sunsun fineな日々

子育てしながら,山を歩いたり星を見たり料理したり写真を撮ったり

ポータブル赤道儀の自作
登山記録・山域別
福島の花と風景
カメラ機材レビュー・写真の理論

奥多摩・鷹ノ巣山の頂上で星景写真を撮ってきました:スターリーナイトフィルターを使って撮る東京の星空

前記事「【奥多摩・鷹ノ巣山】酷暑の奥多摩山歩き。アブにやられてさあ大変!」の続きです。

www.sunsunfine.com

8月19日ー20日に,奥多摩の鷹ノ巣山に登ってきました。新型コロナの流行が収まっていない中,都民の一人としては都県境を越えずに登山をしようと,行き先を鷹ノ巣山にとどめました。これより先,雲取山方面まで足を延ばすと,登山道が山梨県をかすめてしまうのです…。

鷹ノ巣山は十分に日帰りが可能ですが,あえて避難小屋に泊まって,夜に星空の写真を撮ってきました。

赤道儀

がんばれ赤道儀「ふくろう号」

東京で星景写真を–––スターリーナイトフィルターを使います

さて,19日はちょうど新月期です。星空の写真を撮るにはもってこいの期間です。

肝心の天気はどうでしょう?GPV予報によると,19日の夜は奥多摩には雲がかからない様子です。これならイケそうかな?

さて。星空の写真を撮るときに一番問題になるのが「空が暗いかどうか」です。奥多摩の深い山の上とはいえ,鷹ノ巣山は東京都内です。都心部の街明かりの影響は少なからずあるでしょう。青梅市からも近いですし(実際,以前雲取山で南東の方角の空を撮ろうとしたとき,東京〜横浜方面の街明かりの影響が大きくて,赤道儀を回すのを断念したことがあります)。

そこで今回はケンコートキナーから出ている光害カットフィルター「STARRY NIGHT(スターリーナイト)」を使ってみることにします。このフィルターは都市部の照明に使われるナトリウムランプ(波長589 nm)および蛍光灯の光(水銀の輝線 435, 546, 577 nm)を選択的にカットしてくれるものです。一方,他の波長は比較的よく透過させるので,星の光を捉えるにはおおむね影響がありません。

「スターリーナイト」

光害カットフィルター「スターリーナイト」

www.kenko-tokina.co.jp

今回はこういうアプローチでいってみようと思います。さて,東京都内にいてどれくらい星空を捉えることができるでしょうか?

 

夜の鷹ノ巣山へ

鷹ノ巣山避難小屋で晩ご飯を食べ終わると,ちょうどあたりは暗くなりました。ここまで登ってくる間,空には薄雲がかかっていることが多く,気になっていたのですが外に出てみると…おっ!星が見えています。

避難小屋は森に囲まれているので天頂付近しか見えませんが,はくちょう座付近の天の川が見えています。湿度がけっこう高くて,ヘッドランプの光が筋になるところを見ると透明度はあまり高くないようですが。

でもチャンスです。急いで赤道儀とカメラ,そしてヘッドランプを準備して山頂に向かいます。夜の山道はクマさんが怖いので,熊鈴をトレッキングポールに取り付け,大きく鳴らしながら歩いていきました。

夜のブナ

大きなブナの木は,夜の山道でも存在感がありました
注意!ナイトハイクは昼間の行動に比べて,転倒,道迷いなどの危険が高まります。またクマなどの野生動物と遭遇する確率も上がります。万全の注意をした上で,自己責任で行ってください。歩くルートは明るいうちに危険箇所などの確認をしておくのが鉄則です。

避難小屋から登ること約30分,鷹ノ巣山の山頂に到着です。夜の山頂には,当然のことながら誰もいません。

で,肝心の星空ですが…うーん南天の低空には雲がかかっていて,天の川の中心,いて座の方向は見えません。夏の空で最も華やかな部分が見えないのは残念ですが,天気には逆らえません。

目を転じて天頂方面,夏の大三角のあたりはどうでしょう。天の川が見えていますが薄雲が流れているような感じです。

もう少し標高が高い山なら雲の上に出てるかもしれないんですが…。でもいいんです。今回は「東京の星空」を撮るのがテーマの一つです。幸い赤道儀をセッティングしていると上空の雲は去っていきました。条件は最良とはいえませんが,撮影を始めることにします。赤道儀のスイッチオン!

はくちょう座付近の天の川

鷹ノ巣山山頂の木々の上にはくちょう座〜カシオペア座にかけての天の川が流れています。夏の元気な森の上に流れる天の川。これも夏山の風景には違いありません。

ということで,まずこちらにカメラを向けました。カメラはα6400,レンズはSAMYANGの12 mm F2.0 NCS-CS(換算18 mm)です。

森にかかる天の川

鷹ノ巣山にて。森にかかる天の川

星空は赤道儀で追尾したものを7枚スタック(加算平均コンポジット),地上部は赤道儀を止めて撮ったものを5枚スタック。これらを「新星景」方式で一枚にまとめています(地上部と星空の位置関係は正確です)。周りに誰もいないので,木々をヘッドランプで照らしたりしました。

ところで夜の山頂にクマさんが出てきたら困ります。そこで撮影中はクマ鈴をチリンチリン鳴らし続けました。またシャッターを閉じている時に,ヘッドランプをあたりに照射します (^ ^;)

はくちょう座の北十字をアップで撮ってみます

次にレンズを35 mm F1.8に付け替えて,はくちょう座をアップで撮ってみることにします。はくちょう座の北十字を画面いっぱいに写した「星座写真」ですね。

はくちょう座

はくちょう座の北十字

スターリーナイトフィルターを使って撮った5枚+ソフトフィルター(プロソフトンA)を使った3枚をスタックしています。

画面上の方の明るい星がデネブ,北十字の真ん中の星がサドル,白鳥のくちばしの位置にあるのがアルビレオです。ソフトフィルターを使うと星の色がよくわかりますね。

以前から感じていたのですが,α6400のセンサーは,赤い散光星雲も割と良く写ります。この写真でも北アメリカ星雲やサドル付近の散光星雲がよく写っています。

ところではくちょう座の北十字は「銀河鉄道」の最初の停車場です。ジョバンニたちが乗った列車は,ここから天の川に沿って南下していくんですね。

「もうじき白鳥の停車場だねえ。」

「ああ、十一時かっきりには着くんだよ」

宮沢賢治「銀河鉄道の夜」から

カシオペア座付近の天の川 

次にまた広角レンズに付け替えて,カメラを北天に向けます。夜が更けて,カシオペア座が登ってきています。この辺りの「秋の天の川」も透明感があって好きです。

同じく追尾したものを6枚,赤道儀を止めて撮った地上部を5枚スタック。

カシオペア座付近

カシオペア座付近の天の川

この辺りの領域は暗黒帯が複雑に入り組んでいて,けっこう面白いんですよね。画面右上のほうにアンドロメダ銀河も写っています。

北側は秩父市でしょうか。意外と街明かりの影響が出ていますね。

南の空も一応撮っておこう

夜が更けてきました。上空の雲の流れは落ち着いてきましたが,南天には雲がずっとかかっていて,やっぱりいて座のスタークラウドは見えません。でも一応撮っておこうと思います。

南の空

南の空,わし座を中心とした天の川

たて座〜はくちょう座あたりまで,わし座を中心とした天の川が写りました。ベガ,アルタイル,デネブの夏の大三角も入っています。低空のいて座付近が写るとより華やかなんですけどね。

この写真を撮った時には赤道儀の極軸がずれていたのか,周辺部の星が流れてしまい,スタックがうまくできませんでした。南天に雲があるから気合が乗らず,撮影に入る前に極軸のチェックをちゃんとしなかったせいですね (^ ^;) 縮小した写真だとあまり目立ちませんが。

低空は街明かりの影響がかなりありますね。スターリーナイトフィルターをつけていても黄色くカブっています。こっちは方角的に大月市あたりかなあ。

画面の下の方があんまり見栄え良くないので,「星空セルフポトレ」をやってみたらよかったなと少し思っているところです。今度機会があったらやってみようっと。

昇ってくる秋の星座たち

夜半を回りました。最後にカメラを東に向けて,昇ってくる秋〜初冬の星座を撮ってみます。固定撮影の一枚撮りです。レンズは標準ズームで焦点距離を16 mm(換算24 mm)に設定,ソフトフィルターを使いました。

カシオペア座からペルセウス座を中心に,画面下の明るい星はぎょしゃ座のカペラです。アンドロメダ銀河やプレアデス星団(すばる),ペルセウス座の二重星団h-χが画面に入っています。カリフォルニア星雲も心眼で見えます(笑)

昇る秋の星座

昇る秋の星座

こんな星空を見ると,まだ暑いけど季節は秋に向かっているんだなとしみじみ感じます。そのうち,あたりには虫たちの声が響くようになるでしょう。

撤収します

さて,そろそろ撤収して避難小屋に戻ることにします。辺りは真っ暗なのでヘッドランプで照らして,忘れ物がないように気をつけます。星空撮影には,いろいろ細かいものを使ってますからね。

そして荷物をまとめたら,またヘッドランプをつけて,クマ鈴を鳴らしながら夜の山道を下って行きました(緊張します)。20分くらいで避難小屋に帰還。

日の出の頃にもう一度山頂に登ってくる予定なので,シュラフカバーに入って仮眠をとりました。

光害カットフィルター「スターリーナイト」を使ってみた感想

今回初めてスターリーナイトフィルターを使ってみました。都内の街明かりの影響を受ける鷹ノ巣山でけっこう撮れたので,やはり効果はあるんだと思います。

他に気づいたことは

  • 黄色〜オレンジ色のところに吸収帯を持つので,星空がシアンにかぶります。現像の段階で空の色を調整するのにやや難儀しました(あえて青を残した写真もあります)
  • ナトリウム灯,水銀灯の輝線以外の波長にもわずかに吸収を持っているので,少し星空が暗くなります。今回,露光時間をもう少し長めにとってもよかったかな。この点は,今後試行錯誤が必要かもしれません

といったところでしょうか。これからも空の状態を見て,必要なら使ってみようと思います。

ケンコートキナーさんは最近も「プロソフトン・クリア」を出してくれたり,星景写真を視野に入れた製品開発をしてくれるのがうれしいです。

おわりに

今回,「東京都を出ないぞ」と決め,山歩きと星撮りを行ってきました。それでもきれいな星空を写すことができてうれしかったです。「東京の星空」。うん,悪くないですね。

このあと早朝の景色を写すためにもう一度山頂に登ったのですが,夜が明けた鷹ノ巣山頂にはアブの大群がいて,ボコボコにやられてしまいました。いま思うと,夜星を撮っている間アブがいなかったことは,本当にラッキーだったなと思います(汗)

 

関連記事

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com

www.sunsunfine.com