前回の記事「【北アルプス】息子14歳と登る白馬岳 (4):白馬岳を越えて白馬大池へ」の続きです。
白馬大池の朝
白馬大池の夜が明けました。途中で一度起き出して,星が見えないかチェックしましたが,残念ながらこの夜は雲がかかっていて星空を見ることはできませんでした。白馬大池と天の川の組み合わせはいつか撮ってみたいので,またここを訪ねることもありそうです。
午前3時40分,息子も起きてきました。今日は栂池まで下山するだけなので,まず朝の白馬大池をゆっくり散策したいと思います。夜明け前,風がピタリと止んで,大池が鏡のように周りの山々を映しています。
静かな朝です。息子と2人で池の周りを歩いてみました。チングルマやハクサンフウロ,そしてウサギギクやハクサンイチゲなどの高山植物が大池を彩るように咲いています。息子は昨日に続いて池を覗き込んで,サンショウウオの観察に余念がありません(笑)。
池の周りを歩いていると若いお父さんが声をかけてくださって「よく2人で登られるんですか?」と聞かれました。「初めてなんですよ」と答えると,「僕の息子はまだ3歳で小さいけど,いつかは一緒に山に登りたいと思っています」と。いずれぜひ!
下山します
ひとしきり池の周りを歩いた後,テントに戻って朝ごはんにしました。そのあとも周りの景色を見ながらお茶を飲んだりしてゆっくりします。そしてテントをたたみ,8時半に下山にかかりました。
まず池をぐるっと半周して対岸に行きます。池の水は今日も澄んでいます。対岸に着いたら,ゴロゴロの大岩が積み重なった道を登って白馬乗鞍岳という小ピークを目指します。登っていく途中で振り返ると,白馬大池が周りの景色を映しながら朝日に光っていました。
そして歩き始めてから40分で白馬乗鞍岳に到着。頂上には誰が作ったのでしょう,絶妙なバランスで積まれた小さなケルンがありました。休んでいるとおじさんが一人登ってきたのですが,息子の「こんにちはー!」という挨拶に無視をかましたので,山小屋のトイレで用を足した時に「お釣り」をくらう呪いをかけておきました。
白馬よさらば
乗鞍山頂で振り返ると小蓮華山や雪倉岳が遠くに見えます。白馬の山々はここで見納めです。さらばじゃ!
白馬乗鞍岳からはゴロゴロの岩場を下って行きます。1時間ほど歩くと小規模な雪田に出ました。ここは雪がザクザクに柔らかいし,斜度もそれほどキツくないのでそのまま下っても問題ないのですが,息子は初めての登山だし万全を期することを覚えて欲しいので,アイゼンを装着することにします。
2人でアイゼンをつけていると,ちょうどそこに山岳パトロールの方が通りかかって「安全に気をつけてくださって,ありがとうございます」と言われました。こちらこそ,ありがとうございます!
この雪田は難なく下り,再びゴロゴロ岩の道へ。いつのまにか両側の木々が背丈を越える高さになっています。ここを抜けると木道の敷かれた湿原に飛び出しました。木道の両側にはワタスゲが咲き,のびやかな気持ちになります。
途中「天狗原」で長めの休憩をとりました。これから白馬大池に登っていく人たちもここで休んでいます。湿原ではハナムグリが小さな花にとまり,しきりに蜜を吸っています。彼らも山の短い夏を謳歌しているようです。
湿原を抜けると再び岩の道。そしてさらに下ること30分,最後は雨に降られて雨具をつけたりしましたが,12時30分,栂池自然園の入り口に飛び出しました。3度目のハイタッチです!
栂池自然園にて
僕はここですぐに下りのロープウェイに乗るつもりでいたのですが,息子は自然園の遊歩道も歩いてきたいと言います。オマエ,元気だな。…というわけで自然園の入り口にザックを預け,1時間半ほどぐるっと回ってみました。
自然園には木道が敷かれ,その周りには様々な高山植物が花を咲かせています。そして木々の向こうに白馬岳。山に登らなくても,ここを見るだけでも白馬を訪ねる価値がありそうです。
自然園を出てロープウェイ乗り場に向かったところ,雨が降ったせいかロープウェイは運休中でマイクロバスが運行しているとのこと。
少し待って乗り込んだバスはどんどん高度を下げ,20分ほどで栂池に到着しました。これで本当に下山です!
栂池のソースカツ丼と温泉は最高
栂池に着いたら,標高を下げたせいか暑いです。すぐに山の上が恋しくなります。
それはともかく2人ともお腹が空きました。ゴンドラ乗り場の近くを歩いてみると「カウベル」というお店が開いていたので入ってみました。そして2人ともソースカツ丼を注文したのですが…これがすっごく美味かった!今でも事あるごとに2人で「あのソースカツ丼は美味かったなあ!」と話をするくらいです。
とにかく山から下りてきた身体にガッツリくる美味さでした。また息子は今流行りのタピオカミルクティーをここで初体験しました (^ ^)
お腹が満たされたので次は温泉です。すぐ近くに「栂の湯」があるので,ここでゆっくり汗を流しました。ふうー,生き返りますね!温泉から上がったあと,息子は友達へのお土産を買ったり,2人でアイスを食べたりしながらのんびりと時間を過ごしました。この間も夕空に白馬の稜線が見えていてきれいだったなあ。
その後バスで長野に出て,新幹線に乗って帰宅と相成りました。電車の乗り換えの際に,駅の階段をスタスタ歩く息子を,僕は「おお,結構体力残ってるな」と思いながら見ていました。
おわりに
この一年,息子14歳と「この夏はいっしょに白馬に登ろう」と話しながら,とても楽しみにしてきました。この山行が実現できてとてもうれしかったです。僕にとって生涯忘れ得ぬ登山になりました。
小さい頃は公園のアスレチックコースで泣きが入ったりしていた息子ですが,雪渓や岩場を越えていくのを見て,たくましくなったなと思いました。
また出発前は天気が不安でしたが,(途中ちょっと雨に降られたところはあったものの)おおむね良い天気に恵まれて景色を楽しむこともできました。
山を下りてからしばらく経ちましたが,息子は「また山に行きたいね」と言います。次はいつになるでしょうか。また「レベルが合っていてきれいなところ」を探しておきたいと思います。
(この記事を書いている間に,息子は15歳になりました)
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