季節は冬になろうとしています。山はもう寒いだろうなあ。
この時期は,”ホームグラウンド” たる奥多摩をのんびり歩いて,一年の山登りの「締め」とするのがここ数年の習慣です。
テントの中でお酒なんぞ飲みながら,一年の山歩きを振り返ろうという寸法です。
それで行ってきました,雲取山。今回は奥秩父主脈方面へ足を伸ばし,飛龍山まで縦走してきましたよ。
雲取山と奥秩父主脈縦走路
雲取山は東京都の最高峰
雲取山は,言わずと知れた東京都の最高峰。奥多摩山塊の最奥に位置しており,標高は2017 m。日本百名山にも名を連ねています。
JR奥多摩駅から雲取山の間には「石尾根」と呼ばれる長大な尾根が続いており,途中に六ツ石山,鷹ノ巣山,七ツ石山などのピークを連ねています。
登山コースは奥多摩駅からこの石尾根を辿るもの,山梨県丹波山村の鴨沢から入山するもの,埼玉県側・秩父の三峯神社からアプローチするものなど多岐にわたっており,いずれも一泊二日で歩くのが標準的です。
東京都内にありながら,これだけ奥深く,またバリエーションに富んだコース取りができる山が存在することは,幸せなことだと思います。
奥秩父主脈縦走路と飛龍山
雲取山に至る稜線は,山頂からさらに奥,西側にも続いています。
通常,雲取山を境にして,ここから西は「奥秩父」と呼ばれる山域になります。行政区間でいうと,埼玉県と山梨県の県境ですね。
奥秩父の稜線はいくつかのピークをかけながら,延々と長野県まで続きます。これが「奥秩父主脈縦走路」です。
奥秩父主脈の一番東側に位置するピークが飛龍山(ひりゅうさん)。山梨県丹波山村を見下ろす位置にある山です。
飛龍山は深い森と岩が露出したゴツゴツの尾根を有する,いかにも渋い一座です。また頂上直下には飛龍権現が祀られており,地元では古くから信仰の対象となってきたようです。
今回は雲取山から飛龍山へ縦走します
今回の計画は,1日目に鴨沢登山口から入山し,雲取山へ登ってから雲取山荘でテント泊します。2日目には早朝に再び雲取山へ上がったあと,飛龍山へ縦走して丹波山村に下山するというものです。
もう12月。山の上はかなり冷え込んでいるでしょう。防寒具を多めに持ち,チェーンアイゼンもザックに忍ばせておきます。
その結果,荷物は13.4 kgになりました。最近は12 kg台で収まることが多かったから,1 kg くらい重いでしょうかね。まあ頑張りましょう。
実は最初,「寒いし,荷物を軽くしたいから小屋泊にしようかな?」なんてことも頭をよぎったんですけどね。「テントで寒さに震え,重荷に喘ぐ…それを引き受けるのが,自分のソロ縦走なんじゃないのか?」なんて変な電波を受信しましてね。
結局,いつものようにザックにテント泊装備を詰め込んでの出発となりました。
鴨沢から入山,七ツ石小屋まで登ります
12月2日土曜日,バスに乗って鴨沢へやってきました。都県境を超えて,山梨県丹波山村に入ってすぐのところです。
バス停で身支度をしたら,雲取山登山口へ登っていきます。振り返れば奥多摩湖が眼下に見えます。キンと冷えた空気が気持ちいい。
標高が高くないところでは,まだ紅葉が残ってるみたい。この辺り,何度も歩いた道なので,サクサクと進みます。
登山口は20分くらい登った「小袖乗越」にあるので,一応まだ入山前なんですが,すでに結構な山道です。
都心から少し離れてここまで来ると,空気が澄んでいて気持ちいい!
途中,こんなシブい消火栓もあります。現役の消火栓なのかな?付近に民家はないので,山火事防止のためのものなんでしょうね。
あたりはいかにも奥多摩らしい杉の林に,色づいた紅葉樹が混じる林。すでに山の空気を吸って,生き返るような気持ちになっています。
さて,この鴨沢コース。堂所までは緩やかな登りが続きます。歩きやすい道ですが,ところどころ谷側が切れ落ちているところがあるので注意が必要です(実際,滑落死亡事故も起きています)。
途中,ちょっとした高度感のあるところもあります。気をつけながらもどんどん行きましょうかね。
鴨沢から約2時間登ると堂所。ちょっとした平坦地があって,休憩の適地です。
昔,ここは半丁博打で賑わったということですが,ホントなの?こんな山の上まで上がってきてたのかなあ。
堂所を過ぎると,道には岩が目立つようになり,また傾斜もキツくなります。いよいよ高いところに登ってきたぞ!という感じがしますね。
途中で左に分かれる「巻道」に入ると,七ツ石山を巻いて,石尾根上のブナ坂に直接出ることができます。でも今日は巻かずに七ツ石小屋を目指します。
急な登りをこなして,12時10分,七ツ石小屋に到着。ここまで3時間弱の道のりでした。
小屋番さんに挨拶して行きたいけど,それなりに人もいるしなあ。なんとなく中に入るのが躊躇われて(気が弱いなあ…),外でお昼ご飯を食べました。
七ツ石神社のお犬様
お昼を食べたらすぐに出発。小屋から七ツ石山へ直登する道に入ります。雪がちらつき始めた中をサクサクのぼり,十数分で石尾根縦走路に合流しました。
ここを右へ辿れば,鷹ノ巣山,六ツ石山を経て奥多摩駅まで歩くことができます(標準CT7時間近い,長い道ですけどネ)。また左へ行けば,道は七ツ石山を経由して雲取山へと続いています。
今日はここを左へ辿ります。するとすぐに現れるのが七ツ石神社です。
山梨県丹波山村は狼信仰の里。ここ七ツ石神社には,御眷属たる2頭の狼が祀られています。
以前,七ツ石神社は長年の風雨によって朽ちかけていましたが,地元の方のご尽力によって再建の運びとなりました。
また崩れかけていた狼像(お犬様)も修復がなされて,現在は新しい社殿で山を守っています。
窓ガラスが反射して写真がうまく撮れなかったけど,久しぶりにお犬様に挨拶できたのでよかったよかった。
また社殿には,地元の方の歌が飾られていました。
天高し 七ツ石山の 晴れやかに
錦秋の紅葉 四方山に輝く小袖講中
以前丹波山のTさんから伺った,小袖の人たちと七ツ石神社とのつながり・地元の信仰の温かさを,あらためて感じます。
ところで雲取山は,「鬼滅の刃」では炭治郎の故郷という設定になっています。
誰が置いたのか,七ツ石神社にも小さな禰󠄀豆子が (^◡^)。秩父のお酒,「武甲錦」とともにいるのがまたいいですねえ。
さらにこの辺りは,平将門が敗走したルートだという伝説も残っています。七ツ石神社の背後にある7つの大岩は,将門の影武者の化身とされているんだとか。
神社をあとにすると,すぐに七ツ石山の頂上に着きます。この頂の眺望は素晴らしく,明日登る飛龍山がカッコよく見えました!
…飛龍山への稜線,けっこうアップダウンがキツそうですねえ(白目)。
またこれから向かう雲取山も大きく見えています。うーん,まだ結構遠いね(汗)。
ちょっと空がどんよりしてきたせいか,富士山と南アルプスは,今日は見えていません。相変わらず雪もチラチラ。でも風は穏やかで安定しています。
それでは雲取山へ向かいましょうか。まず七ツ石山を下り,石尾根縦走路を辿ります。
雲取山へ向かいます
七ツ石山を下った鞍部がブナ坂。ここから雲取山へ長い登りが始まります。
その途中で出会うのが,石尾根のアイドル,ダンシングツリー。あいにく曇り空がバックですが,今日も元気に踊っています。
少し登って振り返れば,ダンシングツリーは七ツ石山をバックに,やっぱり踊っていました(笑)。
石尾根はいつ歩いても,明るいプロムナード。今日は富士山が見えていませんが,明るい雰囲気はいつもの通りです。楽しい道ですよ。
ブナ坂から30分ほど登ると,旧奥多摩小屋跡を通過します。ここには素朴な雰囲気の山小屋と快適なテント場があったんですが,2017年に閉鎖になりました。
いいテント場だったんですけどね,残念!
さらに道は樹林帯に続きます。奥多摩小屋跡から急登をこなすと,ヨモギの頭。
標高をだいぶ上げてきたので,飛龍山が自分と同じくらいの目線に見えてきました。
それにしても山深いですね。ここ,東京なんですけどね(石尾根縦走路は東京都と山梨県の県境です)。
だんだん樹林がまばらになり,視界が開けてきます。遥か遠くに,奥秩父主脈の山々が見えます。写真右上に甲武信岳も見えていますね。あそこは山梨,埼玉,そして長野の県境になります。
僕が甲武信岳に登ったのは2014年9月。ちょうど木曽御嶽山が噴火した日でした。
頂上で出会った人がネットニュースを見て,「御嶽山が噴火したみたい」と教えてくれたんですよね。とてもいい天気で,噴煙が上がっているのも見えたんですが,あんなに酷い被害が出ていると知ったのは,下山後うちに帰ってからでした。
さて,雲取山の頂上が見えてきましたよ (^◡^)。
いつ来ても,明るい雰囲気のいい山です。頂上に避難小屋があるのもまたかわいい。
最後にこんな急登を用意してくれているのも心憎いですなあ。
雲取山に登るのは何度目かなあ。ちゃんと数えてないけど,片手では足りないくらいには来てるよね。
そんな僕を歓迎するごとく,飛龍山に「シャー」がかかっています。
そんなこんなで,14時50分,雲取山(2017 m)に到着です。鴨沢を歩き始めてから,5時間弱の道のりでした。
三角点にタッチ。
頂上から石尾根を見下ろすと,うん,この時期はカラマツの黄葉も終わってモノトーンですね。
さて。雲取山には明治16年に設置された一等三角点があります。
礎石には「明治十六年 内務省地理局 原三角測點」と書かれていますね。時代を感じるなあ。
雲取山は長めのいいところです。今日はちょっと霞んでいるけど,丹沢方面の山々も,意外なほど近くに見えています。
山深い雲取山だけど,そこは東京都の山。目を凝らすと都心の街並みが見えていますね。おーい,みんな元気かぁ〜?なんてね。
てな感じで,一通り眺めを堪能したら,今夜の泊まり場,雲取山荘へ向かいますかね。
雲取山荘の夜
それでは山頂から下って,雲取山荘へ向かいます。
雲取山荘は,山頂から北へ伸びる尾根にあります。埼玉側の三峯神社へと続く尾根ですね。陽の当たらない北斜面,地面には霜柱がいっぱいです。
そんな地面をザクザク踏んで下っていきます。この辺りは凍っているかとアイゼンを用意してきましたが,特に使わなくても問題ありませんでした。
頂上から15分くらい下って,雲取山荘に到着です。
あったかい時期だと山荘の前の広場はたくさんの人で賑わってるんですが,やっぱり寒いからですかね,人の気配がありません。小屋泊まりの人は,みんな中で休んでるみたい。
僕もテント泊の受付をして,早々にテントの設営にかかります。
12月とはいえ,土曜の夜。テント場はそこそこ混んでいて,ちょっと斜めったところに設営です。でもまあいいや。憩いの我が家ですからね。
テントを張ったらいっぱい着込んで,出来るだけあったかく過ごしましょう。
夕食(とは言ってもカレーメシですけどね)を食べて,外に出たら晴れていました!星空を一枚撮っておきましょうか。
縦でも一枚…と思ったんですけどね。わずかの間に薄雲がかかってきたみたい。あんまり星は映っていませんが。一応カシオペアはわかりますかね。
東京都心方向の街明かりも見えます。遠くに高く,スカイツリーも見えているようです。この辺りはやっぱり「東京の山」なんですねえ。
さて,かなり冷え込んでいるようです(予報ではこの日の雲取山の気温は-6°Cまで下がるとのことでした)。水が凍らないように,シュラフに入れて寝ることにします。
水はその前にバーナーであっためて,湯たんぽを兼ねることにしましょう。
夜中に一度トイレに行きたくて目が覚めました。その時はオリオンがきれいだったので,撮影を試みたのですが,気温が低過ぎてカメラの電源がすぐに落ちてしまい断念。
大人しく寝ましょうか。おやすみなさい zzz…。
2日目に続きます。
1日目記録
2023年12月2日 (土)
鴨沢BS発 (9:25) – 小袖乗越 (9:45) – 堂所 (11:20) – 七ツ石小屋 (12:10–12:35) – 七ツ石神社 (12:55–13:05) – 七ツ石山 (13:10–13:20) – ブナ坂 (13:30) – 旧奥多摩小屋跡 (14:00) – 小雲取山 (14:30) – 雲取山 (14:50–15:15) – 雲取山荘 (15:30)
休憩を除いた総行動時間 4時間55分
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