
今年の夏山第1弾は,立山方面に行きます。
長野県側の扇沢から黒部立山アルペンルートで室堂に入り,まず剱岳に登って,続いて立山を縦走します。そのあと富山県側に下山して,以前からの夢である「富山の回転寿司」を堪能するという計画 (^ω^)。
今年は異常に暑くて,まだ7月だというのにすでに夏バテ気味ですが,首尾よく行くかな!?
剱岳と立山について
剱岳
富山市から日本海を背にして山側を見ると,何だか異様に厳つい山が聳えているのに目を奪われます。それが剱岳です。標高は2999 m。
氷河によって侵食されてできた極めて険しい山容をもち,鋭い岩峰をいくつも天に向かって突き立てた姿は,さながら「針山地獄」のようないかめしさです。

この山は「岩と雪の殿堂」と呼ばれ,かねてより多くの岳人を惹きつけてきました。また谷川岳,穂高岳とともに「日本三大岩場」とも言われています。
北アルプス北部のラスボスっちゅうことですな*1。

20世紀初頭,まだこの山に登山道が開かれていない頃。陸軍測量部が,測量のためにこの山に挑みました。苦難の果てに登頂した彼らが頂上で見たものは…。そこに平安時代のものと思われる錫杖と鉄剣があったという話はあまりにも有名です(「剱岳・天の記」)。
剱岳の厳しさは現在でも変わっていませんが,早月尾根,別山尾根に一般ルートが開かれています。とはいえ難所・クサリ場が連続する危険な山であることに変わりはありません。
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*1 「北アルプス南部のラスボス」は…やっぱり穂高でしょうなあ
立山
立山は富山のシンボルです。古くから山岳信仰の対象とされており,富士山,加賀白山とともに,日本三霊山に数えられています。
日本海から吹き付ける季節風をまともに受ける位置にあるため,冬は豪雪に包まれます。立山に続く道路に,春に現れる「雪の壁」は有名ですよね。

南北に伸びる稜線には「富士の折立」,「大汝山」,「雄山」の3つの頂上があります。最高峰は大汝山で 3015 m。雄山,富士の折立はそれぞれ 3003 m および 2999 m。立山は日本最北端の3000 m 峰でもあるんです。
雄山頂上には「立山神社」が置かれ,山岳信仰の聖地となっています。ここには伊弉諾尊と手力男命が祀られています。

また立山の周辺に広がる溶岩台地は「室堂平」と呼ばれており,残雪と高山植物の宝庫として多くの観光客やハイカーを迎えています。
…そんな山々に登ってきた,2泊3日の記録です。
毎日あるぺん号に乗って扇沢へ
繰り返しになりますが,今回の山旅には,山を歩くこと以外に2つの目的があります。一つは黒部立山アルペンルートを観光すること,特に黒部ダムを見学することです。そしてもう一つ,チョー大切なことは 富山で回転寿司を食べることです (笑)。
だから必然的に公共交通利用で,長野県側から富山県側へ抜けることになります (^ ^)。
黒部立山アルペンルートの長野県側の入口 扇沢へは,毎日あるぺん号を利用してアプローチします*2。新宿を23時に出発したバスは,予定よりも少し早く,4時に扇沢に到着しました。

室堂へ向かう電気バスの始発は7時半。時間がありますね。のんびり荷物の整理をしたり水を汲んだりしていると,空が白んできました。今日はいい天気になりそうです。
平日なので,駐車場にはまだ空きがありますね。見たところ半分程度の埋まり具合でしょうか。

扇沢駅レストハウスの上には「針ノ木サーキット」(扇沢-針ノ木岳-赤沢岳-岩小屋沢岳-種池山荘-扇沢と周回する縦走路)の稜線が見えています。写っているのは赤沢岳〜鳴沢岳あたりでしょうかね。

見るからにギザギザしていますが,実際ここを縦走した時には,あまりのキツさに泣きが入ったんだよなあ (^ ^;)
それではまだ早いけど,アルペンルートの切符売り場に並ぶことにします。webチケットがあったようなんですが,気づくのが遅かった…。そっちでの購入は前日までなんだよね。
でも扇沢から電鉄富山駅までの通しの切符を買えたので無問題 (^◡^)。
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*2 アルピコ交通の「さわやか信州号」は,今年は扇沢に行くバスは運行休止でした。利用者が少ないのかな?
電気バスに乗って黒部ダムへ––破砕帯を通る関電トンネルをゆく
では立山&剱岳の登山口となる室堂へ向けて出発しますよ。扇沢スタートの場合,電気バス→ケーブルカー→ロープウェイ→再び電気バス と乗り継いでいくことになります。

始発の電気バスに乗って,7:30にスタートします。数年前まで,ここには「トロリーバス」が走っていたんですが,老朽化に伴って現在はすべてEV車に置き換わりました。
バスは,赤沢岳の下を通る「関電トンネル」を走って,一路黒部ダムへと向かいます。
黒部ダムに到着
関電トンネルは,元来黒部ダム建設の資材運搬のために作られたものです。そしてダムの開発にあたって最大の難所となったところでもあります。トンネル掘削の途中で岩盤が崩れ,大量の土砂と地下水が噴出する「破砕帯」に遭遇したのです。
そんなトンネルをバスは15分で通過して,あっという間に黒部ダムに到着しました。文明の利器はすごいね,マジで。

北アルプスの峰々に囲まれた青い湖。立山連峰と後立山連峰に挟まれた,凄まじいところに黒部ダムはあります。
ちょうど観光放水を行っていたので,ダム展望台に登ってその様子を眺めてみましょう。放水の迫力は動画の方が伝わりますかね。…というわけで,スマホで撮ったショート動画をどうぞ。
黒部ダム放水風景(スマホ動画)
ダム湖の上流に遠く見えているのは,北アルプス最奥部に聳える赤牛岳かな。

この山に登るには,黒部湖を遡って「読売新道」を延々と歩いていくか,裏銀座縦走路の途中から分岐する道を歩いていく必要があります。どちらのルートを辿っても非常に遠いです。
ダム堰堤よりも下にある展望台にも行ってみます。放水の吹き出し口がより近くなって,迫力を感じますなあ。

ダムの向こうには,はるか高いところに立山の稜線が見えていますね。原始の自然と日本を代表する巨大建造物。ここは一見の価値があるところだと思います。
ところでここにはダムがあるだけで,発電所の建屋は見当たりません。国立公園の景観への配慮と雪害への対策として,発電所の施設(黒部川第4発電所…いわゆるくろよん)はほぼ全てが地下に建設されているのです。
黒部ダム開発の物語
展望台脇には,黒部ダム開発の資料が展示されています。
秘境・黒部を開発し,巨大ダムを建造した苦闘の物語。

黒部川の電源開発は,大正時代に始まりました。水量が多く急流である黒部川は,水力発電に適した場所だったわけですね。

以来,日電歩道の開削と軌道の施設が行われ,調査が進められました。そして昭和初期に,黒部川最初の発電所である柳河原発電所が運転を開始します。

さらに小屋平ダム(黒部川第2発電所),仙人谷ダム(黒部川第3発電所)が建設されますが,上の写真を見てわかるように,当時の発電所建設は人力中心で命懸けのものでした。
戦後,経済発展にともなって電力需要が盛んになりました。特に関西地方の電力不足は逼迫した状態になっていたようです。そこで関西電力は,黒部ダム(黒部川第4発電所)の開発を決断します。

当初,黒部ダム建設地の調査と資材の運搬は,日電歩道や雪の立山越えなどやはり人力に頼らざるを得ない状況でした。
そこで大型資材の搬入などを行うために,扇沢を起点として針ノ木サーキットの稜線を貫く「大町トンネル(現・関電トンネル)」の掘削が開始されました。

関電トンネル掘削の最大の危機は「破砕帯」の突破でした。トンネルは順調に掘り進められていましたが,扇沢から約1.7 km 掘り進んだところで岩盤が崩れ,大量の土砂と地下水が噴出したのです。
資料によると,この時噴出した地下水の温度は 4°C,流出量は毎秒 660 L だったとこのことです。

こうして一時は暗礁に乗り上げた大町トンネルの掘削ですが,トンネル工法の経験と関係者の苦闘によって,7ヶ月かけて破砕帯の突破に成功します。そして昭和33年5月に,資材運搬の大動脈となる大町トンネルが開通したのです。

翌年にはダムと発電所をつなぐ「黒部トンネル」が開通,さらに完全地下設置型の発電所という例を見ない工事を経て黒部川第4発電所が竣工。そして171名の殉職者をともなって,昭和38年ついに黒部ダムが完成しました。

この時に開かれたダム建設の輸送路は,現在は観光資源として残されているわけですね。
こんな物語を秘めた黒部ダム。また扇沢でダムカレーを食べたくなりました。
立山黒部アルペンルートの公式サイトはこちら
ダム堰堤を渡って対岸へ
それではダム堰堤の上を歩いて対岸に渡ります。…とひと言で済ませちゃうんですけどね。黒部川の峡谷をあっという間に渡ってしまえるって,あらためてすごいことだと思います。
ダムの下流側を見ると,「黒部の巨人」の異名を持つ「丸山」が聳えています。

眼下を流れる黒部川。この川に沿ってしばらく下ると,「日電歩道」「水平歩道」が続く下ノ廊下。川床から数百m以上あろうかという切り立った谷筋に,凄まじい道が続くところです。

ここもいつか歩いてみたいと思っているんですけどね。
もともと日電歩道や水平歩道は,ダム建設の調査と資材運搬のために作られた道。開発の際にはその凄まじい道を,日々歩荷たちが行き来していたわけです。

当時から「黒部に怪我なし」と言われていました。これは,この道が安全だということではありません。黒部の道で落ちたら怪我で済むことはない…ということを意味しているのです。
下ノ廊下は,国立公園内の開発の見返りに関西電力が整備を続けるという約束が交わされています。整備が始まるのは毎年雪解け後。それが終わるのは例年9月下旬です。11月には雪が降り始めるので,ここを歩けるチャンスは一年に1ヶ月程度しかないのです。
「くろべ」。山ノボラーの一人として,この地名を口にするたびに胸がキューンとします。

さて,対岸に着きました。次はケーブルカーに乗り換えです!
ケーブルカーに乗って黒部平へ
黒部ダムの西岸を出発したケーブルカーは,5分で黒部平に到着します。黒部平の標高は 1828 m。黒部ダムからかなり上がってきましたね。
遠く見上げていた赤牛岳も,だいぶ見え方が変わってきました。

谷を挟んで,針ノ木岳が大きい。写真の右の方,尖ったピークが針ノ木岳,その左がスバリ岳,左の方に盛り上がっているのが赤沢岳です。ちょっと逆光に霞んでいますが。

遠くには,後立山連峰の盟主・鹿島槍ヶ岳が見えます。さらにその北には五竜岳。

山の香りがだんだん濃くなってくるのがうれしいです。
ロープウェイで大観峰へ
次はロープウェイです。立山の稜線が,だんだん近づいてきますよ。

立山ロープウェイは,環境保護の目的で,途中に支柱が一本もない「ワンスパン」方式となっています。
よくわからないのですが,荷重をかけてロープのテンションを保っているということなんだろうな,やっぱり。

ロープウェイから下を眺めると,軌道に沿ったトレイルが見えます。立山一ノ越から黒部ダムへ続く登山道です。つまりこの区間を歩いていくこともできるわけですが,この道はかつて黒部ダム建設の際に,資材運搬の歩荷がたどっていたところでもあるわけですね。胸が熱くなります。
さて,ロープウェイを降りたところが大観峰。いよいよ山の上に来たなあ!と感じられるところです。
ここに立つと,対岸の針ノ木サーキットの稜線が黒部湖を挟んで目の高さに見えます。

4年前にあっちの稜線(スバリ岳)から見た立山がこちら。遠くに富山湾の水平線も見えていますね。

立山連峰と後立山連峰。大峡谷を挟んだ2つの山脈を目にすることができて,感無量です。
さっきまで見上げていた鹿島槍ヶ岳も,自分に近い高さになりました。

ここでは「大観峰」の名の通り,雄大な眺めを満喫できました。紅葉の時期に,また来てみたいなあ。
それでは最後に,立山トンネルをくぐる電気バスに乗りますよ。
室堂に到着です!
再び電気バスで走ること15分。立山室堂に着きました!
到着は10時10分。観光しながらのんびり来ました。なかなか楽しい道中でした (^◡^)。

今まで渓谷の中にいたのに,ターミナルを出ると目の前に高原が広がっているので開放感がハンパありません。

溶岩台地の向こうに立山が聳えています。ここはとても気持ちのいいところ。観光客と登山客が行き交っていますね。
花の季節は盛りを過ぎたかなーと思ってたけど,まだ室堂にはチングルマやハクサンイチゲなどが咲き乱れていました。

そんな室堂平を歩いて,まず今日の幕営地 剱沢キャンプ場に向かいます。いよいよ登山の開始です!
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