東京。人がいっぱいいて,ビルがいっぱい立っていて,自然が少ない…もしかしたら,そんなイメージを持っている人が多いかもしれません。けれども東京には意外に緑が多く,そこにはたくさんの野鳥が暮らしています。
普段少し気をつけて歩いているだけで,「あ,こんなのがいたんだ!」と思うくらい,いろいろな鳥に出会うことができるのです。特に冬から春先にかけては木々に葉っぱが少なくなるため鳥が見つけやすく,バードウォッチング・野鳥撮影に向いた季節になります。
ここでは東京で出会える鳥たちを紹介します。今回はその中で,スズメくらいの大きさの小鳥です。
スズメ
まず何と言ってもスズメです。田園が広がる地域ではお米を食べに集まりますが,都内でもそこかしこに見かけることができます。
毎朝チュンチュン。茶色い帽子がかわいい。スズメは昔から「舌切り雀」などのおとぎ話で人々に親しまれてきました。また仙台には「雀踊り」も伝わっています。「スズメがお米を食べに来る…困ったナァ」なんて言いながらも,昔から愛されてきたのが伺えますね。
東京では,川沿いの草むらや,時には電柱に巣を作っていたりします。そんなスズメですが,意外に警戒心が強くて,写真を撮るのはけっこう難しかったりします。
メジロ
「梅にうぐいす」とよく言われます。でもより鮮やかな「うぐいす色」をしているのはメジロです。実際に梅の花が咲くと,よくメジロが飛んできて花の蜜を吸っています。その姿は実に愛らしく,また梅の花とメジロの組み合わせはとても絵になります。「メジロって,梅とペアを組むために生まれてきたんじゃないか」と思うくらいです。
春のポカポカ陽気の日は,梅に木の下で待っていると,メジロが蜜を吸いに飛んできます。彼らが来ると「ピピピ,チチチ」と声がして,枝先が揺れるのですぐにわかります。大きさはスズメよりもひとまわり小さいでしょうか。
もう少し季節が進むと,彼らは桜の蜜を吸うようになります。その姿はまさに春の妖精。かわいいです (^◡^)
うちの周りを散歩していても,時には植え込みの山茶花の蜜を吸っていたりして,よく見かけますね。
ウグイス
それでは本家ウグイスはどんな鳥?というと,こんな鳥です。メジロよりも地味な色をしているんです。言ってみれば,メジロは抹茶色でウグイスはほうじ茶の色。
春になるとウグイスがさえずりの練習を始めます。その情景には「いかにも春がきた」と感じます。
でもウグイスは茂みの中にいて,なかなか姿を見せてくれません。写真を撮るチャンスもなかなかなくて,難しいです。
とはいえ,目の上に白い筋が入った顔は凛々しくて,気品があると思います。
シジュウカラ
街なかを歩いていると,スズメやメジロと並んでよく見かけるのがシジュウカラです。大きさや姿かたちがスズメと似ているので見逃しやすいのですが,よく見ると白い頬や胸元のネクタイのような柄ですぐにわかります。
そして「じじじじ」という地鳴きの声,「ツピーツピー♪」というさえずりの声からも,「お,近くにシジュウカラがいるな!」とわかるのです。
シジュウカラは黒と白のおしゃれな柄を身にまとっていますが,その背中はメジロに似た抹茶色。この色もすごく素敵です。個人的にはすごくきれいな鳥だと思っています。
けれどもシジュウカラは警戒心がはとても強くて,写真を撮るのはなかなか大変です。僕の感覚だと,写真の撮りやすさは,メジロ > スズメ > シジュウカラという感じです。
ヤマガラ
その名前から,山の上にいそうな鳥ですが,時々町なかでも出会うことがあります。シジュウカラが抹茶色のワンポイントなら,ヤマガラはオレンジ色のワンポイント。黒の模様は,なんだかお人好しっぽい表情に見えます(笑)その顔のから受ける印象の通り,わりとおっとりしている鳥です。
ヤマガラはもちろん山の上でも出会えます。奥多摩の大岳山にいっぱいいて,うれしかったのを覚えています。
エナガ
小鳥はみんな可愛いですが,「一番可愛い鳥は何?」と聞かれたら,僕なら「エナガ!」と答えます。小さな身体に長いしっぽ。白い顔に小さな嘴とつぶらな瞳。どうしてこんなに可愛いんでしょうか (^ ^)
エナガによく出会うのは冬です。小さな群れを作って木の枝の間を飛び回っているところをたまに見かけます。春先,メジロやシジュウカラに混じって「混群」でやってくることもあります。
北海道には亜種の「シマエナガ」がいます。こちらは「眉毛」がなくて,真っ白な顔をしています。
コゲラ
日本にはキツツキの仲間が何種類か生息していますが,その中で最も小さいのが,このコゲラです。大きさはまさにスズメくらい。実際にメジロなどと混群を作っていることもあります。
コゲラがいると,木をつつくドラミングの音が聞こえます。東京だと他の種類のキツツキはまずいないので,「あ,コゲラが近くにいるな」とわかるのです。
コゲラの顔はなんだかいたずらっ子みたい。これも可愛いです (^◡^)
余談ですが,キツツキってあんなに木を勢いよくつついて,脳震盪になったり首が痛くなったりしないのかな。
カワラヒワ
これもよく見かける鳥です。大きさはスズメくらいで,電線などによく止まっていますが,スズメやシジュウカラに比べて,身体を立ててとまっているのが特徴です。
その羽には黄色い模様が入っていて,とてもお洒落です。ただ,目の周りに「くまどり」みたいな模様があって,ちょっと人相が悪いような気もします(笑)
アオジ
まれにアオジを見かけることもあります。スズメによく似た羽の模様に黄色いお腹とブルーグレーの顔。「ちょっとおめかししたスズメ」に見えないこともありません。
よく地面をつついています。草の芽でもついばんでいるのでしょうか。それとも虫を探しているのかな?
ジョウビタキ
冬になると大陸からやってくる渡り鳥です。大陸育ちのせいなのか,おっとりしていて,わりと近くまで飛んできて目の前の枝に止まったりします。冬の公園の柵に止まっているところに出会ったりすることもよくあります。
オスとメスで色・模様が違い,オスはあざやかなオレンジ色,白,黒の模様。
メスはもう少し地味な淡い茶色ですがつぶらな瞳で,すごく可愛いです。
鳥好きの人たちの間では,オスは「ジョー」,メスは「おジョウちゃん」と呼ばれて,親しまれているようですね。
ルリビタキ
幸せの青い鳥,ルリビタキ。東京だと明治神宮や石神井公園などで見かけることができます。
オスの羽は美しい青色。ホント「幸せの鳥」ですね。
ルリビタキが渡ってくるのは冬。出会うとうれしくなります。
メスはやや地味な体色で,ジョウビタキ雌に似ていますが,尾羽が瑠璃色なので見分けることができます。こちらもつぶらな瞳がかわいい。
メスの名前はルリ子さん,苗字はきっと浅岡さんだと思う(古いなっ!)。
ホオジロ
スズメとよく似た大きさと羽の色。でも顔に黒いラインが入っています。ほっぺのところが白く目立つのでホオジロ。
身近なところでよく見かけますが,気をつけないとスズメと区別がつかないこともあります。
ホオジロの囀りは古くから歌にも読まれて,親しまれています。
ほおじろの声をきけば
山里ぞなつかしき
遠き昔になりぬ
ひとり湖のほとりにさすらひて
この鳥の歌をききしとき
ああひとりなりき
ひとりなり(中 勘助「ほほじろの声」から)
聴きなしは「一筆啓上仕り候」だとか。
オオジュリン
河原の木立に沿って歩いていると,ホオジロとよく似た鳥が目の前に飛んできました。頰が茶色いので,最初ホオジロのメスかな?と思ったんですが,よく見ると顔の模様が少し違っているようです。
この鳥はオオジュリンですね。
オスは夏になると顔が黒い羽で覆われるようですが,冬はホオジロによく似た姿になります。
他にもカシラダカやタヒバリなど,似た模様・羽色を持つ鳥が何種類かいて,それを見分けるのも楽しいものです。
カシラダカ
冬になると大群を作って野原にやってきます。遠くから見るとホオジロやアオジに似ていますが,近くで見るとお腹が白いことや冠羽が立っているところが違っています。
まるでモヒカン頭のようです。ヒャッハー!(笑)
オオヨシキリ
こちらは夏の鳥。初夏になると河原のヨシ原にやってきて,大きな声で「ギョギョシ!ギョギョシ!」と囀り続けます。
その声は,賑やかというよりもやかましいくらいです(笑)。
かの小林一茶も「行行子 口から先に 生まれたか」なんて詠んでいますし。
セキレイ
ハクセキレイ
よく道路の真ん中を歩いてますね(笑)。テテテテ…と歩いて,しっぽをヒョイヒョイと振り,またテテテテ…と歩いて,しっぽをヒョイヒョイ。
白黒の模様がとても爽やかできれいですが,近くまで歩いていくとテテテテ…と遠くに歩いていき,そこでヒョイヒョイしている間に近づくと,またテテテテ…とあっちに逃げてヒョイヒョイ。なんだか天然?な性格をしているように思います (^ ^;)
セグロセキレイ
背中の黒いセキレイ。ハクセキレイと同様に,水辺をピョコピョコ飛び回っています。そして尾羽をヒョイヒョイ。
セキレイはいつも身軽ですね
キセキレイ
お腹の黄色いセキレイ。とてもきれい。背中側はハクセキレイと似ているのですが,黄色が差し色で入るだけでプレミアム感が出る感じがします。
川沿いを好み,市街地でもよく見かけるハクセキレイとは棲み分けているようです。実際見かける頻度はハクセキレイよりも少ないように思います。
ツバメ
私たちに馴染みの深いツバメは,ジョウビタキとは逆に,春になるとやってくる渡り鳥ですね。
空中生活に特化して長い翼を持ちますが,その身体自体はスズメと同じくらいのサイズです。
その小さな身体を守るために,ツバメは人間と共存することを選び,民家の軒先に巣を作って子育てをします。遠い南の島から渡ってきて,人とともに暮らすツバメは本当に愛おしい存在だと思います。
夏になると巣立ったヒナが飛ぶ練習をしているのもよく見かけます。そんな光景を見ると,「頑張れよ!」と応援したくなるのです。
カワセミ
東京には,澄んだ水をたたえた池が各所の公園にあり,その池の周りではカワセミを見かけることがあります。カワセミは嘴が長いですが,想像するよりも小さな身体の鳥です。
カワセミといえば,何と言ってもあの美しい色合いです。漢字では「翡翠」と書いてカワセミと読みます。まさに空を飛ぶ宝石のようですね。
でもカワセミは敏腕のハンターです。その長いくちばしで,空中から水面に急降下して,魚を獲って食べるのです。そんな姿もまたかっこいいですね。
おわりに
人がたくさん暮らしている東京ですが,実は野鳥もたくさんいます。野鳥を見つけるコツは,「いると思ってみること」でしょうか(笑)。いろんな鳥がいることを意識してみると,本当にいろんな鳥が見つかるんですよ。
そしてスズメだと思って何気なく見ていた鳥が,よくみるとシジュウカラだったりカワラヒワだったりということがよくあるのです(スズメも可愛いですが)。
空を駆ける鳥たちは美しい生き物だと思います。特にスズメをはじめとする小さな鳥たちは愛おしい存在です。そんな鳥たちと共存していることは,とてもうれしいことだと思うのです。
東京では,他にもう少し大きめの鳥や水鳥にも出会うことができます。そんな鳥たちのことも,いつか書いてみたいと思います。
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