標準ズームレンズが欲しい
α6400で使う標準ズームレンズとして,SEL1670Z (Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS) を購入しました。換算24–105 mm, F4通しのズームレンズです。
今までは標準ズームとして,NEX3に付いてきたキットレンズ,SEL1855を使ってきました。実際,NEX3の時にはこのレンズでそれほど不満を感じていませんでした(このレンズを使って星景写真などもたくさん撮りました)。でも昨年,カメラをα6400に変えたらグッと繊細な絵が出てくるようになり,このセンサーを生かすにはレンズをグレードアップしないとアカンな,と感じるようになったのです。
その後,単焦点レンズ2本(標準域のSEL35F18 (35 mm) と超広角域のSAMYANG 12 mm F2)をよく使うようになり,キットズームとは写りが段違いだということも実感するようになりました。
自分なりに感じた大きな違いは,
- 発色に透明感を感じる(抜けの良さ)
- 絵に繊細さを感じる(解像感と発色から来るんでしょうか)
- (特に超広角12 mmで)シャープさを感じる(解像度から来るんでしょうね)
この辺りです。比べてみるとキットズームの絵はなんだか抜けが悪く,繊細さがない感じ。その後キットズームを使う機会を減らし,単焦点の35 mmと12 mmを付け替えながら撮ったりいろいろやってきましたが,山を歩いている時などはそうそうレンズの付け替えはできないので,「標準域のいいズームレンズが欲しいな」と考えるようになったのです。
というわけで,新しいレンズに求めるのは一言でいうと,繊細さと抜けの良さ…となるでしょうか。
どのレンズにしようかな?
候補はこの4本
そんなわけで標準ズームを買おうと決めたのですが,具体的にどのレンズを買おうか,いくつか検討しました。新しい標準ズームは「標準」というくらいだから様々な場面で使いたいのですが,できれば山を歩く時に付けっぱなしで運用できれば最高です。あと星も撮れたらもっといいですね。
そう考えた上で,候補として検討したのは
- SEL1670Z
- SEL18135
- SEL18105G
- SEL1655G
の4本です。違いを表にまとめてみましょう。
SEL1670Z | SEL18135 | SEL18105G | SEL1655G | |
焦点距離 | 16–70 mm | 18–135 mm | 18–105 mm | 16–55 mm |
開放F値 | 4 | 3.5–5.6 | 4 | 2.8 |
レンズ内手ぶれ補正 | あり | あり | あり | なし |
重さ | 308 g | 325 g | 427 g | 494 g |
価格 (SONYストア) | 89,333- | 64,630- | 56,952- | 139,000- |
18 mmスタートの2本は除外です
SEL18135はα6400(およびα6600)の「高倍率ズームキット」に付いているレンズです。「キットレンズ」とはいえ,設計が新しいのでよく写るという話も聞きます。またSEL18105Gは電動ズームなので動画を撮る時には便利とのことです。
けれども山で写真を撮っていると18 mm(換算27 mm)スタートだと「もう少し広く撮りたい」と思うことがよくあるんですよね。星を撮る時にも少し狭いかな。
そういうわけで,SEL18135 と SEL18105G は脱落です。この時点で 16 mm(換算24 mm)スタートの SEL1670Z と SEL1655G,候補はこの2本に絞られました。
SEL1655Gは良さそうですが,手ぶれ補正がないことと価格が…
SEL1655Gは開放F値が2.8です。この明るさならボケを生かした表現がしやすそうです。そして星の撮影もこのレンズで行けそうですね。何より昨年発表されたこのレンズは描写が素晴らしいとのこと。うーん,いいですね…。
でも問題は手ぶれ補正が付いていないこと。α6400にはボディ内手ぶれ補正がないですからね。そしてSEL1670Zに比べると,200 g 近く重い。この差は登山の時にはけっこう大きいですし,赤道儀に乗せる時にも気を使います。そして何よりも大きな問題は,その価格です。うーん,ちょっと手を出しづらいな…。
SEL1670Zに決めました
SEL1670Zはどうでしょう。ツァイスマークがついているのがちょっとカッコいいです(笑…でもこれ大事です)。候補に挙げた4本の中で最も軽いのもポイントが高いです。開放F値が4なのが気になりますが,いろいろ計算してみたところ,テレ側をうまく使えばボケを生かした撮影もできることを確かめることができました(その過程はこの記事 ↓ に書きました)。
また開放F4だと星を撮る時に少し暗いですが,これは赤道儀に乗せて追尾時間を長くすればいいですかね。最近は,星景写真を撮る時には SAMYANG 12 mm F2 を使うことが多いですし。
テレ端が70 mm(換算105 mm)まであることは,最初そんなに重視していなかったのですが,ここまであれば登山の時に望遠レンズを置いていけるな…と気づき,「けっこういいかも」と思うようになりました。北アルプスで雷鳥に出会った時にもすぐに対応できそうだし。
Sonyストアで8万円を超える価格は決して安いものではありませんが,それでもSEL1655Gとの価格差を考えると,こちらを買って差額で別の機材を買ったほうが幸せになれるかな…と結論を出しました。
ネットで評判を調べてみました
さて,SEL1670Zは発売からすでに数年が経っているので,ネットを覗くとそのレビューがいろいろ出てきます。それらを読むと,けっこう評価が分かれているようです。絶賛している声もあれば,酷評している人もいます。例えばこのサイト ↓ にも様々な評価が寄せられています。★ 5つから1つまで…極端だなあ。
低評価の中でしばしば見受けられるのは,「片ボケがある…個体差が大きいのでは?」という指摘です。ふむふむ。
このレンズは中古品もよく出ているようですが,「あまり良くない個体」が中古市場に放出されている可能性もありますね(実際のところはよくわかりませんが)。…すると,新品で買ったほうが良さそうですね。そして実際の評価は自分の目で確かめましょう。
…てなわけで,注文しました!
届きました!
注文してから3日くらいで届きました!配送の方々,ありがとうございます。
じゃん!
箱を開けるとレンズとフードに加えて,ポーチが入っていました。ちょっとうれしい。さっそくカメラにつけてみると,コンパクトながらも存在感があります。カッコいい (^◡^)
ズームを伸ばすとこんな感じ。ズームリングに変な遊びもなく,工作精度が高いのがわかります。
梅雨の季節,外は雨模様なので,うちの中で2,3枚撮ってみました。発色はいいですね。でも正直なところまだよくわかりません。やっぱり試し撮りに行きたいですね。その上で,このレンズに対して自分なりの評価をしてみたいと思います。
上野公園で試し撮りをしてきました
このご時世,わざわざ外に出かけるのは気がひけますが,ちょうど上野に出かける用事ができたので,そのあと上野公園で試し撮りをしてきました。以下,このレンズの作例として,撮ってみた感想とともに載せて,レビューとしたいと思います。どの写真もリサイズした以外はほぼ撮って出しです。
抜けの良さはどうかな?
単焦点レンズで感じた抜けの良さ。それは絵の繊細さとスッキリ感につながります。このレンズの抜けはどうかな?…というわけで上野駅構内で一枚。
うん,いいんじゃないでしょうか。個人的にこの描写はとても好きです。繊細さを感じます。パンダは不気味ですが(笑)
解像感はどうだろう?
解像感,シャープさはどうでしょう。公園内を不忍池方向に歩いていたら水が流れ落ちるオブジェがあったので,SS 1/3200 秒で撮ってみました。
F4開放ですが,水しぶきの写りはいいですね。
さらに歩いて不忍池に行ったら,お猿さんを連れて散歩してるおじさんがいたので,お願いして写真を撮らせてもらいました🐵
これもF4開放ですが,毛の一本一本までよく解像しています。一部分を等倍で切り出すとこんな感じ。
テレ端開放でここまで写れば,自分としてはとても満足です。絞ればさらにシャープになるでしょうし。
色乗り・発色はどうかな?
次に色乗りはどうでしょう。まず花園稲荷神社の提灯をパチリ。
うん,悪くないですね。雰囲気もいいです。でもこういう派手な色のやつは違いが出にくいかな?
そう思って,枯れてきた紫陽花も撮ってみました。
いいと思います。花の色もいいですが,背景の緑色の出方に味を感じます。余談になりますが,紫陽花って枯れてきたものもきれいですよね。
ボケは?
以前の記事で計算してみたボケ。計算からは,テレ側で使えば開放F4でもボケのきいた写真が得られるという結果を得ていましたが,実際はどうでしょう。
不忍池のほとりに咲いていた百日紅の花をテレ端開放で撮ってみました。期待した通り,よくボケています。背景の玉ボケもきれいだと思います(色もきれいです)。
同じくテレ端開放でお稲荷様。よくボケていますし,ボケの質もうるさくなくて(ざわつくことなく)いい感じだと思います。
これらの例から分かるように,計算で予測した通りに,テレ側を使えば背景をぼかして撮ることも十分に可能なことがわかりました(先のお猿さんの写真も背景がよくボケています)。
絞って撮ると?
ここまでに出した例は絞り開放で撮ったものばかりでした(意識したわけではないんですが,図らずもそうなっちゃいました)。それでは絞って撮るとどうでしょう。
そう思って不忍池畔にある弁天堂をテレ端とワイド端で絞って撮ってみました。
よく解像していると思います(遠くにあるビルを拡大して見るとおっ!てなります)。SAMYANG 12 mmで感じる「パッキパキ」という感じとは少し違いますが。
ちなみにパキパキに解像するレンズはボケがざわつきがちなようです。このあたりのバランスは好みもあるでしょう。
ただこの点の最終的な判断は,山に行って広大な風景を撮ってみるまで(またはその一部を切り取って撮ってみるまで),ちょっと保留かな。
解像感とは少し話がずれますが,換算24 mmのパースペクティブはいいですね。いろんな表現に使えそうです。
出てくる絵の雰囲気はどう?
それで,一番気になっていた「繊細な絵が出てくるかどうか」,これはどうでしょう。最初の上野駅のパンダ像の描写は割と好きでしたが,もう少し例を。
これも枯れてきた紫陽花でしょうか。色のグラデーション,左側の木肌の質感などいいですね。後ろの葉っぱの雰囲気も好きな感じに撮れました。
次に不忍池の蓮の花を一枚。
大きな葉の隙間に差し込む光に照らされた蓮の花。光の向きがよかったからかもしれませんが,描写に立体感があって,いい感じです。
まとめ
以上,SEL1670Zの試し撮りの結果でした。現時点での撮ってみた感覚をまとめると,とても気に入りました。今回は,図らずも開放付近での写真が大部分になりましたが,抜けがよく,発色にも透明感を感じ,満足のいくものでした。求めていた繊細な絵が撮れそうです。ネットでの評価は賛否両論ありましたが,僕自身の評価は ★4.5 です(もう少しだけ安かったら満点)。
それからこのレンズをつけて撮影していると,いい意味でレンズの存在感を感じて気分がいいです。Zeissのマークも含めて,α6400がよりカッコよく見えてきました。楽しくアゲアゲに撮影するために,これはポイントが高いです。
途中でも書いたように,広い風景をワイド側で絞って撮った時にどうなるかは,おいおい試してみようと思います(山の写真を撮った時にどんな絵が出てくるのか,とても期待しています)。でも多分いい描写をしてくれるんじゃないかと思っています。換算24 mmの画角でいろいろ撮るのが楽しみです。
いずれにしても,画角,ボケ,そして解像を含めて登山の時にカメラにつけっぱなしで運用できそうなことがわかって喜んでいるところです。…早く山に行きたいなあ。
追記:奥多摩湖で,自然風景をこのレンズ一本で撮影してみました。こちらです↓
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