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星空の写真を撮ろうよ–––固定撮影編

街灯のない山間部に行って夜空を見上げると,満天の星空に感動してしまうことってありますよね。あの星空を写真に収めたいと考えたことはないでしょうか。

星空の撮影は,パシャッ!と撮っておしまいとはいかない面があるのですが,ポイントを押さえれば誰にでもできます。

固定撮影と追尾撮影

星空の撮影方法には,大きく分けて「固定撮影」と,赤道儀を用いた「追尾撮影」とがあります。

固定撮影とは,カメラを三脚に固定して星空を撮影する方法です。星の光は弱いので,カメラのシャッターを長時間(後で書きますが,20秒とかそれくらい)あけておく必要があるのですが,カメラを手で持ったままきっちり固定し続けることは無理なので,三脚を用いるのです。

ところで星は日周運動により動いています。この動きは思いのほか速く,シャッターをあまり長く開け続けていると,星は点ではなく線となって写ります。固定撮影の場合,星を点として写すことができる露光時間は,レンズの焦点距離にもよりますが,20〜25秒程度が限界です。

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落葉松林にオリオン @奥多摩・雲取山にて カメラを三脚に固定して撮影

星空の撮影において,より暗い星まで写したり,淡い天の川をきれいに写したりするためには,さらに長い時間シャッターを開けておきたくなります。より長い露光時間を確保しつつ,なおかつ星を点として写すためには,カメラを日周運動と同じ速さ(一日一回転)で回してやる必要があります。これが追尾撮影で,この撮影法に用いるのが赤道儀です。

固定撮影をしよう:必要なもの

今回はより簡単な,固定撮影のやり方を書いてみたいと思います。星の日周運動を写したぐるぐる写真も固定撮影の応用でできます。

必要なもの

  • カメラ(一眼レフやミラーレスなどマニュアル撮影ができるもの)
  • 三脚(しっかりしたものの方が良いですが,お手持ちのものがあればそれを使ってみましょう)
  • 懐中電灯(暗闇での撮影になりますので,手元を照らすために必要です)
  • 夏なら虫除け,冬なら防寒具(星空撮影には時間がかかりますので,ぜひ)

以上です。他にルーペ(百円ショップで売ってる安いものでOK)もあると,なお良いです。

レンズは普段使っているもので撮ってみましょう。一眼カメラに「キット」として初めからついているのは,APS-Cのカメラなら焦点距離が18 mm–55 mmくらい,F値が3.5–5.6くらいのものが多いでしょうか。

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18–55mm, F3.5–5.6 のキットレンズで撮った雲海と天の川 @奥秩父の稜線で

もしあなたが,もっと明るくて(F値が小さくて),より広角の(焦点距離の短い)レンズを持っていたら,素晴らしい!そのレンズを使いましょう。

カメラの設定・その1

カメラの設定ですが,まず以下のようにします。

カメラの設定・その1
  • 撮影モード マニュアル撮影
  • フォーカス合わせ マニュアルフォーカス
  • ドライブモード セルフタイマー
  • 手ぶれ補正 OFF
  • ファイル記録方式 rawまたはraw + jpegがお勧め
  • ズーム お好みですが,はじめは最も広角にするのがお勧め

露光時間や絞りは自分で決めてやる必要があるのでマニュアルモードで撮影します。また星の光は弱くてオートフォーカスが効きませんので,MFでピント合わせを行います。それからシャッターを押したときにカメラがぶれないようにセルフタイマーを使います(リモートレリーズを持っている人は,それを使えばセルフタイマーにする必要はありません)。手ぶれ補正はOFFで。

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星の写真を撮るときは,撮影モード「マニュアル」で

また後に書くように,星空写真はレタッチが必要になる場合が多く,レタッチ耐性を確保するためにrawで撮っておくのがお勧めです。気楽にjpegで撮って出しがダメというわけではありませんが。

カメラの設定・その2

問題はどれくらい光を取り込んでやるかです。これは撮影場所がどれくらい暗いかによって変わってくるのですが,もし撮影場所が市街地から十分に離れていて,満天の星が見える!という状況なら,はじめは以下の設定で撮ってみることをお勧めします。

カメラの設定・その2
  • iso感度 4000〜6400
  • 絞り 開放(F値を一番小さい数値にする)
  • 露光時間 20秒

あとで書くように,この設定で撮った結果を見て,設定を調整することもあります。

なおこれらの設定を暗闇で全部行うのは大変ですので,明るいところで済ませておくのが吉です。

ピント合わせ。がんばりましょう!

現地に着いたら三脚を立て,カメラを取り付けます。そして最初に行うのがピント合わせです。個人的にはここが最大の難関だと思います。

距離目盛が書いてあるレンズの場合(マニュアルフォーカスのレンズだと書いてある場合が多いですね),これを∞(無限大)に合わせれば大体OKです。問題はオートフォーカスのレンズで,距離目盛がない場合です。

この場合は,まず一番明るい星にカメラを向け,画面の真ん中に入れます(一眼レフカメラの場合はライブビューにします)。そしてフォーカスリングを回してみましょう。最近のカメラだとMFモードでフォーカスリングを回すと,背面液晶に画面中央が拡大されて表示されるものが多いと思います。この状態でフォーカスリングを回し,星の像が最も小さくなるようにします(僕はこの際,背面液晶をルーペで見ながらピント合わせを行なっています)。

もし遠くに街明かりが見えたら,それにピントを合わせてもいいと思います。街灯はたいてい星よりも明るいので,その方が楽かもしれません。

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国師ヶ岳から昇ってくる冬の星座たち @大弛峠にて

撮ってみましょう

ピント合わせが終わったら,カメラを撮りたい方向に向けましょう。星座がわかる人は,星座が途中で切れないような構図にすると違和感のない写真になると思います。冬だったらオリオン座を中心にするとか,春だったら北斗七星を画面に収めるとか。冬の大三角や夏の大三角を中心に撮ったりするのもいいですね。

夏の夜なら天の川がはっきりと見えているかもしれません。南天から天頂にかけて,薄い雲の帯のように見えるのがそれです。まさにMilky Wayです。そちらにカメラを向ければ,天の川は目で見た感じよりもハッキリと写って,素敵な写真になります(20秒程度の露光の間に光がセンサーに蓄積されるので,目で見るよりも,天の川の淡いところまで写るのです)。

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固定撮影でも空の状態が良いと,天の川がこんなに写ります。はくちょう座付近の天の川 F2, iso 6400, 25秒 @八幡平市

さそり座など低空の星座を撮る場合,地上景も一緒に写ります。その場合はカメラの水平をとっておきましょう。地上景が傾いていると,なんだか気持ち悪い写真になりますので。

…と書きましたが,暗い夜空をファインダーや背面液晶で見ても,星座や天の川の位置はハッキリわからないことが多いと思います。ですので,おおよその方向にカメラを向けて撮影し,撮れた写真をモニタで確認して構図を微調整して…の繰り返しになることがほとんどです。この段階で結構時間がかかります。頑張りましょう。

構図が決まったら,気合を込めて一枚。

撮った写真をチェックしてみよう

「気合を込めた一枚」が撮れたら,その写真を背面液晶モニタで見てみましょう。その結果を見て,必要なら設定を変えてまた撮ります。

空が明るく(白っぽく)飛んでいたら→iso感度を下げます。もともと6400で撮っていたなら4000とか3200とかに。それでもダメなら1600とか800とか。

空がまだ結構暗く写っていたら→露出時間を25秒にしたカットも撮っておきましょう。

空の暗さは場所によって様々ですので,最適な設定をトライ&エラーで見つけられたらいいですね。何度か撮っているうちに,自分なりの設定が見つかってくると思います。

なお,暗いところで液晶モニタを見ると明るく感じるので,「空が明るく写り過ぎた!」と思っても,そのカットは消さないでおくことをお勧めします。あとであらためてパソコンの画面で見たらけっこう良かった,なんてこともあります。

Tip: ソフトフィルターを使おう

デジタルカメラで星の写真を撮ると,星がシャープに写りすぎて,星座がわかりにくくなることがあります。そこでソフトフォーカスフィルター(例えばケンコーのプロソフトンA)を使うと,明るい星がにじんで大きく写り,星座の形がはっきりします。ソフトフィルターの使用は,結構好みが分かれるんですけどね。

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ソフトフィルターを使ってオリオン座を目立たせました @大弛峠

レタッチが必要になることもあります

星空写真は撮ったらそれで終わりになることは少なく,レタッチして仕上げることもあります。例えばこの写真。天の川が写っていますが,ちょっと眠たい感じです。周辺減光も目立っていますね。

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レタッチ前。周辺減光が目立ちます

このままでも悪くはないのですが,これをレタッチするともっと見栄えが良くなります。↓こんな感じ。

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レタッチ後。乗鞍岳に立ち上がる天の川 @穂高・岳沢から

星空写真のレタッチは奥が深いので,また別の記事で書こうと思います。

なおカメラ設定のところで,星空写真はrawで撮るのがお勧めと書きました。jpegだとレタッチ耐性が低いので,カメラメーカーから提供されているraw現像ソフトを使って(もちろんAdobe Lightroomなどを使うのも最高です),16 bit tiffファイルに書き出してからレタッチすると,作業がやりやすいのです。

まず撮ってみようよ!

というわけで,星空写真は,昼間の撮影に比べてちょっとメンドくさい手順を踏む必要があるのも確かです。そして最初は思い通りの絵が撮れないかもしれません。でもあまり細かいことは気にせず,まず撮ってみましょう。

自分が撮った写真に星が写ってるのを初めて見るとね,けっこう感動するんですよ。これは本当です。

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天の川のアーチ。固定撮影で数枚撮ってパノラマ合成したもの 外房・大波月海岸で

一番大切なのは「どこで撮るか」

ところで星空写真で一番大切なのは,撮影技術よりも「どこで撮るか」だったりします。どれくらい街明かりの影響を受けない暗い場所で撮影できるかがポイントなんですね。

僕は東京都内の自宅ベランダで星空を撮ったことも何度かあるのですが,iso 3200,絞りF4で露光時間4秒くらいが限界でした。それ以上露光時間を取ると,街明かりの影響で,すぐに画面が真っ白になってしまいます。もちろんこれでは,星は少ししか写りません。

あ,そうそう,ひとつ大切なことを書き忘れていました。空に月が照っている夜は空が明るく,星の写真は撮りにくいです。新月の前後,月のない夜が狙い目です。

おわりに:余談ですが

余談ですが,星空を見る際に街明かりの影響を「光害」という人も多いようです。確かに街灯りがない方が星空はきれいに見えます。けれども僕は個人的に,この言葉は使わないようにしています。街の灯りは普段私たちの安全な暮らしを守ってくれているものだし,夜遅くまでオフィスに明かりがついているのは,その時間まで仕事をしている人がいる(それは直接的・間接的に僕の生活を支えてくれているでしょう)ということだからです。

でも前に一度,相模湖畔で星の写真を撮っていたら,懐中電灯を持ったおじさんが歩いてきて,露光中のカメラにライトを向けながら「おおー,赤いカメラなんて珍しいねえ!」と話しかけられたことがありまして(当時使っていたNEX3は赤いボディだったのです)。あれは「光害」と呼んでもいいかな(^^;)

 

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