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レナード彗星 (C/2021 A1) を撮影しました:ちょっとマニアックな話もあるよ

2021年12月5日の明け方,接近しているレナード彗星 (C/2021 A1) を撮影してきました。撮影場所は伊豆の下田です。

この日は(彗星よりも先に)他の天体も撮影したのですが,記録として速報性が必要なのはこっちでしょうから先にアップします。

レナード彗星について

レナード彗星は今年のはじめ,アメリカのGregory J. Leonardによって発見された,非周期彗星です(その名前 C/2021 A1 の "C" は非周期彗星を表しています)。この彗星は双曲線軌道を動いており,二度と太陽の近くに戻ってこないことが明らかになっています。

news.yahoo.co.jp

レナード彗星は12月12日に地球に最も接近し,視等級が4等に達すると予想されています。彗星の明るさの予想は難しく,予想よりも明るくなることもあれば期待外れに終わることもありますが,レナード彗星は今のところ順調に光度を増し,現在は5等級前後の明るさになっているようです。

伊豆・下田で撮影してきました

前置きが長くなりましたが,12月5日の未明に,伊豆・下田の海岸でレナード彗星を撮影してきました。

うしかい座とレナード彗星

彗星は現在うしかい座にあり,明け方に昇ってきます。天文薄明が始まった空に,うしかい座とレナード彗星。

レナード彗星

うしかい座とレナード彗星

撮影データ:2021年12月5日 5時21分頃,α6400 + 35 mm F1.8→ F2,iso 2500, 露出20-35秒 x 8枚スタック(うち5枚はスターリーナイトフィルター使用,3枚はソフトフィルター使用)。

星座線を入れて彗星にラベルを付けたものがこれ↓

うしかい座とレナード彗星

うしかい座とレナード彗星(星座線入り)

青緑色の彗星が,小さいながら尾をたなびかせているのがわかりますかね?

彗星をアップで

続いて85 mm F1.4(フルサイズ換算127.5 mm)を使って,アップで撮った写真を(実際には先の35 mmの写真よりもこちらを先に撮影しています)。

レナード彗星

レナード彗星と球状星団M3

撮影データ:2021年12月5日 5時10分頃,α6400 + SIGMA 85 mm F1.4→ F2,iso 2500, 露出44秒 x 7枚スタック,少しトリミング。

画面中央上に明るく写っているのは,球状星団M3です(縮小する前の写真では,これが細かい星の集まりであることも何とかわかります)。彗星はエメラルドグリーンのコマが印象的です。またこぢんまりした彗星ながら,イオンの尾がかなり長く伸びていることがわかります。写真で見た感じ,6°〜7°くらいありそう(下は白黒反転してコントラストを上げた画像)。

白黒反転

イオンテイルは5°以上伸びています

彗星はこれから近日点通過を迎えるので,その前後からさらに立派なダストの尾をなびかせるといいのですが…(期待しちゃいます)。

彗星の青緑色(ちょっとマニアックな話)

ところで一般に,彗星のコマ(最も明るいところ)は青緑色(エメラルドグリーン)に輝いていることが多いです。レナード彗星も例外ではありません。

これは彗星核に存在する C分子(炭素原子2個が結合してできた化学種)が太陽の光や熱で励起され,これが基底状態に戻るときの発光によるものだと考えられています。C2という分子は不安定ですが,宇宙空間では存在できるのです。この分子は 500 nm前後(緑色の光)に輝線を示すため,このような色に見えるというわけです。

C2分子の分子軌道

C2分子の分子軌道と二重に縮重したHOMO

マニアックな話をすると,C2分子における炭素原子間の結合次数は2で,二重に縮重した \pi結合の軌道がHOMO (最高被占軌道) となっています(ルイス構造式で描くと :C=C: となります)。またこの分子は反磁性です。

あのエメラルドグリーンの核の中には,こんなエキセントリックな化学種がいっぱい詰まっているわけですね(他にもNH2とかCNといった分子が存在すると考えられています)。面白い。

 

おわりに

天文ショーは日食,月食などいろいろありますが,彗星の出現はその中でもロマンティックなものだと思います。立派な尾を引く大彗星,また来ないかな。

とはいえ,昨年のネオワイズ彗星を見ることができなかったので,今回レナード彗星を撮影できて,少しはリベンジできた気分です。

レナード彗星はこのあと近日点通過と地球への接近を控えています。観測条件はやや厳しくなっていきますが,明るさや尾の規模など,どのように変化していくか楽しみですね。

 

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