前記事「谷川岳馬蹄形稜線を縦走してきました –– 1日目:白毛門から朝日岳を越えて清水峠まで」の続きです。
谷川岳馬蹄形稜線の縦走,2日目は清水峠から谷川岳に向かって歩きます。
七ツ小屋山,武能岳,茂倉岳,一ノ倉岳などのピークを通過していく尾根歩きです。
- 山行記録
- 2日目は寝坊と共に始まりました
- 七ツ小屋山を越えて
- 湯檜曽川西岸,最初のピークは武能岳
- 武能岳から茂倉岳への遠い道
- 花咲く縦走路をゆく
- 谷川岳へ:一ノ倉沢の壮絶な岩壁
- 天神平へ下山します!
- 天神平に着きました!ロープウェイで一気に下界へ
- おわりに
山行記録
2日目(2023年6月5日)
清水峠 (5:30) - 七ツ小屋山 (6:30–6:40) - 蓬ヒュッテ (7:40) - 武能岳 (8:40–9:10) - 茂倉岳 (11:05–11:25) - 一ノ倉岳 (11:45) - 奥の院 (12:50) - 谷川岳オキの耳 (13:00–13:15) - 谷川岳トマの耳 (13:30–13:35) - 肩の小屋 (13:45) - 天狗のたまり場 (14:15) - 熊穴沢避難小屋 (14:40) - 天神平 (15:20)
休憩を除いた総行動時間 8時間30分
2日目は寝坊と共に始まりました
縦走2日目,3時に起きるべくアラームをかけていた…のですが,何と!二度寝してしまい,再び起きたのは4時半!
何てことだ何てことだ,山で二度寝してしまうなんて。まあこういうこともあるよね。
…ということで,コーヒーだけ飲んで,急いで支度をします。出発したのは5時半。
ご来光?とっくに終わってますね (^ ^;)。
でも行手に聳える谷川岳は厳かな装いだし,昨日歩いた朝日岳方面の稜線も朝日に浮かび上がってさわやかです。
出発が遅れてちょっと焦りますが,時間的には余裕があります(多分)。まあヨシ!ということで,じっくり行きましょう。
七ツ小屋山を越えて
2日目の縦走は,七ツ小屋山への登りから始まります。
谷川連峰の縦走路は,笹の中に続きます。清水峠から蓬峠のあたりを朝歩くと,笹についた朝露で濡れるという情報を得ていたので,レインパンツとロングスパッツをつけて歩き始めたのですが,どうやらその必要はなかったようです(七ツ小屋山で脱ぎました)。
七ツ小屋山を通過するところでは,大源太山が間近に見えます。「越後のマッターホルン」という異名を持つ山。たしかにとんがってますね。
角度を変えるとさらにとんがってきます。目を引かれますね。いつか登りに来たいとも思いますが,うちからだとアプローチがちょっと遠いんだよなあ。
さて,七ツ小屋山のピークを越えましたが,行手に見える谷川岳はまだ遥か遠く。笹原は風に揺れ,その中に縦走路がどこまでも続きます。芒洋たる光景です。
(動画は iPhone 11 で撮っていますが,アクションカムが欲しくなりますね…)
やっぱ GoPro ですかね…
湯檜曽川西岸,最初のピークは武能岳
蓬峠を過ぎ,左にカーブした縦走路は,進行方向を南へと転じます。湯檜曽川の西岸に沿った稜線になってきたんですね。
こちら側の稜線最初のピークは武能岳 (1760 m)。尾根を忠実に辿る登山道が目の前に伸びていますが。
えぇ…,ホントにあれ登るのぉ?
蓬峠から200 mちょっと登る必要があるみたいです。えっちらおっちら。
蓬峠から歩くこと1時間。なんとか武能岳に到着です。ここで朝ごはん休憩にします。パンとチーズ,そしてプロテインバー3本目*1。
*1 最近は登山中のタンパク質補給を心がけています。プロテインバーは軽いし食べやすくていいかも。
武能岳から茂倉岳への遠い道
武能岳頂上から眺めると,これから辿る道のりがまるっと見えています。お次のピークは茂倉岳。足元から尾根がずっと続いていますが…。
えぇ…,ホントにこれ登るのぉ?(2回目)
すごく登るし,すごく遠いんですが。
地図を見ると,茂倉岳までの標準 CTは130分です。長いけど,朝だからまだ元気はあります。がんばって行きましょう。
まず,尾根伝いに標高を200 mほど下げます。蓬峠から武能岳に登った分を,まるまる失うことになりますね…(汗)。
まあ縦走ってそういうものですけどね。下ったあとは,茂倉岳へ400 m以上登ることになります。
笹平と呼ばれる鞍部で振り返ると,武能岳が標高 1760 m とは思えないような貫禄で立ち上がっています。オマエ,正面(こっち側が正面でいいよね?)はこんな姿をしていたのか!
上越国境の山々は気象条件が厳しいので樹林限界が低く,またその山肌は氷雪に削られるために,迫力満点の姿になるわけです。
ここは逆コースを辿っても,キツい登り返しになりそうですね。
花咲く縦走路をゆく
さてここから茂倉岳に向かって,長い登りが待っています。さぞかし辛い道のりになるだろうと覚悟はしていたんですが…。
尾根に沿ってつけられた縦走路を登っていくと,その両側に高山植物が咲き乱れています。
豪雪に覆われた山では,雪解けとともに,いっせいに花が咲き始めるのです!
これはシラネアオイ。朝日岳あたりからずっと咲いていましたが,この辺りの花が最もみずみずしくきれいでした。
この区間で一番たくさん咲き誇っていたのは,ハクサンイチゲ。道端,岩の斜面,いろんなところにずっと咲いてるんです。本当に見事でした。
ハクサンコザクラ。ハクサンイチゲといっしょに,縦走路の両脇に大群落を作っていました。お花畑を縫うように歩くのは,天国みたい。
タテヤマリンドウは淡いブルーが涼しげです。
これはミツバツチグリで合ってるかな(キジムシロかも)?
他にもイワカガミやサンカヨウなど,さまざまな花が咲いていました。
そんなこんなで花を愛でながら歩いていると,長い登りの辛さもあまり感じることなく歩くことができました。これはありがたい。
振り返ると,だいぶ標高を上げてきたと見えて,武能岳が眼下に見えています(雲の影になっちゃってるけど)。その向こうに上越国境の山々が広がります。
そして到着しました,茂倉岳 (1978 m) 頂上!花に励まされ,癒されながら歩く道中でした。
ここに来て,谷川岳の双耳峰がやっとその姿をあらわにします。やっぱり迫力がありますね。
あそこが最後のピークになります。だいぶ近づいてきました。
茂倉岳からは,谷を一つ隔てて,主脈稜線の様子もよく観察できます。
これ↓はオジカ沢ノ頭と俎嵓(まないたぐら)山稜。この二つのピークは,谷川岳から見るとまるで双耳峰のように見え,シンボリックな景観を作ります。こっちから見るとこんなふうに見えるんですねえ。どちらも切れています。
なお俎嵓は,本来こちらが「谷川岳」と呼ばれていた時期があったようです(「本当の谷川岳」)。地図を作る際の誤記で,現在の谷川岳にその名前がついたと。魅力的な山に見えますが,主脈から外れたところにあるためか,登山道はありません。主脈縦走の時には,オジカ沢ノ頭を越えたらそのまま万太郎山へ向かうことになります。
谷川岳へ:一ノ倉沢の壮絶な岩壁
茂倉岳で休憩したあと,次のピーク・一ノ倉岳 (1974 m) へ。20分ほどの行程ですが,稜線に雪が残っています。その様子は朝日岳からも遠目に見えていたのでどうかな?と思っていましたが,特に問題なく通過できました。
小さな避難小屋と遭難慰霊碑がある一ノ倉岳を通過して,そのまま進みます。すると,それは不意に姿を表しました。一ノ倉沢の大岩壁。
すごっ!眼下にはずーーーーっっと下まで,ほぼ垂直な岩壁が続いています。ああー見ているだけで怖い。ヒュンヒュンするぅ!
これが谷川岳が持つ,もう一つの顔です。世界で一番遭難死者を出している山(← 普通に縦走登山をしている分にはヤバくありません)。
一ノ倉岳から谷川岳の間は,登山道がちょっとヤンチャになります。岩場の登り下りを繰り返すのでストックはしまいます。またこの辺りから足元に蛇紋岩が目立つようになります。蛇紋岩は滑りやすいので要注意です(特に岩角が摩耗して黒光りしているところ)。
一箇所,尾根の縁ギリギリのところをトラバースする場所があって,ちょっと嫌な感じでした。ほんの2mくらいなんですけどね。台風通過後のせいか,石が浮いてるの。
クサリ場を越えるたびに,大きく見えてくる谷川岳。岩肌の様子もよく観察できるようになってきます。
谷川岳が近づいてきたところで「ノゾキ」という場所を通過します。尾根の上から一ノ倉沢を覗き込む場所。下に見える地面は1000 mくらい下です。ひえええ〜,ヒュンヒュンするぅ!
さてさて。清水峠から,いや白毛門から延々と歩いてきました。長い道のりでしたが,13:00,ついに谷川岳オキの耳 (1977 m) に到着です。
谷川岳といえば,この光景。手前の大きな二つのピークがオジカ沢の頭と俎嵓,その奥が万太郎山です。さらにその遠くに霞んでいるのが仙ノ倉山。
こちら主脈稜線も,花の季節にもう一度歩いてみたい気がします。
ようやく谷川岳に立てたので,自撮りもかましておきましょう(笑)。
オキの耳で一休みしたら,双耳峰のもう片方,トマの耳 (1963 m) へ。15分くらいで着きます。
ここが最後のピーク。これでもう登りはありません!
振り返ってオキの耳。端正な形,なかなかのイケメンだと思います。右に切れ落ちているのはマチガ沢。
東側を見ると,湯檜曽川が刻んだ谷を隔てて,昨日歩いた白毛門〜朝日岳の稜線。いやあ,よく歩いたなあ!
ところで今さらですが,昨日からずっと天気はいいんですけどね。遠くは霞んでいる感じ。梅雨入り間近なので湿気が多いのかな?
天神平へ下山します!
さあ,あとは天神平へ下るのみ。どんどん行きましょう。
トマの耳から肩の小屋を過ぎ,「天狗のたまり場」まで40分。途中で雪が残っているところもありましたが,問題なく通過します。
クサリ場も注意しつつ,速やかに通過(蛇紋岩が滑るので気をつけて)。
このあたり,登山道の脇にはシャクナゲ。最後まで楽しませてくれる谷川岳なのでありました。
天神平までもう少しです。木の間越しに谷川岳の双耳峰を望めるところがありました。左がトマの耳,右がオキの耳。すごい迫力ですよ!
この眺め!谷川岳が大人気になるのもよくわかります。
天神平に着きました!ロープウェイで一気に下界へ
15:20,天神平に到着です。朝寝坊から始まった1日だけど,問題ない時間にここまで来れたのでオーケーです (^◡^)
天神平に流れている雪解け水で靴を洗い,ついでに顔もザブザブ洗いました。
その顔を上に向けると,いつの間にか朝日岳方面が見上げる高さになっています。
あの稜線を歩いて清水峠をぐるっと回って帰ってきました。
ここから見る谷川岳もすごいですよ。
「あの山とあの山に,ぜーんぶ登ってきたんだよ!」って,近くの人に言い回りたくなりますが,一応大人なのでじっと我慢します(笑)。
さてここからロープウェイで標高差600 mを下ります。わーい,ロープウェイ!さん太ロープウェイ大好き!
おわりに
かくして,谷川岳馬蹄形縦走はおしまいです。眺めも良かったし,何より花の季節に歩けたのが良かったな。8月の夏山シーズンだと,アルプスに行っても花は若干盛りを過ぎてるんですよね。
馬蹄形縦走の感想ですが,「長い」というのが一番でした。「キッツイ!」と感じたのは,むしろ何年か前に行った主脈縦走の方ですかね(あの万太郎山〜仙ノ倉山の間がね…)。
まあ今回は茂倉岳への長い登りで,お花畑に癒されたから,キツさも忘れて歩けたのかな?
また谷川連峰は,アルプスに比べて標高が低いので,息がハァハァゼィゼィ上がることがあまりないように感じます。
ロープウェイの山麓駅(谷川岳ベースプラザ)でコーラを飲んでから,みなかみ行きのバスに乗って帰りました。
谷川岳はアプローチが近い割に絶景が楽しめるので,また来ると思います。その時まで,ごきげんよう。
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