前記事「【南アルプス南部】聖岳-赤石岳-悪沢岳縦走 #2 1日目:聖沢登山口から聖平小屋まで」の続きです。
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縦走2日目,今日はいよいよ稜線に上がります。1つ目の3000 m峰,聖岳を越えて百間洞山の家まで歩く計画です。
天気に恵まれて素晴らしい1日になりましたが,同時にかなりハードな行程でもありました。
- 朝の山道をゆく
- 樹林帯を抜けて小聖岳へ
- 聖岳に登頂します!
- 聖岳の大展望
- 奥聖岳へ向かいます
- 聖岳を下る––赤色チャートが示す南アルプスの歴史
- 兎岳へのつらい道
- ライチョウと戯れながら歩きます
- 今日最後のピーク,中盛丸山へ
- 百間洞山の家へ向かいます
- 2日目の夜を迎えます
- 2日目記録
朝の山道をゆく
縦走2日目朝。結構冷え込んだようで,寒さを感じながら目覚めました。テントも朝露で濡れています。
いつも通り簡単な朝食をとって,ヘッドランプを点けてスタートです。聖平を出発したのは4時25分。
朝露をできるだけ拭き取ったとはいえ,濡れたテントはちょっと重い。それに飲み水も多めに持っています (2.5 L)。今日は途中に水場がないのでね。
うーん,背中の荷物が重いですね(汗)。
さて,聖平湿原の木道を抜けて,樹林帯の急登に入ります。今日はまず聖岳まで,標高差800 mを一気に登らなければなりません。
登山道は濃いガスの中に続きます。
でも日の出とともに気温が上がれば,このガスは晴れると予想。
急な登りですが歩きやすい道です。
そして予想通り,標高を上げるにつれてガスが薄くなってきました。
樹林帯を抜けて小聖岳へ
1時間ほど歩いて森林限界を突破しました。この山域では,森林限界は標高2600 mあたりになるようです。
ガスも抜けて青空が見えるようになってきました。これはいい一日になりそうです!
相変わらず急な登りが続きます。足元は砂礫の道。歩きにくくはありませんが,下りだったらちょっと嫌かもね。
尾根状の地形に登ると,ドーン!聖岳がその姿を現しました。でかい!
これはスイッチが入りますねえ。ペースが自然に上がります (^◡^)。
歩き始めて1時間20分ほどで,壊れた山頂標が立っている小聖岳に到着。地形図によると,ここの標高は2662 mです。
流れるガスを朝日が照らして,まぶしい光がこの場所を包んでいます。そして行手には,巨大な山体の聖岳。テンションが上がるぅ〜!
ガスが激しく流れながらも,頭上には青空が広がっていきます。このうれしい瞬間よ。
目の前の聖岳があまりにも大きくて,標準ズームでは入りきらないので,ここで星撮り用の超広角レンズ (12 mm) に取り替えました。
それでもこの大きさ。いきなり南アルプスのスケール感に圧倒されます。
聖岳に登頂します!
小聖から少し下ったのち,聖岳本峰を目指します。
まだ標高差は400 m近くありますが,朝の光の中を歩くのは気持ちがいいです。
特に危険箇所はありませんが,西側(左側)には聖岳西壁が切れ落ちているので,強風の時などは注意が必要かもしれませんね。
これが聖岳西壁。クライミングの対象にもなっているようです。
この壁を登るのは,技術もさることながらアプローチが大変そうですね。
西壁を覗き込むとガクブル。たおやかな山容の聖岳が持つ,もう一つの荒々しい側面です。
小聖岳を振り返るとこの通り。ガスが抜けて,歩いてきた尾根がはっきりと視認できるようになってきました。
もう頂上はすぐそこです。Go!と書かれた石にも励まされて進みます。
頂上が近づくと,傾斜が緩んできました。あのスカイラインを目指してもう少し歩きます。
そこで目の前に姿を現したのは…
赤石岳です!こちらもでかい!そして遠い!
なんというか,ものすごい存在感で「圧」を感じるくらいです。
そして7時ちょっと過ぎ,1つ目の3000 m峰,聖岳(3013 m)に到着です!
聖平小屋から,2時間40分の道のりでした。
聖岳の大展望
ちょうどガスが抜けたこともあり,聖岳頂上には大展望が開けていました。
まず目の前には赤石岳。ものすごい存在感です。
東には,奥聖岳へと続く尾根の向こうに,フジッサーン! /^o^\
富士山の展望が良い南アルプスの中でも,聖岳は特に富士山に近い位置にあります。ひときわ大きく見えていますね(笊ヶ岳あたりはもっと近いかな)。
南側を見下ろすと,一夜を過ごした聖平は雲の中。ずいぶん下になりました。うん,よく登ってきたもんですね (^◡^)。
荒川三山のゴツゴツした稜線の向こうには,仙丈ヶ岳。「南アルプスの女王」と呼ばれる美しい山です。その右側に塩見岳も頭を少しだけ出しているけど,わかるかな?
北西には,中央アルプスと木曽御嶽山。あっちもよく晴れています。
中央アルプスは木曽駒ヶ岳しか登ったことがないので,いつかちゃんと縦走してみたいと思っています。
ちなみに手前にある緑の尾根は,このあと辿る小兎岳〜中盛丸山あたりですね。
もっと北側に目を転じると,伊那谷の向こうに,槍・穂高連峰までくっきりと見えました。これにはびっくり。
今日はどこの山に登った人も,大勝利だったでしょうね。
奥聖岳へ向かいます
聖岳から東に伸びる尾根を辿ると,奥聖岳に行くことができます。縦走路からは外れますが,カメラだけ持って往復してきましょう。
尾根を歩くこと15分で奥聖岳(2978 m)に到着です。ここも絶景なので,晴れていたら絶対行くべきですね。
奥聖でも赤石岳の存在感がすごいです。
聖岳本峰とは少し角度が変わるので,さっきは影になって見えていなかった悪沢岳が,赤石岳の右側に姿を現しました!
赤石岳には明日,悪沢岳には明後日登ります。待っててねー。
そしてここ奥聖岳からも,フジッサーン! /^o^\
この眺め,下界は曇りなんでしょうかね。山の上だけ雲抜けしてる感じ。
南側には上河内岳(2803 m)が見えています。
この山には,聖平から南下すると登ることができます。上河内岳から尾根をさらに南に辿ると,茶臼岳,光岳といった南アルプス最南端の山々に到達します。こっちも興味深いですね。
奥聖の眺めを堪能したら,聖岳への尾根を引き返します。
ところどころ岩がゴツゴツしていますが,「天空の散歩道」とでも言いたくなるようなプロムナード。いやあ,気持ちいいですよ。
聖岳の右側,遠くに見えているのは恵那山かな?
聖岳に戻ったら大休止,ブランチをとります。
聖岳を下る––赤色チャートが示す南アルプスの歴史
それではこの素晴らしい頂をあとにして,次なる道に踏み出しましょう。
まず聖岳から一気に400 m下ります。
これからたどるのは,兎岳〜中盛丸山〜大沢岳と続く稜線です。ここがね,なかなか歩きごたえがある(要するにキツいってことです 汗)ところでして (^ ^;)。
下りの途中で聖岳を振り返る。かなり下りてきました。
こっちから見ても存在感ありますね!
右を見れば赤石岳。だいぶ下ってきたせいか,自分よりも高い位置に見えるようになってきました。
縦走って,歩くごとに目に飛び込んでくる景色が目まぐるしく変わります。これが醍醐味の一つかな。
兎岳との鞍部近くまで下っていくと,顕著な赤色チャートの露岩帯がありました。
二酸化ケイ素の殻を持つ放散虫が海底に堆積し,石化したものがチャート。その中で鉄分を多く含み,赤みの強い色をしたものが赤色チャート。
この露岩帯は,南アルプスがかつて海底にあったことを示しています。またこの岩が周辺に多く存在していることが,「赤石山脈」の名の由来になったとも言われています。
南アルプスは100万年ほど前から隆起を始め,現在でも年に2–3 mm程度の隆起が続いているんだとか。地球ってすごいね。
ここで目の前にドーン!と立ちはだかるのが,次のピーク兎岳。さっきから見ないようにしてたんですけどね(笑)。
…ええ,あれ登るのぉ?
キツい急登になるのが丸見えなんですけど(汗)。
兎岳へのつらい道
鞍部「聖兎のコル」まで下りてきました。息つく間もなく,兎岳へのハードな登りが始まります。
縦走路の左側は険しい岩場になっています。
その岩にしがみつくように,ミネウスユキソウが咲いています。束の間の癒しを与えてくれますね。
その後も兎岳へ向けて,キッツい登りが続きます。
ウサギさんぴょんぴょん!(錯乱)
ここ,他の山域だったら主峰になるくらいの貫禄があるよね。標高だって2818 mもあるし。
10時45分に兎岳到着。コルから1時間かかりましたね。
山頂に咲いているのはタカネビランジ。南アルプス周辺だけに咲く,美しい花です。
ここで2度目のブランチ。長めの休憩を取ります。
ライチョウと戯れながら歩きます
兎岳を過ぎると,こんな広い稜線の道になります。
細かいアップダウンを繰り返しながら(これが地味に疲れます),まず小兎岳に向かいます。
お昼が近くなって,山がガスに包まれるようになってきました。
こんな天候のとき,アルプスの稜線に姿を見せるのは…
ライチョウです (^◡^)。親子で登山道を歩いて,全然逃げない。
こちらは幼鳥↓ 。親鳥と付かず離れず歩いています。かわいい。
アルプスには,ガスがかかった時の楽しみもありますね。
そして小兎岳通過。聖岳にもガスがかかるようになってきました。
今日最後のピーク,中盛丸山へ
小兎岳を越えて,さらに進むとまたまたライチョウが出現です。
これも幼鳥ですね。ふっくらしていて可愛いですなあ。奥静名物,「銘菓雷鳥」なんてどうだろうか。
さて次は「中盛丸山」というピークを越えます。ここの登りが!
「"なかもりまるやま" っていかにもなだらかそうな名前をしやがって!」と悪態をつきたくなるような急登。今日最後の白目でした。
それでも何とか登りきって,ガスの中,中盛丸山を通過。
百間洞山の家へ向かいます
中盛丸山を下ると分岐点があります。
ここを直進すると,大沢岳を経由して百間洞山の家へ。コースを右にとると大沢岳を巻いて直接百間洞へ。
少し思案しましたが,ガスがかかっていることもあり,大沢岳は巻くことにしました。
あとから山小屋の人に聞いた話だと「大沢岳は『日本百高山』に入っていて(兎岳や中盛丸山も入ってる),それを目当てに登る人もいる」とのことです。ふーむ。
シモツケソウ咲く道を,今夜の宿へ向かって歩きます。
右を見ると,越えてきた聖岳が大きいですね。
大沢岳中腹に続く道を歩くこと1時間,今夜の泊まり場,百間洞(ひゃっけんぼら)山の家に到着しました。
ここも清潔な山小屋。スタッフも親切です。テント場は小屋から5分ほど離れたところにあるので,テント泊だとトイレが遠いことだけが難点ですが*1。
ガスが取れてきました。まだ日が高い時間だったので,朝露で濡れていたテントがよく乾いてうれしい (^◡^)。テント設営のあと,シュラフも陽に当ててふっくらさせました。
越えてきた聖岳があんなに大きく,そして遠く見えています。よくこんなに歩いてきたもんだ。僕の足も捨てたもんじゃないね。
*1 数年前まで,この山小屋は夕食にとんかつが出ることで有名だったんですが,今はやめてしまったようです。
2日目の夜を迎えます
なかなか濃い1日でした。歩きごたえのある道でしたが時間には余裕があるので,ゆっくり過ごして体を休めたいと思います。
夕方の光の中,ガスが取れて中盛丸山もクッキリ見えました。
丸山くん,こんなに聳え立っちゃって。こりゃ越えるのが大変だったわけだ(汗)。
明日はこちら,北東側へ進んで赤石岳を目指します。
ここはとても山深いところ。聖沢にも,椹島にも1日では下山することができません。こんな場所で一夜を過ごすのは,なんとも言えず安らげます。
3日目も楽しみです!
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2日目記録
2024年8月1日
聖平小屋発 (4:25) – 小聖岳 (5:45–5:55) – 聖岳 (7:05–7:20) – 奥聖岳 (7:35–7:45) – 聖岳 (8:05–8:30) – 兎岳のコル (9:40) – 兎岳 (10:45–11:10) – 小兎岳 (11:55–12:05) – 中盛丸山 (13:00–13:10) – 百間洞山の家 (14:15)
休憩を除いた総行動時間 8時間10分
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