前記事「【南アルプス南部】聖岳-赤石岳-悪沢岳縦走 #3 2日目:聖岳を越えて百間洞山の家へ」の続きです。
ここまでのお話はこちら
縦走3日目。今日は赤石岳を越えて,荒川三山の稜線上にある中岳避難小屋まで行きます。
赤石岳もでっかい山でした。そして今日も素晴らしい1日でした!
- 百間洞の星空
- 朝の百間平をゆく
- 標高を上げていきます
- 赤石岳の登りに入ります
- 赤石岳に登頂です!
- 赤石岳は大展望
- 小赤石岳を越えて
- 大聖寺平にて
- 荒川小屋へ向かいます
- 荒川中岳へのキッツイ登り
- 荒川前岳に登ります
- 今夜の宿,中岳避難小屋へ
- 最終日に備えて休みます
- 3日目記録
百間洞の星空
2時半起床。いつも通りにシュラフをたたんで,ワッフルとチーズの簡単な朝食をとりました。
外に出てみると,満天の星空!
時間的に いて座のスタークラウドは沈んでいるし,そろそろ天文薄明も始まる時間です。だけどやっぱり撮っておきましょう。
はくちょう座からペルセウス座にかけての天の川。
ペルセウス座流星群にはまだ早いかな。ちょっと期待したけど流れ星は流れませんでした。
でもさすがに山深い場所,空は暗くて天の川の淡い部分もよく写りますね。
こちら東の空,ちょっと明るくなってきてるかな。おうし座が昇ってきています。もうそんな季節なのか。早いね。
ちょうどヒアデス星団の近くに木星と火星がいて,彩りを添えてくれています。
さて,明るくなってきました。テントを撤収して,歩き始めましょう。
朝の百間平をゆく
朝4時25分,ヘッドランプを点けて百間洞を出発。最初はやや急な斜面を登っていきます。
その途中で,聖岳が夜明けを迎えているのが見えました。その隣には,中盛丸山が存在を主張しています。うん,キミを越えるのはちょっと苦労したよ。
1時間弱登ると,「百間平」と呼ばれる高原に出ます。
ここはとても気持ちの良いところ。朝の空気を胸いっぱいに吸いながら(例え話ではなく,標高が高いのでいっぱい吸うのです 笑),ゆったり歩きます。
右側には,朝日を浴びる聖岳。その名の通り,美しい山です。昨日はあの山を越えて,ずっと歩いてきました。
行く手に大きく立ちはだかるのは赤石岳。朝日はちょうどこの山の向こうから昇ってきます。今いる場所は,赤石岳の影になっているんですね。
左手には,荒川三山(荒川前岳,荒川中岳,悪沢岳…またの名を荒川東岳)が姿を現しました。美しい!
今日はあの稜線まで歩いて,中岳直下の避難小屋に泊まる予定です。
山名を入れたバージョンがこちら。前岳と中岳はすぐのところにありますが,悪沢岳のみちょっと離れていますな。
ひときわ立派な山容の悪沢岳には,明日・最終日に登る予定です。
今朝は,昨日にも増して良い天気。伊那谷を埋めた雲海の向こうに,中央アルプスも夜明けを迎えています。
そして北アルプスは,なんと後立山連峰・白馬岳まで見えているではありませんか。あの向こうはもう日本海ですよ。
朝の百間平,素晴らしいところでした。もう今日はこれだけで満足…なんちゃって(まだまだ歩くヨ)。
標高を上げていきます
百間平が終わると,道は再び標高を上げ始めます。
途中でこんな崩壊地の縁を通る場所があり,「いま崩れたらシャレにならんよなあ」なんて思いながら足早に通り過ぎます。
行く手には赤石岳が大きくなってきました。ホント今回は「ジャイアント越え」の縦走ですなあ。
振り返ると中盛丸山〜大沢岳の稜線もおはようございます。巨大な赤石岳の影に,百間平がまるまる入っていますね。
南アルプスの深い谷を朝霧が埋めています。光条が水平に走る,不思議な光景が出現しています。
赤石岳の登りに入ります
高度を上げていくと,道は赤石岳の南斜面をトラバースするように続きます。
この斜面は信じられない規模のガレ場になっています。こりゃすごい(語彙)。
ここまで,稜線近くまでハイマツが生えているところが多かったんですが,ここだけ穂高みたいな岩の斜面。どうしたんだ,一体。
岩の大斜面をトラバースすると,今度は頂上稜線に向かって直登になりました。けっこう急ですぞ。
標高はもう3000 mを越えたでしょうか。息を弾ませながら登ります。
赤石岳に登頂です!
さて,これまでずっと赤石岳の影の中を登ってきたんですが,頂上稜線が近づいて朝日を浴びるところに出てきました。
スカイラインが近づくと気が急いてきますね (^◡^)。右手に赤石岳避難小屋が見えてきましたよ。
頂上稜線に乗ると,まぶしい光を浴びるとともに,今まで見えていなかった景色が目の前に展開します。
どーん!フジッサーン! /^o^\
南アルプスからは富士山がよく見えるわけですが,富士山からは南アルプスはどんなふうに見えるんでしょ?ちょっと興味が出てきたかも。
頂上までのビクトリーロード。こんな景色が欲しいままです。
荒川前岳の稜線の向こうに,仙丈ヶ岳が大きい。間ノ岳や農鳥岳も顔を見せていますね。
振り返れば兎岳〜大沢岳の稜線。百間平が遥か下になりました。
赤石岳山頂までもう少し。山がでかいだけあって,「もうすぐ」と思ってからが長いですぞ(汗)。
それでも7時15分,赤石岳(3121 m)に到着です!百間洞のテント場を出てから,3時間弱の道のりでした。
赤石岳には一等三角点があります。ここは国内で最も高いところにある一等三角点なのです。タッチしておきましょう (^◡^)。
赤石岳は大展望
南アルプス南部の盟主,赤石岳の展望は文句なしに素晴らしい。
まずなんと言ってもこの眺め!荒川三山へ続く累々たる山並み。右側のひときわ高いのが悪沢岳。明日はあそこを越えます。
荒川三山の向こうには間ノ岳と農鳥岳。昨年農鳥岳に行ったときは,爆風に叩かれて辛い思いをしたっけ。
農鳥小屋の親父さんは引退されたんだとか。ちょっと寂しい。
その左には,「南アルプスの女王」こと仙丈ヶ岳。聖岳から見た時よりも,ずいぶん大きくなりました。
仙丈ヶ岳の右,荒川前岳の向こうには,塩見岳が頭だけ出しています。甲斐駒ヶ岳の頭も見えていますね。
そしてあらためてフジッサーン! /^o^\ 今日富士山に登った人は,きっと見事なご来光を迎えることができたことでしょう。
来し方を振り返れば,昨日越えてきた聖岳。急登に苦しんだ兎岳も隣にそびえています。
こちら上河内岳。聖岳のさらに南に聳える,2803 mの山です。その向こうに見えている特徴的な形の山は,茶臼岳かな?
南アルプスはさらに光岳を経て,”深南部”へと続いていきます。
稜線は続く。南アルプスの大きさ,深さを肌で感じる眺めです。
南東方向,遠くに霞むこの山は恵那山かな?
この山の名前の由来は,「天照大神がここで降誕され,その胞衣(えな)がこの山に埋められた」との故事に由来するという説があるんだとか。中津川のあたり,いろんな伝承が多いですよね。
小赤石岳を越えて
それでは名残惜しいけど,この山頂をあとにして,次の山々に踏み出します。目指すは荒川三山の稜線です。
まず越えるのは,小赤石岳。”小”といっても標高は3081 mもあります。赤石岳は小赤石と合わせて,見る角度によっては双耳峰のように見えますよね。
まず小赤石の鞍部まで下ってきました。赤石岳を振り返ると…でかい!
そして行く手の小赤石岳はこれ。こっちも負けず劣らずデカいですね。…「小」とは?
椹島へ下る大倉尾根のコースを右に分けて,小赤石岳の登りに入ります。
スケールの大きな南アルプスを歩いていると,地球の呼吸が感じられるようです。
アースを着実に踏みしめながら,小赤石岳に到着。いっしょになった団体の方に記念写真を撮ってもらいました。荒川小屋から来られたとのこと。
ここで少し休んだら,荒川小屋へ向かう下りです。
常に荒川三山に向かって歩く素晴らしい道!南アルプスを身体中で感じて歩きます。
近づいていくほどに,荒川前岳・中岳から西に伸びる岩稜が大迫力。思わず目を奪われるではないですか。
大聖寺平にて
この辺りから後半戦。荒川小屋を経て,荒川三山へ登っていきます。写真でわかるように,荒川小屋への道は,途中から尾根通しではなく,トラバース気味に尾根の中腹に続きます。
小赤石から下ってきて荒川三山へ向けて登りに転じるところは,だだっ広い広場のようになっています。
ここが大聖寺平。思いっきり腕を広げて深呼吸をしたくなるような,気持ちのいい場所です。
あんまり素敵な場所なので,三脚を立てて自撮りを一枚(笑)。
ちょうど通りかかった人が僕の使っている三脚に興味を示してくれて,「これはどこの三脚ですか?」と聞いてきました。ミニ三脚を持ち歩いてるけど,カメラを支えきれないことも多いんだとか。
僕のはこれ↑。AOKA というメーカーの「ミニロング CMP163CL」という製品ですよ。重量は500 gでけっこうしっかりしています。星もいけます。
荒川小屋へ向かいます
大聖寺平を過ぎたら,今度は荒川小屋へ向かいます。尾根を巻くトラバース気味の道。荒川三山が見上げるような近さになってきました。こっちもデカいぞ!
荒川小屋は,ギリギリ樹林帯に入ったところにあります(小屋の写真撮るの忘れた)。荒川前岳から流れる沢の水が清冽な,オアシス的な存在です。
小屋の水場で,今晩&明日朝の分の水を補給します。中岳避難小屋は稜線上なので水はない(有料)と思われるのでね。ポカリスエットを1本買うとして,2.5 L担ぎ上げればいいかな。
この水場から見上げる荒川三山は,岩肌を晒して大迫力。ここでテント泊するのも気持ちよさそうですね。
ところで食料は順調に消費しているけど,こうやって定期的に水を担ぐので,荷物が軽くなってるんだかどうか,よくわからない(汗)。
水を汲んだら,小屋のベンチでザックを下ろして大休止。ブランチを食べました。
荒川中岳へのキッツイ登り
荒川小屋で一休みしたあと行動再開。荒川三山へのキッツイ登りが始まります。いや,ホントにキツいんだここが。
目指すのはあの稜線。まあ見るからにヘビーな登りになりそうだよね。
荒川岳への登りは,トラバースと直登を織り交ぜながら,延々と続きます。
カール状の地形を登っていくので,高度を上げるほどに傾斜がキツくなっていきます。標高も再び3000 mに近づいていくので,呼吸も上がります。
だんだん白目になっていきますぞ。
少し登ったところで振り返ると,赤石岳と荒川小屋がきれいに見えました。赤石岳,もうけっこう遠くなりましたね。
振り返れば過去の自分,行く手には未来の自分。縦走はそんな旅でもあります。
荒川三山への長い登りの途中,柵で囲まれたお花畑があります。シカによる食害から高山植物を守るために,柵で囲んで保護しているところです。
花の盛りは過ぎていますが,この中ではまだまだ花がきれいです。
ただね,「お花畑」っていうから,キツイ登りの途中で一息つける緩やかな場所を想像してたんですけどね。全然そんなことはなくて,花を縫ってキツい登りが続くのは相変わらずでしてね(汗)。
それでも深山に咲く花たちには癒されました。柵につけられた扉を開けて,さらに続く登りへ向かいます。
登り続けると,悪沢岳が稜線をこちらに向けて,右側に見えてきました。
そして稜線が近くに見える高さまできましたよ。相変わらず傾斜はキツイですが。
あとで中岳避難小屋でいっしょになった人たちも,口々に「ここの登りがキツかった!」と言っていましたね。しんどい区間です。
そしてかなり高度を上げて,稜線が近くに感じられるようになってきたところで,上から若いお姉さんが下りてきました。
細い道なので,ここで僕が脇に避けて道を譲ってあげたんですが…。
すれ違うときにそのお姉さん「ありがとうございます!グータッチしましょう!」と言って拳を出してくるではありませんか。
え?いいの?僕もドギマギしながら拳を出してグータッチ!「私の元気を受け取ってください!」とお姉さん。
…ほ,惚れてまうやないか (^o^;) それともそんなにヘロって見えた?
振り返るとこの傾斜。頑張って登ってきましたよ。
お姉さんからもらったパワーで,残りの登りを乗り切ります。そして荒川小屋から登ること1時間半ほどで,荒川岳の稜線につきました。ゼーハーゼーハー。
荒川前岳に登ります
登りついたところは,荒川前岳方面と中岳方面の分岐点になっています。とはいっても,前岳へはたかだか5分くらいです。カメラだけ持って往復してきましょうかね。
お昼を過ぎて,やっぱりガスがかかってきましたね。
この稜線に乗って,塩見岳が初めて全貌を現しましたが,ガスに包まれたり姿を見せたり。
そして程なく荒川前岳(3068 m)に登頂。赤石岳方面はガスで見えなくなりました。
一息ついたら分岐点まで戻り,荒川中岳(3083 m)に向かいます。ガスっているとはいえ,高山の雰囲気が濃い気持ちのいい道。
こちらも10分ほどで到着です。
これで今日は,登りはもうありません。がんばりました。
中岳からあらためて塩見岳。南アルプスの真ん中に聳える,孤高の3000 m峰です。
今夜の宿,中岳避難小屋へ
中岳を後にして,今夜の宿,中岳避難小屋へゆるゆると下っていきます。これで今日の行程はほぼ終了。
中岳避難小屋は,標高3000 mに立つ小さな山小屋。名前は「避難小屋」ですが,夏山シーズンの間は管理人が入って営業小屋となります。
受付を済ませたら明日のためにポカリスエットを1本購入。ついでに(?)ビールも買って,小屋の前で飲みました (^◡^)。
眼前の悪沢岳には,ガスが流れています。こんな光景を眺めながらゆったり気分。今日もいい1日でした。
悪沢岳への道が,時おりガスの間に見え隠れします。けっこう険しそうですなあ。小屋番さんによると悪沢岳までコースタイム1時間ちょっとということですが,ホントにそんなんで行けるんだべか?
中岳避難小屋の管理人さんは,口数は多くないもののとても優しい口調で,すっごく親切。とても感じのいいお兄さんでした。
…ほ,惚れてまうやないか (^o^;)
その管理人さんによると,明日も午前中は天気が持ちそうだとのこと。
最終日に備えて休みます
明日は最終日。バスの時間,13時までに椹島に下山しなければなりません。
早朝3時に小屋を出発して悪沢岳でご来光を迎え,そのあとスタコラ下る予定です。
そんなわけで,早立ちに備えて17時には寝床に入りました。
おやすみなさい。
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3日目記録
2024年8月2日
百間洞山の家 (4:25) – 百間平 (5:15) – 赤石岳 (7:15–7:50) – 小赤石岳 (8:25–8:30) – 大聖寺平 (9:35) – 荒川小屋 (10:20–11:05) – お花畑 (12:00) – 荒川前岳分岐 (12:40) – 荒川前岳 (12:50–12:55) – 前岳分岐 (13:05) – 荒川中岳 (13:15–13:20) – 中岳避難小屋 (13:25)
休憩を除いた総行動時間 7時間25分
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