最近Adobe Lightroonに,新しい「ノイズ除去」機能がつきました。AIを使ってノイズを消すとかで,ディテールを保ちながらノイズだけを減らすことができると謳っているようです。
この効果は既にいろんな方が試して記事にされています。
ここで気になることが一つ。ノイズを減らすソフトとして DxOのPureRawがあって,自分も便利に使っています。その効果はけっこう劇的。
じゃあ,Lightroomのノイズ低減とPureRawはどっちがいいんでしょう?これは気になるところです。
そこで実際に比べてみました。
サンプルに使ったのは,高感度ノイズが特に問題になる野鳥写真と星景写真です。使っているカメラは,APS-Cセンサーの α6400。
カワセミの写真で効果を比較する
まずPureRawの効果を再確認
はじめに野鳥写真で効果を比較してみましょう。先日撮ったカワセミの写真です。
最近は野鳥の写真は,何はともあれPureRawを通して,それから現像しています。こんな感じ↓。
この写真は高速シャッター(1/3200 秒)を切った結果,iso感度が3200まで上がっています。でもPureRawの効果で,かなり「見れる」ようになっているかと思います。
一方,PureRawを通さないで,そのまま現像するとこうなります。
やっぱりノイズでザラザラです。ブログサイズに縮小するとわかりづらいでしょうか?でも色ノイズのせいで,なんとなくくすんだ感じになっていますね。コントラストも低下しているように見えます。
一部を拡大してみると,よりはっきりします。左がRawファイルそのまま,右がPureRawで処理したもの。
こうして並べてみると,だいぶ違いますね。
Lightroom の「ノイズ除去」の効果は?
それでは次に,Lightroomの新しい「ノイズ除去」効果を使ってみましょう。
Rawファイルを開いて,いつも通りに色温度やコントラストなどを調整したあと,「ディテール」から「ノイズ除去」を選びます。とりあえず効果の強さを,デフォルトの「50」にして「強化」ボタンを押しました。
処理には,M2 MacBook Air で約1分かかりました。PureRawは20秒くらいで終わるので,こっちの方が少し時間がかかりますかね。
できあがった写真がこちら。
おおっ,これもきれい!Rawファイルをそのまま現像したものとは,比較するまでもないですね(左がそのまま,右が「ノイズ除去」適用)。
「PureRaw」vs「ノイズ除去」対決!
ではこれが気になるところですが…。「PureRaw」vs「ノイズ除去」ではどちらが優れているでしょうか?比較してみましょう。
処理したカワセミの写真を部分拡大して並べてみます。左がPureRawで処理したもの,右が「ノイズ除去」を適用したもの。
ノイズを低減する効果は,どちらも文句なし。素晴らしいです。ディテールの出方は,嘴の凹凸はPureRawの方が出ているけど羽毛のあたりはわずかに「ノイズ除去」が優っているかな?
まあこの辺りは引き分けですかね。
背景のボケたところには少し違いがあります。「ノイズ除去」の方は,背景のコントラストがやや目立って強調されているところがありますね(この写真の右上の方)。というか,全体に「ノイズ除去」の方がコントラストが高い感じがします。
違うところもアップにして比べてみます。左がPureRaw,右が「ノイズ除去」。
描写の仕方が僅かに違うところもありますが,どちらもきれいです。
というわけで,野鳥の写真に関しては,PureRawとノイズ除去,誤差範囲で引き分けかな。どちらを使うかは気分次第でよさそうです。
PureRawの方が処理が速いけど,ノイズ除去には全てをLightroomの中で完結させられるという「気楽さ」がある…まあこのあたりも一長一短でしょうかね。
星景写真ではどうかな?
お題は「南岳の天の川」
次は星景写真で効果を検討してみましょう。お題はこれ。
北アルプス,南岳で撮った天の川です。↑はRawファイルをそのまま現像したものです。撮影時の iso 感度は 4000 。また地上部は1段くらい持ち上げているので実質 iso 8000 くらいのノイズが出ているかと思います*1。
拡大すると結構ひどいよ(あとでアップを出します)。
*1 iso不変性から
PureRawで処理してみます
まず,同じ写真をPureRawで処理してから現像してみます。
ブログサイズに縮小しても,ノイズが減って精細さが増しているのがわかるかと思います(特に地上部)。
拡大して比較してみましょう。まず星空の部分。バンビの横顔の辺りを等倍近くで示してみます。上がPureRaw なし,下がPureRawあり。
色味が違っているのは僕の腕に問題があるからですが,それは置いといて(笑)。PureRaw処理でザラザラ感がだいぶ減っていますね。
うん,まあまあかな。
次に地上部の比較です。さっきも書いたけど,ここは1 EVくらい持ち上げているので,ノイズが一層目立っていたところです。
これは効果がはっきりわかりますね。Rawファイルをそのまま現像したものは,ノイズで細部が潰れてしまっています。
「ノイズ除去」だとどうかな?
それではこの画像にも,Lightroomのノイズ除去を適用してみましょう。こうなりました。
これもきれいです。パッと見,PureRawと変わりない感じかな。画面上部,天の川の淡い部分は,こちらの方がよく出ている?ような気がします。
それではこれも適用前の写真と比べてみましょう。まず星空。
満足すべき効果だと思います。ノイズ除去によって,小さな星が消えたり天の川の淡いところが消えたりといったことを心配していましたが,それは問題なさそうです。
次に地上部の拡大。
ノイズがなくなって,きれいになりました。ザラザラの写真だと,山小屋の居心地が悪そうに見えますね(笑)。
再び「 PureRaw」vs「ノイズ除去」対決!
それでは再び「 PureRaw」vs「ノイズ除去」対決。星景写真だとどうでしょう。
まず星空の部分を比較してみます。
正直,違いはよくわかりません。どちらも優秀です。変なアーティファクトもそんなになさそうです。
コントラストに僅かな違いがありますが,これは後の画像処理で何とでもなるので問題にはなりません。
ということで,ここもまた引き分けということでよさそうです。
次に地上部です。南岳小屋のあたりをアップにしてみます。地上部は現像にあたって1段くらい持ち上げているので,もともとノイズがめちゃくちゃ出ていたところ。
うん? ちょっと違っているような…?思いっきり(等倍まで)拡大してみると…。
どうでしょうかね…。目を凝らしてみると,「ノイズ除去」の方が,僅かにディテールが豊富に残っているように見えます。
ということで,少なくともこの写真・この条件では,Lightroomが僅差で勝ち!と言えそうです。
iso 8000相当まで上げるような超高感度撮影では,Lightroomのノイズ除去は非常に優秀ということでいいでしょうか?でもまだ N = 1 なので,もう少し検討してみようと思います。
まとめ
まだ検討が必要かと思いますが,とりあえずここまでをまとめると,
- 新しく出た,Lightroomの「ノイズ除去」は,DxO PureRaw に遜色ない効果を発揮する
- iso 8000相当のような「超高感度」では,PureRawを凌ぐノイズ低減効果がある…かもしれない
- 描写に微妙な違いが出ることがある(ボケた背景など)
- 処理時間は「ノイズ除去」の方が長くかかる
という感じでしょうか。Lightroomの「ノイズ除去」,新しい機能ですが,使えますね!(正直,最初のバージョンからここまですごいとは思っていませんでした)
すでにPureRawを持っている人は,どちらを使うか,状況と気分で決めて問題なさそうです。
思うこと
こうしたソフトウェア(AI)による画像処理は,今後ますます進化していくでしょう。これはいろんな方面に影響を及ぼすと思われます。
例えばAPS-C センサーのカメラはフルサイズ機に比べて高感度耐性が弱いですが,Pureraw や「ノイズ除去」などを使うことにより,そのディスアドバンテージをかなり克服できるようになるでしょう。
「ノイズ除去」機能もバージョンアップとともに,さらに洗練されていくかもしれません。それはちょっと楽しみですが,「DxO は大丈夫かな?」という余計な心配もしてしまいます。
一方同時に,例えば星景写真などでは,赤道儀を用いた長時間露光と多数枚スタック(加算平均コンポジット)などの従来からある手法も捨ててはいけないんだろうな,とも思います。
赤道儀を使ってスタックした星景写真は,固定撮影のものよりもやっぱりきれいですからね。
(野鳥の写真はこれらのソフトを使うことで,今のところ文句なしです)
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