福島市の郊外に,黒岩虚空蔵尊・満願寺というお寺があって,「黒岩の虚空蔵様」として親しまれています。このお寺の背後の山には,文政3年(1820年)頃に作られた十六羅漢像が置かれていて,独特の雰囲気をかもし出しています。
黒岩虚空蔵尊について
黒岩虚空蔵尊・満願寺は福島市の東部,黒岩地区にあります。市内を流れる阿武隈川が大きく屈曲するところの小高い山の上。
福島市街地からは結構近くて街なかから数km,公共交通なら福島駅東口から「医大行き」のバスに乗って「中島」で下車。南福島駅から歩いていくこともできます(15分くらい)。
お寺の建立は古く,今から1500年ほど前の弘仁二年,嵯峨天皇の命により蝦夷平定のため「虚空蔵尊像」を黒岩の地に安置して、陸奥の鎮守としたとされているそうです。なお現在の虚空蔵尊堂は寛永11年(1634年)に再建されたものだとのこと。歴史あるお寺なんですね。
本堂と「いぼなしの鐘」
お寺の門をくぐると,すぐに本堂があって,その右手に鐘撞堂があります。この鐘は「いぼなしの鐘」と呼ばれ,元禄年間に鋳造された,国指定の重要美術品です。
本堂から山の斜面を横切るように道が続いています。この道を辿ると,岩で造られた手水。澄んだ水に落ち葉が浮かんで晩秋の雰囲気です。
さらに進むと阿武隈川を見下ろす高台に出ます。
虚空蔵尊堂と撫で牛,撫で寅,そして狼像?
この高台には虚空蔵尊堂があり,紅葉に包まれています。遠くにこんもりとした山々が見えているのもおとぎ話みたいでかわいい。
ところで虚空蔵とは,無量の智慧と福徳をそなえていて、人々にこれらを与え、願いを満たし救うという菩薩のことだそうです。その名は,虚空が全てを包含していることから来ていると。うーん,哲学的ですね。
虚空蔵尊堂の横には,撫で牛と撫で寅の像があります。
撫で牛は,自分の体の病んだところを撫でると,病気や怪我が治るという習俗で,全国のいろんな神社やお寺にあるようですが(上野の湯島天満宮にもありますね),撫で寅は珍しいのではないでしょうか。丑年の次は寅年だから?
さらに少し離れたところにはこんな像も。これは狼像でしょうか?
この辺りにも狼信仰が伝わっているのでしょうか。飯館村の大山津見神社の狼絵は有名ですが。個人的に興味津々です。
虚空蔵尊堂の背後の十六羅漢像
阿武隈川を見下ろす羅漢像
さて,虚空蔵尊堂裏には林の中に山道が続いています。これをたどって上って行ってみましょう。登った先には十六羅漢像があるようです。
少し登ると,道は阿武隈川を見下ろす崖の上のようなところに出ます。川の方を見ると…
もみじに彩られた岩棚の上に,身投げをしようとしている人が (((;゚Д゚))…ではなくて,川を見下ろす羅漢像があるのです。
羅漢とは修行を積み,悟りを得た僧のことらしいのですが,この羅漢様も,毎日阿武隈川をここから眺めて思索を巡らせているのでしょうか。
シルエットの羅漢像,紅葉に囲まれて物思いに耽る人のように見えませんか?
羅漢様の視点で阿武隈川を見下ろすとこんな感じ ↓ 。紅葉越しに光る川面がまぶしい。
他に羅漢様はいないか探してみます
他にも羅漢像はいないか探してみましょう。「十六羅漢」と聞くと,指折り数えながら,「全部見つけたるぞー」と宝探しみたいな気分になってきますよね(子供かっ!)。
とは言っても羅漢様たちは,そんなに広い範囲に散らばっているわけではありません。14体までしか見つけられなかったけど。
川に面して崖になっているところもあり,そっちに向かう道は何箇所か通行止になっていたから,あと二体はそっちにいるのかな?
おわりに
紅葉はそろそろ終わりだけど,もみじに彩られた虚空蔵堂と,その後ろの山にいる十六羅漢はいい雰囲気でした。
前記事で書いた文知摺観音もそうだけど,みちのくの地にあって,福島には歴史の古いお寺がいくつかあって面白いなあと思います。
この日はお寺を出たら南福島駅に歩きました。途中,吾妻連峰がきれいに見えていました。
黒岩の虚空蔵様。紅葉の最盛期にも来てみたいですねえ。
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