sunsun fineな日々

子育てしながら,山を歩いたり星を見たり料理したり写真を撮ったり

【北アルプス】前穂高岳〜奥穂高岳 吊尾根縦走 2018年夏

今週末は八ヶ岳,天気が悪そうなら安達太良山に行きたいと思っていたのですが,予報を見るとどちらも雨。もう梅雨入りでしょうか。

昔の僕はあまり天気を気にせず,雨の中でも修行のような山歩きをしていたものですが,最近は予報で天気が悪そうなら山行を取りやめにしてしまうことが多くなりました。おかげで雨具の出番がほとんどありません。もちろん天候の急変に備えてザックには忍ばせておきますが。

天気が悪そうな時に山に行かなくなったのは,テント場で星空の写真を撮ることも目的の一つになってきたからです。星空を撮影していると寝不足になりがちで,次の日につらいんですけどね。

さて,そういうわけで今週末は山に行かずに過ごすことになったので,代わりに昨年の夏,穂高に行った時のことを書こうと思います。

去年の穂高のことを書いてみる

僕は息子が生まれてから,彼が10歳になるまで山登りを中断していました。再開後は自宅に近い奥多摩,奥秩父から山を歩き始めたのですが,穂高吊尾根は再開後「いつかここには行かないとな」と,ずっと思ってきたところです。

歩いたコースは前穂高岳〜吊尾根〜奥穂高岳。このコースをたどるには,涸沢から入って奥穂→前穂の方向に歩くか,岳沢から入って前穂→奥穂の方向に行くか,2通りのやり方があります。どちらでも難易度に大差はないと思いますが,僕は後者のコースで歩きました。このコース取りだと,重太郎新道(岳沢〜前穂高岳)が登り,ザイテングラート(奥穂高岳〜涸沢)が下りになります。何となく重太郎新道を登りにとった方が楽しそうな気がしたのと,核心部を歩き終えた後に涸沢で一晩過ごすと気分的に寛げそうに思えたので,こちらにしました。

上高地へ

夏山シーズン,東京(新宿)から上高地へ向かう直通バスはどの便も満員です。松本まで列車で行って,そこから松本電鉄,さらにバスと乗り継ぐ手もありますが,調べて見ると岐阜県側の平湯温泉まで行くバスに空きがあったので,これに乗りました。平湯温泉からは上高地行きのバスに乗り換えて,約25分。乗り換えが少ないので楽です。

ハイシーズン,観光客で賑わう上高地に到着。登山届を提出して靴紐を締めます。程よい緊張感。いい感じです。河童橋の上から梓川と穂高連峰の写真を一枚撮りました。ド定番の構図ですが,やはりきれいです。

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上高地・河童橋から梓川と穂高連峰

岳沢の夜

上高地からは,梓川を渡って岳沢に向かいます。木道をたどり,澄んだ水が流れる沢を渡りました。今夜の泊まり地である岳沢小屋テント場までは2時間半ほどの道のり。途中,「岳沢名物天然クーラー」と書かれた洞穴(確かに涼しい風が吹き出してくるのです)を見たりしながらのんびりと登っていきます。小屋の直前,最後の登りがちょっと急だったかな。

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岳沢に向かう途中できれいな沢を渡ります

岳沢小屋でテント泊の受付を済ませ,テント場へ。テント場は伏流となっている岳沢の対岸,角ばった岩がゴロゴロしているところです。少し斜めになっているところに岩を重りに張り綱をとり,テントを設営しました。

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岳沢に到着しました

日が落ち,あたりが暗くなると,空に星が瞬きはじめます。はじめのうちは南天に薄い雲が流れていましたが,やがてすっかり晴れました。

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乗鞍岳に立ち上がる天の川 岳沢にて

今回は重太郎新道や吊尾根の岩場を歩くので,荷物の軽量化を計っています。三脚はごく小型の軽いものを持参し,赤道儀も持ってきていません。そのため,固定撮影で2カットだけ撮ってテントに戻りました。翌日は要注意箇所を歩くことになるので,いずれにしても夜遅くまで星空撮影をしているわけには行かなかったのですが。

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穂高の稜線とはくちょう座付近の天の川

穂高のテント場は下が岩でゴツゴツなので,エアーマットを新調したのですが,これは大正解。快適に眠ることができました。

重太郎新道を登ります

夜明け前。素早くテントを撤収し,まだ薄暗いうちに歩き始めました。初めは樹林帯の登りです。一時間ほど歩くと,重太郎新道の名物,岩壁にかけられた長い梯子が現れました。ここからは岩場の連続になるので,トレッキングポールをしまい,気を引き締めて登って行きます。一つ目の梯子を通過。その後も梯子やクサリの連続です。集中力が必要で,危険な箇所もありますが,岩稜帯を登って行くのは楽しいです。

「岳沢パノラマ」と名付けられた地点まで登ると視界は一気に開け,上高地が真下に見えます。西側には,奥穂から西穂に続く稜線がすごい迫力です。

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イワギキョウ 重太郎新道の岩場にひっそりと咲いています

岩場に咲く高山植物に癒され,明神岳の岩峰に励まされながら高度を稼ぎ,「雷鳥広場」まで上がって来ました。

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明神岳の岩峰群 すごい迫力です

雷鳥広場では,奥穂高岳がドーンと目の前に聳えます。圧倒的な存在感に言葉もありません。日本第3位の標高を持つ山は,伊達ではないのです。

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重太郎新道から奥穂高岳 圧倒的な存在感です

なおも岩稜帯をひたすら登り,一枚岩にかけられた長いクサリ場を抜けると,休憩場所である紀美子平に到着です。

前穂高岳に登頂

紀美子平で一休みしたのち,サブザックに水とカメラ,そしておやつを詰めて前穂高岳の頂上に向かいます。急峻な岩場が続くので,落石を起こさないように細心の注意を払います。

しかし軽い荷物だけ背負ったとはいえ,さすがに標高3000 mを超えてくると空気が薄くなってきます。息はハァハァ,鼓動もドキドキ。

そして紀美子平から登ること30分,前穂高岳に登頂しました!目の前に奥穂高岳が聳え,足元から続く吊尾根が見渡せます。穂高はまさに巨大な岩の塊!

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前穂高岳からの展望 奥穂高岳から槍ヶ岳までの稜線が一望です

奥穂高岳からの稜線は,涸沢岳,北穂高岳へと続き,さらに大キレットを超えて槍ヶ岳へと伸びています。眼下には涸沢カール。すごいスケールです。これを絶景と言わずに何と言いましょう。写真は12 mmの超広角レンズで撮ったものですが,スケール感が伝わるでしょうか。

前穂頂上にいたのは35分間。まだ先があります。落石に気をつけながら一旦紀美子平まで下りましたが,下りの方が時間がかかったのはなぜだろう。

吊尾根をたどって奥穂高岳へ

紀美子平で行動食を口にして,水分も補給したら,吊尾根に入って行きます。吊尾根は前穂高岳と奥穂高岳を結ぶ岩稜で,上高地から見える稜線がそれです。その上を歩いて奥穂に向かうのです。

とは言っても稜線の真上を歩く箇所は少なく,南側をトラバース気味に進みます。登山道は岩の斜面に,鑿で穿ったように細く続いています。足を踏み外したらアウトというようなところもあるので,集中力をキープしなければなりません。

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吊尾根の途中から奥穂高岳方向。鑿で穿ったような登山道が見えるでしょうか

前穂から奥穂へ向かう場合,吊尾根は登り基調になります。逆コースならもちろん下り基調。でもずっと岩の上を歩くので,この区間はどちら向きに歩いても負荷はそんなに変わらないと思います。

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吊尾根の途中で前穂高岳を振り返る

吊尾根のラスト,南陵の頭へと続く長いクサリは,軽装のお兄さんが後ろに続いていたこともあって,先を急ぎ,腕力で強引に登ってしまいました。もう少しバランスを取りながら岩を掴んでいけたらよかったと思います。

クサリ場を抜けた後は大きな岩を縫うようにして南陵の頭に到着。しかしこの辺りであたりにガスがかかり始め,展望が利かなくなりました。加えて,この辺りでちょっと気持ち悪くなってきました。軽い高山病の症状が出たのだと思います。前穂の頂上(3090 m)ではそんなことはなかったので,3100 mあたりがボーダーだったのでしょうか。

南陵の頭からも岩場が続きますが,傾斜は緩み,ほどなくして奥穂高岳頂上(3190 m)へ。奥穂頂上でもガスに包まれ,展望は効きません。ジャンダルムや槍ヶ岳方面の展望を見ることができなかったのは少しだけ残念です。いつかリベンジできるかな?

奥穂高岳から穂高岳山荘へ

奥穂山頂で簡単な昼食をとった後,まず穂高岳山荘に向けて下ります。初めは緩い傾斜の岩場歩きですが,途中から傾斜が増してきて,最後は穂高岳山荘に向けて,垂直なハシゴを3本下らなければなりません。はじめ順調に降りていたのですが,3本目のハシゴに乗り換える途中で態勢を変えたら,背中のでかザックがズルッ!と動くハプニング。一瞬緊張しましたが,バランスを崩すことはなく,無事穂高岳山荘に降り立ちました。

ここで大休止。吊尾根では南側斜面のトラバースが続いたので,ずっと陽光に炙られていました。体が火照っているので,山荘でスポーツドリンクを買って一気に飲み干しました。また奥穂頂上付近で感じた気持ち悪さは,ここまで下るとすっかりなくなっていました。

涸沢へ下ります

さて穂高岳山荘のテラスで休んだら,涸沢へ下ります。途中,ザイテングラートと呼ばれる岩尾根の通過があるので,もう一度気を引き締めます。

ザイテングラートは初め通常の露岩帯みたいでしたが,下部のクサリ場が核心部のようでした。集中を切らさないように気をつけながら通過。

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前穂高岳 ザイテングラートを下ったあたりから。イケメンな山です

ザイテングラートを抜けたら,後は涸沢まで歩いて下るだけです…が,ここで緊張を解いてしまったためか,ペースが落ちてしまいました。涸沢までまだ結構な標高差を下らなければなりません。予定よりも時間がかかりましたが,その間ずっと右側に見えていた前穂高岳はカッコよかったです。前穂はイケメンな山ですね。

涸沢にて

予定よりも遅くなりましたが,涸沢に着きました。まずはテントを張ります。涸沢のテント場は広いですが,夜,穂高と星空を絡めた写真を撮りたいので, 一番山側に設営しました。トイレから少し遠かったのが難点でしたが。

さて,難所を越えてきて,安全地帯にきました。今日は安心して夕食を食べます。今夜のメニューは麻婆春雨。軽いし美味しくて良かったのですが,「3人前」のボリュームはちょっと多すぎたかな (^-^;) ともあれ縦走を終え,満ち足りた気分で,ビールで乾杯しながらいただきました。

そして辺りが暗くなり,周りのテントに明かりが灯る頃,穂高の稜線には天の川がかかります。今日歩いてきた前穂高岳〜吊尾根にかかる天の川を一枚撮影しました。

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前穂高岳にかかる天の川 涸沢にて

上高地へ下山

涸沢でもよく眠ることができました。今日もいい天気。食料はまだあったので,「もう一日滞在して,北穂高岳にも登ってきていい?」とうちに電話しようかと思いましたが,自重しました(笑)

あとは下山するだけです。時間に余裕があるので,パラダイス・涸沢を少し味わってから出発しようと思います。涸沢ヒュッテのテラスで穂高の山々を眺めながらコーヒー。ああ,なんて贅沢な時間でしょうか。

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涸沢カールって本当にパラダイス

そしてテントをたたみ,8時頃に涸沢を後にしました。前日のような要注意地帯はありませんが,横尾までは気をつけて歩きます。特に「Sガレ」と名付けられたところでは,上からの落石に気をつけます。

樹林帯を下り,本谷橋で顔を洗って,さらに歩いて横尾に到着。 ここで「無事下山しました」メールを家族に送信。

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横尾から見る明神岳 また北アルプスに行きたい

横尾から上高地までは遊歩道のような道をのんびりと歩きます。その間,梓川の向こう側にずっと見えている明神岳が美しく,また北アルプスに来ようと思うのでした。徳沢,明神で休憩をはさみ,上高地が近づくと観光客の数が増えてきます。 

おわりに

上高地に着きました。前日歩いていた穂高の稜線が,はるかに高いところに見えるのが不思議です。

バスターミナルで顔を洗ってウェットティッシュで体を拭き,Tシャツを着替えてさっぱりしたら,ソフトクリームです♪ ずっと炎天下を歩いてきた体には,何よりのご褒美でした。

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信州りんご味!

帰りは大宮行きの直通バスに乗りました。途中,棚田に夕日が沈んでいく光景が車窓から見えて,「ああ世界は美しいなあ」としみじみ思ってしまいました。

というわけで,昨年の登山の話でしたが,自分の忘備録を兼ねて書きました。ずっと行きたいと思っていた穂高吊尾根を歩くことができてよかったと思っています。穂高はやっぱりすごいなあ。

北アルプスはやっぱり特別な山域です。今年の夏は息子と白馬岳に行きたいと思っています。いずれ遠からぬうちに自分から離れていくであろう息子と,アルプスを歩きたい。これが今の僕の最大の楽しみなのです。

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