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新倉章子さん(典壽さん)の個展「無伴奏」にお邪魔してきました

西千葉のギャラリー「くじらのほね」で新倉章子さん(雅号 典壽さん)の個展「無伴奏」が行われたので、お邪魔してきました。

新倉章子さん(以下、敬愛を込めて典壽さんと書かせていただきます)は、ずっと花・植物を題材として水墨画、墨彩画を描かれています。

僕が典壽さんの個展にお邪魔するのは,一昨年(だったかな?)に新橋で開催された個展以来2回目でした。

ギャラリーにて

典壽さんの個展が行われたギャラリー「くじらのほね」は,西千葉駅からすぐのところにあります。少し迷いましたが,無事到着。扉をくぐると,小さいながら明るく,くつろげる雰囲気の空間でした。

www.gallerykujiranohone.com

ギャラリーには典壽さんの描かれた花の絵が一面に飾られています。春の花,秋の花…四季の空気がギャラリーにあふれているようです。

拙い文章ですが,感想を

以下,拙い文章ながら感想を語ってみようと思います。絵の写真撮影はNGなので,典壽さん&くじらのほねさんのツイッターと,関係ある題材を撮った僕の写真を交えながら。

青い森

くっきりと描かれた樹木は二本。その周りは墨の滲みと余白で表現されています。それなのに森がずっと奥まで続いているのが感じられます。

山に行って森を歩く時,森の奥に入っていくほど心が静かになっていく,あの感覚が蘇ってくるようです。

朝の森

森の中

秋薔薇

優しいタッチなのに薔薇がとても華やかです。この絵の周りがパーッと明るくなっているようです。

そして墨彩画にとても現代的な感覚を取り入れて描かれているように見えます。単なる「和風」の絵ではないんですね。

からうめ

黄色い花は蝋梅でしょうか。梅よりも早く,まだ寒いうちに花を咲かせる蝋梅は,「もうすぐ春がやってきますよ」と私たちに告げてくれますよね。

早春のほのぼのとした日差しと,まだ少し冷たいけど暖かくなり始めた空気。その中に淡い輝きを放つ蝋梅の花。

蝋梅

蝋梅の季節

ちょうど今,近所のお寺で蝋梅が咲いています。この絵を見ていると蝋梅の輝きに包まれるようでうっとりしてしまいまいた。

閑話休題

ところでギャラリーの方が仰ってたんですが、西洋では陰影などを描いた写実が重要視されるのに対して、東洋の画はその光景を見た心象を写すという意味での写実だと。

器にいけた花の絵も、部屋に差し込む陽の光や花の周りに華やいだ空気が流れるのが感じられるみたいです。

(余談ですが日本画に陰影を描いて衝撃を与えたのは葛飾応為でしたっけ)

また典壽さんの絵は、その余白が素敵です。心の動きや想像を自由に動かす余白があるとも(西洋の絵だともっと背景を描き込むと思います)。これは単なる空白ではなくて,絵を眺めながらここに想像を踊らせることができる,素敵なスペースだと思います。

個展のタイトル,「無伴奏」は、この余白と同じく、見る人の自由な想像力や心の動きを掻き立てるもの、みたいな意味合いがあるのかなと思いました。

さらにもう一つ余談ですが、日本では以前から背景をぼかした写真技法が多用され、それが欧米の写真家にも受け入れられて、英語でも写真におけるボケ表現がbokehと呼ばれて定着したことを思ったりしました。

ボケ

写真の「ボケ」は「余白」に通じるものがあるのかな…?

感想の続きです

南天

南天

ポストカードをいただきました!

ギャラリーで,「南天」のポストカードをいただきました。うれしい!

実際の絵は,背景に日本画で使う雲母の粉(合ってるでしょうか?)が塗られていて,きらきら光っています。その上にしなやかな筆致で南天が描かれています。その姿は凛々しくもあり,華やかでもあり。

葉にはたらし込みの技法で繊細なグラデーションが描かれています。南天を包む冬の凜とした空気が感じられる絵でした。窓から見る冬の庭に,こんな景色が見えたら素敵でしょうね。

南天

南天に雪(岩手にて)

桜雨

春を溶かして雨が降る。春を流していく雨。その静けさ。ずっと絵の前にいて、眺めていたくなります。春のうららかさ,暖かさ,優しさ,そして儚さ。

順路に沿って絵を見ていき,最後に出会った「桜雨」。この絵の前にずっと立って見ていたい。そんな気持ちになりました。

さくら

さくら

この絵は縦長の,掛軸にしつらえられた大作です。もし僕がお金持ちだったら,この絵を買って部屋に飾るのになあ…なんて俗物っぽいことを考えてしまいました。まだまだですね。

典壽百花

植物の儚さと内に秘めたしなやかさ,美しさ。

植物を揺らす風を頰に感じるような小品(と言っていいのでしょうか)の数々。「釣鐘人参」に繊細な美しさを感じ,「風船葛」の色合いにハッとさせられました。

一つひとつの絵を手にとって,間近に眺めることができてうれしかったです。

そしてこうして身近な植物を描く典壽さんの日々は素敵だなと思いました。

季節の空気と優しさを感じる

典壽さんの絵には,季節の空気がありありと感じられます。そしてそれだけではありません。その一枚一枚から優しさが溢れて出てくるようです。だから絵を眺めていると,とても幸福な気持ちになります。

典壽さんは,身につけた技法は捨てて植物と向き合おうとしているそうです(これは想像を超えたすごいことだと思いますが)。だからこそでしょうか。一切の虚飾は削ぎ落とされ,植物が自然体で描かれているように見えるのです。

くじらのほねのスタッフさんは,典壽さんの絵に寄せて,こんな表現をされています。

草はただ風に揺れ、花はただそこに咲く

筆致は淡いのに,描かれている花には確かな存在感があるんです。それは植物の生命を確かに描き出しています。

また彩度は決して高くないのに,花の美しさや存在感がありありと迫ってきます。最近は写真を撮ってばかりの僕ですが,こんな表現をしてみたいとしみじみ思いました。

 

おわりに

素晴らしい絵に囲まれて,幸せな時間を過ごすことができました。典壽さん,くじらのほねのみなさん,ありがとうございました。

(もうすぐ春だなあとあらためて思いました)

 

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