sunsun fineな日々

子育てしながら,山を歩いたり星を見たり料理したり写真を撮ったり

東京都内の猫を祀るお寺・神社を訪ねる––養蚕と猫と日本人

はじめに–––養蚕と猫と日本人

かつての日本では,耕作地の4割近くを桑畑が占めていました。蚕を育てるために桑の葉が大量に必要だったのです。農家の人たちは蚕を大切に育て,蚕が作る繭は美しい絹糸に加工されました。そして日本では着物文化が花開きました。

明治時代に入ると蚕の品種改良が進み,日本は生糸の輸出で大いに潤いました。小さな虫が吐き出す細い糸が,日本を近代国家として成長させる原動力となったのです。

蚕にとってネズミは天敵でした。そこで養蚕農家では,ネズミから蚕を守るために猫が飼われていました。「昔の日本では,猫はペットとしてではなく,ネズミを取るために飼われていた」とよく言われますが,それは養蚕との関連からきているのです。

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かねてから日本では,猫は蚕の守り神として飼われてきました

猫は蚕の守り神として大切な存在でした。このため養蚕が盛んだった地方には,猫を祀った神社やお寺が残っていて,狛犬ならぬ狛猫がいたりします。豊蚕を祈願し,繭がたくさん採れた年にはお礼参りをしていたんですね。

猫を祀った寺社は全国に存在し,行ってみたいところがいくつもあります。僕は最近,東京都内にある猫神社・猫寺をいくつか訪ねてみました(ただし養蚕との関係が不明なところも含まれています)。

立川・蚕影神社–––赤い目のお猫様

立川市の郊外に阿豆佐味天神社があります。場所はこちら。JR立川駅から「箱根ヶ崎駅東口」行きのバスに乗って「砂川四番」で下車すると目の前にあります。

この神社にはいくつかの神様が祀られているのですが,そのうちの一つが蚕影神社。金色姫命=養蚕の神様が祭神だそうです(古事記には大宜津比売が須佐之男命に斬り殺された時に,その体から蚕が生じたと書かれていますが,この神様との関係はどうなっているのかな?)。

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また最近は,行方不明になってしまった猫を返してくれる「猫返し神社」としても知られ,境内の樹には「◯◯ちゃん(猫)が帰ってきますように」と書かれた絵馬がたくさん掛けられていました。

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境内には「猫返し神社」の絵馬がたくさん

境内を奥に進むと,可愛らしい猫像があります。その目は赤く透き通ったガラスでできており,こちらをじっと見つめてくるようでした。猫好きの人なら「可愛いー!」ってなることうけあいです。

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立川・蚕影神社の猫像

またこの猫像の隣には水天宮が祀られていますが,ここにもまんまる猫像がいました。これも可愛いくて,思わずニンマリしてしまいます。

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水天宮にもまんまる猫が (^ ^)

立川から青梅にかけては,かつて養蚕が盛んだった地域のようですね。東京の中心からほど近いこの地域でも蚕が育てられていたということには感慨を禁じ得ません。

青梅にも蚕の守り神として猫を祀った神社がいくつかあるようなので,いつか機会を見つけて行ってみようと思います。

赤坂・美喜井稲荷神社–––猫の額ほどの境内

次はぐっと都心に移動して,赤坂の美喜井稲荷神社です。東京メトロ赤坂見附駅から徒歩5分ほどのところにありますが,気をつけないと見逃してしまうような場所にあります。その境内の広さは,まさに猫の額ほど。

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美喜井稲荷神社の境内は,この階段を登ったところにあります

ビルに沿ってつけられた階段を登って境内に入ると,猫像がお出迎えしてくれます。赤い布をまとってお洒落です。

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赤坂・美喜井稲荷神社の猫像

そして振り返ると二匹の猫をあしらえた鳥居があります。左側の猫は腕に小鳥を乗せています。一方,右側の猫は人の上に乗って魂を食べている?不思議なデザインです。

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鳥居の上に二匹の猫が

ところで美喜井神社の由緒として「この神様にお願いするときは蛸を召し上らぬこと」というのがあって,タコ好きの僕としてはちょっと困った困った。この夏もタコのマリネとか作っていっぱい食べたなあ (^ ^;)

なおこの神社は虎屋本店のビルにめり込むような形で存在しています。虎屋本店の地下には喫茶店もあるので,この神社を訪ねた時にはそちらに立ち寄るのもいいかもしれませんね。

西巣鴨・西方寺–––花魁高尾に寄り添うお猫様

次は西巣鴨にあるお寺,西方寺です。このお寺はもともと吉原の遊女の投げ込み寺として浅草に建っていましたが,関東大震災で消失して現在の場所に移転したそうです。

言い伝えとして以下のような話が伝わっています。

ある遊女が厠へ入ろうとしたところ,ついてきた猫がそれを遮ろうとしたので,女郎屋の主人がその猫の首をはねてしまった。猫の首は撥ねられてなお,天井に張り付いていた大蛇に噛みつき,遊女を救った。遊女はこの猫を哀れと思い,ここに祀った。

なお大蛇から女性を守ろうとした猫が首を切られてしまうという話は様々な地方に伝わっているようです。

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西方寺・高尾の墓。向かって左下に,ひっそりと猫像があります

西方寺でも,猫像は花魁・高尾の墓の脇にひっそりと佇んでいます。しかし傷みが激しく,左耳と左腕は欠けてなくなっていました。この猫が祀られた経緯となった言い伝えと合わせて,哀れを誘います。

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西方寺の猫像。花魁・高尾の墓に寄り添うように佇んでいます

またお寺の参道入口近くに「これも猫?」と思われる可愛らしい感じの石像がありました。こちらにも何か謂れがあるのでしょうか?

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これも猫像?

浅草・今戸神社–––境内は猫だらけ

最後に浅草の今戸神社です。東京メトロ浅草駅から隅田川に沿った道を歩いて行くと,15分くらいで到着します。

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ここは境内が猫だらけ。まるで「招き猫の楽園」といった趣です。実際,ここは招き猫発祥の地なんだそうです。

拝殿には大きな招き猫が鎮座して,参拝客を迎えています。これはかわいいなあ (^ ^) 

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大きな招き猫が参拝客を迎えてくれます (^ ^)

他にも猫の置物や石像などがあっちにもこっちにも置かれていて,境内を歩いているととても楽しい気分になってきます。

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境内は猫だらけ

お参りの時にじゃらじゃらするあの鈴も,何やらドラえもんの首についている鈴に見えてくるから不思議です。

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これは…ドラえもんの鈴?

社務所にも招き猫のおみくじがあったり,小さなモニタに「招き猫音頭」を踊る巫女さんのビデオが流れていたり(もちろんキメは招き猫ポーズです)。本当に猫一色の神社です。

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社務所にも招き猫がいっぱい

今戸神社にいらっしゃるのは縁結びの神様だそうで,境内はたくさんの人で賑わっていました。可愛くて楽しくて思わず笑顔になってしまうようなところなので,浅草観光の際にはぜひ立ち寄ってみることをオススメします。

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縁結びを願う絵馬もたくさん下がっています

おわりに

東京は意外にも古い歴史を反映したものが数多く残っている面白い場所だと思っていますが,猫寺・猫神社もまた様々な歴史が偲ばれる興味深いところです。

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今戸神社のデュランタとアゲハ蝶

養蚕の歴史を調べると興味が尽きないのですが,絹がナイロン等の合成繊維に取って代わられていくのと同時に日本から桑畑は消えていきました。そして2013年,ついに桑畑の地図記号が廃止に至っています。猫寺・猫神社を訪ねることは,そんなちょっと切ない歴史に触れる小旅行でもあります。

都内および周辺には,まだいくつかの猫寺・猫神社があるようなので,機会を見つけて訪ねてみたいと思っています。

「お猫様」ではなく「お犬様」(狼像) を祀った神社のお話はこちら

www.sunsunfine.com

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