自作赤道儀を改造します
山に登って星の写真を撮るのが好きです。その時に持っていくのが自作のポータブル赤道儀。小型ステッピングモーターで駆動し,減速機構にはウォームホイールを使っています。名付けて「ふくろう号」(ダサい?笑)。
ふくろう号の製作はすでにこちらで記事にしています ↓
この赤道儀は,作ってからすでに何年か経っていますが,使っている中で改善すべき点がいくつか見つかってきたので,改造することにしました。
今回改造するところは以下の2ヶ所です。
- 極軸を作り直し,バランスを改善する
- 赤道儀筐体の剛性を向上させる
最近はあまり山に行けないことだし,この機会を利用して星撮りの環境を改善し,次のチャンスに備えようかと思います。
極軸を作り直します
極軸のバランスを改善します
まず,極軸を作り直します。
今まで赤道儀にカメラ雲台をのせる「雲台ステージ」は極軸にダブルナットで固定し,雲台はステージの裏側から1/4インチのボルトで止めていました。
図で描くとこんな感じです。
ただこれだと極軸とカメラの荷重が同軸にないので,極軸に余計なモーメントがかかり,赤道儀のバランスをとるのに苦労することが多かったのです。
それで一計を案じました。極軸(8 mmφの真鍮丸棒を使っています)にM8と1/4インチの2段のネジを切り,雲台ステージと自由雲台を同軸でつけられるようにしようと。
2段のネジ切りが上手くできるかどうかが問題ですが,まあやってみましょう。
極軸の加工
それでは実際に極軸を加工していきます。まず真鍮丸棒を適当な長さに切り,片方の端をヤスリで削って,万力で固定できるようにします。反対側の端は,ダイスが食いつくように面取りをしておきます。
次にM8の雄ねじ切り。ダイスで雄ねじを切るのって難しいですよね。ダイスが食いつく時に,斜めにならないようにすごく注意が必要です。
直角定規を当てながらネジ切りを慎重に行って,まずM8の雄ネジを切るところまでできました。
続いて,雄ねじを切った部分を半分くらいヤスリで削って,おおよそ 1/4インチ(約6.35 mm)の太さにします。M8ネジの内径が 6.65 mm なので,ネジ山を落とす感じで削ればOK。旋盤があれば早く正確にできますが,そういうものはうちにないので,地道に手で削ります。
そして削った部分に 1/4 インチのダイスで雄ねじを切って,2段ねじ切り完了!
万力で挟むために平らにしていた部分を切り落として,極軸の加工はおしまいです。
こうしてできた極軸にウォームホールおよびシャフトカラーを装着し,しかるべき位置に固定しました。
極軸自体はこれで完成。次に赤道儀筐体の改造に入ります。
赤道儀筐体の改造
赤道儀上蓋をがっちり固定したい
これまで赤道儀筐体の上蓋は,アルミアングルにタップを切ったものを使って本体にネジ止めしていました。
でもこのアングルはアルミですからね,上蓋をしっかり固定するためにぎゅうぎゅうネジを締めたら,ネジ山が崩れてしまいそうです。それで「ふんわりと」締める感じにしていたのですが…。
上蓋には極軸を支える軸受けが固定されているので,ここはガッチリと固定したいところです。
そこでこのアングル部品を鉄製のもので作り替えることにしました。
アングル部品の作成
20 mm 角,厚さ3 mmの鉄アングルを切断して,部材を作ります。アングルの切断は,電動ジグソーに金属切断用の刃をつけて行いました *1。
*1 ジグソー,ドリルなど電動工具を使うときは,必ず保護メガネをつけましょう。
続いて切断したアングルにドリルで下穴を開けて,タップで雌ネジ切り。ちなみに下穴は2.5 mmφ,雌ネジはM3です。
こうして上蓋を固定するためのアングル部材の加工が終わりました。
組み立てます!
蓋を閉める前に
それでは改造した部品を使って,赤道儀を組み立てましょう。
まず,加工したアングル部材を筐体にねじ止めします。
続いて上蓋を取り付けますが,その前に歯車にグリースを塗り直しておきます。それから赤道儀の回転速度を確認しておきましょうか。ステッピングモーターの回転速度をストップウォッチで図り,1回転46秒になっていることを確かめました(ギアの減速比が 1 : 1875 になっているので,モーターが1回転/46秒間なら,極軸一回転にかかる時間は 46 x 1875 = 86250 (秒) = 23.96 時間)。
上蓋をしっかりと固定します
それでは筐体を閉じましょう。極軸を筐体底部の軸受に装填して上蓋を被せ,ビスで固定していきます。アルミアングルを使っていた時とは違い,今度は固定ネジをしっかりと締めることができます。上蓋(裏側に軸受が付いている)がガッチリと固定され,剛性が出るようにネジを締め上げます。
雲台ステージの取り付け
上蓋を閉じたら,極軸に雲台ステージを取り付けます。これまで雲台ステージは10 mm厚のアルミ板にM8のタップを切って使っていたのですが,ホームセンターを覗いていたら「大型ワッシャー付きナット」というものがあったので,これを使ってみることにします(ワッシャー部分の大きさは 40 mm角です)。
これを極軸のM8ネジにねじ込んで取り付け終わり。以前よりシンプルになりました。
ステージには滑り止めのゴムシートを貼り付けました(可愛らしい色のゴムシートがあればよかったんですが,強度のあるシートは黒しかなかった…)。
これで完成です!
カメラを乗せて,剛性感を確かめてみます
実際に星を撮影するときをシミュレーションしてみましょう。三脚にアングルプレートを取り付け,赤道儀を載せます。そして自由雲台を取り付けてカメラを乗せてみましょう。
おっ!全体にがっちりして剛性が上がったのがすぐに感じられました。またカメラを乗せた状態で1時間ほど赤道儀を回してみましたが,問題なく動きました。
よしとします!
まとめ
今回の改造でかかった費用は,鉄アングルが362円,ワッシャー付きナットが60円で合計424円(真鍮棒は残っていたものを使用)…と言いたいところですが,雌ネジ切りの時にタップを2本折ってしまい,2 x 378 円 余計にかかりました(汗)。
ともあれ,自作ポータブル赤道儀の改造,うまくいきました。これが使い勝手の向上と,ひいては追尾精度のアップにつながればいいなあと思っています。
早く山に担ぎ上げて,実戦投入してみたいです。
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