前記事「【北アルプス】剱岳と立山に登ってきました #3 剱沢キャンプ場をベースに剱岳を往復」の続きです。
山行最終日。今日は剱沢キャンプ場をスタートして立山を縦走し,室堂まで歩きます。室堂からは高原バスで富山側に下山する予定です。
そしてそのあとに,今回のメインイベント (?),富山の回転寿司を食べにいきます(笑)。
最終日もいい天気。ゴキゲンな山行になりましたよ。
- 未明の剱沢キャンプ場を出発,別山へ向かいます
- 次のピークは真砂岳
- 立山へ登っていきます
- 立山––3000 mの稜線を歩く
- 最後のピーク,雄山に登頂しました
- 雄山神社でお参りします
- 一ノ越山荘を経て,室堂へ下山
- みくりが池温泉で整います…そしてバイバイ立山
- 富山駅「すし玉」で回転寿司をいただく
- おわりに
- 下山後,気になるニュースが2つ
- 3日目記録
未明の剱沢キャンプ場を出発,別山へ向かいます
昨晩は剱岳で緊張したせいか食欲が出ず,晩ごはんがあまり食べられませんでした。
今朝の体調は悪くありませんが,食料を食べ尽くして荷物を軽くするという目論見はハズレました (^ ^;)。
まあいつも通りに準備をして出発です。剱沢キャンプ場を発ったのが4時10分。別山への登りの途中,剱沢カールを見下ろせるところでご来光を迎えようという算段です。
山の朝はいつだって荘厳で気持ちが良いです。今日も剱岳八ツ峰の向こうが朝焼けに染まってきました。
ヘッドランプをつけてカールの斜面を登っていきます。約30分,目論見通りに別山手前の斜面で夜明けを迎えました。
朝の光に満たされていく剱岳が,神々しい美しさ。
遠くには,朝もやの中に白馬連峰が浮かんでいます。
別山へ向けて登り上げていくにつれ,剱沢カール全体が見渡せるところまできました。
山肌をスプーンで掬ったような地形の向こうに剱岳が聳り立つ。
そして歩くこと1時間あまり,ほぼ標準CT通りで別山 (2874 m) に到着です!
剱沢カールを取り囲む尾根の向こうには見事な雲海。富山市街は雲の下ってことなのかな?
これまで尾根の影になって見えていなかった南側には,真砂沢カールとその向こうに立山連峰。
そして振り返ると,剱岳が朝の光に満たされていきます。いやあ,本当に見事な山ですねえ。昨日あそこに立っていたと思うとなんだかうれしい (^◡^)。
剱岳の頂上付近をズームアップしてみます。…とは言っても標準ズームのテレ端程度ですが。
頂上を挟んで,左に平蔵谷,右に長次郎谷。ギザギザの岩峰と顕著な雪溪。日本離れした風貌を持つ山だなあ。
別山北峰も往復しておきましょう。北峰の方がちょっとだけ標高が高いからね (2880 m)。片道10分くらいなので,カメラだけ持ってゆるゆると行ってきます。
それでは縦走を再開しましょうか。右手には室堂方面もよく見えていますよ。このあと立山の稜線を縦走して,あそこまで下りていくのが今日のミッション。
次のピークは真砂岳
さて縦走路を辿って南に向かいます。立山の3つの頂上がハッキリしてきました。左から富士ノ折立,大汝山,そして雄山です。
このあと,この順に頂上を踏んでいきますよー。あ,その前に,手前のゆるやかなピークを通過します。真砂岳です。
別山を下り,砂礫の稜線をたどります。この辺りはとても開放的な縦走路。太陽と残雪とそよ風と。気持ちいい〜。
左手には真砂沢カール。万年雪をたたえた圏谷です。残雪期にはここをスキーで滑る人もいるようですね。爽快だろうなあ!
溶け残っている雪の分厚さが,この山域が豪雪地帯であることを物語っています。
真砂岳への登りに入ります。振り返ると,別山が遠くなりました。その上に,僅かに頭をのぞかせる剱岳。
緩やかな登りを経て,真砂岳 (2861 m) に到着しました。
右手には,はるか下に地獄谷と雷鳥沢キャンプ場を見下ろします。その向こうに見えているのは大日岳方面ですね。あっちの縦走も楽しそうですねえ。
快晴無風の真砂岳。広々として気持ちがいいので,つい長居してしまいました(ここは荒れると風の通り道になりそうですが)。
立山へ登っていきます
内蔵助山荘を経て黒部川へ下る道を左に分け,いよいよ立山へ向かう登りに入ります。ここから立山の稜線まで,200 m くらい登ることになりますかね。
そこそこの傾斜がありますが,昨日の剱岳とは違ってリラックスして登ることができます。目に入る山々に,残雪が光っているのがなんとも言えずいいですね。
立山が近づいてきます。ずっと森林限界を超えたところを歩いているので,左右の眺めが開けていて,開放感があります。
左側は内蔵助カール。広大な雪面が輝いています。
ガレ場に続く道を歩いてきました。もうすぐ立山の稜線です。天と地の境目が間近。
稜線に立つと,立山1つ目の頂上,富士ノ折立の岩峰がすぐそこです。くちばしのようにとんがっていて,鳳凰三山のオベリスクを彷彿とさせる姿ですなあ。
では,まずこの岩峰に登りましょう。岩を伝って登ること約10分,富士ノ折立に登頂です。標高は 2999 m。剱岳と同じ高さですね。
頂上からは,次の頂上 大汝山がくっきりと見えました。
背後には,真砂岳と別山の向こうに剱岳。昨日の奮闘を思い,ひときわ思い入れを持って振り返ってしまいます。
昨日と今日のここまで…縦走登山は「過去の自分の足跡」を振り返ることができる山旅です。
立山––3000 mの稜線を歩く
富士ノ折立から,ガレた稜線をたどります。立山の稜線,予想以上にガレているのね(汗)。
ほどなくして,大汝山休憩所に着きました。
ここは宿泊はできませんが,飲み物や軽食を求めることができるみたい。僕は中に入りませんでしたが。
さてさて休憩上の裏手に回って,岩の間を少し歩くと大汝山 (3015 m) の頂上に到着です!
ここは立山の最高峰であり,日本最北の 3000 m 峰でもあります。
そして気がつけば,これで北アルプスの 3000 m 峰全てに登ったことになりました(乗鞍岳を除く)。
ところで大汝山(おおなんじ)という名前ね,これは大穴牟遅神(おおなむちのみこと=大国主命)を祀っていることから来ているようです。「汝」とかいうと,なんだかキリスト教っぽいけどね。
ここ大汝山の眺望は素晴らしく,地獄谷とその向こうの大日連峰を見はるかすことができます。雲が流れて,富山湾もうっすら見えてきました。
東の谷を見下ろせば,初日に訪ねた黒部湖が間近に見えます。
立山トンネルや関電トンネルができる前は,この尾根を越えてあそこまで調査に入っていたわけですか。すごい…。
室堂方面の眺めも見事です。
室堂ターミナル周辺が平らなこと,地獄谷あたりから雷鳥沢キャンプ場にかけて大きく標高を下げていること,そして室堂平をここ立山と大日連峰が取り囲んでいること。このへん一帯の地形がよくわかります。
最高峰の眺めを満喫したら,立山三座目,主峰雄山に向かいます。
最後のピーク,雄山に登頂しました
大汝山を出ると,30分もかからずに立山の主峰・雄山 (3003 m) に到着です!頂上には雄山神社が建っています。
神社への参拝をする前に,眺望を楽しんでおきましょうか。
こちら北側。ずーっと歩いてきた立山の稜線と,その向こうの剱岳。スケール感のある眺めです。
ここは逆コースをとって北上すると,剱岳がだんだん近づいてくる縦走路になりますね。それも楽しそう。
今日のゴール,室堂ターミナルも見えてきました。豊富な残雪と,みくりが池がいいアクセントになっていますね。
雄山神社でお参りします
さて,ここ立山雄山は,富士山,加賀白山と並んで日本三霊山に数えられているところです。
富山市街地からも見事な姿を見ることができますからね。古くから山岳信仰の対象となったのも自然なことでしょう。
ここに祀られているのは伊弉諾命と手力男命。神仏混淆のあとだと,それぞれ阿弥陀如来と不動明王ということになるみたい。
参拝の申し込みをすると,十数人ごとに案内され,拝殿の前に通されます。
そして地面に座って(楽な姿勢でいいよと言われました),お祓いを受けます。
宮司さんが祝詞をあげてくださいます。
その中にこんな一節がありました(大意)
山肌の岩のような頑健な身体と
雪渓の雪のような清らかな心を
なんだかグッときました。今まさに,岩と雪の立山を歩いてきたから,いっそう心に沁みます。
普段は妄想に励む僕ですが,少しは清しい心になれたかなあ (^ ^;)。
眼下にはみくりが池が青く光っています。それでは下山しましょうかね。
一ノ越山荘を経て,室堂へ下山
下っていくのは雄山と浄土山の鞍部,一ノ越です。ここは登りと下りのコースが分けてあり,一方通行になっています。
一ノ越に向けて下っていると,学校登山の小学生が雄山に向かって登ってきます。みんな元気で素晴らしいんですけどね。すれ違うたびに一人ひとりが「こんにちは!」「こんにちは!」とあいさつしてくれるので,僕もずっと「こんにちは!」「こんにちは!」と返さなければなりません。それも小学生に負けないくらい元気な声でね。これはけっこうしんどいぞ (^ ^;)。
それにしても,引率の先生は大変です。数十人の小学生を 3000 m峰に連れていき,全員無事に帰らせる…僕だったらそのプレッシャーに耐えられる自信がない…。
信仰の山だけあって,下山路には神様が祀られています。ここまで無事に来れたことに,感謝しながら歩きますよ。
一ノ越への下りは想像していた以上に急で,岩ゴロの道でした。雄山神社に登拝する人は多いと思いますが,けっこう大変な道のりですね。まあ昔は登拝自体が修行の一つだったんでしょうが。
でもそれももう終わり。一ノ越山荘が近づいてきましたよ。山荘の食堂でカップ麺を食べながら,大休止としましょう。
一ノ越から先は石畳の道となります。室堂までてくてく歩いていきます。
この石畳の道はけっこう長いですね…。思わず室堂山荘のベンチで一度休憩してしまいました。
今日はのんびり歩いてきたけど,けっこう疲れていたのかな。
みくりが池温泉で整います…そしてバイバイ立山
室堂に着きましたが,すぐにバスには乗らずに,みくりが池温泉で汗を流していきたいと思います。
というわけで,もう一度みくりが池までやってきました。
雲が広がってきましたが,立山リフレクションを一枚。さっきまであのお山の上にいたのね。下山して山を眺めると,いつも信じられないくらい遠く感じます。
みくりが池温泉は標高2400 m,日本一高いところにある天然温泉なんだそうです。源泉は近くの地獄谷。
3日間山を歩いてきた汗を流しましょう。はぁーサッパリ。トロリとしたいいお湯でした。
温泉のあと,また大汗をかくのはイヤなので,室堂ターミナルまで出来るだけゆっくりと歩いていきます(笑)。
バイバイ立山,また来るよ。次は五色ヶ原経由で,薬師岳方面への縦走でしょうかね。
室堂ターミナルから「高原バス」に乗ります。バスは「雪の大壁」のところを通り(もちろんこの季節は雪の壁はないヨ),溶岩台地の弥陀ヶ原を通って美女平まで行きます。
美女平でケーブルカーに乗り換え。ケーブルカーを降りるとそこは富山地方電鉄の立山駅です。電鉄で富山駅まで行って,立山黒部アルペンルートは完結となります。
のりもの大図鑑 | 楽しみ方ナビゲート | 立山黒部アルペンルート
立山駅から電車に乗って,うつらうつらしているうちに富山駅に着きました。これにて登山はおしまいです!
富山駅「すし玉」で回転寿司をいただく
立山からの電車は架線トラブルで遅れていたので,富山駅に着いたのは夕暮れ時になりました。
さすが北陸新幹線の駅だけあります。立派ですね。
さて,ここからがこの山旅のメインイベントです(←?)。富山駅構内の「きときと市場 とやマルシェ」にある,「廻る富山湾 すし玉」さんでお寿司をいただきます!
店名とは裏腹に,今はお寿司は回っていなくてタッチパネルでの注文です。冷たいビールとともに,いただきまーす!
富山湾の白エビとブリがね,びっくりするくらい美味しかった!他にもマグロとかホタテとか数皿。昨晩ごはんが喉を通らなかったのは何だったんでしょう。
でもね,ベニズワイガニを注文しそびれてしまったので,また富山に来たいです(笑)。
おわりに
かくして剱岳・立山の登山は無事終わりました。この山域は残雪が豊富なのがいいですね。いたるところで雪溪から吹き上げる涼しい風を浴びることができました。その分冬は厳しいんでしょうけど。
次にこの山域に来るときは(薬師岳に登るときかな),すし玉さんで何を食べようかな?と今から考えています ←雄山神社でお清めしたはずなのに,また煩悩が…。
下山後,気になるニュースが2つ
剱・立山の山行を無事に終えて里で過ごしているわけですが,そうしていると気になるニュースが2つ入ってきました。
みくりが池をクマが泳いだ!?
立山にもクマが出るということで,今回も一応クマ鈴を持って行きました。でも室堂周辺では人が多いので,鈴はうるさかろうとザックにしまっておいたんですよ(結局ほとんど使わなかったな)。もちろんみくりが池周辺でもね。
ところが先日,「みくりが池をクマが泳いでいたのが目撃された」というニュースが飛び込んできました。
今年の夏はチョー暑いからね。残雪でよく冷えた湖を泳ぐと,クマさんも涼しいんでしょう。
…なんて軽口を叩いてる場合じゃなくて。
コワイじゃないですか。みくりが池は登山者だけじゃなくて,観光客もいっぱい集まって,賑わうところですからね。室堂の観光も気をつけないとならない事態になっているということですかね。うーん…。
富山地方電鉄 立山間ー岩峅寺が廃止になる!?
立山黒部アルペンルートの富山側は,室堂から高原バス,続いて美女平からケーブルカーで立山駅に至ります。さらにここから電鉄富山駅まで電車に乗ることになります。
僕も扇沢から電鉄富山駅まで通しの切符を買って移動したんですけどね。立山から電鉄富山までは,のんびりしたいい旅でしたよ。
ところがこの路線の立山から岩峅寺の間が,採算が取れないとの理由で廃止になる!?という話が持ち上がっているようです。
こうなるとアルペンルートが寸断されることになり,室堂から富山側へ下山した際に,移動が大変になりますね。
電鉄は地元自治体との協議を続けるとのことですが,どうなるのかな?
当然のことながら,登山も社会情勢と無縁ではいられません。電鉄の存続を願いたいところですが,経済的な問題を無視したお願いは我儘に過ぎないですからね。
今後の推移を注視したいと思います。
3日目記録
2025年7月30日
剱沢キャンプ場 (4:10) – 別山 (5:30) – 別山北峰 (5:45–5:55) – 真砂岳 (7:05–7:30) – 富士の折立 (8:30–8:35) – 大汝山 (9:00–9:15) – 雄山 (9:40–10:20) – 一ノ越山荘 (11:05–11:30) – 室堂山荘 (12:20–12:30) – みくりが池温泉 (12:50–13:55) – 室堂ターミナル (14:10)
休憩を除いた総行動時間 6時間45分
別山〜真砂岳あたりの動画です。どうぞご覧ください
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