さてさて長い冬も終わって,山は残雪の季節。去年この時期に登った谷川岳が,すごくよかったんですよね。そこで今年は谷川岳東壁を眺めるべく,白毛門に向かいました。快晴の4月2日,土曜日のことです。
青空のもと素晴らしい眺めだったのですが,頂上付近は今にも雪崩れそうな様子で,てっぺんには立てずに帰ってきたという話です。
白毛門について
「国境の長いトンネル」の上にある谷川連峰。群馬と新潟の県境にあって,冬はドカ雪に閉ざされる山域です。
谷川連峰の稜線は特徴的で,谷川岳から西へ伸びる「主脈稜線」と,谷川岳から北に向かい,湯檜曾川の源頭部を取り囲むようにU字型を描く「馬蹄形稜線」があります。
白毛門(しらがもん)は馬蹄形稜線上,谷川岳の東面と向かいあう位置にあります。標高1720 m。
だからこの山からは,谷川岳の壮絶な東壁を真正面から眺めることができるのです。
そんな眺めに期待して行ってきました。
白毛門を登る
白毛門登山のスタートは土合。ここから左(西)へ登ると谷川岳,右(東)へ登ると白毛門です。
初めはチェーンスパイクをつけてスタート。天気は快晴。雪はたっぷりあります。
歩き始めると,さっそく木立の間から蓬峠方面の稜線が見えました。とんがって見えている山は,位置的に武能岳かな?鋭角的でカッコいいです。
沢を一つ越えて,尾根道の上りに入ります。最初からなかなかの急登。でもザクザクの雪を踏んで登っていくのは気持ちいいです。
ほどなくして,木々の間に谷川連峰が姿を現しました。テンションが上がります!
樹林帯の急登が続きます。急登は,荷物が重い時なら体にこたえるけど,日帰りの荷物ならそんなに辛くありません。むしろグングン高度が上がっていくのがうれしいです(急坂を下るのはいつも苦手ですが)。
森林限界が近づいてくると,谷川岳が大きくなってきます。
反対(東側)には利根川の水源,平ヶ岳。関東平野はこの山から流れ出る水で潤されています。
そして見上げると,目指す白毛門が見えてきました。尾根には雪庇が発達しているので,踏み抜かないように気をつけながら進みます。
この辺りでアイゼンを12本爪に履き変えました。それにしても,遠目に見ても白毛門の頂上付近は,ムムム…。
松ノ木沢の頭へ
さらに登って,標高が1500 m近くなってくると,樹林限界となります。ここで三脚を立てて,自撮りなんかしてみます(笑)。
樹林限界を超えたところにあるピークが「松ノ木沢の頭」。谷川岳東面のビューポイントです。登山口の土合から,2時間10分で到着しました。ここで大休止。
目の前に谷川岳東壁。どーん!すごい迫力。
正面に見えているのは一ノ倉沢。これまでに800人以上の命を飲み込んだ,魔の岩壁です。谷川岳は遭難死者の数が世界で一番多い(ヒマラヤなどを含めた世界で一番です)山としてギネスブックにも乗っていますが,その遭難の多くはこの一ノ倉沢で起こっているのです。
こちらは谷川岳本峰。左側のスカイラインは西黒尾根,何年か前の秋に登ったのはここです。
白毛門の頂上も近くに見えています。ただ,ムムム…ちょっとヤバい予感。
40分ほどのんびりしました。それでは上に向かってみましょう。ちょっと危険な香りがしますが。
クラック祭り!頂上直下で撤退します
松ノ木沢の頭からさらに上へ,雪の稜線を登ります。白毛門が近づいてきます。30分歩いたところで見た光景がこれです。
雪面にクラック入りまくり!いつ全層雪崩が起こってもおかしくない感じです。
ぞぞぞぞ…恐ろしい。
白毛門直下は雪壁ともいうべき急斜面なので,状況を見て冷静に進退を判断しようと,最初から思っていたんですけどね。さすがにこれは無理っぽいですな…。
さらに少し登ったところで行動停止。ここで撤退です!
白毛門の向こうに伸びる,笠ヶ岳,朝日岳と続く稜線を眺めたかったですが,これは仕方がありません。
ここで谷底を見下ろすとこれですし。
さて,一応ここが今日の最高到達点。ここから見た谷川岳東壁を一枚撮っておきましょうかね。それにしても壮絶な岩壁です。
下山します!
さて,それでは下りも気をつけます。尾根は痩せてるし急傾斜,そして雪庇もあるからね。
頂上には立てなかったけど,そんなに悔しさはありません。何よりも安全が優先,命あっての物種ですからね。
それにこんな景色を見ながらの尾根歩きだから,下りも気持ちがいいんですよ。
蓬峠方面は真っ白ですね。馬蹄形稜線の,馬蹄の一番奥の辺り。
小ピークを越えると目の前に谷川岳のパノラマが広がる瞬間もあって,あらためてハッとします。
松ノ木沢の頭まで降りてきました。ここまで来ればひと安心。あとはのんびり下って行きます。
樹林帯を下る
さらに下って樹林帯に入ります。谷川岳(正確に言うと一ノ倉岳〜茂倉岳辺りですね)もずいぶん高く見えるようになりました。
また左前方には上州武尊山,その向こうに尾瀬の山々。あっちにも行ってみたいですね。武尊山から谷川連峰を見ると,どんな感じなんだろう。
谷底を見ると,雪が溶けた沢筋には,滝が見えています。奥利根の山にも春が来ているんですね。
ところで滝の周りの木々は,雪の重みのせいか下を向いて生えているように見えるな…。アップにすると,こんな感じです。はぇー。
足元の雪は,気温が上がってきたせいか緩んできて,踏み抜きの連続。歩きにくいけど,まあしようがないですね。この辺りで12本爪アイゼンをチェーンスパイクに履き替え,ピッケルもストックに持ち替えました。
白毛門はこの辺りで見納めですかね。振り返ると,ずいぶん遠くなりました。
あとは土合まで黙々と下るだけ。樹林帯の急な下り,これ,無雪期だったらしんどいかもね。
途中コガラがさえずる姿に目を奪われたり,ザックにくくりつけたピッケルを何処かに落としてきて,探しに戻ったりしながらも(無事回収できました),15時50分,無事に土合の登山口に下山しました!
おわりに
頂上には立てなかったけど残雪に包まれた谷川連峰は美しく,とても良かったです。この時期の越後の山はいいですね。
来年もまた春山に行きたいと思います。どこがいいかな?巻機山?仙ノ倉山?…気が早いなっ!(笑)
無雪期の馬蹄形稜線の縦走もやりたいですね。
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