「山の上に登ったら,白砂のビーチがあったわ」…こう言ったら「こいつは何を言っとんねん!」と思われるかもしれませんね。
でもそんな山があるのです。
南アルプス前衛峰・日向山(ひなたやま)。甲府盆地から見て,甲斐駒ヶ岳の手前にあるこの山は,花崗岩でできており,頂上付近は風化した花崗岩の砂が一面に広がった「ビーチ」になっています。
陽光を反射して白く輝く真砂のビーチ。ここから間近に聳える甲斐駒ヶ岳を眺めたい。
そう思って,GWの一日を使って行ってきました。日向山。
- 日向山について
- 日向山には公共交通機関で行きます
- 矢立石登山口までアプローチ
- 新緑の樹林帯を登る
- 日向山に登頂––白砂のビーチが出現!
- 日向山頂上で至福の時間を過ごす
- 尾白川渓谷まで下山します
- 道の駅はくしゅうまでのんびり歩く
- おわりに
- 登山記録
日向山について
日向山は南アルプスの前衛にある,標高1659 mの山です。
実は僕が日向山を知ったのは,5年前に入笠山に登った時。一緒になったおじさんが「日向山にぜひ登ってみてください。頂上に着くと,ちょっとびっくりしますよ」と言われたんです。
「びっくり?」と聞くと「はい,びっくりします」とだけ,そのおじさん。
それ以来,登る機会を伺っていました。どんなところなのかは,その後ネットで情報を得ていたんですけどね。
日向山には公共交通機関で行きます
行ってきたのは5月4日。ゴールデンウィークの真っ只中なので高速が混んでそうだよなあ…。
他にもいろいろと考えて,今回は公共交通機関で行くことにしました。
実は日向山は,公共交通機関でのアプローチがあまり便利ではありません。調べた末に,こんな手段で行くことにしました。
- 東京の自宅から,中央線各駅で長坂駅まで
- 長坂駅から北杜タクシーで矢立石登山口まで
日向山に一番近いバス停は,北杜市民バスの「道の駅はくしゅう南」です。けれどもここから矢立石登山口までは,歩いて2時間程度かかります。
また長坂駅から道の駅はくしゅうへ向かうバスは,登山に都合のよい時間帯には運行されていません。
そこで行きはタクシーを利用することにします。前もって北杜タクシーに電話して,予約しておきました。かかった時間は30分弱,運賃は5800円でした。
- 矢立石登山口を過ぎて尾白川渓谷駐車場まで下山
- 尾白川渓谷から道の駅はくしゅうまで歩く
- 道の駅はくしゅう南バス停から長坂駅までバスに乗る→中央線で帰宅
帰りは道の駅はくしゅうまで歩いて,北杜市民バスで長坂駅に出ます。矢立石登山口まで下りたあと,尾白川渓谷を経由して道の駅まで行きますが,下りなので1時間半程度で行けます。バスの最終時刻は14:36です(平日は16:46の便もあります)。
矢立石登山口までアプローチ
東京の自宅から一番早く登山口に着くには,各駅停車の電車を乗り継いで長坂駅に向かいます。途中居眠りなどしながら,6時35分八王子発・松本行きに乗車。
八王子から2時間20分揺られた電車を長坂駅で降りると,ホームから甲斐駒ヶ岳が間近に見えます。これですよ,この眺め!
甲斐駒はどこから見てもカッコいいですが,こっち側から見ると「岩の塊がニョキニョキニョキッ!と隆起してきました」という感じがして,地球のパワーを感じます。
電車が来し方を見れば,鳳凰三山もきれいに見えています。SCW気象予報の通り,今日は絶好の登山日和になりそうです (^◡^)。
駅前で待機してくれていたタクシーに乗り込み,登山口へ向かいますよ。
あ,そうそう。登山口にはトイレがないので,駅前で済ませておくのが吉ですよ。
矢立石登山口はこんなところ。身支度を整えて,登って行きましょうかね。
新緑の樹林帯を登る
それでは行きます。道は適度な傾斜で,極端な急坂はありません。よく整備されていて,歩きやすい道です。
久しぶりの山歩きですが,ペースも自然と上がります。
少し登っていくと,頭上が新緑で覆われるようになりました。これは気持ちがいいぞ!
最初は広葉樹林の森です。
グイグイ高度を上げて,中盤以降はカラマツ林になりました。
頂上が近づいてくると登山道の傾斜が緩み,木の間越しに甲斐駒ヶ岳が望めるようになってきます。
もうすぐ頂上!ワクワクしてくっぞー!
日向山に登頂––白砂のビーチが出現!
樹林帯の道をなおも進むと,不意に樹林帯が途切れて,目の前がパーッと明るくなります。
そして突然こんな風景が展開します!(パノラマ写真です)
真っ白い砂が広がる,ビーチとしか言いようのない山頂と,その向こうにそびえ立つ甲斐駒ヶ岳!
この風景には,誰もが「ワァーッ!」と声をあげてしまうでしょう。
快晴の空の下,風化した花崗岩が陽光を反射して,あたりは眩しいくらいの明るさです。頂上にいる人たちのさざめきも明るい雰囲気。
なるほど「日向山」とは。確かに名は体を表していますね。
こちら↑ 八ヶ岳方面。白砂と地面にムクムクと生えてきた岩の数々,そしてカラマツの新緑に映えます!
いやあ,これはすごい眺めだなあ。
甲斐駒から左に目を移すと,どっしりとした佇まいの鳳凰三山。地蔵岳のオベリスクがはっきりと視認できます。
日向山頂上で至福の時間を過ごす
甲斐駒といっしょに自撮りしたりしてね。山頂の風景を堪能します。
花崗岩の尾根には,面白い形の岩がムクムクしています。北アルプス燕岳のイルカ岩を思い出しますね。
カラマツの向こうの谷筋を見るとあっちの山肌も花崗岩でできているようです。
そんなムクムク岩と八ヶ岳。今年は残雪がずいぶん少ないですね。実は今回もチェーンアイゼンを持ってきたけど,雪は全くなかったし。
こっちは雨乞岳かな?この山あたりまで,ギリ山梨県ですね。さらに向こう,入笠山までいくと長野県。
それにしても,甲斐駒ヶ岳の眺めが見事で,何度も同じような写真を撮ってしまいます。
甲斐駒ったら,どっち側から見てもイケメン!
甲斐駒ヶ岳を眺めながら仙丈ヶ岳を歩いた時の記録はこちら
尾白川渓谷まで下山します
そんなにゆっくりしたつもりはなかったんですが,気がついたらもう1時間が経っています。
あまりの景色の良さに,時が経つのを忘れていたみたい。
最後にもう一枚,甲斐駒ヶ岳を撮ってから下山にかかりますか。
下りはじめた直後,森の中に「三角点」の標識が出ているので寄っておきます。標高1659 m。正式には,ここが日向山の頂上ということになるのかな?
新緑の木々をくぐって歩くのは本当に気持ちがいい。生まれたての酸素を,胸いっぱいに吸い込んで歩くよ。
「緑滴る」とはこのことかと思わせるような新緑の森。頂上の風景だけじゃなくて,こんな森の中を歩けるうれしさよ。そういえば,今日は「緑の日」だったっけ。
久しぶりの山歩きだけど元気です。スタコラ下って,1時間弱で矢立石登山口に帰還。
給水したら,帰りはさらに尾白川渓谷まで下ります。
矢立石から下も,気持ちの良い新緑の森が続きます。
ところどころヤマツツジも咲いています。いかにも「初夏の山」という光景。
矢立石から40分ほどで尾白川渓谷に到着。ここにはちょっとした休憩所があります。
すぐ近くには大きめの駐車場もあります。キャンプ場があるからね。それと黒戸尾根経由で甲斐駒ヶ岳に登る人はここから入山ですね。
道の駅はくしゅうまでのんびり歩く
尾白川渓谷からは,車道を辿って道の駅はくしゅうまで歩きます。ゆったり歩いて50分の道のりです。
途中,田んぼに映る八ヶ岳を眺めたり,道が続く向こうの奥秩父山塊を眺めたり。楽しい道。
休耕田にはレンゲソウが咲いています。振り返れば,その向こうに鳳凰三山。
どうして休作中の畑にレンゲソウを植えるかというと,マメ科の植物の根っこに共生する根瘤バクテリアが,ニトロゲナーゼという金属タンパク質を使って空気中の窒素を固定し,窒素肥料を作り出すから…とかウンタラカンタラ。
こちらレンゲ畑と甲斐駒ヶ岳。うーんきれい。この辺で星撮りをするのもいいかもね。
のんびりした道中でしたが,もうすぐ道の駅です。振り返ると南アルプスの眺め。けっこう歩いてきましたね。
道の駅はくしゅうにはバス時刻の10分前に到着。暑かったのでアイスを食べてからバスに乗りました。長坂駅では接続よく,ひと休みする間もなく中央線に乗り込んで帰りました。
おわりに
冬の間は野鳥を追いかけ,4月は桜を追いかけ…で山歩きをサボっていました(苦笑)。
久しぶりだったので大丈夫かな?と思ったけど,まあまあイケました。軽めのコースだったしね。
日向山,そんなにキツくないし景色もいいので,文句なしにおすすめです。矢立石登山口まで車で上がる場合,林道の運転がちょっと大変なくらいかな(クネクネ道ですれ違いの困難な所があります)。
次はナイトハイクして,頂上でマジックアワーを迎えるのもいいですねえ。
登山記録
2024年5月4日
9:45 矢立石登山口 - 10:55 日向山頂上 12:00 - 12:55 矢立石登山口 - 13:35 尾白川渓谷 - 14:25 道の駅はくしゅう
こちらも見てね