はありません。
ここでのご来光は諦めて,歩き始めるしかないですね。ダウンジャケットを着ていたけど,寒いからそんなにじっとしてられないし。
頂上近くにはこんな岩。これは偽イルカ岩でしょうか (^ ^;)。燕岳のイルカ岩よりは大分小さいですが。
かの深田久弥は北岳を「謙虚な山」と評したようですが,この偽イルカ岩にも謙虚さが溢れているように思います(ホントかぁ?)。
…てなわけで,ガスに覆われて展望のなかった北岳。まさに「北岳に来ただけ」だったな!
天空の縦走路をゆく
北岳山荘へ下ります
北岳から,間ノ岳へ続く稜線をたどります。
北岳は日本で2番目に高い山。そして間ノ岳は3番目に高い山。つまりこの2座を結ぶ稜線は,日本で一番高いところをゆく道ということです。
まさに「天空の縦走路」。
ガスってて展望がないのが残念だけどな!
歩き始めると,こんな岩場も出てきます。
こりゃ結構険しいな…と見せかけて,縦走路は岩峰を巻いていくので問題なし。
北岳から下っていくと,稜線に光が差してきました。3100 mあたりを境にして,その上に雲がかかっているみたい。
縦走路でも標高を下げたところ(とはいっても3000 m以上あるんですが)はこの通り。山肌が見えていますね。草紅葉がきれいです。
そんな道を歩いて,6時50分,北岳山荘に到着しました。
今日泊まる農鳥小屋は,避難小屋として開けてあるだけなので,お酒が買えません。夜テントで飲む甲州ワインを調達しておくことにしましょう (^ω^)。
ワインを買ったついでに,小屋のスタッフさんに「農鳥小屋の水場は使えるかわかりますか?」と聞いてみました(こっちがホントの目的ですよ!)。
すると返ってきた答えは,「当てにしないほうがいい。ここで汲んで行ったほうがいいですよ」。
ということで,貴重な水を分けてもらいました。ありがとうございます。
水とワインで重くなったザックを背負って再び歩き始めます。
少し登ったところで振り返ると,八本歯のコルのギザギザが見えました。
中白根山へ
北岳から間ノ岳へと稜線を辿ると,その間に「中白根山」というピークがあります。
マイナーピークとはいえ,堂々の3000 m越え。けっこう登りごたえがあります。
相変わらず尾根は雲の下,でもピークは雲の中。この状況,まさに「天と地の間」なんだよなあ。
幅広い尾根をサクサク歩き,北岳山荘から1時間ちょうどで中白根山(3055 m)に到着です。何にも見えないけど,2回目の朝食をとって休憩としました。
ここで振り返っても,やっぱり北岳は雲の中。その姿を見せてはくれません。恥ずかしがり屋さんだなあ。
間ノ岳に登頂です!
中白根山を発って,再び間ノ岳へ歩き始めます。
草紅葉の稜線を歩くと,眼下に雲海が広がっています。ここは雲海の上。だけど頭上にも雲。2層の雲の間に稜線があって,その上を歩いています。なんだか不思議な体験をでした。
そんな道を歩いていると,ん?ガスが動き始めたかな?間ノ岳が少しずつ姿を見せるようになってきました。
南アルプスはどの山も一つひとつが大きく,圧倒的な存在感があります。雲の間にチラチラ見える間ノ岳もその例に漏れません。
こうやって縦走路を歩いているだけでも,その雄大なスケールを感じることができます。
山がでかいだけあって,間ノ岳への道もいろんな場所を通ります。こんな岩峰を巻くところも。これはもし晴れていれば,変化にとんで楽しい道なんだろうなあ。
ガスはさらに流れ,時々青空が見えるようになってきました。期待が高まりますね!
そしてついに…。間ノ岳が姿を表しました。でかい!まだけっこう遠い!そして何よりも,カッコいい!
こりゃあ,肩の小屋を出発するのを少し遅らせるのが正解だったかもしれないなあ。そうすれば北岳でも展望が効いたかもしれないね。
ガスが取れてきたタイミングで間ノ岳(3190 m)に登頂です!北岳山荘で水を補給したぶん少しだけペースは落ちてるけど,昨日に引き続き快調です。
それにしても「間ノ岳」というネーミングなあ…。北岳も地味だけど,間ノ岳はさらにひどい。北岳と農鳥岳の間にあるから間ノ岳って…。日本第3位の高峰なのに。
「南アルプスの山に名前をつけた人,ちょっと出てきなさい」と言いたくなるんだよなあ。
間ノ岳直下は広々とした斜面が広がっています。行く手には,これまで見えていなかった農鳥岳。
晴れてきたことだし,ここで自撮りをしておきました(笑)。
中白根山方面を振り返るとこんな風景。なかなかダイナミックな稜線です。でもやっぱり北岳は雲に隠れていますね。「天空の縦走路」,これはいつか再訪する必要がありますね(気が早いな)。
魔境・農鳥小屋へ
間ノ岳を下る
間ノ岳でのんびりしました。それでは次のチェックポイントに向かいますか。
ある意味,今回の最大の難所である(笑)農鳥小屋への下りです。
間ノ岳の下り始めは高原状の地形に続く,緩やかな道。
やがて道は斜度を増し,西農鳥岳へ続く尾根を辿るようになります。眼下に続く縦走路を目で追うと,農鳥小屋の赤い屋根が見えてきました!
…なんだか妙な緊張感が走ります(笑)。
普段なら小屋の前に陣取った農鳥親父が,双眼鏡で登山者を監視して,いや見守っているというので,シャキシャキと歩くように意識します。
今は農鳥親父はいない…はずだけど。…ホントにいないよね?(汗)
でも北岳山荘で水を補給した分,ザックがちょっと重いんだよなあ。
歩いていると,出ました!農鳥親父の手によるペンキマーク。赤と黄色のペンキで「←ノウトリ」。
いよいよ農鳥親父のテリトリーに入ってきたようです。ここからは魔境ですぞ。
尾根を下っていくと,農鳥小屋がますますはっきりと視認できるようになってきました。
そして振り返ると,間ノ岳の大きな山体が覆い被さるように見えています。
ここにきて,白峰三山の素晴らしい景観を楽しめるようになってきましたね!
農鳥ワールドのディープな世界
さて,登山道の両側には,農鳥親父の手による,おびただしい数のペンキマークがあります。これなら多少ガスっていても,道迷いの心配はなさそうです。サンキュー農鳥親父。
それにしても何ですかねえ,このおどろおどろしい文字は。
いっそのことPC用に,「農鳥フォント」を売り出してくれないだろうか。物好きな山登ラーなら絶対買うよね。
必要があって「うけつけ」と入力しても,どうしても「ウケケケ」になってしまう仕様(泣)。
でもちゃんと絵文字もあるし,
顔文字もあります。
このニコちゃんマークを描きながら,農鳥親父がどんな顔をしてたか想像すると,草なんだ(笑)。
農鳥小屋に到着しました!
ディープな世界を垣間見ながら歩くと,いつの間にか西農鳥岳が大きくなりました。雲の動きがダイナミックです。でっかいぞ,南アルプス!
背後の間ノ岳も見事です。っていうか,晴れてきたね。
そして10時55分,ついにあの農鳥小屋に到着しました。この時間の到着なら,農鳥親父がいても怒られることはないでしょう。
恐る恐る小屋をのぞいてみましたが,やっぱり親父は不在。主のいない魔境はひっそりと静まり返っていました。それでも何となく,不穏な雰囲気が漂っているように感じられるのは気のせいでしょうか(笑)。
ウケケケ棟の向かいに置かれた料金箱に幕営料を払って,テントを設営します。テント場一番乗りでした。
ここは西農鳥岳と間ノ岳の間,素晴らしいロケーションです。ロケーションはね。
マイテントと西農鳥岳。快適そうでしょ?
反対方向,間ノ岳をバックにしたテントも撮ろうと試みたんですけどね。どうやっても”あの”トイレが画角に入ってしまう。それで諦めたんですが,今思えばトイレの様子も撮っておくべきだったな。あれは世界遺産に登録されるべき,恐るべきトイレだわ。
西農鳥岳に登ってきます
時間が余っちゃうなあ…
テントを貼り終わって,お昼ごはんを食べてもまだ12時。のんびり休むのもアリだけど,さすがに時間がありすぎるなあ。
目の前に見えている西農鳥岳が晴れている…いっちょう登ってきますかね。
ということで,ザックに最小限の荷物を詰めて,登り始めました。西農鳥までの標準CTは,往復1時間40分くらいです。
ここまでに比べてちょっと岩岩しい尾根を登っていきます。途中で振り返ると,農鳥小屋がはるか下。そして間ノ岳が素晴らしい!
結構な急登でしたが,頂上稜線に出ると傾斜がゆるんで,西農鳥岳の頂上が近づいてきました。
これまで隠れていて見えなかった塩見岳が姿を現しました。南アルプスのド真ん中に聳える3000 m峰。意外に近くに見えて驚きます。
さらに進むと,間ノ岳の影から北岳も姿を現しました!
うん,あっちも晴れてきたようですね。やっぱり今日は出発を遅らせるのが正解であったか。時間に余裕があることはわかってたけど,どうも「農鳥小屋には早くつかないとマズい」というのが頭にあってね。いなくてもこの存在感,農鳥親父恐るべし(汗)。
西農鳥岳に登頂しました
農鳥小屋を発ってから45分,西農鳥岳(3051 m)に到着です。なにげに農鳥岳本峰(3026 m)よりも標高が高いですね。
三脚はテントに置いてきたので,山頂標タッチで証拠写真。
頂上の眺めは最高。南を見れば,塩見岳の尾根の向こうに,悪沢岳。南アルプス南部のジャイアント,日本で6番目に高い山です。その向こう,雲の隙間からわずかに頭をのぞかせているのは赤石岳かな?
赤石〜悪沢の縦走もいつか行きたいと思ってるんですけどね。あっちは白峰三山よりも,さらに体力勝負になるんだよなあ。
北側,あらためて間ノ岳と北岳。この圧倒的スケール感よ。
急いで引き返して,2座を結ぶ稜線を歩きたくなりますが,また今度。
間ノ岳,北岳をズームアップしてみましょう。間ノ岳の巨体と北岳のとんがり具合,どちらもとても魅力的。
…にしても,この岩の塊が海底からニョキニョキニョキッ!て隆起してきたのか。地球ってすごいね。
こちら東側,農鳥岳方面。雲海の上に,ちょっとだけ頭を出してますね,フジッサーン! /*o*\
雲が取れてきたようだし,農鳥岳にも足を伸ばそうかと思ったんですけどね。
翌日は早立ちして農鳥岳でご来光を迎えるつもりだったのと,奈良田までの下山に余力を残した方がいいかな?と思って,ここまでにしておきました。
でも翌日は大荒れの天気で農鳥岳は虚無の世界になったので,行っておくべきだったなあと激しく後悔しているところ。
下山はあっという間です。荷物が軽いからね。西農鳥の尾根を駆けるように下り,30分でテントに帰着しました。
ところでさっきから魔境だ何だって言ってますけどね。農鳥岳は素晴らしい山だと思いますよ。北岳,間ノ岳の眺めが素晴らしいし,晴れていれば富士山もよく見える。そして何より,その山容がカッコいい!
農鳥小屋の夜を迎えます
西農鳥岳を往復してきても,まだゆっくりできる余裕があります。テントの中はひとりぼっちのパラダイス。孤独と自由を求めて,テント泊装備の重さに耐えているところはありますね。
エアマットに寝っ転がって,農鳥方面の山を眺めます。そして地図を眺めながら,のんびりとワインを飲んだりしてね。
いやあ最高です。トイレに行く時だけ特別な緊張が走りますが。晩ごはんもゆっくり食べて,早々にシュラフに入りました。余裕です。
…夜中に爆風に見舞われて,大変な思いをしたのはのちの話。
続きます。
2日目記録
2023年9月30日
北岳肩の小屋 (4:40) – 北岳 (5:25–5:50)– 北岳山荘 (6:50–7:10) – 中白根山 (7:50–8:05) – 間ノ岳 (9:10–9:40) – 農鳥小屋 (10:55) – 西農鳥岳へ出発 (12:20) – 西農鳥岳 (13:05–13:30) – テントに帰着 (14:00)
休憩を除いた総行動時間 6時間0分
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