西千葉のギャラリー「くじらのほね」で新倉章子さん(雅号 典壽さん)の個展「無伴奏」が行われたので、お邪魔してきました。
新倉章子さん(以下、敬愛を込めて典壽さんと書かせていただきます)は、ずっと花・植物を題材として水墨画、墨彩画を描かれています。
Pensées pic.twitter.com/OyWRX4guej
— AKIKO NIIKURA (@Ochikobolenomi) November 29, 2019
僕が典壽さんの個展にお邪魔するのは,一昨年(だったかな?)に新橋で開催された個展以来2回目でした。
ギャラリーにて
典壽さんの個展が行われたギャラリー「くじらのほね」は,西千葉駅からすぐのところにあります。少し迷いましたが,無事到着。扉をくぐると,小さいながら明るく,くつろげる雰囲気の空間でした。
ギャラリーには典壽さんの描かれた花の絵が一面に飾られています。春の花,秋の花…四季の空気がギャラリーにあふれているようです。
拙い文章ですが,感想を
以下,拙い文章ながら感想を語ってみようと思います。絵の写真撮影はNGなので,典壽さん&くじらのほねさんのツイッターと,関係ある題材を撮った僕の写真を交えながら。
青い森
おはようございます。オープンしました。
— 企画画廊 くじらのほね (@gallery_kujira) January 17, 2021
「蒼き森」/2020
昨日いらした留学生のお客さまが、展示をぐるりとじっくり見た後
「僕この絵が好きです」
と真っ直ぐ教えてくれました。
絵との向き合い方がとてもシンプルで素敵でした。
本日もよろしくお願いいたします◎ pic.twitter.com/ee5e2FVCF5
くっきりと描かれた樹木は二本。その周りは墨の滲みと余白で表現されています。それなのに森がずっと奥まで続いているのが感じられます。
山に行って森を歩く時,森の奥に入っていくほど心が静かになっていく,あの感覚が蘇ってくるようです。
秋薔薇
【本日は作家来廊日です】
— 企画画廊 くじらのほね (@gallery_kujira) January 28, 2021
おはようございます。
やわらかな曇り空の下、開廊いたしました。
会期もとうとう明日までとなりました。
本日はお昼頃~夕方まで、新倉さんが在廊してくださいます。
ご無理のないよう、お出かけくださいね。 pic.twitter.com/UV2bnkqpBx
優しいタッチなのに薔薇がとても華やかです。この絵の周りがパーッと明るくなっているようです。
そして墨彩画にとても現代的な感覚を取り入れて描かれているように見えます。単なる「和風」の絵ではないんですね。
からうめ
おはようございます。オープンしました。
— 企画画廊 くじらのほね (@gallery_kujira) January 23, 2021
「からうめ」/2020
唐梅はいわゆる蝋梅のことですね。
今の時期ちらほらと咲き始めています。
画廊への道すがら、蝋梅が綺麗なお庭があっていつも足を止めてしまいます。本当に可愛らしいお花です。
本日もご無理なく。
よろしくお願いいたします◎ pic.twitter.com/FyXrtbyzNN
黄色い花は蝋梅でしょうか。梅よりも早く,まだ寒いうちに花を咲かせる蝋梅は,「もうすぐ春がやってきますよ」と私たちに告げてくれますよね。
早春のほのぼのとした日差しと,まだ少し冷たいけど暖かくなり始めた空気。その中に淡い輝きを放つ蝋梅の花。
ちょうど今,近所のお寺で蝋梅が咲いています。この絵を見ていると蝋梅の輝きに包まれるようでうっとりしてしまいまいた。
閑話休題
ところでギャラリーの方が仰ってたんですが、西洋では陰影などを描いた写実が重要視されるのに対して、東洋の画はその光景を見た心象を写すという意味での写実だと。
おはようございます。
— 企画画廊 くじらのほね (@gallery_kujira) January 10, 2021
本日も開廊しております。
梅には梅の、小枝や花弁の肌触り
絵の中から香りさえ感じます。
Web Galleyでも展示作品の画像をご覧いただけます。https://t.co/uJcu6gKMvO
どうかご無理なくお出掛けください。
本日も20時までお待ちしております。 pic.twitter.com/tWbDqlaqRQ
器にいけた花の絵も、部屋に差し込む陽の光や花の周りに華やいだ空気が流れるのが感じられるみたいです。
(余談ですが日本画に陰影を描いて衝撃を与えたのは葛飾応為でしたっけ)
また典壽さんの絵は、その余白が素敵です。心の動きや想像を自由に動かす余白があるとも(西洋の絵だともっと背景を描き込むと思います)。これは単なる空白ではなくて,絵を眺めながらここに想像を踊らせることができる,素敵なスペースだと思います。
すみれ摘む朝 pic.twitter.com/PD9Xtzzlvn
— AKIKO NIIKURA (@Ochikobolenomi) December 27, 2020
個展のタイトル,「無伴奏」は、この余白と同じく、見る人の自由な想像力や心の動きを掻き立てるもの、みたいな意味合いがあるのかなと思いました。
さらにもう一つ余談ですが、日本では以前から背景をぼかした写真技法が多用され、それが欧米の写真家にも受け入れられて、英語でも写真におけるボケ表現がbokehと呼ばれて定着したことを思ったりしました。
感想の続きです
南天
ギャラリーで,「南天」のポストカードをいただきました。うれしい!
実際の絵は,背景に日本画で使う雲母の粉(合ってるでしょうか?)が塗られていて,きらきら光っています。その上にしなやかな筆致で南天が描かれています。その姿は凛々しくもあり,華やかでもあり。
葉にはたらし込みの技法で繊細なグラデーションが描かれています。南天を包む冬の凜とした空気が感じられる絵でした。窓から見る冬の庭に,こんな景色が見えたら素敵でしょうね。
桜雨
おはようございます。
— 企画画廊 くじらのほね (@gallery_kujira) January 29, 2021
今展もいよいよ最終日。オープン致しました。
「桜雨」/2020年(部分)
あと数ヶ月で桜が咲く季節です。その頃世界はどうなっているのか、何も予想ができませんが、きっと桜は何も知らない顔で綺麗に咲き誇ってくれるのでしょう。
本日も20:00までよろしくお願いいたします◎ pic.twitter.com/PDdfH5DkiP
春を溶かして雨が降る。春を流していく雨。その静けさ。ずっと絵の前にいて、眺めていたくなります。春のうららかさ,暖かさ,優しさ,そして儚さ。
順路に沿って絵を見ていき,最後に出会った「桜雨」。この絵の前にずっと立って見ていたい。そんな気持ちになりました。
この絵は縦長の,掛軸にしつらえられた大作です。もし僕がお金持ちだったら,この絵を買って部屋に飾るのになあ…なんて俗物っぽいことを考えてしまいました。まだまだですね。
典壽百花
おはようございます。
— 企画画廊 くじらのほね (@gallery_kujira) January 14, 2021
本日も開廊しております。
「典壽百花-女郎花」
身近な野草を生き生きと描いた「典壽百花」シリーズ。
さらりとした中にも新倉さんの魅力がしっかり詰まった作品たちです。
こちらは当日お持ち帰りいただけます◎
お気をつけてお越しくださいませ。
本日もお待ちしております。 pic.twitter.com/l2InkZtUHv
植物の儚さと内に秘めたしなやかさ,美しさ。
植物を揺らす風を頰に感じるような小品(と言っていいのでしょうか)の数々。「釣鐘人参」に繊細な美しさを感じ,「風船葛」の色合いにハッとさせられました。
一つひとつの絵を手にとって,間近に眺めることができてうれしかったです。
そしてこうして身近な植物を描く典壽さんの日々は素敵だなと思いました。
季節の空気と優しさを感じる
典壽さんの絵には,季節の空気がありありと感じられます。そしてそれだけではありません。その一枚一枚から優しさが溢れて出てくるようです。だから絵を眺めていると,とても幸福な気持ちになります。
典壽さんは,身につけた技法は捨てて植物と向き合おうとしているそうです(これは想像を超えたすごいことだと思いますが)。だからこそでしょうか。一切の虚飾は削ぎ落とされ,植物が自然体で描かれているように見えるのです。
Web Galley
— 企画画廊 くじらのほね (@gallery_kujira) January 9, 2021
新倉章子個展
「無伴奏」
公開致しました。
ご高覧いただけますと幸いです。https://t.co/uJcu6gKMvO pic.twitter.com/YtjCRsFctM
くじらのほねのスタッフさんは,典壽さんの絵に寄せて,こんな表現をされています。
草はただ風に揺れ、花はただそこに咲く
筆致は淡いのに,描かれている花には確かな存在感があるんです。それは植物の生命を確かに描き出しています。
また彩度は決して高くないのに,花の美しさや存在感がありありと迫ってきます。最近は写真を撮ってばかりの僕ですが,こんな表現をしてみたいとしみじみ思いました。
おわりに
素晴らしい絵に囲まれて,幸せな時間を過ごすことができました。典壽さん,くじらのほねのみなさん,ありがとうございました。
(もうすぐ春だなあとあらためて思いました)
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