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玉川麻衣さんの個展「悪の華」にお邪魔してきました!

丹波山村の狼

先日,画家・玉川麻衣さんの個展「悪の華」が池尻大橋で開催されました。ファンの一人として,昨年の個展「あわいの神々」に続いてお邪魔してきました。

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玉川さんの絵は,とても繊細で奥行きのあるペン画です。描かれる世界はかつて日本の野山を駆けていた狼であり,現世と異界のあわいをたゆたう者たちであり…。眺めていると自分がそんな世界に包まれていくのを感じるのです。

なお絵の写真を撮影すること,個展の感想をブログに書くことは,玉川さんご本人の許可をいただいています。

「悪の華」

個展のタイトルは「悪の華」。玉川さんはこのように書いています。

悪は善、良の対極であると同時に一般的な常識や道徳観念からはみ出すもの、険しい、強い、というニュアンスも含むかと… 様々な事情から悪を纏う女性=悪女と、狼信仰をモチーフに描きました。

はじめ僕はこの意味がピンときていませんでした。でも実際にギャラリーで作品と対面すると,確かに「悪を纏う女性」の表情に強さや優しさ=華を感じたのです。

こんな絵を観てきました

会場には十数枚の絵が展示されていました。どれも素晴らしい作品で,描かれた世界に吸い込まれるような感覚を覚えました。

全てを写真に撮ってブログにアップするわけにはいきませんので,そのうち数点紹介させていただきます。

唱和

唱和

唱和

星空の下で狼たちの声がこだまします。絵に対峙する自分の中に,確かに狼の声が響いてきます。場所は「三峯神社のあの辺り」とのことです…分かる人はわかりますね。

空には流れ星。ちょうど僕がギャラリーを訪ねた日は,ふたご座流星群の極大が近づいていた時で,この絵を観ていると,自分の周りに山の空気と冷たく澄んだ夜空が広がり,星が流れるのを感じました。そして狼の毛の手触りや体温,息遣いまでが感じられるようでした。

夜の底より3

夜の底より3

夜の底より3

玉川さんの絵を観ていると,いつも自分が絵の中の世界へ連れていかれるのを感じます。これはF0の比較的小さな絵ですが,見ているうちに絵がどんどん大きくなって,その中に吸い込まれていくような感覚を覚えるのです。

山の夜。そこはいつも暮らす街とは全く違う世界です。星は光り,月は冴え,森の中はどこまでも暗い。そんな夜の底。そこには確かに御眷属の狼がいるように思えます。

「夜の底を描く」これはすごいことですね。本来ひとの業ではないような…。

雷雲龍図

雷雲龍図

雷雲龍図

玉川さんの描く龍はすごいですよ。感じるものは迫力というより,畏怖。見ていると体をくねらせた龍が,雷雲と一体化して動き始めます。

この絵はギャラリーを訪れた能楽師さんがお買い上げになったそうです。確かに能の舞台やお稽古の場に飾られるにふさわしい絵ですね。

骨女

骨女

骨女

怖くて美しくて目を離せなくなる,そんな絵でした。鏡に映った骨女の微笑みを見るとぞくっとして全身総毛立つようです。

その後ろ姿と掛けられた牡丹柄の着物は悲しく,でもその表情は満たされているように見える…床に転がっている牡丹の花は,着物の中からこぼれ落ちてきたのでしょうか。

僕の好きなアニメ「地獄少女」にも,地獄少女・閻魔あいと行動を共にする骨女というキャラクターが登場します。彼女も悲しい過去ゆえに現世と異界の間をさまようようになったのですが,そんなエピソードも思い出しながら眺めていました。

地獄太夫

地獄太夫

地獄太夫

地獄太夫は室町時代の遊女。武家の生まれながら山中で賊にとらわれ,その美貌のため遊女に売られたといいます。

現世の不幸は前世の戒行が拙いゆえであるとして,自ら地獄と名乗り,衣服には地獄変相の図を繍り,心には仏名を唱えながら,口には風流の唄をうたったといいます。

山居せば深山の奥に住めよかし ここは浮世のさかい近きに

これは太夫を訪ねた一休和尚に贈った歌だそうです。…ここはあの世とこの世の境に近いところですよ,と。

玉川さんの描く太夫の周りにはカエルや犬や幇間の骸骨が踊っています。これは太夫の前世…輪廻を表しているのでしょうか。そしてそんな転生の積み重ねの上に,太夫は凛々しく立ち,着物に描かれた地獄に人々を沈めているのでしょうか。それとも彼らを救済しているのでしょうか。

恐ろしくも美しい大夫の表情,彼女の纏った地獄,周りに踊る骸骨たち。視線が深いところに引きずり込まれていくようでした。

 

おわりに

紹介させていただいたのは,展示されていた作品のごく一部です。

今年も魂を奪われるような絵を見せていただいて,とても感激しました。玉川さんご本人とお話できたのもうれしかったです(お酒もふるまっていただきました)。またギャラリーでお会いした方々のお話も(ここには書けないようなこともあって),いろいろと面白かったです。

数々の作品が展示されたギャラリーは,「月刊美術」にも書かれていたように,まさに「異界の扉の向こう側」でした。でもそんな中で交わされていた会話はほのぼのと柔らかいものだったのも印象的でした。

玉川さん,どうもありがとうございました。

 

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↓ 玉川さんが装画を担当されています