藤の木って生育がすごく早いですよね。きれいに整えられた藤棚も,「樹齢の割に枝の広がりや幹の太さがすごいな」と思うことがしばしばです。
また山に自生している藤は,たくましいの一言。その蔓は旺盛な生命力を誇示しているように見えます。
さて前記事「川俣町・羽田春日神社の大藤 –– 2年に一度咲く藤に包まれた "鬼滅の神社"【福島の花】」では,神社の杉の木に絡みつきながら巨大化した,川俣町の大藤を紹介しました。
福島にはそんな巨大藤がもう一ヶ所知られています。県北・国見町の「大榧・大藤」です。羽田春日神社をあとにしたその足で,この大藤を訪ねてきました。
国見町・深山神社の大萱・大藤を訪ねる
初夏の日差しのもと,国見町を訪ねます。のどかな田園を走って着いたのは,深山神社。
ここはもう宮城県との県境です。福島市内からだと車で40分くらいかな?
神社自体に駐車場はありませんが,向かいの「小坂農村総合管理センター」の駐車場が利用できます。
この神社には樹齢500年と推定される大榧の木があって,その木に藤が巻き付いているのです。
神社についてみると,社殿がカヤの木に包まれているようです。その木には,藤が絡まって咲いているのも見えますね。
神社の裏手に回って,大カヤの木を眺めてみましょう。
これは…。すごい。まるで藤のオバケのようです。巨大なムックのようにも見えます。木の下に人が立っていますが,比べるとその巨大さがわかるかと思います。
さっき「ムック」って言いましたけどね。怪獣のガラモンも思い浮かんだりしましたね。…歳バレ案件ですが(汗)。
それに頭に出っ張りが2つあるから,巨大なホヤのようにも見えますね…って,これはチョー個人的な好みでした。
藤の花はちょうど盛りを迎えています。無数の花房がいっせいに開花してカヤの木を覆い尽くしています。なんという力強さでしょうか。
若藤と大藤と
大藤・大カヤのとなりに,まだ若い藤の木があります。これ,樹齢はどれくらいなんでしょう?藤の生育はすごく早いから,まだ数年くらいかもね。
新緑の山を背景にした藤の花。初夏の気持ちいい景色です。
この若藤を前景にして,大藤を撮ってみましょう。
若藤の木は,自分よりも少し背が高いくらい。大藤の方は…デカすぎぃ!なんだかその姿かたちも相まって,意思を持ってのっしのっしと動き出しそうです。
若藤の枝の間から。大藤を見上げてみます。…というよりも,大藤がこちらを見下ろしているみたいです。
縦でも一枚撮っておきましょう。いやホントすごいね。
手入れされた藤とは別の趣があって…こっちも魅力的です。圧倒されるような力強さ。
樹齢500年の榧の木と,巻き付く藤の蔓
深山神社の大榧・大藤は,国見町の天然記念物に指定されています。明治初期に書かれた村誌にも,この榧の木と大藤の壮観なさまが記載されているようです。
榧の木の根元を見れば…あわわわ。藤が榧の木に,まるで大蛇のように巻き付いています。そしてさらに龍のように頭をもたげて,上に向かって伸びていっています。
…ちょっと言葉にならない力強さ。見ていて怖さを覚えるくらいです。
カヤの木に巻き付いているのは藤の「蔓」ってことなんでしょうが,これは「ツル」というイメージを遥かに超えていますな。普段「ツル」というと,アサガオあたりを思い浮かべることが多いんですが。
こんな生命力の塊みたいな存在に神性を感じるのは必然ですね。古くからこの木が注目を集め,神社が建てられたのはごく自然なことでしょう。
そんな大榧・大藤の根元から周りを見ると,藤の花穂がカーテンのように里を彩ります。このしなやかさ,典雅な雰囲気。あの大蛇のような蔓から咲いた花だとは,にわかには信じられません。
あやめと神社と大藤と
大藤を回り込むと,あやめが咲いています。ああ,この花も今が季節だねえ。
あやめの紫と藤の薄紫がきれい。
神社の社殿が見えるとこにも立ってみます。のどかな里に,大榧がポツンと立っており,この木に寄り添うように神社が立っているのがわかりますね。
古い時代,大榧の木は,この地方のランドマークみたいな存在だったのかもしれませんね。
おわりに
生命力を誇示するような大藤。羽田春日神社とここ深山神社で対峙して,とても感銘を受けました。
山を歩いていて,森の中の藤を見ては力強いなと思っていましたが,そのすごさがあらためてわかりましたね。
「春の里ですごいものを見た」。そんな一日でした。
こちらも見てね
玉川麻衣さんが山藤を,山深いところに住む妖怪「濡れ女」として描いています↓。まるで意思を持っているかのような大藤の蔓は,まさに濡れ女のようです。