目黒にあるホテル雅叙園東京。ここには重要文化財である「百段階段」という部屋があります。
ここを会場にして,「千年の雛めぐり」展が開催されました。
副題が「平安から現代へ受け継ぐ想い」。なんて素敵な。ちょうど大河ドラマ「光る君へ」にハマっている僕にはグッとくるはないですか。
そんなわけで,見に行ってきました。
…とても良かった!
源氏物語のお雛様がお出迎え
会場入り口には「源氏物語」を題材にしたお雛様。三人官女を従えていますね。
もうこれでグッときます!
源氏物語だから,まさに「光る君へ」の世界ではないですか。お雛様はまひろですかね。
それでは会場へ入ってみましょう。
百段雛祭り
雅叙園ホテルの「百段階段」を上っていくと,階段に沿ったいくつかの部屋にテーマごとの展示があります。
最初の部屋は「百段雛祭り」。会場となっている「百段階段」の名前がつけられた部屋。「最初の”つかみの部屋”」ってことでしょうかね。
部屋の入り口近くに飾られているのは「古今雛」。寛政年間に,江戸で作られたお雛様だとか。これは貴重ですね。それまで人形作りは京都で行われていたけど,文化が花開いて江戸でも作られるようになったんだって。
部屋を奥へと進むと,いかにも「桃の節句ですよ」という雰囲気の一角。雰囲気がありますねえ。思わず顔がニンマリしてしまいます。
飾られているのは,着物と雛人形。娘の健やかな成長を願う心を込めて,艶やかにしつらえられています。
着物文化の発展に,養蚕の歴史を重ねて思う時,古い時代が愛おしくなってきます。
こちらのおひなさまは,体が折り紙で作られているようです。いうまでもなく,折り紙も日本の大切な文化。こういうのもいいですね。
こちらは素朴な感じ。ひな祭りが貴族?から庶民まで,多くの人たちの生活に根差したものであったことを窺わせます。
福岡・飯塚市の座敷雛
福岡県飯塚市は,かつて筑豊が石炭の採取で賑わった頃,その中心地となったところです。
石炭で財を成した伊藤伝右衛門邸では,毎年座敷いっぱいに人形を配して,雛祭りを祝ったようです。
部屋いっぱいに立ち並ぶ人形たちは圧巻の一言です!
時は平安時代。人形たちは京の都で祭りを祝っており,その奥には御殿が配されています。
人形ひとつ一つに動きがあって,都の賑わいが聞こえてくるみたいです。
そして人形は,一つひとつがとても表情豊かなんですよね。この踊る町娘を見ていると,見ているこっちも踊り出しそうになります(笑)。
ところでここ,部屋がまたすごいんです!
天井近くにはこんなレリーフがいっぱい描かれています。「平安から現代へ」って,雛人形だけではなくて,この展示会が開催されている部屋自体も,その想いを受け継いでいるんですねえ。
床の間(という言い方でいいのかな?)に描かれた絵もきれいだし,柱の装飾もすごい!牡丹とか紅葉とかきらびやかですね。
天井にも絵・レリーフの装飾が施されています。この梅のレリーフも素晴らしいではないですか。
牛久のひな祭り
茨城の牛久は,古くから伝統行事としてひな祭りが行われてきたところ。庶民の楽しみとして,素朴な吊るし雛作りも盛んだったようです。
このおひな様は子供の顔をしていますね。可愛らしいし,周りの吊るし雛とも雰囲気がバッチリ合っています。見てると顔がニンマリする。
そしてこの羽子板。子供の健やかな成長を願うのに,こんなに素敵なものがあるでしょうか。
後ろに並べられた小さな着物もすごくいい!
五段飾りもかわいい雰囲気を漂わせています。ここでも吊るし雛がいっしょ。
左にともる灯りは,文字通り「ぼんぼり」ですよねえ。
茨城県や牛久市は,当地のひな祭りをもっとPRすればいいのにと思いました。それとも僕が知らないだけなのかしらん?
清湖雛物語––人形作家 東之湖の世界
この部屋には,東近江市在住の人形作家,東之湖(とうこ)さんの雛人形が展示されています。
平安時代より伝わる装束衣装を基本としながら,母なる湖・琵琶湖とその水の潤いに生かされる湖東平野を表現する,創作雛人形。
これは何て美しき世界観。
左は暁霜の神・桜花の舞,右は緑王の神・平野の舞,そして中央は湖水の神・母なる琵琶湖を象徴しているそうです。
優美ですね。お雛様が琵琶湖の波の上に浮かんでいるようです。
「雛めぐり」ということで赤が基調となった部屋が多い中で,ここだけはブルー。涼やかな空間でした。
極小雛の世界
江戸時代。その中期よりたびたび出された贅沢禁止令により,雛人形の材料や大きさが規制され,8寸以上の雛人形が禁止された時期があったそうです。
これを受けて精密な細工を施した極小の雛人形「芥子雛」が流行りはじめたとのこと。
童っ子たちが遊ぶ様子が小さい人形で表現されています。これは見入ってしまいます。
ちっちゃくてかわいい人形が,規制がきっかけとなって作られたんですね。なんだか日本らしい話です。
こちら小さなお雛様とお代理様。その前に置かれている酒器も小さくてかわいい。
この徳利とおちょこで,ちびちびとお酒を飲んでみたいですなあ。ちっちゃく切ったお刺身なんか食べながら。楽しそう。
手作りのうさぎさんも小さい。彼らが見上げているお月さまも小さいのかな?
小さなお花見セットとお雛様。平安の時代だから,梅の木の下でお花見するのかな?
ねこたちのひな祭り
今回の展示では,特別企画として「ねこたちの雛祭り」コーナーがありました。
なぬっ?ねこと雛人形の組み合わせですと!?これはかわいいに決まってます!というか,反則です!
というわけで,このコーナー,楽しみにしてたんです。
稲田敦氏作「稲田敦のニャー祭り」↑。
なんて目力を感じる猫の雛!洒落っ気たっぷりだけど,それでいて雅な雰囲気も感じられるから不思議です。
お次は柳岡未来氏の作品「春日」↓。うん,猫ってこんな顔するよね。擬人化されつつもリアルさも感じさせるねこ雛。
ちなみに,これ陶芸作品なんだそうです。
そして石渡いくよ氏作「楽し♡うれしや♡雛の饗宴」↓。雛人形はみんなお澄まししてますが,これは…(^ ^)
雛人形に扮した猫たちの,「ニャー!」という声が聞こえてきそうではないですか♪
ちょっとアップで見てみましょうかね。
寝転んだりはしゃいだり,やりたい放題。みんなむちゃくちゃ楽しそうではないですか(笑)。
こちらのねこは,ご機嫌で琵琶を弾いています。猫の弾く琵琶は聴いてみたいですね。というか,やっぱり三味線ではないんですね,ねこだけに(笑)。
これは粘土造形「すみや」さんの猫雛。みんなしれっとお雛様になり切ってるところがかわいい。こんなのがうちにあったら,毎年飾るのが楽しみになるよね。
雅で煌びやかな雛人形の世界にあって,ここ「ねこのひな祭り」コーナーは可愛らしく,ついニンマリしてしまう一角でした (^◡^)。
早春を彩るてまり
てまりはハレの日の贈り物として,古くから使われてきました。
お祭り,節句など清々しい気持ちになる特別な日に,大切な人の幸せを願って贈られた手まり。ここにはそんな優しい気持ちがあふれています。
手まりが吊るし雛のように連なっています。これ,いいですねえ。華やかさと素朴さの両方があって。
うん,ハレの日にこういうのをもらったら,たしかにまぁるい気持ちになりますね。
おわりに
千年の雛めぐり展,期待以上でした。とてもよかったです。
もちろん人形に触ることはNGですが,近くで眺めることができて眼福でした。寒い日だったけど,春を感じましたね。
まだまだたくさんの雛人形が飾られていたんですが,さすがに全部を写真に撮ることはできませんでした。
訪ねたのが平日だったこともあって,会場は静かでしたが,頭の中で「灯りをつけましょ ぼんぼりに♪」って歌がヘビロテしていました(笑)。
…ところでホテル雅叙園て「がじょえん」だったんですね。勝手に「じょじょえん」て読んでました。焼肉食べたい。
今週のお題「小さい春みつけた」
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