7月の初めのことです。夏山に行こうと,扇沢行きの夜行バスを予約したんですよね…。けれどもその後の緊急事態宣言。どうするべきか本当に悩んだんです。
迷いに迷ったんですが,ワクチンを2回接種済みであること,テント泊ソロ縦走で山に入ってしまえばあまり人と接することもないことを考慮し,行き帰りの移動で注意して行動することにして,行ってきました。登ってきたのは北アルプス・後立山連峰の針ノ木岳です。
針ノ木岳について
針ノ木岳は後立山連峰の南端にある標高2821 mの山で,長野県大町市と富山県立山町にまたがっています。針ノ木雪渓と呼ばれる顕著な雪渓を持ち,扇沢からこの雪渓をたどって頂上へ向かうのが最短ルートとなります。北アルプスのほぼ中央に位置することから展望が良く,南は穂高連山から北は白馬岳まで一望することができます。
登山口となる扇沢は,黒部立山アルペンルートの長野県側の玄関口で,黒部ダムへ向かう電気バスの発着地点となっています。
以前,爺ヶ岳〜鹿島槍ヶ岳に登ったのですが,その時に目に飛び込んできたのが針ノ木岳。扇沢を挟んで鹿島槍ヶ岳の反対側にそびえています。雪渓を従えて凛と立つ,ピラミダルな姿がカッコいい!
これはいつか登らなければ!とずっと思ってきました。
扇沢から大沢小屋へ
扇沢に着いたのは早朝5時15分。細々としたハプニングがあって,バスの中ではあまりよく眠れなかったのですが,朝の扇沢は爽やかです。
足回りを整えて,おにぎりを食べ,登山届けを提出して5時50分に歩き始めました。はじめは樹林帯の中の緩やかな登り。ブナの林が美しい。
とかく「岩と雪」がクローズアップされる北アルプスですが,森もきれいです!
登山道は何度か沢を横切ります。その度にアルプスの稜線がチラッと見えておおっ!ってなります。でも,まだまだ稜線ははるか遠いですね (^ ^;)
扇沢からのんびり歩いて1時間半,大沢小屋に到着します(大沢小屋は,今シーズンは休業中です)。
ここで軽アイゼンを借りて雪渓を登り,稜線上の針ノ木小屋で返却することも可能です。ただ貸し出されるのは4本爪アイゼンなので,どれくらい効くのかはよくわかりません(4本爪は履いたことがありません。今回僕は自分のアイゼンを持って行きました)。
針ノ木雪渓を登る
大沢小屋(の横)で少し休憩してからしばらく歩くと…ジャン!ついに針ノ木雪渓が姿を現しました。そのはるか上に針ノ木岳!ひょおお〜,かっこいい!
登山道は針ノ木谷(篭川)の左岸(沢の上流から見て左側)についています。ところどころロープがかかった岩場が出てきますが,特に問題はありません。
8時半,雪渓の末端に着きました。ここで再びおにぎりを1個ほおばってから,アイゼンを装着し,気を引き締めて雪渓に降り立ちます。雪は固く締まっていて,アイゼンがグッ!と食い込む感触が気持ちいい。
雪渓の上は空気がひんやりしていて涼しい〜!両岸からの落石に気をつけながら,スプーンカットにうまく歩幅を合わせるようにして登っていきます。
時々余裕をかまして,雪渓に三脚を立てて自撮りしたり…(^ ^;) こんなことをしていると余計な時間を食いますが,今日は余裕があるので大丈夫です。
振り返れば,雪渓をかなり登ってきましたね。スキーで滑り降りたくなったのは内緒です。
途中,傾斜がきつくなるところもありますが,アイゼンが効いているので怖さはありません。
天気は,ガスがかかったり日が差したり。雲の切れ目から日が差すと雪渓がパァッと輝き,空の方は鈍色という不思議な光景になります。
一歩一歩高度を上げて行き,雪渓が途切れたところで右岸に上がりました。10時30分,GPSを見ると,標高2160 m地点です。
ここでアイゼンを外して一休みしていると,上から颯爽とした感じのお姉さんが降りてきて,雪渓の様子を聞いてきたので,最初の取り付きを教えてあげたりしました。
↑ ここはスノーブリッジの薄いところに注意しながら左岸に渡り,その下の雪渓に乗ったら右岸寄りを下っていくのが正解です。
稜線へむかいます
雪渓の登りが終わると,なんとなく「そろそろ稜線」という気分になってきますが,実はまだ結構登らなければなりません。
登山道は高山植物が咲く中に続きます。
花に癒されながら歩きます。視線を上げると対岸の岩峰がすごい。
雪渓を降りてから登ること約45分,「最終水場」に到達します。標高2250 m。沢の水が豊かに流れ出ているところです。ここで水を補給し,顔を洗ってさっぱりしました。
右のほうを見ると,明日歩く予定の稜線が屏風のように見えています。ムムム…これは結構ギザギザで,歩くのが大変そうだぞ(この予感は見事に的中しました ^ ^;)。
さてもうひとがんばり。登山道は傾斜を増し,山肌をジグザグに登るようになります。そして稜線が間近に見えてくると,空気が薄くなってきたせいか息がハァハァ。
何度か膝に手をついて息を整えたりしながら登りきり,12時30分,稜線に上がりました!
針ノ木峠に到着
この場所は「針ノ木峠」と名付けられていて,針ノ木小屋が建っています。ここから左(東)に行くと蓮華岳,右(西)に行くと針ノ木岳です。
まず小屋でテント泊の受付をします。ダンディーな小屋番さんが「ようこそ針ノ木峠へ」と声をかけてくれました。
テントを設営したら,まずお湯を沸かしてインスタント味噌汁を飲みました。最近,夏山にはいつも味噌汁を持って行っています。塩分・ミネラル分の補給にバッチリ。とても美味しく飲めます。
蓮華岳を往復
さて,テントで一休みしたら,軽装で蓮華岳を往復してくることとします(針ノ木岳は翌日です)。
14時30分にテントを出発。最初はけっこう登りますが,程なくしてハイマツと砂礫の緩やかな道になります。
尾根の上をガスが流れます。もちろん晴れるのが一番だけど,こういう雰囲気も悪くありません。「いかにも山の上にいる」って感じがしますからね。
そんな中を,いくつか小ピークを越えて歩くこと1時間,蓮華岳の頂上が見えてきました。
砂礫の登山道をザクザク歩き,16時ちょうどに蓮華岳(2799 m)に到着です!思ったより時間がかかりましたね(汗)
蓮華岳一帯は,コマクサが群生することで知られています。実際に頂上付近には,ピンクの可愛らしい花が一面に咲いていました。でも盛りを過ぎていたのか,少し痛んでいる花が多かったかな?
さて頂上で休んでいると…ん?何やら動く影が。雷鳥です!雛鳥を二羽連れてお散歩しているようでした。写真はあまりうまく撮れませんでしたが,初めて雷鳥に出会えてうれしかったです (^◡^)
天気は相変わらずですが,時おりガスが切れて,針ノ木岳が一瞬姿を見せてくれました。端正なピラミッド型。格好いいです!明日登るのが楽しみです。
ガスがかかっていたなりに,蓮華岳を楽しむことができました。もう16時をすぎているので,急ぎ足でテントに戻りましょう。
針ノ木峠の夜
テントに戻ったら夕ご飯。今夜はハンバーグです。レトルトですけどね,美味しいですよ。
レトルト食品は重いと思っていたのですが,お湯で温めるだけなので,担ぎ上げるクッカーを減らすことができます。それでプラマイゼロ…ということで最近はよく使っています。ちょっと手抜きですけどね(笑)。一食食べるごとに荷物が軽くなっていくのもうれしい。
アーベントロートに染まる蓮華岳を眺めながら食べます (^◡^)
ご飯を食べたらお茶を飲んで,暗くなるのを待ったのですが,テント場は再びガスに包まれて,星空は見えません。仕方がないですね。明け方になったら星が見えないかと期待して,シュラフに入りました。
おやすみなさい。zzz…
続きます。
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